仮面ライダーＷ全話解説
第13話 レディオでQ / 狙われたプリンセス
監督：石田秀範
脚本：長谷川圭一
突然、若菜に一人の中年男・火野(三島ゆたか)が結婚を申し込んできたところから話は始まった。
自分を冴子の婿となった霧彦よりも優秀な男と自負するが、勿論若菜は強烈に拒絶した。その拒絶振りが可愛さ余って憎さ百倍となったのか、「お高く止まりやがって…。」と態度を豹変させるやマスカレイド・ドーパントに変身し、若菜に襲いかかった。
だが、このマスカレイド・ドーパントは後々量産型であることが分かる。当然クレイドール・ドーパントに変身した若菜に敵う筈なく、火炎弾一発であっさり返り討ちに遭った。
裏でそんな暴力が日常化している若菜だが、表の顔は相変わらずの人気タレントで、「園咲若菜のヒーリングプリンセス」ではデビューシングル『ナチュラリー』を流し、鳴海探偵事務所でも翔太郎とフィリップが並んで歌いながら(しかも振り付き！)で聴き入っていた。
だがそんな番組中、リスナーからの生電話に若菜が答えるコーナーで、異変が起きた。「Mr.クエスチョン」と名乗る謎の人物（←『ハイスクール奇面組』に出て来た覆面レスラーではない）が妙な質問をぶつけて来る。訝しながらも若菜が好きな数字を「7」と答えると、その途端に直後ラジオ局の目の前にある、風力発電用の巨大風車が「7」の形にへし曲げられてしまった！
ラジオの生本番中に起きた突然の大惨事に、ラジオ局にはマスコミが殺到。この様な時、何故か実行犯よりも巻き込まれた有名人の方がある種の責めに遭うのは現実もフィクションも変わらないらしい。
質問責めに遭う若菜を見かね、番組の先輩DJである佐伯素子(中丸シオン)が助け舟を出し、マスコミに質問なら自分にするよう告げた。素子曰く、「以前私の番組にも同じような電話がありましたから」とのことだった。
姉貴分的な存在と思しき素子はマスコミの注意を引きつけると、若菜にアイコンタクトで立ち去る様合図した。
ガレージで人目が無くなると、若菜はいつもの裏表の激しさを見せ、マスコミをシャットアウト出来てなかったマネージャーの上尾強(三好博道)を鞄で殴り付けた。そこへ若菜を心配して駆けつけた翔太郎が到着。
以前に笑顔で名刺を受け取ってもらっていることもあってか、（その名刺が即行で破かれてゴミ箱行きになったとも知らず―笑）馴々しく近づいたが、返って来たのは例の舌打ちと、「探偵なんて呼んだ覚えないわ。目障りよ」との邪険な拒絶反応。
カッコつけながらやって来た目的を告げようとするが、裏の激しい若菜の対応を受け、激しくショックを受け、肩を落として事務所へ戻った翔太郎だった。
憧れの若菜姫が、「タカビーでおっかない女だった」という事実にショックを受けた翔太郎だが、フィリップは翔太郎に、「相手はドーパントだし、何よりもこの街を泣かせている。」という建前と、「園咲若菜は天使のような存在だよ」という私的感情で、この事件に自分達が介入すべき、と捜査を提言した。
詰まるところ、翔太郎から若菜の本性を聞かされて尚、若菜への盲信並びに神格化はフィリップの中で健在だった。
事件を受けて、園咲邸では琉兵衛も、霧彦も一応に若菜の身を案じる様な言葉を口にするが、若菜はそれも気に入らないらしく、例によって舌を打つ。そんな中で、冴子だけが「辞めちゃえばいいのよタレントなんて。」と冷たく言い放ち、そろそろ若菜にもガイアメモリ流通の仕事を教える頃合である、と父に告げた。
琉兵衛自身も同じ考えで、家族一同タレント引退を若菜に促す雰囲気になったが、若菜は承知せず、若菜と冴子はドーパントに変身しての姉妹喧嘩に発展した。妹を情け容赦なくぶっ飛ばす冴子を慌てて宥める霧彦だが、冴子に言わせると若菜は「死なない」から心配無用とのこと。だがこれにはさすがに琉兵衛が怒って2人を止め、若菜に「もしこの件が解決しなかったら、その時は潔く今の仕事を辞めるんだ。いいね？」と命じた。
誰も逆らえない琉兵衛ゆえにNoとは言わないものの、やはりタレントを止めたくない若菜は自分の手で決着をつけることを宣言するのだった。
翌日、再び生放送中にMr.クエスチョンからの電話が入った。2つ目の質問は「好きな色」だったが、クエスチョンは質問しておきながら、自分で答えは「赤」だと言い、その色をプレゼントすると言う。
今回は刃野刑事、真倉刑事達警察が逆探知装置を仕掛けて待機していた。出来るだけ電話を引き伸ばせと言われていた若菜だったが、その個室にフィリップの指示で翔太郎が乱入した。
呆気に取られる若菜や刑事達を尻目に、翔太郎はフィリップの指示に従ってクエスチョンを挑発するように「本当のファンなら3つ目と4つ目の質問も合わせてする筈だ！」と怒鳴り付けた。先方は「俺だってそうするつもりさ！」と言って電話を切ったが、どうも翔太郎の言いたいことは伝わっていたようだった。
だが、おかげで逆探知成功するには時間が足りず（ちなみに、現代実際の逆探知は数秒も掛りません）、若菜は翔太郎を邪魔者として詰った。
