仮面ライダーW全話解説

第4話 Mに手を出すな / ジョーカーで勝負

監督:諸田敏
脚本:三条陸
 事務所に引き上げて来た翔太郎に、自分が唯一知る事の出来ないものが「家族」とその記憶であることを指摘され、侮辱と受け止め掛けたフィリップだったが、実際は、彼の人間らしさに安心したとのニュアンスが強かった。
 完璧でないからこそ支え合う、という翔太郎の言葉を「鳴海荘吉の受け売り」による「兄貴風」と拒否的な反応を示すフィリップ。どうも本人にもはっきりしないところで相当痛い所を突かれている風だ。
 そこへミリオンコロッセオに潜入した亜樹子から連絡が入った。それもバットショットを通じての生中継。
 現場では鬼気迫る表情でルーレットテーブルにかじり付く和泉優子が100億円勝つか、命を失うかの大勝負にいたが、番組のクライマックスにおける主人公でもない限りこの様なシチュエーションで勝てることはまずないのが見事に証明された(笑)。
 胴元の加賀とのサシ勝負だったが、勝負の途中で加賀が回転速度などから乗計算で目を割り出しているのを察知したフィリップの予言通り、出目は赤の30に入り、優子は負けをその命で支払うことになり、ライフコインにされてしまった。

 ギャンブルに負けて落ちぶれる人間に有り勝ちな醜態を笑いながらライフエナジーを吸い取るマネー・ドーパントの前で「お父さん…お母さん…」と今更な呟きをこぼす優子にはチョット同情出来ない(両親には同情するが)。まあストーリー的には彼女もドーパントの魔力に取りつかれた犠牲者であることは分かるのだが、個人的にギャンブルに狂って人間性を歪めさせている奴等を何百人も見て来たからなあ……。
 そんな場面に、良くも悪くも直情的な正義感の持ち主・鳴海亜樹子は黙っていられず、スリッパでマネー・ドーパントをぶっ叩いた。当然効く筈がなく、マネー・ドーパントの敵意は亜樹子に向いたのだが、亜樹子は部下がついていることを告げて啖呵を切り返す。
 もっとも、その部下評が、「1人はイマイチ頼りないけど、もう1人はチョー天才なんだから!」と来たものだから、中継を見ていた翔太郎に「あんの馬鹿・・・!」と呆れるのだった。まあ素で考えて即座に殺されてもおかしくない状況だったのだが。
 ここで携帯を通してフィリップが加賀と直接交渉。ガイアメモリ6本をコマに勝負を申し出た。


 その頃、園咲家では風都の教会にて長女・冴子と婿となる霧彦の結婚式が行われようとしていた。「丸でホームドラマ(須藤霧彦談)」の様に、「式の前に君を一発殴らせてくれないかね?」と冗談とも本気とも付かぬ発言をする琉兵衛。
 だが琉兵衛がテラーのメモリを取り出したのを見ると霧彦も顔面蒼白になって後ずさった。琉兵衛曰く、「園咲の者は皆、我等ミュージアムの中枢…この街の、いやすべての人類の統率者だ。」とのことで、霧彦がナスカメモリの能力を極めているかどうかを試さんとしていた。
 そこへその役目を自分にさせて欲しいと申し出る若菜。曰く、「気取った男のメッキを剥ぐの大好きですの」とのことで、クレイドール・ドーパントに変身。だが彼女の攻撃は余裕でかわされ、ブチ切れた若菜が接近戦を仕掛けてきたところで、ようやくといった感じに霧彦もナスカ・ドーパントに変身。渾身のパンチを避けようとせず、まさに言葉通り余裕で、腹で受け止めた。
 一連の流れを見ていた琉兵衛は霧彦を認め、面白く無さそうにそっぽを向く若菜に、ミックを加え、記念撮影が行われのだが、写真に写っていたのはテラー・ドーパントタブー・ドーパントクレイドール・ドーパントナスカ・ドーパントスミロドン・ドーパントの姿だった。

 場面は映って、ミリオンコロッセオ。「世界中のありとあらゆるギャンブルの必勝法を読んだ。」として自信満々に勝負に挑むフィリップだが、おい、フィリップ、「ギャンブル必勝法」にはメチャクチャガセネタが多いの知ってっか?
 一時的な勝利を、手段問わずに掴むのなら、「必勝法」より、「イカサマ法」をシルバータイタンはお勧めする。勿論、ばれたときの責任等一切取らんがな(笑)。

