仮面ライダーW全話解説

第19話 Iが止まらない / 奴の名はアクセル

監督:石田秀範
脚本:三条陸
 唐突に現れた赤尽くめの男は、鳴海探偵事務所のある建物と同居するビリヤード場に現れ、いきなりナインボールをブレイクショットで全弾沈めるという腕を見せ、そのまま探偵事務所に赴いた。ちなみに翔太郎はヘタクソだった(笑)。
 男は風都署刑事・照井竜と名乗った。謎の連続凍結事件の犯人を追って、その解決の為にドーパント絡みの事件解決を得意とする翔太郎達を雇う為にやって来たのだが、その態度はかなり高圧的だった。
 偉そうな態度が気に入らない翔太郎は断ろうとしたが、現金前払いで亜樹子があっさりOK(笑)。「じゃあ早速左を借りていくぞ所長」と照井。ちなみに照井は(敬称有る無しに関わらず)下の名前で呼ばれることの多い翔太郎を「左」と呼び、亜樹子を「所長」と肩書で呼ぶ珍しい存在であり続けた。
 翔太郎がファーストコンタクトで照井に嫌悪感を抱いたのは、態度もそうだが、彼の方が翔太郎よりもハードボイルド像に近いこともあるようだ。

 場所は変わって、謎の連続凍結事件の現場。殺されたのは芸能プロ社長・池田真也(ナガセケイ)42歳で、凍らされた状態で発見されましたという。状況を照井に丁寧語で刃野刑事が説明するのを見て、照井が刃野刑事よりも階級が上っぽいことに驚く翔太郎。
 刃さんの紹介によると、照井は若くして警視で、風都署に新設された「超常犯罪捜査課」(事実上のガイアメモリ犯罪課)の課長とのことで、超エリートであった(放映時、照井竜を演じる木ノ本氏は21歳で、この年齢で警視は制度上無理。上級国家公務員試験に合格し、更に警察学校を卒業するというエリートコースでも警部補スタートで、その2階級上になるにはどんなに早くても20代後半)。
 刃野刑事と真倉刑事はなまじガイアメモリ事件に実績があったものだから組み込まれちまった、ということだったが、実績というよりは関わった回数の様な気がする(苦笑)。まあ、最終的にドーパントの殆どはメモリブレイクした後に翔太郎が刃野刑事に引き渡しているから、「実績」はあながち間違いでもないのだが(笑)。
 冷凍室のような事件現場で部屋の片隅に落ちていた一輪の花に注目する照井。見る見るその表情が険しくなり、訝しがった翔太郎が声を掛けると、照井は声を荒げ、「忠告しておくっ!俺に質問をするなっ!!」と叫んで胸ぐらを掴み、壁に叩きつけた。
 後々の徐々に角が取れた後の照井を知り、照井がドーパント絡みの事件に感情的になる理由を知ってはいるから然程嫌悪感を抱きはしないが、この場での言動だけを見れば高びーな癇癪玉である。
 驚いたというか、呆気に取られたというか、翔太郎がドン引きする中、照井は何事もなかったかのように被害者の入院している病院へ向かった。氷漬けにされて死んでいないとは大した被害者だ(笑)。

 場面は替って園咲邸の地下空間。
 そこがミュージアムの始まりの場所と初めて教えられ、同時にこの日をもって組織の中核入りを命ぜられた若菜。笑顔でそれを迎える父・琉兵衛と姉・冴子だが、若菜の意志を確認する様子はなく、命令に近い。
 了承し、頷くしかない若菜。断れば霧彦と同じ運命を辿るかも知れないと思ったからだろうか?


