仮面ライダーＷ全話解説

仮面ライダーＷ全話解説

第39話 Gの可能性 / バッドシネマパラダイス
監督：柴崎貴行
脚本：三条陸

　冒頭は鳴海探偵事務所である。前回知った事実や展開が衝撃的過ぎたので、翔太郎達も何かとフィリップが思い詰めていることが心配だ。一応、「彼女(＝若菜)のことはもう心の整理がついた。心の闇を増幅するのがガイアメモリの魔力…彼女もそれに負けたのさ。」というフィリップだが、明らかに何らかの想いを押し殺していた。
　そしてそんなやり取りは依頼人の登場で終わった。依頼人は映画館「T‐JOY風都」に務める受付係、虹村あい(谷澤恵里香)。そして助けを求めてきた内容は、「身に覚えの無い自分の主演映画がかかってる」という、何とも奇妙なものだった。

　あいは女優でもないのに、映画館では彼女が主演を演じた映画が上映されているという。勿論彼女にそんな映画を撮影した覚えはない。確かに身に覚えのない写真や映像が大々的に流れるのは不気味だ。
　早速映画館に調査に向かった翔太郎と亜樹子は、そこでやたらオドオドして見るからに気弱そうな青年・川相透(川野直輝)と出逢った。見るからにドジっぽく、後輩の女の子にすらバカされる彼を慰めるあい。
　そんなあいのことを透は好きみたい、と見た亜樹子が茶化すと、彼はノートに文字（←それも小さい）を書いて答えた。「問題ない」と。対人恐怖症か？
　そんな透にフィリップ君同様、「内面に溜め込むタイプ」を見出した亜樹子にはお節介好きの血が騒ごうとしていた。

　映画館の調査はマネージャー(菊池隆志)に拒絶されたのだが、上映作品に『風の佐平次ザ・ムービー』を見つけた翔太郎と亜樹子はどっちが目的か分からない顔で、客として堂々とシアター内に入った(笑)。
　幸か不幸か、そこでも『風の佐平次』は始まらず、あいの言っていた『ジェシカの彷徨と恍惚～傷だらけの乙女は何故西に行ったのか～漂流編』が始まった。タイトルからして無駄に長いその映画は翔太郎曰く、「駄作のオーラが出まくってる。」とのことで、冒頭10分で余りの駄作振りにシアターを出ようとした翔太郎だったが、出入口がなくなっていて出られなかった。
　他のシアターでもそうだったが、何せ出口は上映が終わるまで現れなかった。翔太郎と亜樹子が付き合わさせられた上映時間は7時間半…翔太郎ならずとも「拷問」と言いたくなる。そんな中、亜樹子はまだ「引き込まれる部分はある。」とのことだった。
　我慢も限界を迎えようとしたところで、やっと訪れたクライマックスに喜んだ翔太郎だったが、画面に大きく表れたのは「未完」の文字(笑)。
　「ふざけんな金返せ！責任者出てこい！」とモンスタークレーマー化した翔太郎の前に一体のドーパントが挙動不審な動きで現れた。随分のっぺりした奴で、『ウルトラセブン』に出て来たバド星人をのっぺら坊にした様な奴だ。
　コンクリートの壁が植物になったのを訝しながら、またフィリップに検索を求めながらこれを追う翔太郎だった。

　やがてフィリップの検索により、メモリの正体がジーン＝遺伝子であること、その能力は遺伝子を組み替えて別の物体にすることが出来るというものだ。それを元に翔太郎はマネージャーに化けたジーン・ドーパントを看破した。
　考えて見りゃ恐ろしい能力を持っているドーパントだが、戦闘意欲は乏しいらしい。観葉植物を撒菱に変えて再び逃げるも屋上に追い詰められ、止む無くという感じでWとの戦闘に突入。その能力でWの右手をパペットマペットのウシくんに変えてしまった！
　だがウシくんの正体は大きめの葉っぱをWの右腕にくっつけたもので、メモリを変えるとあっさり解除された。結局したたかに殴りつけられ、堪らず変身解除したその正体は透青年だった。
　つまるところ、この男が空きの上映室を偽装して観客を入れ、出口を閉じて自分の映画を見せていたもので、映画に出てたあいも組み換え。つまりは透一人で監督、主演女優、撮影も行ったものだった。
　亜樹子はあい本人に頼めず、引っ込み思案にも程があるその態に呆れ返った。しかし、これ、対象とされた女性から見たら相当気持ち悪いだろうな(苦笑)。ともあれこれで事件は解決だ、後は照井の仕事だ、と透を警察に引き渡そうとした翔太郎だったが、亜樹子がこれに待ったをかけた。

　場面は替わって風都ホテル。そこでは食卓を挟んで冴子と加頭が向かい合っていた。何故自分を助けたのか？と尋ねた冴子に加頭が答えたのは、「好きだからですよ？あなたが。」だったのだが、相変わらずの無表情で、とても本気とは思えない。
　冴子も白け切った顔で、「こんなに気持ちの籠ってない告白は初めて。」とぼやく。その台詞からすると今まで告白自体は何度も受けているみたいだから贅沢言うな、冴子(苦笑)。
　ともあれ、加頭の話では若菜が主導権を握ってからミュージアムの計画進行度は急速に回復しており、既に彼女に太刀打ち出来なくなっている冴子の為に財団の意志ではなく、個人の意志で冴子に協力しているとのことだった。
　まあ、これを素で信じる奴がいたら御人好しを通り越して馬鹿だろう(笑)。だが、冴子にとっては状況はどうあれ若菜に劣っていると言われたことは聞き捨てならなかった。
　その間、イチゴのタルトをもぐもぐ頬張りながら無感動に喋る加頭の態度も冴子の苛立ちを加速させていた。だが、このドライバーもメモリもない状態ではどうにもならない。「見せつけてやらなくては…私という人間の価値を。」と考える冴子だった。

