仮面ライダーOOO全話解説

第46話 映司グリードとWバースとアンクの欲望

監督:諸田敏
脚本:小林靖子
 前回の「3つの出来事」は「1つ、映司達はグリードに奇襲作戦を敢行。2つ、OOOはコアメダルの大半を失う。そして3つ、完全復活を果たしたメズールを撃破するも、更にガメルも完全に復活し、襲い掛かった。」というものだった。

 当然話は前回から引き続いて始まった。怒りの波動を撒き散らし、OOOとバースをまとめて海に叩き込んだガメルだったが、それで落ち着いたのか、手にしたウナギメダルを持ってトボトボとその場を立ち去ろうとしたが、Dr.真木がストップをかけた。
 Dr.真木は先週から戦いの一部始終を見ており、メズール亡き今、残骸ともいえるセルメダルの塊から青いコアメダルを拾いつつ、ガメルにも手にしたコアメダルを渡すよう要請した。
 Dr.真木は「君には必要のないものです。」とし、更に自分がメズールを元に戻すとするガメル「このまま終わらせるべきですよ。君にとって優しく美しい内に。」と、姉を死なせた時と同じ論理を持ち出した。
 だが、ガメルは元々Dr.真木を嫌っていた「お前嫌いだ!」と怒鳴りながらハリケーンミキサー体当たりを敢行。これに対してDr.真木は恐竜グリードと化してカウンターでボディーブローを加えたが、人形を飛ばされて狼狽。
 結局、人形を拾い上げて冷静さを取り戻した頃には、ガメルメズールを元に戻すことを改めて宣言して立ち去り、Dr.真木はその背中に「いいでしょう。君の欲望に良き終わりが訪れんことを。」と告げるのだった。

 直後、後藤が2人の去った護岸道路に這い上がって来たが、映司は随分離れた海岸に漂着していた。やがて意識を取り戻した映司は、左腕がグリード化しているのに気付き、愕然とした。「戻れ!」と念じようが、海水につけようが一向に元に戻らない。
 そして右腕にも違和感を抱いたが、それはグリード化することへの恐怖による震えに過ぎなかった。
 しばらくして、幾許かの冷静さを取り戻した映司だったが、左腕はそのまま。何とかヒントを得ようと、鴻上会長や出国直前の伊達に言われた自身の欲望について考えを巡らした。
 そしてよく分からなないままにアンクが自分をサポートしてコアメダルを投げ寄越した場面を想像した次の瞬間、左腕は元に戻っていた………。ようやく落ち着きを取り戻した映司だったが、ここでベルトがない事に気付いた。

 場面は替わってとあるビルの屋上。プテラカンドロイドが青いコアメダルを運んできたのを見たアンクは「メズールの奴も…。」と言いかけて、カザリが死んだ際のDr.真木の台詞を思い出し、「消えたか…。」と呟いた。恐らく、Dr.真木の台詞が無ければ、「死んだか…。」と言っていたことだろう。
 そしてメズールが言っていた、人間の体が得る感覚への問い掛けを思い出したアンクが向かったのは、クスクシエの厨房だった。久々にアイスキャンディーを頬張りながら店内をうろついたり、座ったりしながらクスクシエでの日々をどこか寂しげな表情で回想するアンク。そしてメズールの問い掛けを思い出し、改めて「お前等グリードには分からない味だ…。」と呟いた。
 そして「だから…。」と呟いた次の瞬間、比奈が店内に入って来た。戸惑いながら「もしかして戻ってきたの?」と問う比奈に、迫るアンク。前回に記憶があればアンクによる比奈殺害を懸念するところだが、不思議と比奈も視聴者も危機感を感じない。殺気の有無によるものだろうか?
 ともあれ、「食いに来た。美味かった」とするアンクと、やはり戸惑いながら「うん…。」と答える比奈の会話は静らながらも以前通りに見えた。だが、アンクは「他にも色々だ……だから、この身体寄越せ。」と言う。勿論比奈は即答で「駄目…あげられない。」と答えるのだが、要求と拒絶にしては随分静かな会話。
 そこへ知世子さんが帰還。勿論事情を知らない彼女はただ一人手放しで「アンクちゃん」との再会を喜び、屋根裏部屋への帰還を勧めた。
 それに対し、アンクは「どっちか戻ってくるかもなぁ。」と呟いてクスクシエを立ち去った。慌ててアンクを追おうとした知世子さんが、追いつけないと見て店内に戻ると比奈が地面に両手を付けて泣いている。
 比奈はアンクの台詞が、映司か自分のどちらかが戻る………両者による殺し合いをアンクが決意したことを悟って悲しみに暮れていた訳だが、当然知世子さんそれを知らず、比奈の様子に戸惑うのだった。

