仮面ライダーW全話解説

第30話 悪夢なH / 王子様は誰だ?

監督:田崎竜太
脚本:長谷川圭一
 前週、フィリップがいなくなったことで、ナイトメア・ドーパントの夢の世界での優勢に抗し得なくなり、絶体絶命のWだったが、突如「ん?え?掃除?後でいいよ・・・お、おい!勝手にドア開けんな!くそっ、ヘンなヤツは紛れ込んでるしお前の夢は最悪だな。2度と入らないぞ。」とけったいな台詞を残してナイトメア・ドーパントが去ったことで危地を脱した。
 つまりは現実世界の彼の近くに人間が現われ、その場を取り繕う為に夢の世界を出たことに翔太郎は助けられた。だが、現実の世界では相棒のフィリップが井坂の魔手に掛かろうとしていた、という最悪の状態にあった。
 だが、井坂が稲妻を落としたその瞬間、フィリップを守るように1羽の鳥型ガジェットが颯爽と現われた。謎のガジェットはその体内にフィリップを収納すると、その場を飛び立とうとした。
「逃がすか!」とばかりに井坂が特大の竜巻を打ち込んだが、鳥型ガジェットは真正面からこの竜巻を弾き返し、逆にウェザー・ドーパントを吹き飛ばす強力さを見せた。驚くべき強さである。
 ともあれ、謎の存在による乱入で何とか助かった翔太郎と亜樹子。フィリップも翔太郎が精神を研ぎ澄ますとその意識を感じ取ることが出来たため、一先ず安心して気になる人物の元へと向かった。
 それは姫香が「私の王子様」と呼んだ研究室の男どもの中でその言葉を真に受け、恋敵達を眠り病で排除しようとした1人の男だった。

 ここまで来ると、消去法的にもただ1人しか考えられず、残る福島を問い詰めたところ、彼は眠さを理由にはぐらかすようなことをいうかと思えば、清掃係のおばちゃんに備品に触るなと声を荒げる。
 そんな福島にドーパントなのだろうと指摘するも、黙り込んだと思った福島もまた額に「H」の文字を浮かび上がらせ眠りに落ちていた。かくして翔太郎と亜樹子は再び捜査に行き詰まってしまった。

 場面は替わって園咲邸。例によって大皿に山のように盛られたスパゲティを平らげながら、フィリップ殺害を邪魔した謎の鳥型ガジェットについて琉兵衛に報告する井坂。そしてそれを嘲笑う若菜。
 報告を聞いた琉兵衛は謎のガジェットを「エクストリームのメモリ」と言い、その登場を前々から予測していたかの様に呟いた。その背後にいるシュラウドを見据えるかのように。
 エクストリームの名を聞いた冴子が「それは何ですのお父様?」と聞いたが、琉兵衛はこれを黙殺。井坂のみならず、腹に含むところのある長女に対しても警戒している様子だった。

 再度の夢の世界への潜入に亜樹子が、今度は自分が行くと言い出した。どうやって夢の中で分かったことを伝えるつもりだ?と問う翔太郎に、亜樹子が答えたのが、「大丈夫!寝言で伝えるから!」だったから恐れ入る(笑)。
 夢の中で描かれた亜樹子の世界はどこか翔太郎のそれに似ていて、それ以上に異様な世界だった。関西出身の亜樹子はひたすら関西弁で、他の登場人物まで関西弁で話していた。
 ちなみに亜樹子を演じる山本ひかるさんと、フィリップを演じる菅田将暉氏は大阪出身なので、恒例の台詞を「ボチボチやな。最近ゾクゾクせえへん。」と関西弁でしゃべっていたも板についていたが、照井の「俺に質問するなや。」は違和感があった(一応木ノ本嶺浩氏も関西(滋賀)出身だが)。
 夢の世界でも亜樹子は「お父ちゃん」の後を代理する探偵だったが、副業にたこ焼き屋を営み、照井とフィリップも遊び人風だった。
 そこにナイトメア・ドーパントが現れると、亜樹子が「浪速の美少女仮面W」に変身して戦うという、舞台がぶっ飛んでいる(苦笑)。しかし20歳の設定で「美少女」を自称するかねぇ?熟女好きのシルバータイタンには20歳とて少女同然ではあるが……。
 夢ゆえの御都合で各種フォームを見事に使いこなして戦う亜樹子Wだったが、やはり夢の中はナイトメア・ドーパントのホームレンジで、亜樹子Wもまたアクセル同様最後は敗れた。
 追い詰められ、その正体を問う亜樹子に、ナイトメア・ドーパントは「どうせ言ったところで誰にも伝えられないからな。」と油断してその正体をゲロしたが、前述したように亜樹子は寝言でそれを伝えるという離れ業でその正体を翔太郎に告げた(笑)。
 翔太郎は、額にHの文字を浮かべて苦しむ彼女を労うと事務所を出て、亜樹子を助けるためにも真犯人のもとに向かった。

