仮面ライダーOOO全話解説

第6話 お洋服と契約と最強コンボ

監督:金田治
脚本:小林靖子
 前回の「3つの出来事」は「1つ、鴻上ファウンデーション会長が映司とアンクに接触。2つ、ヤミーの卵が密かに成長を続ける。そして3つ、OOOはウヴァのコアメダルを3枚揃え…。」というものだった。

 前回、OOOとアンクにコアメダルを奪われたウヴァは怒り心頭で「貴様まさか自分以外のコアメダルもすべて集めるつもりか?」と詰問した。それに対し、アンクが涼しい顔で吐いた台詞は「俺達の名はグリード!欲望だ!欲しがらなくてどうする?」だった。
 悔しがりつつも、自分達の存在の根源となる台詞自体には納得した様で、ウヴァは「俺もせいぜい欲しがるとするか。コアメダル必ず取り返すぞ。」との捨て台詞を残して撤退した。
 何故にアンクがここまでメダルを欲しがるのか映司にも気になったが、アンクの答えは「欲しがることに理由なんてあるか。お前がパンツを欲しがるのと一緒だ。」とのことで、どうも本能的なものの様だ。またアンクは手にしたコアメダルの種類が増えたことで、「メダルの本当の力が見られるかもな。」とした。まあ組合せが増えるということでしょう。
 更にアンクは映司にメダルを3枚貸与した。いざという時変身出来ないことのやばさを今回のウヴァの襲撃で悟ったようである。そして映司にメダルを託したアンクは鴻上ファウンデーションへと向かった。目的は獲得したメダルの70%を納めずして装備は利用出来るようにする為の交渉だった。
 映司はアンクが手荒な手段に訴えないか不安がったが、果たしてどうなるか?

 一方、アジト(というか溜まり場)に逃走したウヴァカザリを尋問したが、カザリはアンクこそ嘘をついている、と惚け倒した。ウヴァは納得した訳ではなかったが、アンクは前々から信用ならない存在だったようで、ウヴァもそういわれてはそのまま力押しには出来ず、メズールの、セルメダルを大量に手に入れるからまずは山分けにしようという仲裁に一先ず矛を収めた。

 場面は替わって、山野遥の部屋。経済状況の急転悪化に困惑し、(おそらくは家賃が高いであろう)今の部屋に住めず、買い物も出来なくなった自分を想像しては、より一層狼狽えた。
 そのマンションの外ではアンクが去ったのと入れ違いに後藤がやって来た。タブレットの生中継でマンションの2805号室・山野遥の部屋がヤミーの巣と化していることを告げた。後藤もまた鴻上会長同様、自分達の協力を受け入れるよう映司に促したが、その理由は「アンク…だったか?あんなグリード一匹押さえ込めなくて世界が救えるか。」という手厳しいもの。不愛想で取っ付き難いキャラだが、後藤慎太郎という漢(おとこ)、理想は大きいようだ。
 その直後、マンション1Fのエレベーター前では比奈と山野が鉢合わせていた。前回の父娘の電話のやり取りを目の当たりにして心配せずにはいられなかった比奈だったが、実際山野のような人間はこの手の同情を凄く嫌う。
 案の定、「大きなお世話。」といい、丸で境遇の変化を否定するように「これから買い物に行く。」と問われないことまで告げる。
 普通なら経済状況の急転悪化に対し、財布の紐を固くしければならないところに掛かる台詞が出て、驚く比奈に、「私が自分よりランクが下になったからって同情してるワケ?悪いけど全然そんなんじゃないから!ホラお金だってまだあるし!放っておいて!」とヒネクレ思考に陥り、財布から10枚前後の万札を鷲掴みにして取り出し、比奈に見せつけた。ま、気持ちは分からんでもないが、チョット僻みっぽ過ぎる。
 そこへ映司が駆け付け、落ち着くよう諭そうとしたのだが、唐突に「君の部屋、2805号室…何か変なモノあるよね?怪物の巣とか…。」などというものだから、すっかり怪しまれてしまった(苦笑)。素で考えて、いきなり「君の部屋、変なの物有るよね?」と言われて「Да(Yes)」と答える奴がいたら御目にかかりたい(苦笑)。
 業を煮やした山野は札を比奈に投げ付けるとエレベーターに駆け戻り、尚も彼女を止めようとして、エレベーターの扉を持ち前の怪力でこじ開けた比奈だったが、却って山野をビビらせ、「化け物ってアンタじゃないの?」と言われ、手を放してしまった。乙女心とは複雑なりき、と言ったところだろうか?
 そして部屋に戻るや自暴自棄となった山野はネットショッピングのボタンを押しまくるのだった…………。

