仮面ライダーX全話解説
第13話 ゴッドラダムスの大予言!
脚本:伊上勝
監督:内田一作
ユリシーズ登場
冒頭、暗い夜道を歩く一人の女性が自分を尾行する足音に恐怖し、電話ボックスに駆け込むと怪しい人に追われているので助けて欲しい旨を通報せんとした。
だが、この電話ボックスこそがGODの罠で、公衆電話の受話器からは黄色い機体=殺人スモッグガスが噴出されると女性の体は服を残して消失し、やがてその服も消えた………。
この殺人スモッグガスによるテロを指揮するのはGOD怪人ユリシーズ。直後のGOD総司令から通信によると、GODはこのガスを用いた東京全滅を目論んでおり、かかる作戦はライダー史上決して珍しいものでは無いのだが、「日本転覆を狙う東西両大国の首脳が密かに手を結んで組織された」というGODの設定からするとかなり当初の目的に忠実な作戦と云える。
ともあれ、GOD総司令はユリシーズに東京全滅作戦の決行が翌日に決まったことと、作戦成功の為に仮面ライダーXの動きを封じることを命じた。双方を同時に命じるとはずいぶん無茶なと思ったが、ユリシーズ自身は戦意満々でXライダーを誘き出して倒さんと息巻いた。
直後に、アポロガイストが現れ、今回の作戦にはGOD秘密警察も全面協力の方針と告げた。両者が邂逅した時、ユリシーズはアポロガイストの顔を知ら無かった様だったが、「GOD秘密警察第一室長」と名乗ると即座にアポロガイストの名を口にしていたから、存在・職務は知っていたのだろう。
アポロガイストはその職務上、神話怪人達に恐れられ、それと同等かそれ以上に嫌われていたが、そのアポロガイストが「全面協力」としたことにユリシーズは素直に「有難い!」としていたから、能力的にも大人物と見られていたことが伺え、興味深かった。
場面は替わってCOL。
店のカウンターでアポロガイストはコーヒーを喫していた。前話でアポロガイストと顔を合わせた時の会話から、立花藤兵衛は眼前の男を「敬介の友達」と思い込んで、腕を振るってコーヒーを提供していたが、それに対するアポロガイストの評は、「ま、こんなものかな。」と何処か小馬鹿にしたものだった。
直後、敬介がやって来たのだが、その時にはアポロガイストは姿を消しており(←無銭飲食じゃないか?)、そのいで立ちや立ち居振る舞いを聞いた敬介の台詞から、ようやく藤兵衛は最前の男がアポロガイストであることを悟った。
勿論、このアポロガイストの大胆な行動はユリシーズに語っていた誘き出しで、敬介はバイクの音を頼りにこれを追ったが、撒かれてしまった。
アポロガイストを見失ったこと残念そうにする敬介だった、直後、駅前の人だかりに気付いた。そこでは節くれだった杖を持ち、月桂冠を被った、「怪しい」を絵に描いたような男(江見俊太郎)が「予言者・ゴッドラダムス」と名乗り、東京は今日午後3時に滅びるので、死にたくなければ東京から逃げうせるべし、と力説していた。
それに対して、聴衆の中から一人の男性が「出鱈目を云うのは止めたまえ!」食って掛かった。その男性―東亜大学の地球物理学教授・植松(守屋俊志)は理由を尋ねるも、ゴッドラダムスは「予言に理由などない。証拠はこれだ。」と云って、蛇が絡みついた十字架の様な絵を指し示しただけ…………はっきり云って、鼻で笑われるだけの荒唐無稽論でしかないのだが、強く出た手前植松教授も全否定に躍起になったようで、教授は聴衆達に学問的にも科学的にも東京全滅など在り得ないので、出鱈目な予言を信じるなと呼び掛けた。
勿論ゴッドラダムスがそれで矛を引っ込める筈なく、予言に逆らう植松の死が見えると呪うかのように告げ、「ゴッドラダムスの予言は99%当たる!」と云って、その場を立ち去った。勿論、結果は残り1%が制する訳だが(笑)、いつの間にか植松教授の背後にいた敬介は立ち去るゴッドラダムスを尾行した。
その様子を遠巻きにアポロガイストも見ていたので、これはアポロガイストとユリシーズが話していた、神敬介誘き出し作戦なのだろう。「ゴッドラダムス」という、「GOD」と「ノストラダムス」をくっつけたことが丸分かりなネーミングも誘き出しが目的なら分からなくないが、「もう少し何とかならんか?」と云いたくなるし、例え一時的なネーミングとはいえ、一応は秘密結社なのだから組織名を出すのを大いに問題があると云えよう。
ともあれ、敬介はゴッドラダムスを尾行し、とある倉庫街に入ったところで背後が施錠される音を聞きつけた。しかも目の前には公衆電話が鳴っており、視聴者にはそれが冒頭で女性が殺されたガス室であるのが分かるのだが、それを知らない敬介は都合が良いとばかりに電話を出ると、受話器の向こうから聞こえて来たのはユリシーズの声で、何の為にあんな予言をしたのか?と詰問する敬介に予言通り東京を全滅させると宣した。
