仮面ライダーW全話解説

第3話 Mに手を出すな / 天国への行き方

監督:諸田敏
脚本:三条陸
 亜樹子が所長に就任したことで、探偵の仕事が増えたものの、連日ペット探しで、自称・ハードボイルド探偵の翔太郎としては些か不服気味。まあ普通の私立探偵はこんな感じな気がするが(苦笑)。
 そんな二人の口論にラジオ放送が聞こえないと抗議するフィリップ。お目当てはラジオ番組で「ヒーリングプリンセス」として「若菜姫」と呼ばれる園咲家の次女・若菜。

 そんな若菜がラジオで語るのは、最近流布している風都の都市伝説で、ミリオンコロッセオという幻のカジノについてだった。
 そんなモンがあるワケねー、と鼻で笑う翔太郎だったが、そのタイミングで事務所のドアを開いて入ってきた中年夫婦(九太朗・上村依子)の依頼は、正にそのミリオンコロッセオに取り憑かれた娘・和泉優子(妹尾友理江)を助けて欲しいというものだった。

 中年夫婦とフィリップの検索から、夫婦は和泉和菓子店を経営しており、和菓子は風都名物・風花饅頭の元祖と言われている。優子はその看板娘として店の仕事を手伝っていたがある日、突然豹変してしまった。

 だが、手を打とうにもその原因となったミリオンコロッセオの場所をまずは突き止めなくてはならなかった。その優子は、派手な化粧とブランド物に身を包み、貴金属店で店員相手に当り散らすという、見た目あからさまなバカ女。
 翔太郎は尾行の都合から亜樹子に帰るよう要求するが、亜樹子は「所長」の立場を持ち出して退かず。そして揉めている間に優子を見失ったのだから、これはどう見ても亜樹子が悪い(笑)。

 気を取り直して捜査を再開した翔太郎は、ウォッチャマンからかつてミリオンコロッセオでギャンブルに参加していた村雨吾郎(亀山助清)という男の情報を得て彼を尋ねたが、ミリオンコロッセオで大負けして、家族や我が家を失って放心状態の村雨からはフィリップの検索に役立つキーワードも聞き出せなかった。
 携帯電話でそのやり取りをしていた途中、突如フィリップは「家族」という単語に頭を抱えて気絶してしまった。

 フィリップの異変を案じる翔太郎だったが、こちらでは村雨が悲鳴を挙げていた。村雨が恐怖していたのは加賀泰造(我修院達也)という名の郷ひろみの物真似で有名なミリオンコロッセオのオーナーで、負け金の取り立てに来たものだった。
 しかしいくら恫喝されても無いものは払えない。その苦しみをシルバータイタンはかつて嫌という程味わ………ゴホ、ゴホ、………村雨に返済能力がないと判断した加賀はガイアメモリを取り出してマネー・ドーパントに変身した。
 ずんぐりむっくりのキンキラ怪人というデザインのマネー・ドーパントは村雨の額にコインを当て、その生命エネルギーを吸い取って封入した。
 村雨の悲鳴を聞きつけた翔太郎が飛び込んだものの、フィリップが気絶していてはWに変身出来ないという危機的状況。途中で何とかフィリップの意識が戻りこれを追い込んだが、加賀を逃す為に現れた園咲霧彦の妨害もあって、これを逃してしまった。

 手掛かりとなる加賀を逃したことで翔太郎を詰るフィリップだったが、その原因となった自分の気絶は全く自覚していなかった。怒るより、相棒の異変に一抹の不安を覚える翔太郎。

 無事に逃げ切れた礼を霧彦に述べる加賀。霧彦曰く、援護は「高額のメモリを買ってくれた」顧客へのアフターサービスらしい。なる程一流の営業マンだ(笑)。ミュージアムの販売人はメモリを売るだけでなく、犯罪幇助も行っていることが伺える。

 場面は変わって和泉和菓子店。
 ミリオンコロッセオの勝負資金にする為、家の通帳を持ち出し、「100倍にして返すから!」と豪語する優子は既に正気ではなく、泣いて止める両親を足蹴にする始末。翔太郎の説得に対しても「怪人への恐怖<スリルと快感」、キレた亜樹子の非難に対しても「お金>家族」という価値観に取り憑かれていた。うん、演技と分かっていても腹が立つな(苦笑)。
 だが、一連の彼女の言葉から、翔太郎はミリオンコロッセオの所在への手がかりは行き方に秘密があることを掴んだ。

 その後、ラジオ局での聞き込みを終えた翔太郎は、若菜本人からピンナップ写真を貰い、これにはフィリップもご満悦。とかく若菜姫は風都市民にとっては結構な人気番組らしく、聞き込みに居合わせた刃野刑事もファンらしい。
 しかしその表裏は凄まじく、楽屋に戻るなり翔太郎に握手された手を念入りに洗い、手渡された名刺をビリビリに破ってゴミ箱に捨てていた……哀れ、翔太郎……。

 ようやくフィリップによる検索が開始された。検索対象は「人をミリオンコロッセオへと運ぶ方法」で、キーワードは「ミリオンコロッセオ」、「ギャンブル」、「風都」、そしてラジオの投稿で寄せられた地名を………そこから通常運行の中に紛れて、コロッセオに客を運ぶ闇の路線バスが存在していることを突き止め、予想される通過ルートと到着時間を絞り込んだ。

 バス停で路線バスを張り込んでいた翔太郎は、ハードボイルダーでこれを追走したが、車中に「来るな!」といった筈の亜樹子の姿を見つけて愕然(苦笑)。
 そしてバスにはコロッセオの所在を守る為マネー・ドーパントが潜んでおり、その迎撃を受けている間にバスは進み、コロッセオ潜入は否応無しに亜樹子に任せるしかなくなった。
 Wに打ちのめされたマネー・ドーパントはそれでも怯まず、1枚のコインを取り出して腹の中にある多数のコインが人質であることを告げた。つまりマネー・ドーパントを倒せばコインはすべて砕け散り、コインと化している人々を死に至らしめるという訳である。
 そしてマネー・ドーパントの口から出た「家族」というキーワードに再度フィリップが錯乱状態に陥り、そのフィリップの脳裏には幼い自分が家族とともに海辺を仲良く歩く姿、顔は見えないが優しそうな両親と2人の姉がフラッシュバックされていた。
 そしてフィリップの錯乱によって戦闘力を失ったWはマネー・ドーパントの爆撃を食らって派手に吹っ飛んだ。

 一方、その頃亜樹子は闇バスが停車したトンネル内の隠し口からミリオンコロッセオに到着していた、というところで以下次週。


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平成三〇(2018)年五月二九日 最終更新