 自信満々のフィリップに対し、翔太郎は直近のフィリップが起こした錯乱状態に不安を覚えずにはいられなかった。
 案の定、投げ込まれた軌道から100%に近い確率で出目を予測するフィリップは連戦連勝だったが、加賀の、「被害者の家族にでも泣きつかれたかね?」の台詞に三度目の錯乱状態に陥った。
 形成は完全に逆転し、ガイアメモリは奪われ続け、最後の一本になってしまったところで翔太郎が飛び出した。一発勝負で互いに持ち分をすべて掛けて勝負することを申し出たのだが、その勝負方法はババ抜き……………相手がチップ6枚とメモリ5つに対し、こっちがメモリ1つの状態で「全部賭けて勝負だ!」という無理要求も驚きだが(笑)、ギャンブル方法も驚きである。
 せめてポーカーか、ブラックジャックにしろよ………と思ったが、意外なキーワードで最後に納得させられた。

 1対1のババ抜きなので、当然ジョーカーを引かない限りは手元のカードは減っていくことになるのだが、翔太郎は終始加賀が予言する通りにカードを引かされ続け、傍目にも翔太郎には丸で勝ち目がないかに思われた。
 そして勝負は早くも最終局面、加賀2枚、翔太郎1枚での翔太郎の引き番が廻って来た。

 フィリップ曰く、加賀は翔太郎の僅かな動きや視線、表情の変化を完璧に読んでいるからジョーカーの位置や翔太郎が引こうとしているカードが手に取るように分かるとのことで、それを証明するように加賀も「次はキミにジョーカーを引かせる。そして私がエースを引けば勝負は決着」という勝利宣言を行った。
 翔太郎を追い込んだことに自分を責めるフィリップだったが、当の翔太郎は鳴海荘吉の言っていた「男の仕事の8割は決断だ。そっから先はオマケみてーなもん。」という台詞を持ち出してフィリップを守ることを宣言。
 尚も不安がるフィリップに、「無理じゃない!翔太郎君は君を助けたいって真剣なんだよ!信じてあげなよ!君達は2人で1人なんでしょ?」と、初めて翔太郎を認める台詞を叫ぶ亜樹子。
 そしてこの亜樹子の言葉が勝利へのキーとなった。
「そうか・・・俺達はW。2人で1人の探偵…そうだよな?フィリップ。」とフィリップを振り向きながらアイコンタクトをする翔太郎。
 そして翔太郎の指がジョーカーへと伸び、加賀が勝利を確信した次の瞬間、その指は隣のエースを弾き飛ばした。
 「残ったカードはいらねえ・・・俺自身がジョーカーだからな。」
 と告げて加賀の元にジョーカーが残した翔太郎。
 何が起こったのか理解出来ず狼狽する加賀に、Wドライバーで翔太郎とフィリップの意識は繋がっていたこと、つまり翔太郎の右手でカードを引いた様に見えたのは、実はフィリップが引いていたもので、「翔太郎の思考は完全に読まれている。」と見たフィリップはその逆のカードを選んだという訳だった。
 なる程、ジョーカーを別れ目とする意味でもババ抜きは最適だった訳だ (笑)。

 勿論、勝負に敗れた時に往生際が悪いのが悪党で(笑)、加賀はマネー・ドーパントに変身して逃走。追う仮面ライダーWに「家族」というキーワードでフィリップを錯乱させようとしたが、「家族?それなら代わりがいる。ちょっと冴えないけどね。」というフィリップにはもう通じなかった。
 彼は自分を心から心配してくれた翔太郎と亜樹子を、家族同然と認めたからである。最後は「ヒートメタル」のメタルブランディングでジ・エンド。
 メモリの壊れた加賀は警察に引き渡され、ライフコインにされていた人々は無事肉体に魂が戻った(←特撮のお約束やね)。

 ラストで、事務所のラジオを聴いていた2人は例の若菜の番組から自分達が風都の噂になっている事を知った。マネー・ドーパントを追走していた時に、そのチェイス劇を多くの風都市民に目撃されていたのであった。
 ファンである若菜に取り上げられて大はしゃぎする翔太郎とフィリップ。風都を守る風の戦士仮面ライダーW、彼等の物語はまだ始まったばかりというところで以下、次週へ。
 平成ライダーでは「仮面ライダー」の名が出て来ない作品も少なくないので、自然に仮面ライダーと呼ばれるのはやはり嬉しい(笑)。


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平成三〇(2018)年六月八日 最終更新