 場面は替わって謎の鳥型ガジェット=エクストリームメモリの中。そこでフィリップはシュラウドとの邂逅を果たしていた。救助を感謝しながらも、翔太郎のもとに行くことを欲するフィリップに、シュラウドは翔太郎のことを「あなた(=フィリップ)にとって不吉な存在。」と告げ、別れるよう忠告してきた。

 場面は替わって風都大学。ここで翔太郎は真犯人=福島と対峙していた。
 つまり翔太郎と亜樹子の前で眠り病に罹ったと見えたのは福島の仮病&(額にHのシールを貼付けての)狸寝入りだった。ついでを言えば、被害者達の額の「H」は姫香と一(福島の下の名)のイニシャルを指すものだった。
 既に翔太郎は眠り病患者たちが眠る病院に問い合わせ、「最後の1人はすぐに意識が戻って退院した。」ということを掴んでいた。単純ゆえによく出来た偽装と言えた。
 何故姫香を怯えさせたのか、を問う翔太郎に福島が答えたのは、自分のことを「運命の王子様」と思っている(と福島が思い込んでいる)姫香が自分以外の研究生や刑事、翔太郎、赤城教授にまで笑顔を振りまくのが気に入らなかった、とのことだった。
 凄まじい勘違いで嫉妬に狂い、何日も眠れない夜を過ごしたことを逆恨みし、姫香にも同じ「眠れない辛さ」を抱かせようとしたのが動機だった。うん、キモいな(笑)。姫香の言動も考慮に入れるべきであるが(苦笑)。
 翔太郎に「可哀想なやつだな、お前。」と憐れまれ、それにキレた福島はナイトメア・ドーパントになって襲い掛かってきたが、翔太郎はWに変身出来なかった。

 それというのもシュラウドがフィリップを(←はっきり「来人」と呼んでいた)止めたからだった。だがフィリップはそれを振り切り、エクストリームがナイトメア・ドーパントの破壊弾を跳ね返して翔太郎を守った後に続くように笑顔で駆け付けた。
 「やあ翔太郎、再会の挨拶は後回しだ。今はこいつを倒してみんなを目覚めさせようか。」と意味深な台詞を発しつつも2人はWに変身。それを見たナイトメア・ドーパントは2人が本当に仮面ライダーだったことに狼狽え出した。
 「夢の中でなければ負けはしない!」というWの台詞通り、現実の世界ではナイトメア・ドーパントの強さは並以下で、ルナメタルメタルシャフト・ウィップモードで散々ぶん殴られた挙句、初披露となる月鋼マキシマムドライブ、メタルイリュージョンという、メタルシャフトを振り回しつつ、そこから八つ●き光輪を多数射出するという連発技でナイトメア・ドーパントを仕留めた。

 かくして福島は目覚めた照井の手によりお縄となった。そういえば、今回はほとんど寝ていただけだったな、照井(苦笑)。
 多くの学生達―野次馬の目に晒される中、手錠をかけられて項垂れながら覆面パトカーに連行される福島だったが、そこに姫香が駆け寄ってきた。
 姫香は福島に謝罪し、「運命の王子」ではなく、一個人としての「福島君」が戻ってくるのを待つと宣した。
 意外な展開に戸惑う亜樹子だったが、翔太郎は「悪くないラストシーンだぜ。」と評した。だが、自分に恐怖を与え研究室の皆を酷い目に遭わせた男を許し、その思いに応えるかに見えた美談も束の間、姫香のもとには意識を取り戻した6人の学生と教授が走りよると、口々に自分のことが一番好きなんだろ?と尋ねまくるのだった。
 あんなに苦しそうにうなされながら眠っていたのをすっかり忘れて姫香に夢中な7人も大概だが、「喧嘩はやめて!姫香、みんな同じくらい大好きですぅ〜。」とヒロイン気取りのこの女も丸で変ってなかった………。
 呆れていたのは翔太郎も同じで、ため息をつき、帽子を目深にかぶって、ドーパントならざる者相手には初めてとなる「お前の罪を数えろ。」を遠くから呟くのだった。

 ラストシーンは鳴海探偵事務所。
 「鳥と何処に行ってたんだ?」と尋ねる翔太郎にフィリップは表情を曇らせた。彼の答えは、「今はまだ言えない・・・でも、これだけは言える。僕のパートナーは翔太郎、キミ1人だけだ。」と余計に気になる言い方をしたものだったが、一先ず翔太郎はそれ以上追求せず、自分を信じてくれている相棒との絆を再確認するのだった。


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平成三〇(2018)年七月五日 最終更新