仮面ライダーX全話解説

第10話 GOD秘密警察!アポロガイスト!!

脚本:伊上勝
監督:内田一作
マッハアキレス、火焔プロメテス登場

 放映開始以来、初の前後編となった第9話と第10話。当然第10話の冒頭は前話のおさらいで始まった。とはいえ、アポロガイストの登場と初めて敗れたことと再戦に向けての猛特訓を開始したことが語られただけで、アキレスの影は薄かった(苦笑)。

 Xライダーも、藤兵衛も、この試練をXライダーが真の仮面ライダーとなる登竜門と捉え、必死となっていた。そんな中、藤兵衛は冷静になって相手の弱点を考えるよう促した。
 Xライダーは相手がアキレスであることから、ギリシャ神話のアキレス同様に踵が弱点ではないかと考え、ナレーションも不死身を謳われたギリシャ神話の英雄アキレスが、唯一踵に弱点があったために命を落とし、それが「アキレス腱」の語源になったことを解説…………………短絡的過ぎるだろう(苦笑)。俺がGOD関係者なら踵が弱点にならない様に改造するか、踵に罠を仕込むぞ(笑)。

 まあ、Xライダーの分析はアキレス腱を攻撃することで相手を倒すのではなく、逆に相手の長所を殺す為に空中戦に持ち込むことを考察した訳で、さほど短絡的でも酷いものでもなかった。ともあれ一計を案じたXは藤兵衛に協力を求め、彼を抱え上げて空中に飛び上がると二弾攻撃を仕掛けるヒントを掴んだ。
 「生身の立花藤兵衛にそんなことして大丈夫か?」とか、「おやっさんが無事な技で敵に勝てるか?」といったツッコミが殺到しそうなワンシーンだったが(苦笑)、一連の特訓を見ていたアポロガイストはXライダーに対して、「敵ながら良い根性をしている。」と評し、再戦すればアキレスも危ういかも知れないと懸念した。

 場面は変わって、GODの占領下にあるミキの村。
 この時点で村のことは誰にも気づかれておらず、スフィンクス像を介してアキレスに指令を出していたGOD総司令もその現状に満足しつつも、Xライダーを警戒するよう命じた。これに対してアキレスは訝しがった。完膚なきまでに叩いたXライダーを今更警戒する必要があるのか?と捉えていたのだが、そこにアポロガイストが現れ、立ち直れないどころからリベンジの為に猛特訓を積んでいるXライダーの近況を伝えた。

 「お前も少しは見習ったらどうだ?」と説くアポロガイストは、恐らくアキレスに謙虚さや慎重さを持つよう考えて忠告したと思われる。だが、アキレスは挑発と受け止めたものか、それに乗ったかのようにXライダーを倒さんとしてその場を去ってしまった。
 直後、アポロガイスト専用の通信機にGOD総司令からの詰問が入った。血気に逸り、任務の優先順位を無視して出撃するアキレスを何故止めないのか?と云うもので、アポロガイストにはその為に秘密警察第一室長の肩書と権限が与えられていることがここで述べられた。
 つまり、アポロガイストがGOD怪人の監視役としての任と権限がある訳で、判断を誤ろうとしているアキレスを教導しないことを怠慢と云いたかった訳だが、アポロガイストが「御言葉ですが」として、アキレスの冷静さの無さが今回の人間ロボット化計画の為に致命的であることを告げると、総司令はあっさりこれを受け入れ、第二作戦をアポロガイストに命じた。

 恐るべき信頼度である。人間ロボット化計画はまだ失敗した訳ではないどころか、その計画内容さえXライダーには知られていない。そしてアキレスは曲がりなりにもXライダーを破っている。シルバータイタンがGOD総司令なら、まだ完遂可能性が充分残されている作戦を部下の一言で次の作戦に移行したりなどしないだろう。
 このGOD総司令アポロガイストへの信頼度はこれまでのライダー作品において例が無かったのは勿論、後発作品においても比肩し得る例は極少である。この信頼度が「秘密警察第一室長」という肩書によるものなのか?或いはかほどの信頼があっての「秘密警察第一室長」の地位なのか?いずれにせよ、アポロガイストがライダー史にあって、抜群の存在感を何十年と保っているのも、頷けると云うものである。

 場面は変わってCOL。敬介と藤兵衛が引き上げてくると、そこには攫われたはずのミキがいた。なぜそこにミキがいるのかを訝しがるより、彼女の無事を喜ぶ藤兵衛が彼らしかったが、ミキはアキレスのコントロール下にあり、邂逅時同様無表情で、ミキを正気に戻す為の解毒剤が欲しければアキレスの待つ大井埠頭に来る様に云い放つと気を失ってしまった。

