仮面ライダーW全話解説

第40話 Gの可能性 / あなたが許せない

監督:柴崎貴行
脚本:三条陸
 前回のラストに引き続き、冴子=Rナスカ・ドーパントが爆発を連発させ「うふふ…直にメモリを挿すとこんなに気分がいいなんて。」と悦に入っていた。直挿しが気持ちいい…………………ここで興奮するシルバータイタンは変態か?(恥)
 ともかくRナスカ・ドーパントの力は強烈で、クレイドール・ドーパントも、Wもアクセルも圧倒される一方だった。
 フィリップは「やめてくれ、あなただって僕の姉なんだろう?姉さん!」と叫んで制止しようとしたが、Rナスカ・ドーパントはフィリップ=来人を「家族」ではなく、「モノ」と言い切り、「興が削がれた」として、若菜にいつどんな時でも油断しないことを告げて立ち去った。その後若菜もすぐ退散した。
 最早2人の姉を説得するのは無理、との諦観が入るフィリップだった。

 その頃、そのすぐ近くではまだ亜樹子と透が揉めていた。「ジーンを返して」と筆談で訴える透に、「ジーンなんかなくたって皆の協力で映画は作れるよ!あいちゃんにだって想いを伝え…。」とまで言ったところで、透に「勘違いしないで。彼女に恋愛感情はない。」と書かれ、亜樹子の目論見は音を立てて崩壊した。
 亜樹子の立てたあい主演映画撮影に打ち込ませることでの透更生計画は、「透があいに惚れている。」という大前提に立っていた物だったから、土台から崩れた亜樹子の失望も分からなくはない。
 それでも映画作りしか方法を思いつかない亜樹子は再びメンバーらを招集し、映画作りを再開したが、フィリップは「川相透を変えるなんて絶対に不可能だ。」と首を横に振る。  だが翔太郎の意見は違った。「フィリップ…お前まだ解っちゃいねえな。俺達の所長サマの凄さをよ。」という台詞からはいつぞやの照井が言っていた、「左が一番所長を認めている。」との台詞が思い起こされた。

 場面は替わってディガル・コーポレーション屋上。敗北の悔しさに打ちひしがれる若菜を再度冴子が襲撃した。先程の去り際に油断大敵を伝えたのにあっさり襲撃を受けた若菜に冴子が「本当にあなたは成長しないわね。」と揶揄すれば、若菜は「あなたは過去の男達に縛られた亡霊。」と返す。
 能力差は歴然としており、レベル3のRナスカ・ドーパントは妹をボコりながら、そもそも彼女に渡されたメモリが「護身しか能のないオモチャみたいなメモリ。」とのことで、そのような物しか与えられていない段階で彼女なんて認めらていない旨を発言。
 辛うじて持ち前の再生能力で危地を脱した若菜は、ガイアプログレッサーだけが頼りと考え、何より半端な覚悟では姉の執念には勝てないことを認めざるを得なかった。
 直後、ガイアプログレッサーのもとに赴いた若菜は、その光とドロドロヌチャヌチャの粘液を引いている状態に何かを悟ったらしく、ジーンメモリの使い方もピンときたようだった。

 場面は替わって、屋外撮影所。
 透にあいへの恋愛感情がないことを納得出来ない亜樹子は、照井演じる案山子(←スナフキンじゃなかったのね)にあい演じるジェシカとキスシーンを演じさせることで、透の感情を刺激しようとした。
 この強要に狼狽えまくった照井は「絶望が…俺のゴールだ!」と普段敵に言っている台詞を自分の為に吐いてダッシュでトンズラ(笑)。
 一方、透は亜樹子に、「あきPと二人っきりで話がある」と相変わらずの筆談ながら、初めて自分から相談を持ち掛けられると、亜樹子は「実は本命は私だったの?」等と凄まじい勘違いを発動(笑)。
 鳴海亜樹子というキャラクターはストーリーを重ねるごとに間違いなく成長しているのだが、思い込みの激しさはそう簡単には治りそうにない(苦笑)。でも、ジーンメモリを取り返したがっている相手の願望は明らかなんだから、それぐらい気付こうね、亜樹子(苦笑)。
 案の定、まんまとジーンメモリを奪われた上に、そこへジーンメモリと透の両方を求めてやって来た若菜にまとめてお持ち帰りされてしまった。

