仮面ライダーW全話解説

第45話 Kが求めたもの / 悪魔のしっぽ

監督:諸田敏
脚本:長谷川圭一
 冒頭は鳴海探偵事務所に物凄い勢いの依頼人が来たことから始まる。
 何が物凄いかというと、やたら鞭を振るっているのである。といっても妙な性癖を想像しないで頂きたい。インディー・ジョーンズのコスプレをした探検者風のスタイルの女性である。
 女性の名は轟響子(平田裕香)で、その素性は「見ての通り博物館の学芸員よ!」と名乗ったのだが、目にも留まらぬ華麗な鞭さばきで翔太郎をグルグル巻きにしながら「見ての通り」って、アンタ………(笑)。
 乱暴キャラかと思いきや、前触れなく落ち着いた口調になる謎なキャラの女・響子が依頼するには、「私の憧れの方を助けたいの。風都博物館館長。」とのこと。風都博物館館長と言えば当然園咲琉兵衛のことである。
 実際、彼女もその名前を出し、それを聞いては安直に「はい、受けましょう。」と言えないのだが、取り敢えず事情を聴いてみると、館長が発掘現場で何か大事な物をなくしたらしく、それを一緒に探して欲しいとのことだった。
 その「大事な物」は発掘現場に置いていたところを小規模な地殻変動によって埋没してしまったとの事。そのことを琉兵衛と加頭との会話から小耳に挟んだ響子は、敬愛する館長のためになりたいと考えて鳴海探偵事務所に駆け込んで来たとのことだった。ということは、琉兵衛は響子の独断を知らないのだろう。
 背後に園咲琉兵衛の名を聞いては複雑だが、翔太郎とフィリップはこれを運命と考えて受けることとなった。
 琉兵衛がなくしてしまった物の名は「イーヴィルテイル」=悪魔の尻尾という物騒な名前を持つ物とのこと、果たしてラスボスがそこまで大切に思うそれは何なのか?

 場面は替わって園咲邸。上機嫌な様子の琉兵衛がミックに妙な仕草で呼び寄せ、餌をやっていた。どうやら特別な食事らしいのだが、器はともかく、餌は猫缶のキャットフードにしか見えなかった(笑)。
 若菜が父の上機嫌を指摘すると、その理由は若菜が「地球の巫女」になる日が近づいているからとのことだった。だが同時に琉兵衛には娘を嫁に出すような寂しさもあるらしい。それに対して「地球が婿に来ると考えて下さいな…。」という尊大な若菜の台詞も琉兵衛には頼もしいらしい。
 そんな若菜が完全なる地球の巫女となる為の最後の儀式という重大事を控えた父娘に残された最後の問題はイーヴィルテイルで、琉兵衛は食事を終えたら探してくるように、とミックに命じた。

 場面は替わって星降谷発掘現場。そこはかつて琉兵衛が貴重な化石や遺跡を数々発掘し、その後辺りの土地を買い取って邸宅としたという場所でもあった。つまりはミュージアム発祥の地で、園咲邸の間近でもあった。
 響子とともにやって来た翔太郎と亜樹子だったが、ここで亜樹子が「ダウジングスリッパ」なるものを持ち出す。まあ有名なダウジングに使う針金の一部がスリッパに置き換えられていると思って下さい(苦笑)。
 だが、この一見アホらしいアイテムが効果を発揮。さしたる時間もかからず瓦礫の山に反応が見られ、そこを掘り返してみると小さな小箱が出てきた。

 場面は替わって鳴海探偵事務所。以前出来なかったミュージアム関連の項目を駄目元で検索してみたところ、あっさりと「Raito Sonozaki」という表紙の本を見つけ、フィリップは硬直した。
 些か想像しがたいが、確かに自分の知らない自分について記載された書物があれば、見たい気もするが、見るのが怖い気もする。ましてやフィリップの場合、自分が園咲家という特殊な家の人間であることを考えれば尚更だろう。
 結局この時のフィリップは探求心よりも恐怖心の方が勝ってしまった。自分の本を放り投げるようにして地球の本棚から退出したフィリップを陰で見ていた若菜は、冷笑しながら、「意気地がないんだ・・・せっかくセキュリティを外してあげたのに。」と呟いていた。以前出来なかった検索が今回出来たのはそういう訳か……。