 次なる場面は被害者の入院する病院。彼は再度氷のドーパントに襲われていた。その様子から犯行理由は怨恨の様であった。
 そこへ翔太郎と照井が到着、間一髪池田を保護して戦闘シーンへ突入した。そして照井はバイクのアクセルを引き抜いたのだが、それはえらく重そうな刀で、引き抜いた照井は携行せず、引き摺る様にしながらドーパントに立ち向かった。
 設定重量30kgのこのエンジンブレードは、地面に着いた切っ先がアスファルトに軽くめり込む状態で、とてもじゃないが設定通りの重量には見えない。照井の扱い様を見ていると『ドラゴンボール』のZソードよりも重そうに見える。
 超重量だけあって、照井の振り回し方もかなり重そうで、本来の抜刀技術が重さでやや殺されているように見える。勿論、当たればパトカーすら斬り裂く破壊力を持つ。如何にも重そうに、それでもそれが驚異的な戦闘能力となっている様に演じる木ノ本氏の演技力は必見である。
 そしてその照井は「何をしている左!早く仮面ライダーになって戦え!」と叫ぶ。驚き、「な…!お前なんでそれを!?」と呟く翔太郎に返したのは相変わらずの「質問は一切受け付けないと言った!」である。
 「いつまでも俺にこんな重いもんで戦わせるな!」とブチ切れ気味の照井。否、どれだけ重い得物か知らんが、それは選んで使ってるのはアンタやし………(苦笑)。
 疑問は尽きないが、とにかく翔太郎はWに変身。アイスエイジ・ドーパントの能力に苦戦するも、冷たさに熱で対抗すべくヒートを使ってこれを撃退した。
 逃げるアイスエイジ・ドーパントを追いかけた照井は、逃がしたもののその後ろ姿と振り向いた顔をしっかり確認するのだった。ただ、一瞬隠れた後に出て来た姿だから、本当の正体かどうかは微妙である。

 アイスエイジ・ドーパントを逃がした2人はすぐさま事務所へ戻り、フィリップの検索で犯人を絞り込むことにした。池田が入院する病院に何しに行ったのやら(笑)。
 照井竜が、翔太郎とフィリップが仮面ライダーWであることを知っていたのは、ビートルガジェットの偵察によるもので、風都の人々がドーパントを倒す超人を”仮面ライダー”と呼んでいることを指摘し、いずれ自分が”仮面ライダー”になると宣言した。だがその理由が、Wでは力不足だから自分が替わる、と云う一方的な物言いには普段温厚なフィリップまでが「僕達への侮辱は許さない!」と怒りを露わにした。
 では腕前を見せろ、と宣う照井に翔太郎は「お前に言われなくても俺達の能力見せてやらあ!」と声を荒げ、フィリップは検索に掛った。
 「池田真也」、「花」、「氷」のキーワードだけでは対象が絞り込めなかったが、そこに照井が追加した「矢車菊と人工着色」というキーワードにより、コーンフラワーブルーという風都西区にある花屋の名前が絞り込まれ、検索された。
 その店の得意先の1つに池田の芸能プロも入っていて、農園と加工場を持ち、独自の技術で様々な花を作っているとのこと。照井は現状で拾った花が高度な技術による特殊な人工着色が成されているのを見て決定的キーワードを導き出していたのだった。確かにエリートの呼び声は伊達じゃない着眼点と知識である。
 検索の結果、オーナーでありフラワーコーディネイターの片平真紀子(大沢逸美)という女性が容疑者として浮上した。雑誌やTVなどに出演した風都では著名な人物で、亜樹子もその名を知っていた。但し評判は良くないらしい。
 照井は「俺が病院で見た女だ。Wも大したものだな」と褒めたが、その直後に「頭脳だけは、の話だが」と余計なひと言が続くので翔太郎が快く思う筈がなかった。

 コーンフラワーブルーを尋ねた3人だったが真紀子は不在。たまたま帰宅した息子の片平清(渋谷謙人)は照井の高圧的な尋問に、世間ではあまり評判の良くない母を「仕事に厳しいだけですよ。」と息子らしく庇う証言をする。
 その清から、今なら遊園地ふうとえんに居ると思う、という。フワラーディレクションの得意先らしい。

