仮面ライダーOOO全話解説

第47話 赤いヒビと満足と映司の器

監督:田崎竜太
脚本:小林靖子
 話は完全に前回の続きから。グリード体で殴り合う映司グリードとアンク。時折人間体で戦う姿をダブらせるところは前話とは違う形での、クウガ対ン・ダグバ・ゼバの再来。
 劣勢に立たされたアンクはDr.真木に、紫メダルを欲しがる彼が何故に映司に紫メダルを投入したかを詰問。Dr.真木の答えは、映司が渡そうとしないので、「いっそ暴走させてしまえば抵抗しなくなるかと。」という考えによるもの。
 何ともドクターらしくない滅茶苦茶な暴論だが、映司は紫メダルに翻弄されながらも必死に自分の欲望に向き合おうとしていた。そして映司グリードはOOO・プトティラコンボに変身。
 メダガブリューの斬撃を食らい、更なる劣勢に立たされたアンクに、Dr.真木は殺るならさっさと殺れと促す。アンクは「お前に言われるまでもない!こいつは俺が倒す!命を手に入れる為に!」と自分の為の戦いであることを力説。だが渾身の力を込めて放った火球は、前話にて映司に言われた「アンク、ありがとう。」の台詞が脳裏をよぎったことで軌道を外してしまった。
 そんな自分に驚くアンク。映司と出逢った日から今日に至るまでを回想しながら、「何が『ありがとう』だ!」、「渡すんじゃなかった!こんな奴に…!」といった想いを口にしながら、両者のバトルはコマ送りで展開された。
 そして「映司!力が欲しいなら…この程度で暴走してんなっ!」と叫ぶと、強烈な一撃をOOOのドテッ腹に決め、OOOの体からはコアメダルが零れて変身が解除された。

 変身解除された映司は体こそ元の火野映司状態だったが、明らかに様子がおかしかった。Dr.真木に殺害を促されたアンクが近寄ると、映司はアンクに「何でここに…?」、「そうだ忘れてた…約束のアイス一年分…はい今日の分。」と語り掛けるのだが、渡すのはパンツに包まれた小銭(←金が欲しくても、受け取るのに抵抗のある出所だ(苦笑))。
 そんな映司にとどめを刺そうとグリード化した右腕を振り上げたDr.真木だったが、それをアンクが止めた。何故止めるのかはアンクにも分からなかったが、迷いは無かった。そして手から火球が発せられると、それは人形に引火。
 勿論Dr.真木はパニックを起こし、人形を海に投げ入れて消化し、泳げないのにその人形を追って海に飛び込むのだから、その慌てぶりは相変わらず(笑)。
 これに安堵したかのようにアンクは立ち去り、映司は駆け付けた里中によって、財団に保護された。

 このことは後藤に知らされ、伊達も一息つきたいとしながらも、数々の状況を考えるとそうも言ってられないと認識。「世界の終末」を防ぐ為、Dr.真木の手掛かりとなりそうな場を色々話し、一先ず研究所に戻る後藤の迷いなき姿に「お父さん嬉しい!」と叫ぶ伊達だった。「お父さん」だったのか???

 場面は替わってクスクシエ。そこでは知世子さんが比奈からすべてを聞かされていた。「すぐには信じられないですよね。」と呟いた比奈だったが、知世子さんはあっさり信用(笑)。
 世界中を旅してきた知世子さんんは「不思議なことなんて世界にはいっくらでもあるもの。メダルのお化けを信じるぐらい屁でもない。」とのこと。「屁でもない。」って、知世子さん………(苦笑)。
 ともあれ、知世子さんに言わせると、信じられないのは比奈ちゃんの方で、「アンクと兄」、「映司とアンク」といったいずれが戻るかの選択を認めては駄目だ、とした。
 そんな都合のいいことばかり考えても映司を苦しめるだけではないか……と思ってしまう比奈だったが、それに対して知世子さんは、「正しいのかもしれないけど…でもそんなのつまんない。もっと欲張っていいじゃない。映司君も、アンクちゃんも、お兄さんもって、ちゃんと欲張れるのは比奈ちゃんだけよ。」とした。
 意外なところに欲望に対する答えがあったものだ。こりゃ、早い内に知世子さんにすべての事情を話しておくべきだったような気がする(笑)。実現が困難でも、理想を高く持つことは悪いことではないのである。それでなくても人間は望んだ以上のことを達成することは極めて稀なのだから。