 場面は替わって街中。そこではガメルが無差別テロに走っていた。といっても殺戮が目的ではない。道行く人々を襲ってはセルメダルの塊とし、そこに青いコアメダル(ウナギのメダル)を置いてメズールを甦らせるのが目的だった。だがつまりはウヴァが自分達にしたことを模倣していたのだが、功を奏しない。
 陸橋の上ではそのウヴァガメルの奮闘を見ながら、メインとなるメズールのコアメダル(シャチのメダル)無しに無駄な努力を重ねるガメルを馬鹿にしていた。
 個人的にはガメルの馬鹿は馬鹿なりに一途なところは嫌いじゃないのだが、人類から見れば無差別テロによる殺戮でしかない。
 そのことを里中の通報から知り、同時にバースドライバーのメンテナンスが終了したことを告げられた後藤は素早く落ち合う地点を定めた。しばらくして合流した2人は互いの車両を運転したままベルトを交換。後藤は里中に映司探索を依頼し、里中は映司に渡す物があるのでそのつもりだった、と告げて両者はそれぞれの目的地に向かった。性格的な相性は最悪でも、仕事となると呼吸の合ったコンビになったもんだ、この2人(笑)。

 その頃、映司はオーズドライバーを探して海岸を歩き回っていた映司は、自分の欲望を優先し、グリード化を懸念する人々の声を思い出しながらも、グリード達から人々を守るためには、自分のことはやはり後回しになると考えていた。
 その最中、ガメルの気配と焦りを感じたのだが、直後にようやくオーズドライバーを見つけた。だが、取りに行こうとしたオーズドライバーの傍にアンクが立ったのを目にした。

 場面は替わって街中。メズールを生き返らせんと必死のガメルによるテロは洒落にならなくなっていた。人だろうが、車だろうが触れるものは次々とセルメダル化し、バースに変身して突進を掛けたライドベンダーすら例外ではなかった………。
 一方、映司探索に向かおうとしていた里中の車の前には1人の男が立ちはだかった。驚く里中と男の足を映し、顔を見せないまま場面は移った。まあ前回予告を見ていればバレバレですけどね(苦笑)。

 そして海岸では映司とアンクが対峙していた。オーズドライバーを拾い上げたアンクに、ガメルが暴れているからとして、返還を要求する映司。勿論アンクは応じず、「その前に聞きたいことがある…。」と返したのだが、映司は左腕をグリード化させてアンクに突っかかった。それを右腕で受け止めたアンクは映司の変貌ぶりに、「正気か?」と問う。
 それに対して映司は、「体はともかく、正気だし、本気だよ。おかげでグリードのことももっと分かった。」として、映司はオーズドライバーを奪い返さんとし、アンクは取られまいとして映司を振り払い続けた。
 しばらくして映司は、「アンク。俺は…コアメダルを砕く!」と宣言。続けて「これ以上誰も完全復活も暴走もしないように!信吾さんを『メダルの器になんてさせない!」ともした。
 対するアンクは映司の決意を予想通りのものとし、「だから俺も覚悟を決めてきた。俺の必要なものの為に…邪魔なお前を潰すっ!」と言い放って火炎弾攻撃を仕掛けた。
 かくして両者は最初で最後の真剣勝負に身を投じた。殴り合い、つかみ合い、海中に取っ組み合い、生身の人間体が演じる迫真の一騎打ち。だがそんな戦いの中にも言葉が無い訳ではなかった。
 「お前の欲しいものって何だ!人間か!?」 (映司)
 「もっと単純だ!世界を確かに味わえるもの!生命だっ!グリードは生きてさえいない。ただのモノだ。そのくせ欲望だけは人間以上ときている。食っても見ても触っても絶対に満たされない欲望……それがどれ程のことかは…。」 (アンク)
 「わかるよ。ていうかわかった…それでも、やる!」 (映司)
 「はっ!自分はグリードになってから……。」 (アンク)
 ああ。」「 (映司)
 長く、五感すらない造られた「モノ」ではなく、「強靭で確かな存在」になることを欲し、泉刑事の体を介して中途半端に感じ、他のグリード達と接触する中、事ある毎にそれでも自分がグリードであることを思い知らされ、苛立ち、それでも諦めないアンクの本音全開主張だったが、それでも映司とて譲る訳にはいかない。
 かくして殴り合いが再開。それは『仮面ライダークウガ』のラストバトルにおけるクウガとン・ダグバ・ゼバの殴り合いもかくやというものであった。異なるのはその表情。五代雄介が泣きながら、ダグバが笑いながらだったのに対し、映司とアンクは必死の形相だった。映司は人間の存在を賭けて、アンクは己の存在を賭けて。
 「何が「分かった」だ、映司!お前は何も分かってない!グリードなら…何も欲しくないって顔すんな!」 (アンク)
 「お前は欲しがり過ぎるんだよ!生命が欲しいなら…人の生命も大切にしろ!」 (映司)
 「知るか!お前も何か欲しがってみろ!そうすりゃわかる!お前何か欲しいって思ったことあんのか!?あんのか映司!」 (アンク)
 そして胸倉を掴むアンクに映司は、内戦に巻き込まれた女児と、彼女を助けられなかった過去を思い浮かべながら、「俺は…俺は欲しかった。欲しかった筈なのに! 諦めて、蓋して、目の前の事だけを……どんなに遠くても届く俺の腕!力!もっと!もっと!もう叶ってた……お前から貰ってたんだ……一度も言ってなかった…アンク…『ありがとう』!」