若菜の剣幕にうろたえる翔太郎だったが、フィリップから電話が入り、さっきの会話だけで犯人の次に狙う場所を特定出来たという。その場所はサザンウインド・アイランドパークで、地下に通るガスのパイプラインを破壊するつもりだ、とフィリップは断言した。
すぐさまラジオ局を飛び出した翔太郎はサザンウインド・アイランドパークへ急行。フィリップの推理通りバイオレンス・ドーパントはそこにいたが既にサザンウインド・アイランドパークは襲撃されており、地面から吹き上がる紅蓮の炎で飾られているような有り様だった。
全身ムキムキの筋肉を搭載した、見るからにパワータイプのバイオレンス・ドーパントにサイクロンジョーカーのパンチやキックは丸で効かず、トリガーの射撃は幾ばくかのダメージを与えたが、バイオレンス・ドーパントは背中を丸め、巨大な肉団子のような形態に変化した。 その体当たりを食らったWは派手に吹っ飛び、逃走を許してしまい、サザンウインド・アイランドパークと多数の怪我人という大きな犠牲を前に、市民からは番組の中止を求める声があがり、若菜は益々窮地に追い詰められたのだった。
場面は替って、鳴海探偵事務所。物凄い剣幕で「フィリップって探偵はどこ！？出てきなさい！」とやって来たのは若菜だった。驚いたフィリップは何故か扉の向こうに姿を隠し、顔を見せずに応対。若菜がやって来たのは翔太郎の不手際を責めたかったのではなく、フィリップの推理に驚いたからだった。
フィリップは若菜が過去に答えたインタビュー記事とMr.クエスチョンの質問との因果関係から事件を起こす場所と方法を導き出したことを、実例とともに回答。驚き、感心した若菜は「警察よりよっぽど優秀！」と絶賛。やはり立場無いな、風都署……。
高慢ちきな若菜だが、フィリップの推理には純粋に感心し、ドアの隙間から差しいれられた手にフィリップは手を握られ、電流が走る様な衝撃とともに一瞬だけ子供の頃に暖かい手と繋いでいた過去を思い出した………。
翌日、「ヒーリングプリンセス」は市街ロケの特別収録で、翔太郎はこれに同行。局を出発する前、例の素子先輩がわざわざ玄関先まで若菜を見送って激励するが、こういう人物の登場は「如何にも」である(笑)。ドーパントかどうかはまだ分からんが。
またおっちょこちょいっぽいマネージャー・上尾が翔太郎同行を事前にスタッフを伝えていなかった咎で足の甲を思いっきり踏みつけられて、「あら大変！早く病院へ行ってきて」とロケから外されたが、これまた不自然であった。
ロケは「風都の甘いものベスト3」を紹介するもので、最初のロケ地は風都風花まんじゅうの元祖、和泉和菓子店だった。第3話で出て来たお店で、「風都」という街から出ることなくすべての事件がそこで起きる『仮面ライダーW』だから、過去のチョイ役が再登場するのは全く不自然ではない。
前回、マネーのガイアメモリに取り憑かれて両親よりもカネを優先していた優子が店の看板娘として見事に復帰し、独り言でチョット過去の行いを揶揄していた翔太郎にもいい笑顔を向けていたのは嬉しい展開だ。
そんないい雰囲気を壊しに掛るかのようにMr.クエスチョンから三度目の電話が入った。今度は「好きな景色」を尋ねて来たが、やはり答えを待たず、「今日からはいつでもその景色が見れるようにしてあげよう」とだけ言って電話を切ってしまった。
フィリップは若菜に協力を求め、「好きな景色」＝「風都タワー」、「風都タワーを見るのに一番好きな角度」＝「自宅の自分の部屋」、「今も見られるか？」＝「2年ほど前から見れなくなった」の情報から、犯人の狙いは第三風都ビルと弾き出した。
2年前、風都タワーと若菜の自宅の間に建った建物で、それが部屋から風都タワーを見る視界を遮った存在で、これがターゲットに間違いないというのだ。当然Mr.クエスチョンが第三風都ビルを破壊すれば、再び園咲邸から風都タワーを見ることが出来るようになる。
翔太郎はすぐさま現場へ急行し、今度はバイオレンス・ドーパントによる破壊行為を阻止するのに間に合った。今度はヒートメタルで対峙するし、バイオレンス・ドーパントにも力負けせず応戦していたWだったが、ここでクレイドール・ドーパントが乱入してきた。
若菜が自分の手でMr.クエスチョンを殺そうとやってきたもので、彼女は火炎弾で憎きバイオレンス・ドーパントを一蹴し、Wにまで襲い掛かって来た。
それを物陰から見ていた霧彦。普段あれだけイヤミを言われている若菜を心配して見に来たというのだからなかなかに義妹想いである。
そして三つ巴バトルの最中に、クレイドール・ドーパントのパンチを右手(フィリップ側)で受け止めたWに電流が走った。それは前日フィリップと若菜の手が触れ合ったときに伝わってきたのと同じ感覚で、それがドーパントから伝わって来たことにフィリップは驚愕した。
直後、背後から襲いかかってきたバイオレンス・ドーパントのハンマーパンチがクレイドール・ドーパントの脳天にまともに直撃し、彼女の身体は粉砕されてしまった！
これには霧彦も驚愕………というところで、以下次週へ。
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平成三〇(2018)年六月八日 最終更新