 場面は替わってとある森林。何故に映司のコアメダルを奪わなかったのか、と自分に疑問を感じていたアンクに、落ち着きを取り戻したDr.真木が近づいて来た。目的は決別宣言とメダルの強奪。Dr.真木はアンクを「人間に近づき過ぎました」とし、アンクが「俺は相変わらずメダルの塊…」としたのにも耳を傾けず、「君をメダルの器にするのは中止です!」と告げると、恐竜グリードに変身して襲い掛かって来た!
 アンクもグリード体になってこれに応戦。だがドテッ腹に強烈な一撃を食らい、コアメダルを奪われた上、肝心要の赤コアメダル=タカメダルにヒビを入れられてしまった!勿論カザリメズールガメルの例を持ち出すまでもなく、これはグリードにとって致命傷。
 これ以上の攻撃は不要と見たか、Dr.真木はアンクを「他のグリードよりはマシと思っていましたが…買いかぶりだったようですね。」と告げて立ち去った。そして致命傷を受けて大木にもたれるアンクは、自らを嘲笑し、「全くだな…しかも馬鹿馬鹿しいのは…さっきからずっと…満足してるってことだ…。」と、これまで素直にならなかった自分の本音を吐露したのだった………。

 場面は替わって鴻上ファウンデーション。会長室で伊達と後藤は映司が保管庫にいることを里中から知らされた。しかも立ち入り禁止で扉はロックされているという。鴻上会長の真意を測りかねる2人に自分の業務時間は終了とばかりに帰ろうとする里中。
 視聴者と伊達が相変わらずの割り切り女だと思っていたら、里中はさも思い出した様に後藤に保管庫のカードキーを渡した。会長秘書から会長秘書補佐に預けるとのことだが、それを使えと無言で行っているのは明白。そして今度こそ本当に帰る里中の後姿に「素敵!」と叫ぶ伊達。もしかして弾丸摘出手術時に脳の一部に傷でも入ったか?(苦笑)

 場面は戻って、最前アンクとDr.真木が決別した森林。そこにタカカンドロイドの探査からアンクを発見した比奈がやって来た。一目見て何がしかのダメージを受けているのは一目瞭然で、容態を尋ねる比奈に、「この身体なら何ともないから安心しろ。」と返すアンク。
 だが、「もう一度話したくて。」としてアンクを探しに来ていた比奈は 「アンクのこと聞いたんだけど。」と尋ね直す。結局アンクが答えたのは、泉刑事の体がもうすぐ不要になるから帰すことになる、と言う要点をはぐらかした答え。だがアンクは気付いていない。比奈が兄とアンクの両方を助けたいという「欲張り」になっていることを。

 場面は替わって鴻上ファウンデーション地下の保管庫。伊達と後藤がカードキーで入ると、勿論保管庫は「王の部屋」にされていた場所で、玉座には映司が鎮座していた。そして入室した2人を鴻上会長は「招かれざる客」としながらも、「火野君を説得してもらうにはいいかも知れないね。」とした。
 何の説得なのかと訝しがる伊達と後藤に、映司と鴻上会長は映司が「自分の欲」に気付いたと告げた。それは「力」、それも「どんな場所にも、どんな人にも届く俺の手」だという。
 紫の瞳を光らせてそう告げる映司は先の戦いでどこか変節した様にも見える。そんな映司に鴻上会長は「手に入るとも!君が素晴らしく巨大な器に…欲望の結晶!その無限のセルメダルを飲み込みたまえ! 欲望こそ生命の源!欲望は生命の進化を起こす!君は全く新しい進化を果たす…真のOOOとして、800年前に成し得なかった神に等しい力を手に入れる!」と激励とも、焚き付けとも取れるシャウトともに膨大な量のセルメダルを提示した。
 これだけを聞けば鴻上会長が映司の何に不満なのか分からないところだが、問題は力を欲する映司が、鴻上会長の敵視する紫のメダルをどうしても離そうとしないこと。半ば泣きそうな顔で「このままじゃ真のOOOどころか、真のグリードだよ。」と嘆いた。つまるところ、伊達と後藤に説得して欲しいのは紫コアメダルの放棄だった。