勿論、そんなことはさせないと息巻く敬介だったが、ユリシーズは今敬介のいる電話ボックスがガス死刑室であると告げ、先の女性殺害時と同様、受話器から黄色い殺人スモッグガスが噴出した。
だが、かかる罠程度で仮面ライダーが倒される筈もなく、肉も骨も溶け失せたかと思われた電話ボックスの床には大穴が開いており、ユリシーズ達がそれに気づいた時には仮面ライダーXがその背後にいた。
勿論ユリシーズは戦闘工作員達にXライダー殺害を命じ、殺陣が展開された。このユリシーズ、グラディウスを抜いての撃剣ではそこそこXライダーのライドルホイップと互角に撃ち合い、一度はライドルを弾き飛ばしもし、なかなかの戦闘能力を披露していたが、一方でこっそりブレーカーを落としたり、物陰から奇襲したり、と姑息な手も使っていた(苦笑)。まあ、悪の組織の構成員だし、膂力に優れた上に奸智に長ければそれだけ勝率が上がる訳だが。
ともあれ、勝負はアポロガイストがアポロンショットを撃ち込んで来たことで水入りとなった。「何故邪魔をする?!」と憤るユリシーズにアポロガイストは任務遂行を優先するよう告げた(←正論である)。不服気味なユリシーズだったが、「命は預けた!」の捨て台詞を残して遁走し、それを追わんとするXライダーをアポロガイストが妨害した。
ユリシーズが逃げたなら、アポロガイストの口から作戦を吐かさせんとするXライダーだったが、これは巻かれえてしまい、Xライダーは残る手掛かりは一つしかないと呟くのだった。
勿論、それはゴッドラダムスに死を予言された植松教授のことである。
作中明言された訳ではないが、予言にケチをつけられ、それに反発する様に死を予告した手前、植松を殺さない訳に行かなくなったと思われるが、これが敬介にとっての手掛かりになるのだから、悪の組織の作戦失敗を招く典型的なこだわりと云えよう(苦笑)。
案の定、ユリシーズはゴッドラダムスの姿で植松邸を訪れ、まずは娘・ヒロコの前に姿を現し、父親が死ぬと告げた。駅前でもゴッドラダムスを怖がっていたヒロコは当然悲鳴を上げ、それを聞きつけた植松と妻が駆け付けた訳だが、当然その時にはゴッドラダムスは姿を消していた。
こうなると怪人物が現れたことを子供が訴えてもそれを信じないのは特撮のワンパタ(苦笑)。植松教授は「まぼろしを見たんだ。」と云うが、普通、「夢を見たんだ。」と云わないか?うちの道場主も訳の分からないものを一杯見てきたが、大半は夢で、幻なんか数える程しか見たことが無い。
ともあれ、ヒロコの怖がり要は尋常ではなく、妻も不安げだったが、植松は一笑に付した。するとそこへ電話の音が鳴り響き、それに出ようとするヒロコが止めた。それに対する植松の論は、「科学者の娘なんだから、予言を信じちゃいけない。」という些か、配役設定を意識し過ぎた不自然な台詞だった。ただ、そう云いながら娘に安心する様に諭す植松教授の物云いと優しい笑顔は「良きパパ」を見事に演じたもので、守屋氏の演技力の高さが垣間見えた。
結局、普通に電話に出た訳だが、声の主はヒロコが懸念した様にゴッドラダムス。台詞内容は改めて植松の死を宣告する者で、「馬鹿馬鹿しい!」と云って電話を切った植松だったが、その時には背後にゴッドラダムスが立っていた。
そしてゴッドラダムスは、植松の死に対する予言は大勢の人間が見ていたので、それを真実にする為に植松には死んで貰わなければならない旨を告げたのだが、案の定、このこだわりが敬介の介入を許す訳で、植松を殴りつけた直後、敬介が乱入してきたのだった。
敬介がゴッドラダムス=ユリシーズであることを誰何すると、よくぞ見破ったとばかりにゴッドラダムスはユリシーズに姿を変えた。その際に、声が市川治氏のそれになった。
ここで余談なのだがユリシーズの人間体であるゴッドラダムスを演じたのは時代劇などでせこい悪代官役でお馴染みの悪役俳優・江見俊太郎氏。クレジットされていないが、声はどう聴いても沢りつ夫氏にしか聞こえなかった(笑)。
これに対し、市川氏が声を当てる怪人はショッカーライダー2号、鋼鉄参謀、マシーン大元帥等、怪人ながらカッコいい系が多い(勿論例外はある)。ユリシーズ自体も人間に近い容姿で、市川氏が声を担当したのはナイスチョイスだったと思うので、ユリシーズとゴッドラダムスのギャップ差はかなり笑えるものがあるのだった(笑)。
ともあれ、ユリシーズは「邪魔なアポロガイストもいない。」として戦意を露わにしていた。やはり彼もまたアポロガイストを恐れ、従いつつも、好意的ではなかった意味で他の神話怪人同様であることが伺えた。