 その頃、翔太郎達はイーヴィルテイルが入っていると思しき箱の鍵を解除しようとしていたが、そこに探索を命じられていたミック=スミロドン・ドーパントが襲い掛かって来た。更にあの黒いドロドロを溢れさせながら、命じた張本人である琉兵衛の声が響き渡った。
 イーヴィルテイルの返還を強要する琉兵衛はそれが「来たるべき”ガイアインパクト”の為に必要なもの。」とも告げた。その初めて聞く単語が何であれ、風都を泣かす者は許さない、とばかりに大上段に構えたい翔太郎だったが、一先ず亜樹子と響子の身を案じて、戦闘に入らず、遺跡を脱出した。

 場面は替わって鳴海探偵事務所。何とか事務所にたどり着いた一行はフィリップ、照井を交え、イーヴィルテイルをどうするか相談していた。
 響子は館長がこの街にメモリをばら撒く巨悪との説明を受けても納得しきれない様子で、それに対して翔太郎はつい「あの男は目的の為なら家族も平気で捨てるような悪魔なんだ!」と声を荒げた。
 だがすぐにフィリップの存在に気付き、その気持ちを慮って謝罪したが、フィリップは先の検索で自分の本を読めなかった自分を例に出し、これを許した。
 だが、そんな会話をしている合間に響子がイーヴィルテイルとともに姿を消していた。勿論向かう先は1つしかないので、翔太郎と照井はすぐさま彼女を追い、一方のフィリップは覚悟を決め、自分の過去を閲覧することを決意した。

 場面は替わって風都博物館。自らの目で館長の正体を確認せずにいられなかった響子が琉兵衛を呼ぶと、琉兵衛が現れ、彼女に聞かれもしない自分の計画を語った。
 琉兵衛が語るところによると、地球の歴史において数多くの生物が絶滅し、このままでは人類もその例外ではない。だが、「地球とひとつになる」ことで、人類が未来永劫、種として地球に生き続けることが出来る、というものだった。
 そして琉兵衛は響子にそのために必要な物であるイーヴィルテイルの返還を要求した。
 どうやら琉兵衛には、人類を絶滅から守り、未来永劫生き延びる種として昇華させる、という彼なりの理想があるらしい。やはり琉兵衛並びにミュージアムは歴代悪の組織とは一味違う。
 琉兵衛の台詞から「ガイアインパクト」の概要もうかがえた訳だが、敬愛していた人物の暗黒面に恐怖する響子がイーヴィルテイルを奪われそうになったところ翔太郎達が突入してきた。
 琉兵衛は翔太郎に2度目の対面であることを、照井には「君は確か文音のオモチャだったかな?」と笑顔で揶揄した。
 遂にラスボスとの戦いとなったのだが、いきなり翔太郎が琉兵衛に一睨みされただけで恐慌状態に陥った。ガタガタと奥歯を鳴らし、ガタガタ震え、完全に蛇に睨まれた蛙状態。どう見てもテラー・ドーパントの名前の通り、テラー=恐怖に囚われていた。
 琉兵衛曰く、翔太郎の異変は「私の力を何度も見たからだよ。君は私がミュージアムの頭目と知っていながら、何故か今まで核心に触れてこようとしなかった。その理由が分かるかね?君の体は恐怖によって、無意識の内に私の屋敷に近づくのを避けていたのだ。初めて私の姿を見た時から君は既に負けていたのだよ!」とのことだった。
 琉兵衛は高笑いしながら翔太郎のすぐ横を素通りしてその場を去り、ただ一人残された翔太郎は呆然と立ち尽くした。

