仮面ライダーW全話解説

第41話 Jの迷宮 / 猟奇的な悪女

監督:石田秀範
脚本:長谷川圭一
 冒頭は風都署の拘置所から始まった。拘束されている1人の容疑者が翔太郎との面会を求めているとのことだったが、行ってみると拘束されていたのは何と刃野刑事!
 容疑は宝石泥棒とのことだが、勿論刃野刑事は容疑を認めておらず、翔太郎に嵌められた自分の無実証明を依頼したのだった。その横では真倉刑事が完全に刃野刑事を犯人と決めてかかって、「俺はいつかこんな日が来るんじゃないかと思ってたんだよなぁ〜。」と嘯いていた。うーん、中川真吾氏、嫌味ったらしい木っ端役人を演じさせたら天下一品かも知れない………ここまで来るとムカつき度も感心レベルだ(苦笑)。

 刃野刑事が語るところによると、昨夜酒を飲んだ帰りに警察から逃げてきた大きなダイヤの指輪をつけた女に蹴り一発でのされてしまった。その後、気絶中に盗難ダイヤを懐に入れられ、そこに警察官が駆け付けてきて逮捕されたとのことだった。
 確かに刃野刑事が真犯人ならそんな分かり易いものを懐に入れたままひっくり返っているのもおかしいが、重要証拠物が出てきては刃野刑事が拘束されるのも分からないではない。いずれにせよ、手掛かりはその女しかなく、刃さんの冤罪証明を求めて早速翔太郎と亜樹子は捜査に向かった。

 聞き込みから、最近若い女性ばかり7人が連続失踪しており、そのいずれもダイヤの指輪の女が関わっていることが分かった。だがそうなると被害者も加害者も若くて美しい女性ばかりの中、亜樹子が言うところの「冴えない中年男」である刃野刑事は1人浮き上がる。
 だが、ここで翔太郎が亜樹子の台詞に噛み付いた。翔太郎曰く、「亜樹子…刃さんは確かに冴えない中年だが実はスゲー男なんだぜ。」とのこと。確かに2人は古い付き合いだから、翔太郎しか知らない刃野刑事像は存在するだろう。
 どう凄いのかと問う亜樹子に翔太郎は続けて曰く、「あの人はな、騙され上手なんだ。何度同じ嘘をつかれようが、何度でも騙されちまう。あんまり騙されるもんで、終いにゃこっちが嘘に付き合うようになっちまうくらいにな。でも、不思議とそれが悪い気しなくてよ…。」と。
 そう語る翔太郎の回想シーンでは、まだ高校生の頃の翔太郎が、交番勤務の制服警官だったと思しき若き日の刃野巡査に街の悪ガキとして追い回される日々が繰り返されていた。
 生来のお人好し故、毎回ガキどもに嘘をつかれてはまんまと逃げられるカッコ悪いお巡りさん。だが、いつしかそんな彼を街の悪童達は自然と好いていたというものだっだ。

 次なるシーンは会員制クラブ。サンタちゃんの情報から、被害者の女性7人は全員がモデルで、且つクラブのメンバーだったことが判明していた。
 クラブに入ろうにも、当然会員制だったのでボーイは2人の入館を拒んだ。だがそこに1人のイケメンが助け舟を出した。
 その人物は超人気モデルの上杉誠(河合龍之介)。このクラブのオーナーであり、男女問わず広く好かれ、2人を笑顔で快く入店させ、職業とルックスを鼻にかけない好青年だった。
 館内は、「美を競っています。」と言わんばかりの雰囲気でドレス姿の美女達が何とも選ばれた人間面した妙な酒盛りに興じていた。勿論シルバータイタンが好むようなドカ食いどんちゃん騒ぎではない(苦笑)。
 早速怪1人の怪しさ満点の女を見つけた亜樹子は近づいて声をかけようとするが、いきなり有無を言わさず投げ飛ばされた。そしてその女が言うには、「ダイヤの価値って分かる?美しく、決して傷つかない…この私みたいにね!」とのことで、高慢ちき女丸出しの台詞に不快感を覚えたのはシルバータイタンだけではあるまい。
 地面に叩きつけた亜樹子をヒールでグリグリ踏みつけるその姿は完全に女王様モード。そしてジュエル・ドーパントに変身すると、「みんなダイヤになって私を飾るといいわ!」といって、指先から放出したガスで、クラブ内にいた女達を次々宝石に変えていった。
 どうやらこうして得たダイヤを刃野刑事の懐に入れたようだ。かくしてあっさりと真犯人との対決となり、こいつを捕らえて突き出せば刃野刑事の無実は張らせると意気込んでバトルとなったのだが、如何せん相手は宝石のドーパント。硬さは尋常ではなかった。
 パンチ・キックは勿論こっちが痛いだけで、メタルシャフトも、ルナトリガーの光弾も弾き返された。フィリップの分析によると「ダイヤの粒子を瞬時に結晶化させ、ミラー状のシールドを出した。」という防御方法らしい。
 どや顔で「言ったでしょ?私は誰にも傷つけられない。」で大上段に構えるジュエル・ドーパント。ダイヤは燃えることや、劈開性という脆さも持っていることを突っ込みたくなるが、まあこの段階であっさり砕けることはあるまいて(笑)。
 かくしてジュエル・ドーパントの防御力の前に手も足も出ず、真犯人を目の前にしながら、逃げられてしまった。刃野刑事が犯人でないことははっきりしたが、ジュエル・ドーパント=証人を連行せずして警察を信用させることは出来ない。

