仮面ライダーX全話解説
第11話 不死身の水蛇怪人ヒュドラー!
脚本:鈴木生朗
監督:折田至
水蛇ヒュドラー登場
冒頭、とある湖の畔でごみ捨て禁止の立て札を立てようとしていた二人の清掃員が突如湖中から現れたGOD怪人水蛇ヒュドラーによって殺された。
その手口は清掃員の顔面に数匹の毒トカゲの様なものを投げ付け、口から水色の溶解液を吹き付けると云う残忍なもので、二人の清掃員は赤い煙となってこの世から消えた………その間ヒュドラーは終始無言で、何の為の殺害かも一切口にされず、恐らくは残虐な存在であることのアピールだったのだろう。
実際、直後に現れたアポロガイストはこの惨殺行為を「くだらぬ遊び。」としていたので、清掃員の死は不要且つ理不尽且つ救いのないものだった。そしてそんな蛮行をたしなめられ、任務優先を警告された際に、ヒュドラーは名前を呼ばれただけで曲刀を抜いてアポロガイストに対峙していたのだから、かなり粗暴な怪人だった。
そんな性格だから、伝えるべきを伝えて去っていったアポロガイストに対して、「気に食わん奴だ!」と憤慨していたのだから、このヒュドラーもほぼ三下確定だった(苦笑)。
ともあれ、直後に蜷局を巻いた蛇の人形を通信媒体としたGOD総司令からの命令は、「東京の経済攪乱工作」を進めるよう命じたのだった。要は町中からお金というお金が消え失せると云うもので、触ろうとした紙幣にトカゲがいることに人々が驚いた次の瞬間にはお金は消え、眼前で所持金が消える現象に人々は混乱した。その消えた紙幣は管の様なものを通して湖底に構えられたヒュドラーのアジトに次々と流入したのだが、突如金銭を奪われた被害者の一人に敬介と顔見知りの、足を悪くして入院している少年・サトルがいたことで、後々Xライダーが係わることとなった。
まあ、サトル少年のことが無くても、町中から一円も残さずお金が消えると云う不可解な現象に敬介と藤兵衛はGODの仕業と断じ、敬介はもっと大きな額をGODは狙っていると予測した。
それが的中していることを示すかのように場面は東京中央銀行通用口に移った。そこでは銀行関係者から警備会社に現金輸送が託されていたのだが、輸送車出発後に銀行員がそのことを告げたトランシーバーにはGODのロゴがあり、現金輸送車は道路工事を偽装した戦闘工作員達によってヒュドラーの待ち伏せ場所に誘導され、警備員達は冒頭の清掃員同様に惨殺された。
直後、ヒュドラーは後から来た戦闘工作員達に現金を運ぶよう指示したが、後から来たのは戦闘工作員だけではなく、何の脈絡もなく神敬介まで現れた。
当然、ヒュドラーは戦闘工作員達に現金を持って逃走することを命じ、敬介を迎撃したのだが、はっきり云って、ヒュドラーの武芸は徒手空拳の敬介相手に曲刀を振るって尚取り立てて優位に立つものでは無かった。組打ちするだけならセタップの必要を感じさせない程だったが、Xライダーにセタップすると戦闘工作員までもが逃走を阻止され、ヒュドラーはそれを迎撃し切れず、飛び蹴り一発で顔面を吹っ飛ばされる体たらくだった。
だが、サブタイトルに在る様に、モチーフとなったギリシャ神話の一身九頭蛇の怪物宜しく、ヒュドラーの強みはその不死性にあった。
ギリシャ神話で英雄ヘラクレスに倒されたヒュドラーは首を斬り落とせばその首から新たな首が二本生えると云う特殊能力を持ち、傷口を焼くことで新たな首は生えなくなったが、最後に残った黄金の首は斬り落とされて尚絶命せず、正真正銘の不死身で、ヘラクレスも大岩の下敷きにすることでその動きを封じるしか出来なかった。