　場面は替わってディガル・コーポレーション社長室。そこでは冴子以上にヒステリックな社長と化した若菜が部下や掃除のおばちゃんにまで八つ当たり的な態度で接していた。だが、掃除のおばちゃんに変装した冴子。若菜と重役が去った後に、隠し金庫の中から彼女が取り出した切札はナスカのメモリだった……。

　場面は替わってとある山中。そこでは透監督、亜樹子プロデューサーのもと、あいを主役としたファンタジー映画の撮影が行われていた。
　何故自分達がこんなことを？と多かれ少なかれ思いながら撮影に付き合わさせられていた面々は翔太郎、フィリップ、照井、真倉刑事にウォッチャマン。
　どうしようもない男にしか見えない透に亜樹子が肩入れするのは、「映画作りを通じた透君の社会復帰計画」とのこと。「みんなの協力で映画を完成させて、ガイアメモリの魔力に打ち勝つ心を育てるのよ。」と息巻く亜樹子。
　お陰で聖戦士ジェシカに扮するあい本人以外にも、スナフキン化した照井に、ハープを持つ天使となった真倉（喋らな誰か分からん…）、とひどいコスプレパーティーと言った有様だった。
　勿論超内気男との透が監督しての采配を振るえる筈もなく、殆ど亜樹子プロデューサー、略して「亜樹P」が強引に進めえるのだが、「脚本は要らない所を大幅に削って９０分映画に！アクション、笑い、お色気２割増しよ！」と、最後の「お色気」ではマリリン・モンローの有名ポーズを取るあい……………結構、胸デカいね、この人………（←実際、調べたらバストは88㎝だった……）。

　亜樹子の脚本に対し、「問題ない。脚本は無駄がなくなってよくなった」との感想を示す透だが、やはりノートに小さい字を書き込んむことでしか意思疎通が図れない。そんな透に何故亜樹子がそこまで世話を焼くのか丸で理解出来ないフィリップ。それ対する亜樹子の答えは、「どこかの誰かさんと同じで、素直になれない子を放っておけないの私。」だった。

　場面は替わって園咲邸。そこで若菜は琉兵衛に今までの自分と決別するために来人と戦ってきたことを告げていた。それを頼もしく思い、喜ぶ琉兵衛はプレゼントとして、仰々しいアタッシュケースに収められた、「お前の為に造られた女王の証」とやらを渡した。
　中身は緑色の光を発する謎の鉱物。若菜が輝きに見覚えありとするその鉱物は、「有機情報制御器官試作体・ガイアプログレッサー」と呼ばれるもので、これを使えば若菜は完璧になれるとのことだったが、その為にはジーン・ドーパントの協力が必要だということが今回のストーリーとの絡みだった。
　琉兵衛の表によると、PCの画面に映し出されていた透は、意外にもジーンメモリの能力を引き出すことの天才とのことだった。

　何だかんだ言いながら撮影は進んでいたが、透本人は浮かない顔をしていた。だが、亜樹子にしつこく尋ねられてようやく字に書くほど内気極まりない透が声に出す筈もなかった。と、そこへジーンの力を求めて透を攫いに若菜がやって来た。今回も人目を全く気にせず、クレイドール・ドーパントに変身。
　思わぬ再会を遂げた姉に狼狽えるフィリップの代弁を務めるように「若菜姫」と呼んで、彼女にミュージアムからの脱退を進める翔太郎だったが、クレイドール・ドーパントは自分自身がミュージアムゆえに無理、と答えた。
　否応なしに戦いとなったが、Wエクストリームによるプリズムソードでの斬撃はクレイドール・ドーパントの再生能力を封じる力があり、忽ち彼女を追い込んだ。
　そしてそのとき、そんな若菜を高らかに嘲笑う冴子が小高い丘の上に立っていた。彼女は妹の劣勢を差し、そんな様で「自分がミュージアム」と大言壮語することを罵り、「あなたをいたぶりに来たのにこれじゃ拍子抜けだわ。」と膂力ではなく、言葉でいたぶった。
　そして「今見せて上げる。姉の意地を。」と言って、鎖骨の辺りに施された生体コネクタにナスカのメモリを挿す冴子。だが、その際に冴子が口にした男の名は、前夫にして元のメモリの持ち主ではなく、「井坂先生」という名だった。

　元夫とは異なる真紅のナスカ・ドーパント＝Rナスカ・ドーパントに変身した冴子は、霧彦が苦労の末会得した高速移動（アクセルトライアルの超加速と全く互角）で攻撃を仕掛け、無数のエネルギー弾を同時発射し、辺り一面を瞬く間に爆発地獄に変えた。
　園咲霧彦のナスカよりも強いことを驚くフィリップに、Rナスカを陰から観察して「レベル3」と判定した加頭。それは故井坂が言っていたところの直挿しゆえだろうか？
　無数の爆発が乱舞する中、亜樹子は現場に残されたカメラを取りに戻ろうとして透に引き留められた。亜樹子は皆で撮った映像が、透の大切な作品がパーになることを懸念したが、当の透はノートに「あんな映像の為に危険を晒すことはない」というのである。
　当然そんな意思を今まで知らされていなかったから、原因がつかめず亜樹子は狼狽するしかなかった。考えられる原因を問うても首を横に振るばかりの透。ようやく示した意志は、「一人で撮る。ジーンを返して」だった。
　背後で無数に起きている大爆発並みに納得のいかない気持ちを亜樹子が滾らせ、絶叫する中、以下次週へ。

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平成三〇(2018)年七月九日　最終更新