 騒動が落ち着いたところで、上杉から謎の女性の正体が知らされた。彼女の名は城島泪(奥村佳恵)。上杉とは親友とのことだった。泪が変貌してしまったのは自分のせいで、出来れば彼女を救いたいという上杉。
 ともあれ3人はジュエル・ドーパントの無敵の防御力を何とかするため一先ず事務所に戻り、フィリップは弱点の検索に掛かった。だが、絞り込みを終え、1冊の本を手にしようしたところで(予想通り)若菜が現れ、目当ての本を取り上げた(←もう本にも触れるようになっていた)。
 若菜曰く、「前に会った時のシンクロ率は50%程度だった」が、触覚を得た今、フィリップを拉致することも出来る、と言って襲い掛かって来た。慌てて地球の本棚から逃れたフィリップは検索出来ないことを翔太郎に詫びるのだった。

 場面は替わって風都署。一先ず中間報告のため、翔太郎と亜樹子は刃野刑事への面会に訪れた。そこには昨夜のジュエル・ドーパント大暴れで腕に怪我を負った上杉も事情聴取に来ていた。
 物分かりの良い刑事ならこの段階で(留置は解かずとも)刃野刑事を容疑から外しそうなのだが、マッキーは相変わらずの分からず屋だった(苦笑)。
 刃野刑事に真犯人が城島泪だと告げたが、当の刃野刑事がそれを真っ向から否定した。刃野刑事的に彼女が窃盗を働くのが信じられないようだ。だが上杉が翔太郎の言を追認した。「いいえ本当です。僕と智(小谷幸弘)と3人でつるんでたあの泪です…ご無沙汰してました刃野さん。」と頭を下げていることから、上杉と泪と、智とやらが学生の頃の翔太郎同様、刃野巡査に追い回されていた悪童達だったことが分かる。
 勿論刃野刑事も彼を覚えていた。風都の超人気モデル上杉誠が刃野刑事に頭を下げていることにさすがのマッキーもびっくり。ちゃっかりサイン貰っていたが(苦笑)。
 聞けば上杉は若い頃、泪と智の3人で「風都の平和は俺達が守る!」とか言って喧嘩に明け暮れていたという。そして大人になったかならないかの頃、智が泪のことを好きだと上杉に相談し、上杉は智の気持ちを泪に伝えたが、泪が好きだったのは上杉だった、という黄金パターンが語られた。
 友情を重んじた上杉は泪を振ったが、これを境に泪は変わってしまい、智は(泪がドーパントになった直後に)行方不明となってしまったとのことだった。泪を化け物にしてしまった自責の念に駆られ、刃野刑事に謝罪する上杉。
 だがそれでも刃野刑事は「信じられない…。」と首を横に振り続けた。

 場面は替わって風都ホテル。加頭から若菜が地球の本棚に行く力を得て、ナスカメモリを以てしても勝てる確率が限りなく0%に近いことを相変わらずの無表情で淡々と告げられ、面白くない冴子がいた。
 だが、加頭は「その勝率を引き上げるメモリが存在します。話を聞きたいですか?」という。「言いたいんでしょ?」とのツッコミを入れたくなる嫌な投げかけ方である(苦笑)。
 結局、加頭の助言から冴子は打倒若菜の為に城島泪確保に動いたのだった。


 泪に接触せんとした冴子だったが、メモリを見せるよう求められた泪は例の、「ダイヤの価値ってわかる?美しく、決して傷つかない…この私みたいにね!」というや、いきなりの攻撃に出た。
 珍しく生身のまま格闘戦を繰り広げ、それなりに華麗な立ち回りを見せる冴子だったが、やはり泪の方が喧嘩慣れしていたようで、女子トイレの床に倒され足で踏みつけられるという屈辱を喫することとなった。
 と、そこに一歩遅れて到着した超常犯罪捜査課。逃げる泪を真倉が追い(←返り討ちに遭わないか?)、照井は冴子に「園咲冴子。ガイアメモリ流通の罪で逮捕する。」と宣告したが、勿論冴子が従う筈なかった。
 Rナスカ・ドーパントとアクセル・トライアルフォームというともにスピードに長けた者同士、互角の戦いが続いた。
 一方、泪を追跡してきた真倉刑事は刃野刑事同様、華麗な蹴り一発でKO(笑)。その泪の前には、翔太郎と亜樹子が立ちはだかっていた。翔太郎は泪が指に填めたダイヤが、1ヶ月前から行方不明の武田智ではないかと問うた。
 泪は意外にあっさりそれを肯定。例によって、「ダイヤに価値って解る?」と尋ねてくる。それに対する翔太郎の答えは、「ああ解るぜ。お前みたいな女には絶対に似合わないってことがな!」という皮肉めいたもの。確かにこの悪びれなさは美しいと認めたくない。
 最初からエクストリームで戦うWだったが、プリズム・ブレイクもダブルエクストリームも効かず。想定を遥かに超えて厄介な硬度を持つジュエル・ドーパントにWが苦戦を強いられる中、留置所では刃野刑事が泪の事を思い出していた。
 泪が上杉のことを好きだったことに思いを巡らせていた刃野刑事は、泪がよく言っていた、「好きになればなるほどそれを壊したくなる。」という台詞を思い出していた。
 「やべえぜ翔太郎……上杉の命が危ねえ!」と叫ぶも留置場ではどうすることも出来ない………というところで以下次週へ。


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平成三〇(2018)年七月九日 最終更新