仮面ライダーW全話解説

第12話 復讐のV / 怨念獣

監督:諸田敏
脚本:長谷川圭一
 姉の復讐の為に黒い車で轢いた相手を謎のウイルス感染で殺害していた山村康平はドーパントではなかった。驚くWの前に現れたバイラス・ドーパントは一瞬の隙を突いて黒須も殺害されてしまった(全く同情しないが)。
 即座にバイラス・ドーパントに攻撃を仕掛けたWだったが、何故か翔太郎は動きに精彩がなく、逃がしてしまった。訝しがるフィリップに翔太郎が答えたのは、またも「泣いている気がする」という不可解なものだった。

 事務所にて翔太郎、フィリップ、亜樹子の3人は改めて今回の事件を整理。康平がバイラス・ドーパントでなかったとなると、黒須達を殺害する動機がある人物と言えば湯島則之しか考えられなかった。まあ他にいたとしても幸に関連する登場人物がこの時点ではもう湯島しかいなかった訳だが(苦笑)。
 早速、翔太郎は彼の務める美術教室=彼のアトリエに向かったのだが、なんとそこでは湯島がバイラス・ドーパントに襲われていた!慌ててWに変身して殺害を阻止したが、気付けばバイラス・ドーパントにも、湯島にも逃げられていた。
 いずれにせよ、幸の復讐に黒須達を襲うのに加担していた筈のバイラス・ドーパントが湯島を襲っていたのは極めて不可解だった。捜査は振り出しというフィリップに対し、翔太郎はバイラスのメモリを買い、黒須達に一番復讐したいと思う人物を考察するのだが、亜樹子の「それってやっぱひき逃げされた本人じゃない?」という一見意外な台詞が事件を急速に解決に向かわせた。

 普通に考えるなら、事故以来意識不明の重体である幸が黒須達を襲えるとは思えない。だが亜樹子の推理に思うところを感じたフィリップは即座に幸の病室に急行し、ベッドに眠る幸の布団をめくりあげた………って、おいおいフィリップ、まだ容疑が確定していない段階で妙齢の女性の布団をめくり上げるなんて羨ましいマネしちゃいかんよ………。
 果たして幸のその腕にはメモリを差す為の生体コネクタが見つかった!

 幸がバイラス・ドーパントであることははっきりしたが、それでも意識不明でコネクタを自分で差せるとは思えない幸がどうして黒須達を襲えるのか?
 その謎については、丸で視聴者の為にフィリップの代弁を務める様に(笑)、霧彦が説明してくれた(もっとも、説明している相手は冴子だったが)。
 前の週、自分に伝えることもなく妻と義父がオペラに行っていたことに愕然としていた霧彦は、名誉挽回の為に冴子を喜ばせることに必死らしく(笑)、その―根津から聞いた―説明によると、幸は轢き逃げされる直前、身を守ろうとしたのか咄嗟にバイラスのメモリを使い、体内にメモリが埋まった状態で昏睡状態となった彼女の怒りや怨念や憎しみの感情が肉体から抜け出し、精神のみのドーパントとなったとのことだった。
 霧彦はこの流れを「これまでのメモリの常識を覆すドーパントの誕生」として、これらのデータが「夫婦の強力な切り札」になるとして喜びを露わにしたが、冴子に表情はなかった。

 場面が替って、再度幸の病室。
 彼女が自分の婚約者だった湯島まで襲ったことを解せない一行だったが、翔太郎は幸が殺人の罪を重ねることを阻止する為に湯島を探しに病室を飛び出し、フィリップは彼女を説得する為、「メモリの力で特殊な状態にある彼女の精神を、地球の本棚に呼び出してみる」と宣言。
 そんなこと出来るのか?と突っ込みたくなったが、初めての試みで、「やってみなければわからない。」とのことだったので、辛うじてご都合主義ではないな(苦笑)。
 試みは成功し、地球の本棚にて幸の心とコンタクト出来たフィリップ。そこに現れたのは髪バサバサでボロボロのワンピース、全身に痣だらけという事故当時の姿をした山村幸だった。
 フィリップは「君を心から救いたいと奔走している男」(要するに翔太郎)の「代理人」として幸に湯島襲撃の理由を尋ねた。