 挑発されるままに大井埠頭に向かわんとする敬介に、藤兵衛は、必殺技は未完成で、物にするには後二日は掛かるぞ、と忠告した。だがそれに対して敬介が微笑みながら云ったのは、「おやっさんらしくもない。こんな時、先輩の仮面ライダーは必殺技が完成するまで待っていましたか?」というもので、これには藤兵衛も「一本取られたな。」と苦笑するのだった。こうなると技能云々よりも使命感の方が大事なのだろう。

 かくして罠を承知の上で大井埠頭に向かう敬介だったが、性格に難があってもアキレスは全くの馬鹿ではなく、敬介が店を出た直後に巨大蜂を用いて藤兵衛にドリームヴィールスを撃ち込み、ミキ共々捕虜としたのだった。
 一方、大井埠頭についた敬介はアキレスに出て来るよう呼び掛け、それに対してアキレスはローラースケートを履いた戦闘工作員を従え、藤兵衛とミキを縄目にして連行しながら現れた。
 アキレスは解毒薬を打たない限り二人が正気に戻ることは無いとして、二人を正気に戻す為にXライダーの命と引き換えにすることを持ち掛け、敬介は渋々これに応じた。抵抗を止めた敬介に対し、嬲り殺しにすると宣言したアキレスが採った処刑方法は…………四人の戦闘工作員に引きずらせると云うもの……………いくらローラースケートを履いていても、これで殺せるとは思えなかった(苦笑)。車か、最低でも馬かバイクで引き摺るならともかくねぇ………(呆)。

 さすがにアキレスもこれで殺せるとまでは思っていなかった様で、ひとしきり引き摺って痛めつけたところで止めを刺そうと思っていた様だったが、戻って来た戦闘工作員達が引き摺っていたのは只の角材(笑)…………訝しがったアキレスが戦闘工作員を詰問しようとすると彼等は次々に倒れ込み、既に息を引き取っていた。
 驚いて振り返った時には藤兵衛とミキの姿も消えている始末で、アポロガイストの人を見る目が正しいことが見事に証明される形となった(笑)。

 次の瞬間高所からXライダーが姿を現し、一騎打ちを申し出た。今度も勝つと息巻くアキレス。しばし互角の撃剣が続くとXライダーは特訓時に考えた様に空中戦に持ち込むしかないと考えた。そしてライドルスティックを利してアキレスとともに空中に飛び上がると新必殺技・ X二段キックの一撃目を胸板に、二撃目を踵のローラースケートに食らわせたのだった。

 かかる二弾攻撃を受けて尚、致命傷を負わなかったアキレスはモチーフとなったアキレス並みの不死身振りを辛うじて保っていたが、グロッキー状態は免れず、解毒剤を取り落としてしまった。
 それでも負けんぞとばかりに仁王立ちするアキレスだったが、そこにアポロショットを打ちながらアポロガイストが乱入。それを見てアキレスは「助けくれ!アポロガイスト!」……………強気か弱気か分からん奴だ(苦笑)

 だが銃口を突き付けるアポロガイストからは殺気は感じられても、好意は感じられず、「仲間を殺す気か?」と叫んで狼狽えるアキレス。ここでアポロガイストは自分の身分をアキレスに明かした。それを聞いたアキレスは「お前が、あの恐ろしい………。」と云って恐怖したが、そんなアキレスの様子に委細構わず、「総司令の名の下に役に立たなくなった貴様を処刑する!」と云い放って、アポロショットを踵に食らわすとアキレスの体は瞬時に炎上して絶命したのだった。

 直後、その場にXライダーが駆け付けた時にはアキレスの姿も、アポロガイストの姿も消え失せていた。だが、総司令アポロガイストが打ち合わせていたように、GODは既に次の作戦を展開しようとしていた。
 アポロガイストの恐ろしさに戦慄しつつ、邪魔が入る前に藤兵衛とミキに解毒剤を射つべしとして撤収したXライダーだったが、その背後では地面を突き破りながらGOD怪人プロメテスがその姿を現していた。
 GOD総司令はリカちゃん人形を通じて(←通信媒体がどんどん笑いを取りに来てるな(苦笑)プロメテスアキレスの死に伴う人間ロボット化作戦の中止と、捕虜を破壊工作員としたテロ作戦の実施を命じたのだった。