 場面は替わってある広大な一室。気が付いた透がそこを何処なのか訝しがっていると、若菜がそこを映画撮影の自由に使う代わりに、自分の頼みを聞くよう持ち掛けた。
 その頼みとは、ジーン・ドーパントの能力で、ガイアプログレッサーを自分の体の隅々まで融合させ、2度と離れないようにせよ、とのことだった。勿論拒否はその場での死を意味し、「こんな簡単な二択を間違える人間はいないわよね?」との問い掛けは完全な脅迫だった。
 少し遅れてその場所にやって来た亜樹子は場に溢れる光に驚愕した。若菜曰く、「エステのようなものよ。私をミュージアムの女王にする為のね。」とのこと。
 若菜が自らの能力を強化させたことと、その為に透がジーンの力を使って協力したことを知った亜樹子は何かが切れ、今まで透の心を開かせるために腹が立っても封印していたスリッパツッコミを叩き込んだ。で、これ自体は普段の亜樹子なのだが、なんと返す刀でクレイドール・ドーパントにまでスリッパツッコミを入れたのだった!
 命知らずとも取れる行為に視聴者も驚いただろうけれど、クレイドール・ドーパントも相当に驚いていた(笑)。
 亜樹子はそのまま自分の想いを両者にぶつけた。「何がミュージアムの女王よ・・・どいつもこいつも流されてばっかで…それが本当にアンタ達のやりたいことなの?透君は映画が撮りたいんでしょ?自分の意志はどこいったの?それ見せてよ!
 若菜姫もだよ!本当の若菜姫は…今もフィリップ君が大好きな若菜姫は風都のみんなに130%の元気をくれる歌姫だよ!お願い…あなたも心を開いて!」
との叫びはまさに鳴海亜樹子ならではのもので、同時に心ある人間の気持ちを代弁したものでもあった。
 「人形の声を聞いて」ならぬ「自分の心の声を聞いた」と言ったところか(笑)。

 その妙な迫力と思いやりに2人はしばらく絶句したままでしたが、やがて若菜の方が我に返り、「ミュージアムの女王になる」、「姫はもう卒業」と言い切った。そしてガイアプログレッサーとの融合を終え、新たな進化を遂げていたクレイドール・ドーパントは凄まじい閃光と突風を放ち、亜樹子は吹き飛ばされぬよう近くの柱にしがみつきながら透にその場を逃れ、助けを呼ぶよう要請した。
 その声に応じて透はダッシュでその場を離れた。

 透が撮影現場に戻ると、一緒にいた筈の亜樹子がいないことを一同が訝しがったのだが、亜樹子の危機を伝えようにも、コミュニケーション手段であるメモ帳とペンがなかった。
 狼狽え、あいに激しく揺さぶられた透の脳裏に「自分の意志はどこ言ったの!?それ見せてよ!」という亜樹子の言葉がフラッシュバック。次の瞬間透は「…ああぁあああ!いい加減にしてよ虹村さん!君は元気良過ぎるんだって!ジェシカはもっとダークな雰囲気の女性なんだよ…って…言えた…自分の…口で。」とついに自分の口で喋り、そのことに気付いた。
 あいも「え、ちょ…私に伝えたかったのってそんな事だったの?」と二重の意味で驚き、それに対し透も「う、うん。ジーンで勝手に変身したりしてゴメン。」と答え………………って、早よ亜樹子の危機を伝えんかい、透!!
 ともあれ、ついに自分の言葉であいに意志を伝えた透を見て、この事実にフィリップは目を見開いて驚愕した。「川相透が変わった……?亜樹ちゃんが…変えた!」と。これこそが、最初から諦めていたら何も出来はしないことを知り、ポジティブに行動する女・鳴海亜樹子の真骨頂で、翔太郎が前述したところの「所長サマの凄さ。」だった。
 直後に、ようやく本来の目的を思い出した透から亜樹子の危機を聞いた翔太郎達はすぐさま急行した。

