仮面ライダーW全話解説

第43話 Oの連鎖 / 老人探偵

監督:坂本浩一
脚本:長谷川圭一
 鳴海探偵事務所に2人の女性が助けを求めてきたことから話は始まった。1人はシルバータイタンが好む妙齢の女性・後藤良枝(遊井亮子)で、もう1人は老婆・後藤みゆ(久松夕子)。2人は母娘なのだが、なんとみゆの方が娘なのだと云う。
 半狂乱になりながら「お願いです!娘のみゆを助けて下さい!」と懇願する良枝だが、勿論鳴海探偵事務所の面々も俄かには理解出来なかった。
 何とかなだめながら聞いたところによると、泣きじゃくる老婆がみゆ10歳で、たった一晩でこんなに歳を取ったと云う。
 勿論こんな不可解な事件が起きては「ドーパントの仕業」と断定しされるのがこの番組の黄金パターンであるのは言うまでもない(笑)。

 調査とみゆが出席出来ない理由を告げに照井と亜樹子が良枝とともにやって来たのはみゆが所属する児童劇団。
 人の好さそうな大倉団長(樋浦勉)はトラブルで当面顔を出せないという報告に「つい先日主役が決まってお母さんと喜んでいたのに。」と心底残念そうに、しかし手掛かりとなりそうな台詞を口にした。
 10歳の少女を老婆にし、他に何の要求もないことから、犯行動機を怨恨と見た照井と亜樹子が「あの2人のことを恨むような人物に心当たりはありませんか?」との聞き込みを行うと、早速怪しさ満点の女性が浮上した。
 後藤良枝をよく知り、「大して裕福でもないクセに背伸びしちゃって。見ているこっちが恥ずかしくなりますわ。」と人の不幸に関する話にも笑いながら話す女性・関根光子(ひがし由貴)。娘の久美(小西結子)はみゆと大の仲良しとのことだが、母親同士は怪しい。
 「私は怪しいです。」という看板を掲げているように感じるのはシルバータイタンだけではあるまい。その後言動から、みゆの降板で久美が主役になったことからも、動機も充分。まあ彼女をドーパントと決めつけるのは早計だが……。

 場面は替わって風都郊外。翔太郎はウォッチャマンから「老けさせ屋」の存在を聞き付けていた。巷の噂では、ある占い師に金を渡して恨んでいる相手を教えると次の日には老人にしてくれるというもの。確かに若者の集う場から追放したいときには最適だ。
 「老人は海を何と呼ぶ?」という合言葉に、ヘミングウェイの『老人と海』に因んだ、「ラ・マール」だと答える占い師がそれらしい。かくして亜樹子が風都中の占い師に次々と合言葉を投げかけて歩いた。翔太郎と照井は物陰で様子をうかがい、亜樹子に危機が迫った際には助けに入る役回りである。

 場面は替わって園咲邸。若菜が琉兵衛にシュラウドのことを尋ねていた。
 若菜は彼女を「ミュージアムに対し復讐を進めている女」として、自分の手で排除するとしているのに対し、琉兵衛は「怨怨の塊」ゆえに一筋縄ではいかない相手である、と告げた。父がそれほどまで言うその女の正体について尚も食い下がる若菜に琉兵衛は重い口を開いた………。

 その頃、散々足を棒にして風都中の占い師を渡り歩いていた亜樹子はとある高架下にて遂に合言葉を知る占い師を見つけた。
 合言葉からすぐに商談に入ろうとした怪しい占い師・相馬卓(小豆畑雅一)はいきなり大金を提示した。とはいえ、1万円で1年老けさせるという単純な提示ではあったが。
 勿論亜樹子に金を払う必要はない。炙り出しが目的なのだから、んでもって、相馬もすぐに嵌められたことに気付いた。
 照井が警察手帳を突き出して逮捕しようとすると、相馬は軽い調子でオールド・ドーパントに変身。いきなりけったいな砲弾らしきものを亜樹子に向けて発射したが、照井はアクセルに変身し、体を張ってこれを阻止。大したダメージがないことにオールド・ドーパントは驚いた。
 同時に変身し、攻撃してくるWにはしかっりダメージを与えた。そしてオールド・ドーパントが言うところの「普通の反応」を見せたらしく、Wの、正確には翔太郎の動きがおかしくなった。
 フィリップが言うには翔太郎の動きが重いらしく、その翔太郎は戦いの最中だと言うのに、「あ〜…渋〜いお茶がぁ〜飲みたいのぉ〜!」と言い出す……。やがて変身が強制解除となるや、翔太郎の言動は老人のそれと化していた。

 例によって皆が驚く隙にオールド・ドーパントは逃げ去ったのだが、不気味な光沢の泥の様な海を広げるその攻撃をフィリップは、テラー・ドーパントのそれと酷似したものであったことを思い出した。
 オールド・ドーパントの攻撃と翔太郎の変化に一行が狼狽しているところにシュラウドが登場。照井にオールド・ドーパントの攻撃が効かなかった原因を「特異体質ね。来人と一緒。」とし、左翔太郎はもう使い物にならないから、フィリップと竜の2人でWになれ、と云う。
 勿論、今やフィリップがそれに従う筈もなく、照井もまた「あり得んな。フィリップのパートナーは左だけだ。」と視聴者的にも心地よく言い切った。
 だがシュラウドは重ねて、フィリップと翔太郎では「究極のW」になれず、サイクロンアクセルエクストリームに強い憎しみがを源とするエネルギーが加われば、オールド・ドーパントはもとより、園咲琉兵衛にも勝てると力説し、「今度ばかりはあなた達の方から頼むことになるわ。「究極のWになりたい」と。フフフ…。」と笑って去って行った。