 その頃、翔太郎は学生情報通のクイーンとエリザベスから、湯島の実態が結婚詐欺までするスケコマシ野郎であったことを知った。
 フィリップの方でも幸の心から、自分が湯島に騙されていたことを知り、復讐のためにバイラスのメモリを買っていたことが分かった。購入時の動機的には「湯島を少しだけ懲らしめてやるつもり」だったのだが、復讐を思い留まり、弟・康平と2人でやり直そうと思い直した矢先に事故に遭って、心が化け物と化していたとのことだった。
 それを聞いて、「代理人」ながら、「君はメモリの力に飲み込まれている。これ以上罪を重ねてはいけない。」と必死に説得するフィリップ。この辺りはさすがに主題歌通り「最高のパートナー」である。
 だが、幸は「貴方達の気持ちは嬉しかったけど」と人間らしい心を垣間見せたが、それでももはや憎しみしか残っていない、と告げて説得を拒み、フィリップは地球の本棚から弾き飛ばされた。

 そして湯島はバイラス・ドーパントから逃れる為に愛人のマンションに潜伏しようとしていた。そこにバイラス・ドーパントが現れ、遅れて翔太郎も到着した。
 逃げ惑う湯島に、翔太郎は湯島の不道徳が幸を化け物にしたことを告げ、幸への謝罪を促した。だが湯島から帰ってきた答えは、「ふ、ふざけるな!俺は関係ない!」という下衆野郎のものだった……。う〜ん、放映当初は「分からず屋な女」が多かった本作だが、この2週は「最低な屑野郎」が度を越し、気分が良くない……。
 幸も説得出来ず、湯島が謝罪する可能性が皆無と合っては、両者が改心して止まることは期待出来ない。だが翔太郎が、「止めてやるよ…この俺が」と宣言すれば、フィリップが「それを言うなら俺”達”が、だろ?」と軽く訂正して2人はWに変身。さすがにこれはカッコいい。
 やはり「悪党の命を守る」ことに意見の相違はあっても、「これ以上罪を重ねさせない」という意見に相違は無かった訳だ。

 場面は再度替って園咲邸。先程霧彦が示した展望に対し、冴子は精神エネルギーのみのドーパントは肉体が変化したものに比べて能力が著しく劣化すること知っていて、夫が告げた程度のことは研究済みゆえ、霧彦の名誉挽回はならないことを冷たく告げた。

 またも場面は戻って、戦闘場面に。既に憎しみで増加したガイアメモリの力に支配された幸が自分の意思では自分をコントロール出来ない、とフィリップは分析。そこでトリガーマキシマムドライブを発動し、トリガー・エクスプロージョンなる技にて銃口から凄まじい威力で浴びせられた火炎放射がバイラス・ドーパントを焼き払った。
 精神エネルギーのドーパントなせいか、大爆発は起こらず、消滅した。これしか彼女を救う方法がなかったことに苦い思いで唇を噛む翔太郎とフィリップの横で「ハハッ!やった!やったぞ助かった!跡形もなく焼け死んだ!ざまあ見ろ化物!アンタすげえな!誰だか知らんがありがとう!」とはしゃぐ湯島。黒須となんら変わらんな、この男も……。
 だが変身を解除した翔太郎は湯島を殴り飛ばし、いつもはドーパント相手に言う「お前の罪を数えろ」の台詞を放った。呆然とする湯島に、「お前を殴ったのは俺の拳じゃない…幸さんの心だ」と告げた。

 ラストでタイプライターを打つ翔太郎は、今も病室で眠り続けている幸がいつか必ず彼女が目覚め、その時、そこには彼女を待っていてくれた(弟・康平の)優しい笑顔があることを信じている、と締め括った。


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平成三〇(2018)年六月八日 最終更新