本作登場のヒュドラーは九つも首を持っておらず(後年の『仮面ライダースーパー1』に出て来たサタンスネーク(←五本首)を見ても、多頭の首長をアクションするのは相当困難と思われる(苦笑))、二本も生えたりしなかったが、蹴り飛ばされたのが忽ちくっついて復活すると云う不死性を発揮した。
アポロガイストの横槍もあり、ヒュドラーの不死性に狼狽したXライダーは溶解液攻撃から逃れる様に河川に飛び込んで撤収するしかなかった。
Xライダーを取り逃がしたことを悔しがるヒュドラーだったが、アポロガイストはXライダーを深追いせず、それよりも現金輸送車襲撃からXライダー撤収までの一部始終を病院屋上から双眼鏡で目撃していた少年(←サトルのことである)がいたことを告げ、その口を封じるよう命じた。
サトルは戦闘工作員が奪った金を湖底に投げ込むことまで目撃しており、現金輸送車襲撃を報じるラジオ放送を引用して看護師に自分が目撃した事柄を告げた。サトルが現金輸送車襲撃を目撃したことは信じられても、怪物が襲ったことまでは訝し気な看護師だったが、直後、その怪物―ヒュドラーがサトルの口を封じるべく病室に侵入してきた。
だが、サトルの危機に再度何の脈絡もなくXライダーが乱入……………まあ、アポロガイストがサトルの気配に気づいていたのだから、Xライダーも気づいていたことにしよう(苦笑)。
ともあれ、Xライダーは看護師にサトルを連れて避難するよう促し、再度Xライダーとヒュドラーの一騎打ちが展開された。だが上述した様に、単純な組打ちでは先ほどより若干マシになっていたとはいえ、ヒュドラーは明らかにXライダーに劣っていて、機関銃を持った戦闘工作員に加勢させる体たらくだったが、銃撃そのものがXライダーには丸で効かなかったから、形勢は全く好転しなかった。
特別な武器―口からの溶解液と投げ付けた大蛇―を用いて一時優勢に転じたが、Xライダーの全身を締め上げていた大蛇も、太陽エネルギーを数千ボルトの電流に変換して体表面に流すライダーショックで引き千切られ、一時的な優位で終わった。
結局、戦闘工作員の加勢を得ても戦況は好転せず。Xライダーに初めてライドルロングポールを駆使させた分、戦闘工作員の方が善戦していたのじゃないかしらん(苦笑)。Xキックで再度首を蹴り飛ばされても前戦同様すぐに首がくっ付く不死身振りを発揮したが、ライドルホイップの刺突を胸部に受けると体液を零しつつ撤退した。
どうやら不死身なのは頭部のみの様で、体液を追跡したXライダーが湖底のアジトに追い詰めた際にヒュドラーは明らかに刺突にダメージを受けていた様子で、追撃を受けて尚抗戦したものの、明らかに逃げ腰だった。
出入り口の多い洞穴を利してXライダーの不意を突こうとしたり、再度大蛇を投げたりしたが、いずれも功を奏さず、大蛇に至っては振りほどかれてライドルスティックに突かれるや戦線離脱する有様だった。
そして再度のXキックを胸板に受けると不死身振りを発揮することもなく、青い液体となった後に爆死した。ギリシャ神話での不死身振りにはほど遠い中途半端さにアポロガイストも「ふん!役に立たん奴だ…。」と呆れる他なかった。
アポロガイストはGOD総司令にヒュドラー戦死を伝え、それに対する総司令の回答は「次の指示を待て。」だけだったので、アキレス→プロメテスの時の様な連携までは図られてなかった分、ヒュドラーの期待は大きく無かった様だった(苦笑)。
そしてラストシーン。見舞いに来た敬介に少し足を引き摺りつつも、杖無しで歩けるまでに回復したことを見せるサトル…………ベタだな(笑)。しかし、結局このサトルが敬介とどういう知り合いだったのかは全く触れられずじまいだった。
次話へ進む
前頁へ戻る
『仮面ライダーX全話解説」冒頭へ戻る
特撮房『全話解説』の間へ戻る
特撮房へ戻る
令和五(2023)年六月一四日 最終更新