仮面ライダーW全話解説

第5話 少女…A / パパは仮面ライダー

監督:黒沢直輔
脚本:三条陸
 議会にて第二風都タワーの建設が承認されたことをつげつつ、クリーンエネルギー推進を主張する風都市女性市会議員・楠原みやび(川田希)。年端もいかない娘・あすか(大村らら)を伴い、娘にも希望を語らせて利用するあざとさ満開で話は始まった。
 その建設イベントを警備するのは警察と翔太郎。例によって真倉刑事は自分達の活動範囲に私立探偵がいるのが気に入らずに噛み付いて来たが、翔太郎曰く、彼等が警備を務めているのは楠原議員からの正式な依頼によるものとのことだった(←しかも全額前金で支払い済み!)。

 楠原が警護を依頼したのは、第二風都タワー建設に反対する人物から命を狙われていたからで、それを言っているそばからいきなり狙撃が起きて、真倉刑事が負傷した。
 翔太郎は議員を物陰に押し込め亜樹子に託すと、一旦その場から姿を隠し、Wに変身して彼女達を助ける為に戻って来たのだが、そんなWを待ち受けていたのは、Wを「パパ!」と呼ぶ楠原あすか。
 唐突かつ意外な台詞に戸惑いつつも、翔太郎は彼女達を守り切った。

 直後、Wの正体を知らない楠原は翔太郎を「護衛対象を置いて逃げた!」として非難。正体を隠して戦わなければならないヒーローの、よくある苦悩だな(笑)。
 何とか宥めつつも、安全の為にも翔太郎は楠原に娘を一緒に連れて歩くのだけは止めるよう勧めるが、子供によるパフォーマンス・人気取りという政治効果を求める楠原は応じようとしなかった。
 依頼時に既にそんな話があったから、翔太郎は依頼人に対して好感を抱けずにいたのだが、当のあすかは、「おじさん(←注:翔太郎のこと)。信じてるから」と平気な顔。
 おじさん呼ばわりに苦虫を噛み潰す左翔太郎こと桐山蓮氏は放映当時24歳(笑)。私立探偵には気に入らない依頼を断る権利もあるのだが、翔太郎はあすかの言葉の真意を知る為に依頼を受けたのであった。

 翌日に建設予定地の買取交渉を控えていた楠原はその夜、宿泊したホテルでも姿の見えぬ狙撃手に襲撃を受けたが、今回は翔太郎が生身でこれを救出。その執拗さを訝しがる翔太郎だったが、果たしてその裏には例によってミュージアムの存在があった。

 そしてその園咲家では琉兵衛が第二風都タワーの資料を見て大層ご立腹だった。ちなみに愚痴の最中に飼い猫に同意を求めたことで、猫の名前がミックであることが判明。
 風都を裏で牛耳る力からこれぐらいの計略を潰せそうな気がするが、若菜曰く、「建設予定地はお姉様の管轄」で「お姉様、最近会社の部下達と上手くいってないみたい。」とのことで、これには琉兵衛もいつもの柔和な笑顔ではなく厳しい表情で冴子の手腕を懸念していた。
 その冴子は自社の社長室にて内線一本で「第6開発チームは即刻全員解雇。第7チームを昇格してプランを継続。」という大雑把な人事異動(笑)を発動。
 夫の霧彦もどういう意図か「電撃人事」と茶化す。どうやら冴子は父の不機嫌に焦りを感じている様だが、本当に有能な社長は1つの咎でチーム丸ごと解雇なんてしないぞ、冴子(苦笑)。チーム責任者の降格が妥当なところかな?
 そんな妻にして社長の気持ちと職務はちゃんと意識しているようで、霧彦は第二風都タワーの問題に自ら乗り出すことを提言した。