 場面は替わって鳴海探偵事務所。突然「近くに来たからそのシケたツラ見に来てやったぞ!」って悪趣味な挨拶をしながら入って来た真倉刑事は事務所内に1人の見慣れない老人(名取幸政)に気付いた。
 老人はオールド・ドーパントに老けさせられた翔太郎で、真倉刑事に「スマンがぁ〜肩を揉んでくれんかのぉ〜。」と嘆願。何故か断れない、器は小さくてもどこかいい奴なマッキー(笑)。犯罪者や格下と見た相手にはエラソーでも、上司や年長者は敬うってことか?(笑)
 翔太郎の問題は問題として、フィリップは地球の本棚でオールド・ドーパントのことを閲覧しようとしたが、そこで物凄い形相で本棚を閲覧しまくる若菜の姿があった。
 フィリップに気付いた若菜はシュラウドについて尋ねて来た。どうやら琉兵衛はシュラウドの正体を教えても、所在は教えなかったらしい。シュラウドに会ってどうする?若菜はフィリップがシュラウドの正体を知らないとみて、「まぁいいわ」というと、今回はフィリップを連れ去ろうともせずに引き上げた。

 一方、事務所では良枝が半狂乱になっていた。みゆのことを心配しているのも間違いないが、「せっかく劇の主役を勝ち取れたのにこのままじゃ…!」という台詞が、怨恨の原因を感じさせる。
 亜樹子は「老けさせ屋」の犯行によるものであることは判明した、と報告し、犯行を依頼した人物と思しき、関根光子宅に、フィリップ、良枝と供に問い質しに向かった。

 関根宅へ向かうと、まさにそこから老けさせ屋・相馬が出て来たところだった。依頼人は光子であったことがあっさり判明。半狂乱になってそれを詰問する良枝に、バレては仕方ない的に開き直る光子。大方の予想通り、我が娘を主役にしたいが為に、主役の座を射止めた女児を老けさせえることを依頼したものだった。
 現実の世界には人を老けさせる罪はないが、もし「老けさせる」を「殺害」に置き換えれば、光子のやったことは立派な教唆という名の共同正犯で、許されざる行為である。
 さすがに良枝がブチ切れて光子と取っ組み合いになったのも無理はなかった。可哀想なのは、お友達のママと自分のママが大喧嘩する様を見て呆然と立ち尽くす久美ちゃん。いたたまれない亜樹子がその肩を抱く。

 そして表ではフィリップが携帯で翔太郎にファングへの変身を呼びかけた。老化で耳も遠くなっている翔太郎に伝えるのは苦労したが、ようやく聞き取った翔太郎は「!マッキー水を持ってきてくれんか?急いで!」と要請して、真倉刑事に変身する姿を見せないように取り計らった。あちこちにガタが来ても頭の中身はしっかりしているようだ。
 震える手でメモリを挿すのも苦労したが、何とかファングジョーカーへの変身に成功した。フィリップを素体とするファングなら通常通り戦えるのでは?と踏んだが、読みは外れた。翔太郎の老化はしっかり影響しており、睡魔に襲われたため、Wは半身不随状態で、いつもより調子が悪いぐらいであった。

 場面は替わって風都ホテル。自室から加頭のもとに来た冴子は加頭が大量のガイアメモリを持っているのに気づいた。加頭曰く、「あなたよりもずっと前ミュージアムを抜けた女性がかつて開発し、その後封印されていたものです。我々財団Xが独自に開発を進め、次世代型ガイアメモリとして完成させました。」とのこと。まあシュラウドとの想像はつく(笑)。
 冴子に来客が来たようだ、と言って席を立った加頭だったが、その来客とは照井竜。
 前回は会うなり冴子を逮捕しようとした照井だったが、今回は園咲家とシュラウドの関係、そして彼女が何者なのかを詰問した。
 気怠そうにそれに応じた冴子はビリヤードをしながら、という無礼な態度ながらも、ビリヤードに例えて説明を開始した。態度は不遜だが、腰を屈めたり、台に足を乗せる仕草が色っぽいから許そうか(苦笑)。
 つまり、冴子はビリヤードの9個のボールを落とす為に突き動かす白球の如きすべての黒幕であると。
 特に照井にとって聞き捨てならなかったのは、シュラウドが園咲琉兵衛という怨敵1人を討つ為に、その周りにいる人間すべての人生を操作し、それがために照井の家族が命を落としたということだった。
 もう少し核心に触れると、冴子は亡き井坂深紅郎がシュラウドからウェザーのメモリを受け取ったことを教えられていた。つまりシュラウドがウェザーのメモリを渡していなければ照井の家族が殺されなかった可能性は高い。まあ害意までは分からんが。
 シュラウドと井坂の関係を知って照井が苦悩するところで以下次週へ。


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平成三〇(2018)年七月九日 最終更新