 この映司の本音を突き付けられたアンクは一気に戦意を削がれた。前にも触れたが映司の欲望は小さくない。常識の桝で測れないほど桁違いに大きい。映司は映司でちゃんと欲望を持っていた。それはより遠く、より多くの人の命を助けることが出来る力。OOOとなったことでヤミーやグリードに襲われる人々を救ってきた日々。それはアンクがくれた物だった。
 どんなに戦いで傷つこうと、どんなにメダルの力に狂わされそうになろうと、どんなに異形の体に変じようと、自分より世界を優先し、無欲に見えた映司の欲望は常に映司自身としてその胸中に在った。
 かつて受けた大いなる挫折から立ち直る一歩はアンクがくれていた。だが身近過ぎて気付かないのはままあること。そんな映司から出た、意外極まりない『御礼の言葉』にアンクは様々な感情がない交ぜになった顔で映司の顔を見つめる他なかった。

 場面は戻って街中。単身ガメルと戦うバースだったが、完全体の例に漏れずガメルは強かった。何せメズールのことで愚直さが増しているので、戦闘テクニックを無視するほどパワーも桁違いで、バースはイチかバチかで、最大出力を至近距離でぶっぱなすという相討ち覚悟の特攻に出ようとしていた。
 だが、覚悟を決めたバースがガメルの前に立ったその時、両者の側面からバースバスターによる銃撃がガメルに加えられた。驚いたバースが振り向いたその場に立っていたのは伊達明!
 「後藤ちゃん!そんな捨て身の戦法、教えた覚えないけど?」と言いながらにんまり笑う伊達。どうやら手術は無事終わったようだ。そして「伊達明、リターン!」とカッコつけながら(笑)、伊達はバース・プロトに変身。鴻上会長の言っていた「助けとなる手段」はWバースのことだったのね(笑)。
 だが2対1に立っても完全体ガメルは強く、殴り合いでは優位に立てず、伊達は前言を撤回して、後藤の戦法を提唱。「教えた覚えはなかったんじゃないですか?」と皮肉る後藤にチョット照れながら「邪魔してゴメン。」を詫びる伊達。うん、名(迷)コンビの復活だな(笑)。ともあれWバースは至近距離からのブレストキャノンを同時発射!ガメルはそれにすら耐えたかに見えたが、その時になって冒頭でDr.真木に受けた一撃が祟り、苦しみ出すと地面に倒れ伏した。
 そしてその期に及んでも尚、ガメルが想ったのはメズールのこと。懐から零れ落ちた青いコアメダルに飴を差し出し、そこにメズールが礼を言っている幻影を見るガメル。そしてセルメダルの塊と化したガメルからは彼のコアメダルも零れ落ち、2枚のコアメダルは共に木っ端微塵に砕け散ったのだった………。最後の最後まで純心なグリードの最期だった。
 変身を解いた後藤と伊達が勝利を讃えあったが、直後、プテラカンドロイドがコアメダルを回収して飛び去ってしまったのだった。

 場面は戻って、映司とアンクの対峙する海岸。両者の格闘の場にDr.真木が現れ、映司に紫コアメダルを投入した。映司は苦しみ出し、Dr.真木をどういうつもりかと詰問するアンクだが、勿論Dr.真木がまともに回答する筈がない。そうこうする内に映司はOOOに変身。アンクの隙を突いて奪ったタカメダルを用い、コンボによる変身を遂げたのだったが、その複眼は紫色だった………。
 そして初期のプトティラコンボ発動時同様、バーサークしたOOOはアンクをボコボコに。そしてDr.真木が更に紫コアメダルを投入すると映司はDr.真木がグリード化した恐竜グリードと同形異色の映司グリードとなったのだった………。
 かくなる上は、とばかりにアンクもその全身をグリード体に変えて対峙。両者は波動の様な物を発し、ぶつけ合ったところで以下次週へ!


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平成二七(2015)年一一月二二日 最終更新