 Bパートに入り、アポロガイストが村(後々の展開からミキの村であることがわかる)にやって来たのだが、突然機関銃で狙撃された。だがアポロガイストはそれに動じた風もなく(←勿論弾丸は当たらず)、プロメテスは銃撃停止を命じた。
 プロメテスは隠れ家に案内したアポロガイストに自分の村人への教育振りを自画自賛したが、これに対してアポロガイストは、「GODの戦闘工作員養成所長をしていたお前だ。この程度は当然だ!」とした。
 これに対してプロメテスは初めて銃を握った一般ピープルを半日でここまで仕上げたことを言及してアポロガイストに反発。この辺りアポロガイストは組織の管理職として余りに人を褒めることを知ら無さ過ぎた。
 まあそれがアポロガイスト流であることは分かるし、褒めて伸ばすやり方がある一方で、貶して反発させて成長を促す方法もあるから難しい。
 ともあれ、アポロガイストは「自慢はそれぐらいにしておけ。」と云って取り合わず、Xライダーがドリームヴィールスの解毒剤を持って来村するのが時間の問題なので、洗脳した村人達を一人残らず村から連れ出し、手掛かりを村内に残さないようプロメテスに命じた。
 だが、Xライダーが来ると聞いたプロメテスは明らかに戦意を滾らせており、「お高く止まっている。」とするアポロガイストへの反発もあってか、Xライダーを殺せばいいのだ、と考えて命令に従う様子は丸で見られなかった。

 程なく、アポロガイストの予想通り、敬介が解毒剤を持って村にやって来た。
 アキレスが倒れたとはいえ、村人達はドリームヴィールスの洗脳を受けたままで、解毒液をもって助けに来たことを訴える敬介にも無表情なままだった。
 そして村人の背後には銃を持った戦闘工作員がいて、驚く敬介の前にプロメテスが姿を現した。「俺の腕前を見せてやる!」と息巻きつつ、村人に敬介銃撃を命じるプロメテスがせこ過ぎ(苦笑)。
 勿論、武器を持って襲い掛かって来るとは云え、洗脳された村人相手に敬介の戦意が上がる筈もなかった。銃と竹槍で襲い掛かる村人を攻撃出来ない敬介は一先ず撤収に掛ったが、そこには地雷が待っており、地雷に吹き飛ばされて気絶した敬介は捕らえられ、山小屋の一室にて縛り上げられて、吊るされたのだった。

 呆気なく敬介を捕らえたことに御満悦のプロメテスはこのことをアポロガイストに伝えんとして、戦闘工作員に見張りを命じてその場を離れた。村の外れで顔を合わせたアポロガイストは移動に時間が掛かっていることを訝しがり、詰問したのだが、プロメテスは神敬介を捕らえたことで移動の必要がなくなったことをどや顔で述べた。だが、それに対するアポロガイストの返答は、「馬鹿!!」との一喝だった。
 アポロガイストは今頃、村人は敬介に救出されている筈だとして、プロメテスの誇示する成果を見るまでもない、としてその場から走り去った。

 ここまで全否定されてはさしものプロメテスも不安となり、敬介を捕らえている隠れ家に向かったが、そこでは相変わらず敬介は縛られて吊るされたままで、戦闘工作員と村人達が見張っていた。
 最善と変わりない様子を見て、「俺をハラハラさせやがって…。」とぼやくプロメテスだったが、結局はアポロガイストの予想通りとなっていた。
 と云うのも、地雷で吹っ飛ばされて気絶したこと自体が、自己催眠を駆使した敬介の芝居で、アポロガイストが推測した様に、プロメテスが席を外した隙に解毒液で洗脳を説かれた村人達は既に安全な場所に避難済みで、プロメテスは僅かな時間にすべての戦果を失っていた。

 「このままではアポロガイストに笑われる……。」と地団駄踏むプロメテス(←いや、処刑の可能性すらあるのだが……)は汚名返上とばかりに敬介に挑み掛った。
 だが、プロメテスは格闘能力にそれほど秀でていた様な訳ではなく、変身前の敬介でも互角に戦っており、業を煮やすとナパーム弾を駆使した。さすがにこれには敬介もXライダーにセタップして対抗した。

 すかさず三発のナパーム弾を放って猛攻を仕掛けたプロメテスだったが、その威力に自らが巻き込まれまいとしたものか、戦闘工作員の駆るサイドカーで村外れまで来てから、「死んだか…。」と呟く体たらく(苦笑)。
 爆弾攻撃で本当に敵が死んだかどうかをろくに確認しないのはライダー怪人あるあるなのだが、それと比べてもプロメテスはいい加減だった(苦笑)。勿論、Xライダーが戦死している筈もなく、クルーザーにて逆襲してきた。

 ここに最終決戦が展開された。ライドルホイップを駆使するXライダーにそこそこ善戦していたプロメテスだったが、ライドルスティックにスイッチされると明らかに劣勢に立たされ、地中に遁走する有様だった。
 だが、その遁走振りは畑のモグラ状態で、地面の盛り上がりが移動していて現在地が丸分かりだった(苦笑)。当然の様に地面目掛けてXキックが放たれ、プロメテスは敢え無く戦死。遠巻きに見ていたアポロガイストは「やっぱりな……。」と云っているかのような表情で走り去り、そんなアポロガイストの逆襲を懸念するナレーションでもって第10話は終結したのだった。


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令和五(2023)年六月一四日 最終更新