 その頃、ため息混じりにエントランスに戻った比奈は映司が万札を拾い集めるのを見て少し幻滅していた。映司の行動が「人」よりも「金」を優先している様に見えたからである。
 だが映司が金を集めていたのは、それが山野の求めるものだから、と返した。そしてここから本作のテーマの1つである「欲望」に対する火野映司なりの論評が展開された。
 「俺、世界中を旅して回ったけど…。何も欲しがってない人なんていなかった。そう思うことが生きるのに必要な国もあったし。だから欲しいって思うことは悪いことじゃない。それはいいんじゃないかなって思う。大切なのはその欲しいって気持ちをどうするか、かも。」と述べると、金は彼女に返すように、と比奈に託された。
 欲しいと思うことは悪ではない。大切なのはその気持ちをどうするか。比奈もどうやらそんな映司の言葉に心を動かされたようだった。

 だがその頃、2805号室では、経済状態も無視した山野の欲望を知って、ピラニアヤミーが生み出されてしまった。その姿は決して大きくなく、むしろ小型なのだが、本物のピラニア宜しく、大量に発生した。
 それらは窓ガラスをブチ破り、わらわらとマンションの外壁を降りてくる有様で、比奈の眼前でOOOに変身した映司はとりあえず山野を部屋から救出した。第5話目にして正体が知られるヒーローも珍しい(笑)。案の定、「火野さんですよね?」と問われ、しかもあっさり肯定していた(笑)。
 怯える彼女を比奈に任せ、自分はピラニアヤミーの迎撃に出た。だが問題はやはり数。「まずはバイクで蹴散らそう!」と考えたOOOだったが、そうは問屋が卸さなかった。自販機が反応しないのであった。

 この動きと並行して、鴻上ファウンデーション会長室ではアンクと鴻上会長の交渉が行われていた。OOOがメダルを投入したにも関わらずバイク化しないのも、理由は鴻上会長とアンクの交渉が成立していないことにあった。
 鴻上会長はともにメダルを求める者同士の「Give & Take。どこに問題がある?」との論を口にしたが、アンクは「俺はTakeは好きだが、Giveは嫌いだ。」と分かり易過ぎる自己中を主張(笑)。
 映司が懸念したように、アンクは暴力でもって、メダルを1枚として鴻上ファウンデーションに渡さず、同社の装備だけを利用せんと考えたが、鴻上会長は余裕の表情を崩さず、「残念ながらそれは不可能なのだよ。」と告げて、後藤から送られたOOOの現状映像を見せた。
 そこには前述した様に、メダルを投入したのに、自販機が反応せず、バイクに変形しないのを焦りながら、叩いたり、大声で呼びかけたり、自販機のまま跨るOOOの姿があった。そしてアンクはそれが鴻上会長の仕業であることを悟った。鴻上会長曰く、「私の意志だ。すべてのメダルシステムは私の意志によって制御されている。もし私を殺せば、その瞬間に鉄クズだよ?」とのこと。
 如何なるメカニズムかまでは分からないが、いずれにせよ鴻上会長の同意なくして同社の装備は利用出来ないということだろう。勿論アンクも鴻上会長を殺す訳にはいかないのを遠回しに思い知らされたのである。
 切歯扼腕するアンクは渋々交渉に入り、「40%だ!70%も渡せるか!」としたが、鴻上会長の答えは、「70だ。」で、「50!」という譲歩に対しても「70。」、と丸でピエール西川口に全く譲らなかった両津勘吉を見ているようだった(笑)
 だが両さんと少しは違う様で、アンクが絞り出すように、「60だ!これ以上はない!」とすると、ようやく譲歩に応じ、「ハッピバースデー!私達の契約!」と了承した。
 そして契約を記念するべく鴻上会長が机の上にあったケーキの箱を開けると、そこには「Happy Birthday 60%」とチョコでデコレートされてあった。つまり鴻上会長は端から交渉結果が六公四民になることを読んでいたのである。
 掌の上で踊らされていたことを悟り、更に切歯扼腕するアンク。さすがに大企業・鴻上ファウンデーションを牽引するだけあって、交渉力には長けているようだ。ただの騒がしいだけの親父じゃなかったのね(笑)。