かくして2度目の白兵戦となったが、結果から云うと不利を悟ったXライダーが戦線離脱した。格闘は互角だったが、ユリシーズが肩に掛けた大蛇から発した殺人スモッグガスを吸ったことでXライダーが不利となり、ライドルロープを駆使してその場を脱した。
直後、戦闘工作員から植松親子が逃げたことを知らされたユリシーズは作戦実行を優先すべしとして移動に掛かった。だが、Xライダーは逃げておらず、ユリシーズに随行する戦闘工作員の一人をライドルロープで吊し上げ(←チョット酷い描写だったが、これで死ななかった戦闘工作員も凄かった)、そのコスチュームを剥いで、なりすましの黄金パターン(笑)を敢行した。
とある廃屋に着いたユリシーズは数分後に控えた東京全滅作戦のスイッチが入ると東京中の電話の受話器から殺人スモッグガスが噴き出し、東京は1分で全滅すると述べた。正直、ここまでの下準備が既に出来ていたのだから、GODの作戦遂行能力は恐るべきものがあった。
だが、そこに植松とその妻子を伴って現れたアポロガイストが待ったを掛けた。GODの予言は正確でなくてはならないので、作戦実行前に植松親子を殺せ、と云うのが理由だった。
これに対して、「アンタが捕まえていてくれたのか!」と感謝気味に呟くユリシーズ。恐れ疎まれてはいても、アポロガイストが助力してくれることが頼もしいと見るその様は神話怪人達の心境が巧みに披露されていた。
一方で、「こんなこだわりに囚われず、さっさとスイッチ入れていれば東京は全滅出来ていたのに」と考えると、こだわりに囚われている意味ではやはりアポロガイストもまた典型的な悪の組織の構成員であることが見て取れた(笑)。
ともあれ、死刑を宣告され、アポロガイストから渡されたアポロショットを突き付けられた植松教授は「予言されたのは私だけ。」として妻子の命乞いをしたが、この「父親」の演技振りもまた守屋氏の演技力が見事に表れていた。だが、ユリシーズは「事情が変わった。」の一言で、聞く耳を持たなかった。
処刑を戦闘工作員に命じたユリシーズだったが、次の瞬間、その銃口はユリシーズその人向けられた。狼狽えるユリシーズに対し、戦闘工作員の背後にいたアポロガイストは「撃てるものなら撃ってみろ。」と放言。「何てことを……。」と益々狼狽えるユリシーズだったが、戦闘工作員………に化けたXライダーの持つ中からは事前に弾が抜かれていた。
要するにXライダーの潜入はアポロガイストによって先刻承知されており、バレちゃあ仕方ないとばかりに植松親子を伴ってその場を脱しようとしたが、そこには落とし穴が待っており、4人を閉じ込めたユリシーズはそこで東京全滅を指咥えて見ていればいいと嘲笑して作戦実行に移った。
作戦遂行のカウントダウンが始まり、それはいきなり「20秒前」から始まった。これを聞いた植松教授は我が身よりも東京全滅を憂えるのだったが、さすがにこうなってはXライダーももたもたしてはいない。ライドルから吸着マグネットなる磁石を取り出しで両足に装着すると垂直の壁もすたすたと登って脱出(←『魁!!男塾』に出て来た青陽磁靴もびっくりである(笑))すると、殺人スモッグガスのバルブを即座に開栓不能にし、それを知ってユリシーズが駆け付けた時にはもう4人の姿は落とし穴から消えていた。
これを見て尚、予言実現に意欲を燃やすユリシーズだったが、その背後に現れたXライダーは既にガス管と電話回線を結ぶラインを断ち切ったことを宣言。ここにGODの東京全滅作戦は完全に阻止された。
地団駄踏んで悔しがるユリシーズとXライダーの最終決戦がここに展開された。戦闘工作員達を蹴散らした後の一騎打ちは、それまで同様ユリシーズも善戦したが、ややXライダー有利に展開。だが、多彩な技を持つユリシーズは月桂冠をXライダーに投げ付ける「ユリシーズ冠縛り」なる技を披露。この技は月桂冠がXライダーの頭部を締め付けるもので、激しい頭痛をもたらし、一時的に勝負はユリシーズ優位に転じたが、Xはライドルホイップからの電気ショックで月桂冠を焼き払い、不利を払拭した。
やがて自らの敗北を悟ったユリシーズはせめてXライダーを地獄への道連れにせんとして、大蛇の口から殺人スモッグガスを撒き散らしつつ突撃を敢行したが、結局はXキックの前に戦死したのだった。
直後、アポロガイストが現れ、改めてGOD秘密警察の名と、アポロガイストの名誉にかけてXライダーを殺すことを予言。次回、第2クール1話目にて早くも主役と幹部の決戦が展開されるのであった。
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令和五(2023)年六月一四日 最終更新