 その頃、フィリップもまた自分について書かれた本から衝撃を受けていた。本によると、園咲来人は園咲琉兵衛と文音の間に園咲家の長男として生まれ、長女冴子とは13歳違い、次女若菜とは4歳違い。
 3歳時にブリティッシュショートヘアの猫を買ってもらい、来人自身がミックと名付け、5歳時に、父が「地球意志」との接触ポイントを発見し、「泉」と名付けられて科学施設化されたその場所で1ヶ月後来人はその中に転落し、命を落としていたとのことだった。
 つまり自分は死んだ人間であると………………。それを突き付けられたフィリップは翔太郎に負けないぐらいの恐慌状態に陥り、亜樹子も心配せずにはいられなかった。そして絶叫しながら、フィリップは事務所を飛び出してしまった。あっ、ちなみにこの時点ではまだ画面上ではフィリップの事故死はまだ語られていません。

 その頃、博物館屋外では、響子からイーヴィルテイルを奪おうとするスミロドン・ドーパントから守りながらアクセルが戦っていた。
 そこに事務所から突っ走ってきたフィリップが現場に到着。物凄く取り乱してはいたフィリップだったが、アクセルと翔太郎を見て我に返ると翔太郎を督戦した。
 何とか正気に戻った翔太郎はWに変身。そしてフィリップがメタルシャフトを規則的に動かすと、突然スミロドン・ドーパントはその場でお座りしてしまった。フィリップがメタルシャフトで演じたその動きは、琉兵衛が先にミックに特別な食事を与えるときにフォークで演じたものと同じものだった。
 動きを止めたスミロドン・ドーパントメタルシャフトのスタッグマキシマムドライブが炸裂。メモリブレイクするとそこからミックが姿を現したのだが、翔太郎も照井もそれを知らなかったから驚愕した。
 フィリップ曰く、「今のポーズはミックに特別なご馳走を与える時の合図さ。お前は僕の猫だった…これでもうドーパントになることもない。」とのことで、つまりは園咲来人としての知識を活かしたものだった。
 だが勝利の安堵も束の間、そこに高笑いとともにテラー・ドーパントが現れ、その声を聞いただけで、再び翔太郎は恐怖で行動不能に陥った。
 テラー・ドーパントは翔太郎がもう2度と自分に立ち向かえない、と宣言し、フィリップ=来人に対して、「ようやく自分の使命を知ったようだな来人。お前とイーヴィルテイルが揃えば私の望むガイアインパクトは実現する!」とも宣言した。
 そんなテラー・ドーパントに照井が立ちはだかった。自分にはテラーの力は効かんぞ!と言い放ったが、テラー・ドーパントの答えは、「フム、そういう体質らしいな。だが…テラーが精神攻撃だけのドーパントと思ったかね?」とのこと。確かにラスボスの攻撃能力がたった1つとは思えない。
 直後、テラー・ドーパント頭部の面飾りが巨大なドラゴン=テラー・ドラゴンに変化。アクセルに襲い掛かり、容赦ない攻撃を加え出し、アクセルはその巨体と頭上からの攻撃に手も足も出ない状態に陥った。
 その背後では若菜が響子を取り押さえてイーヴィルテイルをダッシュしており、彼女はフィリップに降伏勧告した。
 「さぁ。こっちへいらっしゃい来人。読んだのでしょう?自分の過去を。」を呼びかける若菜に半狂乱になって「あんなの…あんなの嘘だ!」と絶叫するフィリップ。だがとどめを刺すように、琉兵衛はフィリップに、「嘘ではない。お前は死んだのだ来人、12年前に。」と告げた。
 大体読めていたことではあるが、本人が12年前に死んでいるのなら、現在17歳の魔少年として存在している彼は何者なのか?様々な謎が明らかになる予感を秘めて以下次週へ。


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平成三〇(2018)年七月九日 最終更新