仮面ライダーW全話解説

第15話 Fの残光 / 強盗ライダー

監督:柴崎貴行
脚本:三条陸
 地下室に籠っていたフィリップは検索から「ボクシング名物、減量地獄」にハマったらしく、素人減量で脱水症状に陥った。
 翔太郎と亜樹子に介抱される中、フィリップは朦朧とする意識の中で視界の端に一瞬だけ何かを捉えたが、それはすぐに消えてしまった。
 その直後、麻生冬美(森下悠里)という依頼人が来訪。職業は風都銀行窓口勤務とのことで、依頼内容は「仮面ライダーを探して欲しい」というもの、「依頼即解決」、「俺達も有名になった」と依頼人に聞こえないようにほくそ笑み合う翔太郎と亜樹子だったが、依頼理由を聞いてその笑みは凍りついた。
 冬美曰く、「仮面ライダーはこの風都の敵!憎むべき犯罪者です!」とのことで、銀行を襲って現金を奪って行くクズ野郎を告発したいとのことだった。
 勿論、翔太郎達にそんな身の覚えがある訳なく、悪事を働く偽物に怒りを燃やした。

 調査を開始した翔太郎だったが、一連の展開には刃野刑事も御冠で、隠し立ては許さない、と翔太郎に告げる。つまり仮面ライダーWの正体を知らないのね(苦笑)。
 次の場面でそのにせ仮面ライダーが登場し、人を襲っていたが、その姿はシルエットで見てもWとは似ても似つかない。刃野刑事から情報を得た翔太郎は、そのやり口の外道さに唇をかむ。どう考えてもライダーの名を貶めるのが目的としか思えない。

 背中に大剣を背負う物々しいこのドーパントはアームズ・ドーパント。メイン武器はマシンガンである。初邂逅時に名を騙る理由を詰問するが、アームズ・ドーパントはあっさり逃走。変身を解いた翔太郎は現場に残された金属片を手がかりとして入手したのだった。

 場面は替って、トレーニングジムでのウォールクライミング。亜樹子は冬美の言動を訝しんで独自に調査し、彼女が銀行員ではないことを掴み、冬美にそのことを告げた。
 翔太郎は「俺達にもどうしても奴を捕まえたい理由がある」と言って、事情を包み隠さず話しての協力を要請した。
 観念して冬美は詳細を語った。それによると冬美は倉田剣児(西興一朗)と「ツインローズ」なる神出鬼没のコンビ怪盗をしていたとのことだった。
 怪人20面相やキャッツ・アイよろしく、犯行予告カードを出し、一滴の血も流さずにお宝を奪うスタイルに誇りを持っていたが、剣児はすっかり変わってしまって、ドーパントとなって懺暴の限りを尽くすようになってしまった。つまりその剣児がアームズ・ドーパントの正体で、冬美は彼を止めたくて依頼したとのことだった。
 真相を知った亜樹子は「流石に指名手配犯の依頼を受けるわけには…。」と言って依頼から手を引こうとするが、翔太郎は「捕まえたヤツと一緒に警察に自首すること」を「報酬」として依頼の続行を宣言した。
 翔太郎曰く、「依頼人なんてみんなワケ有り」とのことで、それを「いちいち気にしてたら探偵なんてできやしねえ」とのことだった。確かに、「ワケ有り」でもなければ普通は警察を頼るような気はする。


 冬美のカミングアウトを基に検索に掛ったフィリップだが、「倉田剣児」と「ツインローズ」というキーワードだけでは対象はあまり減らず。そんな状況に「街のみんなが俺達につけてくれた」という「仮面ライダー」の名に愛着を持つ翔太郎はその名を汚す相手に苛つきを隠せなかった。単に自分の名前や存在だけでなく、「その名をつけてくれた人々の気持ち」にまで誇りを持つ翔太郎の想いが心地いい。
 そんな中、例によって亜樹子の天然ボケがヒントとなった。亜樹子が金属片を「リンゴのおしりの部分」とボケたことから、フィリップは風都でリンゴをシンボルマークとする建物=西鈴鳴地区シャーウッドビルを嗅ぎあてた。
 かくして倉田のアジトを突き止めた一行は、冬美と共に彼の凶行を止めに向かった。

 その頃、園咲邸では霧彦・冴子夫婦がプチ夫婦喧嘩状態にあった。霧彦は見るからに品のない男が妻に面会を求めていたことを含め、冴子の行動を掴めないことが気に入らない。だが冴子は逆に霧彦の方こそ時折姿を見せないことを指摘してまともに答えない。最近は家族想いを見せる霧彦だが、能力でしか評価されない婿養子の弱い立場は改善されていないらしい。

 その頃、翔太郎達は倉田剣児を発見。冬美の説得にもガイアメモリに振り回されて戻る気の無い旨を吐露して拒否する剣児。「メモリを捨てるくらいなら人間を捨てる」とさえ嘯く始末。ここにもまた一人、ガイアメモリという名の悪魔と言おうか、麻薬と言おうか、悪しき存在に見入られ、振り回される者が一人いた。
 もはや言葉による説得は無理で、Wとアームズ・ドーパントのバトルに入ったのだが、そこへさっさと決着をつけるよう促すクライアント=冴子からの電話が入った。これまで本気ではなかったらしい。

 アームズ・ドーパントの合図とともに大量のマスカレイド・ドーパントが出現した。そして亜樹子と冬美を人質に取られたWは抵抗することも出来ず変身解除に応じた。
 勝ち誇った倉田はミュージアムが求める「お目当て」=「フィリップ」を探してフィリップに近付いてきた。
 翔太郎はフィリップに逃げるようすすめ、フィリップもそれに従った。だが、普段体を動かさないためか、フィリップの逃げる様は順調とは言い難い。それでもマスカレイド・ドーパント達は振り切ったが、そこに1人の女性が現れた。
 女性の正体は園咲冴子。「この事件の首謀者か」と問うフィリップに、それを肯定し、フィリップを「もう一度手にする」ことと、彼の名を告げた。
 その名は「来人」だった。唐突に知らされた自分の名と相手の正体を訝しがって、戸惑いまくるフィリップ………というところで、以下次週へ。


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平成三〇(2018)年六月二六日 最終更新