 早速3人がふうとえんに足を運ぶと、帽子、サングラス、包帯で顔を隠した謎の女性の姿を照井が見つけた。照井は容疑者探しを翔太郎に(一方的に)任せ、彼女を追った。
 ミステリアスな女性は照井とは既知で、照井は彼女を「シュラウド」と呼んだ。シュラウドは黙って照井にアタッシュケースを差し出し、照井は自分のドライバーが出来た、との声を漏らした。

 その頃、亜樹子が真紀子を見つけ、翔太郎は軽い尋問に入っていた。「1人でメリーゴーラウンドですか?」と尋ねる翔太郎に、「こんなオバさんがおかしいかしら?」と返す真紀子=大沢逸美だが、いえいえ大沢さん、貴方は「オバさん」等では有りません、円熟味を増した妙齢の女性です………と、シルバータイタン的にはこうなる(笑)。
 真紀子曰く、1人でメリーゴーランドに乗るのは、昔、息子にせがまれてよく一緒に乗った思い出を懐かしんでのことらしい。
 気さくに話し合いに応じるかに見えたが、話が本題に入ると辛辣な表情で、「…あなた達、警察?」と尋ね返し、「いえ私立探偵ですが。」と答えれば、「街の野良犬か。なら無視させてもらうわ。」と人を見下した態度に豹変。前言撤回、片平、お前は感じ悪いオバハンや。
 「野良犬にもプライドがある。」といって追い縋る翔太郎を振り切るようにダッシュで逃走する真紀子。そして彼女が曲がり角に消えた直後、入れ替わるようにアイスエイジ・ドーパントが出現し、先の戦いもあって、Wは初っ端からヒートジョーカーで応戦した。
 だがアイスエイジ・ドーパントの氷のブレスは熱量を武器とするヒートフォームすら氷結させた。そこへ「ご苦労だった左。あとは俺が代わろう」とエンジンブレードを引きずりながら照井が現れた。
 その腰には変身ベルト…………即ちアクセルドライバーが装着されていた。

 「この日を待っていた…最強の力を得てコイツを倒す日を!変・・・身!!」と唱えて彼は仮面ライダーアクセルに変身すると、「さあ、振り切るぜ」と叫んで攻撃に出た。
 仮面ライダーに変身したためか、変身前は引きずる様に振るっていたエンジンブレードを軽々と振り回すだけでもかなりの力量に見える。アイスエイジ・ドーパントを圧倒し、氷のブレスで全身を凍結されても、アクセルグリップを一捻りするだけで超高温を発熱し、瞬く間にこれを解凍してしまった。
 更にエンジンブレードが炎を吹き上げると、冷凍ガスなど物ともせず、アイスエイジ・ドーパントを滅多斬りにした。勝てないと見たアイスエイジ・ドーパントは地面に冷凍波を放ちながら、氷のレーンの上を滑るように逃走した。
 「逃がさん」と叫んだアクセルは仮面ライダーアクセル・バイクフォームつまり『キン肉マン』のバイクマンと化して、翔太郎の素っ頓狂な驚愕の声を尻目に追走に掛った。
 アクセル・マキシマムドライブから必殺技・アクセルグランツァーという飛び後ろ廻し蹴りを喰らわせ、氷の防壁をものともせず、「絶望がお前のゴールだ。」という決め台詞を吐いた。
 だが、爆死したと思われたのは、氷の分身体が爆発したもので、「まだ遠くには逃げていない筈。」と思ってアクセルが周囲を探すと、片平真紀子が見つかった。
 ガタガタと恐怖に震え、その手にはアイスのメモリを大事そうに握りしめている。もう戦意は喪失しているようで、後は警察に連行して終わり、と思われたが、照井は何とアクセルの変身を解かず、無抵抗状態の彼女にエンジンブレードを見舞おうとする。
 変身解除した人間に攻撃を加えるつもりなのか?と抗議に走る翔太郎だが、照井は「貴様だけは生かしておかん!」と尋常ではない殺意をもって翔太郎の制止も聞かずにエンジンブレードを振り下ろしたところで以下次週へ。


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平成三〇(2018)年六月二六日 最終更新