 ともあれ、ようやくにしてOOOは(事情も知らないまま)ライドベンダーの使用が可能となった。その絡繰りは後藤によるリモコン操作で、鴻上会長の「私の意志で制御されている。」という言葉は一種のブラフ(はったり)だった訳だ。これは交渉においてアンクの完全敗北であった。もっとも、映司もアンクもこの絡繰りは目にしていないのだが。
 いずれにせよ、戦いが始まり、比奈に介抱されていた山野はピラニアヤミーが「人間の欲望から生まれる怪物」と教えられ、「私…あんなものに縋ってたの…?」と自らの欲望を恥じた。
 つまるところ、山野の実家は金こそあれど、セレブには遠く及ばない田舎っぺ金持ちだったとのことで、東京で暮らしていくにはイマイチ自信が持てず、豪華な服で着飾ることでそれを誤魔化していたという。だが量的にあれだけの高価な服が必要とは思えず、やはり数を多く手にすることで精神のバランスを取っていたのだろう。
 そして比奈は自分も同じだから、山野が気になっていた、という推測を口にした。もっとも両者では「頼る対象」が異なっていた訳だが。
 そして比奈は山野に「でももう頼ってるだけじゃダメなんだよ。自分がちゃんとしないと。」と告げ、山野もこれに頷いた。

 その間もOOOとピラニアヤミーの戦いは続いていたが、やはりライドベンダーを駆使して尚、数の前に「キリがなさすぎるよ。」という状態にあった。駆け付けたアンクにOOOは「例の緑の3枚揃い…コンボってやつ、どうなんだ?」と尋ねると、アンクから返ってきたのは「半端じゃない力だ。お前の身体がタダじゃ済まないかもな。」というものだった。
 少し逡巡したOOOだったが、「そっか。じゃあやってみようか。」となり、アンクは「吹っ飛ばされてメダルを無くすなよ。」とした。
 かくして、3枚の緑メダル1色による、クワガタカマキリバッタの、ガタキリバコンボが初登場となり、多段変身と同時に危険な騒音空間が発生し、緑の閃光がほとばしり、絶叫するOOOはさながら仮面ライダーギルスの様だった。
 そして数千匹のピラニアヤミーの突撃したOOOは忽ち何十体にも増殖した!「ドラゴンボール」の残像拳でもなく、『魁!男塾』で卍丸が駆使した魍魎拳幻暝分身剥でもなく、本当の増殖分裂で、設定によると50体にまでなれるとのことである。
 多数に多数で対抗出来るようになると絶対数では圧倒的に有利なピラニアヤミーでも1対1の力関係から、OOOの敵ではなくなってしまった。形勢不利とみたヤミーは一箇所に集合し巨大な魚の怪物に変化し、光線を放ったりもしたが、ガタキリバ軍団による一斉ライダーキックの前に、体内を散々に切り裂かれ、撃破された。
 勝利後、元の1人に戻れたことに安心した様に映司は気を失った。戦闘中は問題ないように見えたが、やはり1人が50人になるということは心身にかなりの無理を強いているようだった。

 そしてラストシーン。専門学校近くのパン屋でアルバイトを始めた山野は、何かが吹っ切れたように表情も明るくなり、同じ学校の仲間もパン屋に通う中、すっかり打ち解けたようで、それに伴うかのように比奈の表情も明るくなったことを映司が満足そうに眺めていた


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平成三〇(2018)年八月七日 最終更新