 だが伊達も後藤も即答で拒絶した。伊達は「ふざけるな!真のOOOも、真のグリードも願い下げだ!」とし、後藤は映司にセルメダルを相手にせず戻ることを促した。だが後藤が指摘した様に明らかに映司はおかしくなっていた。セルメダルに恍惚の表情を向け続ける映司だった。
 しかし次の瞬間、映司はDr.真木の気配を感じ、保管庫を飛び出した。近くのセルメダルより、遠くの紫コアメダルと言ったところだろうか?そして紫コアメダルは行き先のDr.真木も欲していた。
 かくして映司とDr.真木が対峙。互いに相手のメダルを自分が取ると宣言し、映司はOOO・プトティラコンボに、Dr.真木は恐竜グリードに変身し、伊達と後藤が追ってきたときには激しい一騎打ちが展開されていた。本来なら三位一体で恐竜グリードを追い込むところだが、OOOはWバースを無視すると言おうか、邪魔者にすると言おうか、とにかく戦うなと言う意見も聞かず、共闘もしなかった。
 一方でこれまでグリード達すら背後で糸引いて来た成果か、伊達が言うところの「随分変わっちまって」しまった恐竜グリードはトリプルライダーを相手にしても引けを取らなかった。

 そして背後から恐竜グリードの紫色波動を受けたOOOは意を決し、映司グリードと化した。恐竜グリードはその姿を見て、「完全な暴走も時間の問題。」とした。その台詞が示すように、僅かながら理性を残していた映司グリードは、「メダルを博士に渡せ!」と叫ぶ後藤バースに「世界の終末」を阻止することを優先する旨を告げた。
 勿論これに納得するWバースではない。力にこだわる映司グリードに伊達バースは「馬鹿野郎!その手見てみろ!そんな手で何掴むっつーんだ!何を守る?どこに届く!?」と怒鳴り付けた。後藤バースも「何でも一人でやろうとするなっ!火野!」と続けた。
 それでも聞こうとしない映司グリードと、彼を取り押さえようとするWバース。そんな彼等を蔑視しつつ、恐竜バースはDr.真木の姿に戻ると、背後にいる者に向かって、こそこそせず行動を起こせ、といいながらバッタのコアメダルを示した。
 勿論、背後にいたのはウヴァ(←と言うか、コイツしか残っていない)。自分が完全体になるための最後の1枚を持っていたDr.真木に激昂するウヴァだったが、Dr.真木がメダルを投げるとしっかりそれをキャッチ&吸収(苦笑)。
 まあ他のグリード達が見せた完全体の強さを考えれば何をおいても最後の1枚を優先する気持ちは充分理解出来る。ともあれウヴァは完全体となり、800年振りに取り戻した真の力が漲るのに打ち震えると、トリプルライダーに向けて放電攻撃の乱射を敢行。Dr.真木は前線を退き、今や最後の「メダルの器」候補となったウヴァの戦いへの観戦モードに入った。

 Wバースとともにぶっ飛ばされた映司グリードプトティラコンボに姿を変じ、メダガブリューによる斬撃をウヴァに浴びせた。だが完全体のウヴァはそれを避けもせず、平然と受け止め、その膂力を見せつけた。そしてウヴァはWバースに更なる電撃を放ち、接近戦でも2人掛かりを遥かに凌駕。それを見ていたOOOはやはり力が必要と考え、最前の鴻上会長の台詞を思い出し、戦線を離脱して、映司の姿に戻って、保管庫に走った。

 場面は替わって先程の森林。そこで比奈はアンクの置かれた状況を聞かされた。タカメダルが半壊状態で、全壊すればアンクは消えることになる。それを「死」と捉える比奈は狼狽するが、アンクは「メダルの塊」と自認する自分が「死ぬ」と評されたことを密かに喜び、薄ら笑いを浮かべると、比奈に「行くぞ。」と告げた。
「どこに?」と尋ねる比奈への回答は映司の元。「俺がついてないと相当ヤバイだろ。あの使える馬鹿は。」とのことだった。最初で最後の真剣勝負を終えたアンクと映司に残されたのはこれまで重ねて来た共闘だった。

 そして保管庫では、セルメダルを欲する映司に、「これほどまでに欲望を解放するとは…。」とほくそ笑んだ鴻上会長が「好きにしたまえ!」と告げた。そして膨大な量のセルメダルに歩みを進める映司。果たして如何なる道を行くのかという疑問を秘め、話はついに次週、最終話へ!


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平成二七(2015)年一一月二二日 最終更新