 時は移って翌日。Wを「パパ」と呼ぶあすかの真意を探るべく、彼女に様々な質問をぶつける翔太郎。そんなあすかは仮面ライダーナイトに似たフェルト製の人形を取り出すのだが、ここで車は目的地に到着し、謎解きは後回しに。
 買収交渉相手の地主の鷹村源蔵(伊東孝明)という男は、友人とラジコンで遊び続けながら応対するという態度で、端から土地を売るつもりはないらしく、まともに取り合おうとしない。
 あすかも話し合いを懇願するが、「お嬢ちゃんはママによく仕込まれてるねぇ。」という鷹村の嫌味ったらしい台詞にはさすがに楠原議員に好意を抱けないシルバータイタンもカチンと来た。
 翔太郎もそれは同様でその「子供らしく遊んでなさい」という鷹村に「アンタこそいい大人なんだから遊んでないで働いたらどうだ?親に叱られるぞ」と詰め寄れば、鷹村は「あ?僕は親に叱られたことなんて今まで一度もないよ」と返す。どんな教育を行う家庭に育ったんだ?
 結局来客を理由に退去させられた。

 鷹村が行っていた「来客」は嘘ではなかった。そしてやって来た来客は須藤霧彦改め園咲霧彦。黒のスーツに、赤いワンポイントの白スカーフという、ウォッチャマン情報にあった「ガイアメモリの売人」と全く同じスタイルだが、翔太郎はこれを訝しがらず(苦笑)。  だがすれ違った瞬間、翔太郎と霧彦は互いに何かを感じ合ったようではあった。
 直後、霧彦と鷹村の商談(?)が始まった。その会話から楠原暗殺は冴子(の会社)が鷹村に依頼(というよりは命令)したものであることと、霧彦が仕事関係者から「セールスマンから幹部にのし上がったっていうシンデレラボーイ」と見られ、快く思われていないことが分かった。

 場所は変わって鳴海探偵事務所。フィリップの調査で、狙撃の時に撃ち込まれた銃弾は金属ではなく、生物の歯であるところまでは分かったのだが、何の生物なのかという特定には撃ち込まれた時の状況が詳しく分かる必要があるらしい。
 また鷹村を怪しいと睨んでいた翔太郎の検索依頼からフィリップは今回の仕事に関する重要な情報も掴んでいた。
 つまり、楠原の夫・楠原大三郎(長谷川ほまれ)は去年、第二風都タワー建設に反対すると思われる何者かに殺害されていたのだった。
 それを問われた楠原みやびは、第二風都タワー建設が志半ばで倒れた夫の遺志で、彼女がそれを継いで議員になったことを認めた。
 その為に「ママの仕事を手伝っていればパパが帰って来る。」との嘘を娘に告げていたことを詰る翔太郎だったが、楠原は父親が大好きだったあすかにショックを与えない為の苦肉の策だと言い張る。しかし父親の死を伏せるには苦しい嘘ではないかい?どこか政策に子供を利用していることを正当化し続けている節を感じるのシルバータイタンだけではあるまい。

 一方、フィリップは歯の持ち主が「古代生物」というところまでは絞り込めたが、完全特定には狙撃位置が必要であることを述べる。翔太郎が送って来た写真には犯人が映っていないので位置が判然としなかったのだが、亜樹子の「どこからって・・・写真に写ってないんだから、そこ以外の場所からでしょ?」という逆転の発想をヒントに「写真に写っていないのではなく、写していない場所」として「空と陸の生物を検索対象から外す」という思考を得て、狙撃位置を1回目はビルには貯水槽で、2回目はホテルのテラスの前の海と見定め、ついに「アノマロカリス」という聞き慣れない古代生物に辿り着いた。

 「楠原みやびを水辺に近づけるな」というアドバイスがもたらされたが、その時正に楠原は水辺にいた(左翔太郎曰く、「お前の頭脳は100点満点だけどよ!いっつも間が悪いよな」)。
 翔太郎はWに変身し、水中から現れたアノマロカリス・ドーパントからすんでのタイミングで母子を救い、青のメモリ「トリガー」を装着。水面に雨あられの銃弾を叩き込み、を地上に炙り出した。
 陸に叩きだしたアノマロカリス・ドーパントジョーカーエクストリームで討ち果たしたWだったが、メモリブレイクされて気絶して現れたその正体は鷹村ではなく、彼と一緒にラジコンに興じていた男(えんじ則之)だった。

 翔太郎がそれに気付いた瞬間、「パパー!」と叫びながら走り寄るあすか。「駄目だ!こっちに来るな!」と大声で制止する翔太郎だったが、水面から現れたもう一匹のアノマロカリス・ドーパントの牙があすかに向かって射出されたところで以下次週へ。


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平成三〇(2018)年六月八日 最終更新