 翔太郎とフィリップが現場に駆け付けると、そこにはパワーアップを終えたばかりのクレイドール・ドーパントがいた。曰く、「たった今なじんだばかり。」とのこと。
 その様子を陰で冴子も見ていたのだが、クレイドール・ドーパントはそれに気付いており、姉と弟に自分の変化を見るがいい、と告げて、「エクストリーム!!」と叫ぶやその体に一直線にヒビが入り、音を立ててその体が割れていった。
 その頃、「女王」の誕生を感じ取ったのか、琉兵衛と加頭がクレイドールに関する話をしていた。琉兵衛曰く、「クレイドール…すなわち土人形とは古来より人間が神へ祈りを込める器として創りだしたもの。それを究めた今だからこそ、若菜は地球という神の巫女たり得る。Wとの戦いがいいデータになった。今まで泳がせていた甲斐があったというものだ。」とのことで、丸で、すべてのキャラが園咲琉兵衛という名の御釈迦様の掌の上で飛び回る孫悟空であるかのような解説をしていた。
 それに対して加頭は最初から若菜を「神の巫女」として選んでいたのか?と問えば、琉兵衛はそれを肯定し、彼が冴子を焚きつけてくれたおかげで若菜が成長した、とかなり皮肉交じりな礼を言った。
 成程これにはミュージアムの敵であるWを今まで自分から倒そうとしなかったことも納得出来るし、加頭が冴子に白々しい「告白」をしてまでミュージアムに用無しの筈の彼女を抱え込んでいたという一種の「裏切り」を黙認していたことにも整合性が取れたというものであった。
 そして現場ではいよいよクレイドールの殻は真っ二つに裂け、中からミュージアムの真の女王が姿を現したのだった。

 姿を現したミュージアムの真の女王は、身の丈も数メートル以上に及び、両腕は鞭のようにしなって伸び、Rナスカ・ドーパントをも一瞬で殴り飛ばした。
 これには冴子も撤退せざるを得ず、冴子は若菜に与えられていたメモリが「護身用のおもちゃ」ではなく、最初から最強のメモリだったことを悟り、それでもいずれ妹を玉座から引きずり下ろさんとの意を呟いた。
 そしてクレイドール・ドーパントはひとしきり暴れた後、一際巨大な破壊弾を撃って高笑いしながら次元の狭間に去っていった。このとんでもない攻撃を、防御に強い4つのメモリの力をすべて結集させたシールドで何とか耐えたWとアクセルでしたが、その強さには驚嘆するほかなかった。

 ともあれ、戦いは終わり、若菜にとっても、川相透にとっても、ジーンメモリは無用の長物と化した。透はメモリ不要の理由を「今の僕には仲間がいるし。」と、はっきり爽やかな笑顔で答え、渡されたジーンメモリも破壊された。
 まずはこの問題は大団円を迎えた。

 だが、変貌を遂げ続ける若菜に関する難題はまだ続いていた。
 クレイドールの秘密を探る為、地球の本棚にアクセスしていたフィリップは、何とそこで若菜と出会った!彼女が現れたのはフィリップと同じ力だと云う。ただ完全なものではないらしく、フィリップの様に本を読むことも手に取ることも出来ないが、それも時間の問題とのことだった。
 フィリップは狼狽えながらも、若菜に今も自分が彼女を大切な家族だと思っていて、彼女を救い、家族を取り戻すことを諦めない旨を叫んだ。どうやら今回の亜樹子に感化されたようだ。
 だが、若菜から返って来た言葉は「馬鹿な子…地球一番がいいクセに。」だった。まあこれだけの会話で改心する筈もないだろうけれど(苦笑)。

 ラストシーンは鳴海探偵事務所。取り敢えずは事件が解決し、一息ついているところに凄まじい形相の照井が現れた。
 曰く、「あの時逃げてしまった自分が許せない。」とのことで、彼なりに研究を重ねてきた、とのことだったが、その対象が「キスシーン」だから、照井が壊れた状態になってしまった(苦笑)。
 今度こそ逃げない、という姿勢は極端から極端に走って猪突猛進状態となり、照井は誰かれなしにキスしようとする。勿論それを喜ぶものなんていない訳で、そんなドタバタ喜劇の落ちで第40話は幕を閉じた。


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平成三〇(2018)年七月九日 最終更新