仮面ライダーX全話解説

第15話 ゴッド秘密基地!Xライダー潜入す!!

脚本:伊上勝
監督:折田至
死神クロノス登場

 冒頭、灰色の顔色をした怪しい男(沼田燿一)が、晴れた日に傘を持ち、初夏だと云うのに黒いコートを纏い、シルクハット被ると云う奇妙ないで立ちでとある病院に現れた。
 男は一抱え程の青い箱を病院に残すと消えており、その立ち居振る舞いと、箱から落ちた不気味な人形に怯える看護師を宥めた医師―川上博士(三島耕)は、物は自分が預かるとして、看護師にもう帰宅して良いと告げると、室内に人形を持ち込み、カーテンを閉めた。
 GODのエンブレムをかたどった人形は案の定、GOD総司令からの通信装置で、川上博士に対して彼の優れた外科手術の腕をGODの為に振るって欲しいので、GODの日本アジトであるアポロン宮殿に彼を召喚するとして、待ち合わせ場所を伝え、時間厳守を命じた。

 病院を後にした男は川上への伝達と、通信テープの完全消去をアポロン宮殿伝えると、アポロン宮殿からは電子工学の宮本博士の元へ向かうよう下知され、男は運転手(←勿論戦闘工作員)に城北大学に向かうよう命じた。本当に、様々な博士の生まれる舞台だね、この大学(笑)。
 場面は替わって、城北大学。川上博士の時同様、通信人形を持ち込まんとした男は、同様の青い箱を持った女子大生・マコ(早田みゆき)とぶつかり、両者は抱え持っていた箱を取り落としてしまった。勿論、ここで互いの箱を取り違えてしまうのはお約束である(笑)
 男がとある一室に入って中を開けると出て来たのは蜜柑やお菓子(笑)。一方、マコは同級生のチコ(小板チサ子)と合流し、おやつを楽しもうとしたところ、チコが明けた箱から出て来たのはGODの通信人形……………。これと接触することの恐ろしさをまだ知らないチコが、「これを食えって云うの?」と詰ると、「アンパン変じて人形……。」とボケつつも、ぶつかった男との取り違えに思い至った。だが、そうこうしている内に箱から出された通信人形はその役割を発揮し、川上博士に伝えたのと全く同じ内容を宮本博士に伝えたのだった。
 訳の分からない展開を訝しがる二人の女子大生だったが、その時にはもう既に背後に取り違えに気付いた男が迫っていた。そして「GOD」の名を聞かれてしまった以上、悪の組織の構成員が執る手段は一つ………口封じである。

 ストレートに「殺す」と云われては、二人の女子大生は逃げるしかなかった。そしてその行く手に偶然敬介が現れ、当然の様に彼女達は敬介に助けを求めた。突然、女子大生に「殺されるの!助けて!」と云われ、戸惑う敬介だったが、勿論捨て置きはしない。ただ、敬介が前方に顔を向けると、誰もいなかった。典型的な信用されないパターンに見えたが、チコの口からはっきり、「GOD総司令」の名を聞かされては敬介も本腰入れない訳にはいかなかった。
 手掛かりを求めて、二人が男に襲われかけた現場に赴くも、爆発した通信人形は欠片も残っておらず、手掛かり皆無だったが、男の方で女子大生達の口封じにこだわっており、二人を(恐らくは彼女達の下宿と思われる場所)襲わんとしたことで、潜んでいた敬介と邂逅した。

 男はGOD神話怪人死神クロノスの正体を現すと、「死神」の二つ名が示す様に、大鎌を得物に敬介と対峙した(まあ、モチーフとなったギリシャ神話のクロノスも大鎌で父神・ウラノスを襲っているのだが)。敬介はXライダーにセタップし、両者はどちらが優勢ともつかぬ白兵戦と展開。その格闘の中で、クロノスの口からアポロン宮殿の名が出た(←クロノスがXライダーの首をそこに供えると高言した)。
 そこに思うところがあったのかは分からないが、クロノスが大鎌に炎を纏わせる「クロノス地獄鎌」の形態を取ると、「アポロン宮殿で会おう!」との捨て台詞を残すとクルーザーで撤収した。

 その頃、COLでは二度の襲撃を受けたチコとマコがひどく落ち込んでいた。まあ、訳の分からない組織の不気味な男から「殺す!」と宣言され、「命を狙われ続ける境遇に陥った。」なんて多くの人間は経験しないだろうから、はっきりとは云えないが、実際に殺意露わに襲われた直後は無理ないかも知れない。
 まあ、それでも藤兵衛の励ましから徐々に落ち着きは取り戻したようで、「なるようになる」的な心境となって生き、かくして二人はなし崩し的にレギュラー入りしたのだった。

 その頃、向ヶ丘地下駐車場C−5には、宮本博士(灰地順)に変装した敬介がGODからの迎えを待っていた。恐ろしい目に遭いながら、通信内容を詳細に覚えていたチコとマコは案外記憶力に優れているのかもしれない(笑)。ちなみに敬介の変装だが、見た目は完璧で、丸で灰地順氏が演じているみたいだった(笑)が、声は敬介のそれだった。
 ともあれ、悪の組織にしては珍しく定刻に遅れて迎えの使者は到着し、助手席に乗っていた人間態のクロノスは先に乗車していた川上博士を(敬介が化けた)宮本に紹介すると、アポロン宮殿所在地の機密を守る為に、二人に目隠しを強要した。
 元より、宮本に成りすましての潜入が目的の敬介はこれに難色を示したが、クロノスは「GODの掟じゃ。」と云って頭を振り、川上が「従った方が良さそうだね。」としたので、敬介もそうせざるを得なかった。

 約2時間後、車両は人工霧の中に入り、目隠しを取って良いとされた二人はGODの用意周到さに驚く中、アポロン宮殿に到着した。
 クロノス案内の下、「原水爆を撃ち込まれてもビクともせん(クロノス談)。」と云う程の地下深くに案内された両名はエレベーターを降りたところで、GOD総司令から歓迎の言葉を受けた。GOD総司令クロノスに宮殿内の更なる案内を命じ、第一区GOD警備課体育館、第二区通信課、第三区技術課、第四区人事課、第五区車輛課、第六区GD、第七区作戦課、第八区医務局と案内され……………「悪の組織」と云うより、大企業だな(苦笑)

 ともあれ、案内も最後の場所、総司令室の前までやって来た。GOD壊滅に尽力している敬介にしてみれば、中にいるであろうGOD総司令の首を取れれば、願ったりかなったりである。だが当然の様に入室は為されなかった。クロノス曰く、中には入れないとのことで、そこに入ることが出来た者は、GOD秘密警察第一室長、つまりは前話で戦死したアポロガイスト唯一人とのことだった。
 敬介とクロノスがそんな会話を交わしていたところ、GOD総司令から、後ろの小窓の中を見るよう二人に告げられた。クロノスが云うには、「面白いもの」、それも宮本博士にとって、のものが見られると云うのである。

 覗いた中にいたのは、溶接工が使うようなマスクをした白衣の男。何者か?と訝しがる敬介に対して、GOD総司令は中にいた人物に自己紹介するよう命じた。
 果して、マスクの下から現れたのは本物の宮本博士で、「城北大電子物理学教授、及びGOD日本特務員宮本大吾、コードナンバー606」を名乗った。御本人が現れた上、ここまで完璧な自己紹介をされては誤魔化し様がない、というか、GODは偽物であることを承知の上で敬介にアポロン宮殿を案内していた訳だが、敬介も状況的に退くに退けなかった様で、自分が宮本だと云い張ったが、無駄だった(苦笑)。

 自分が神敬介であることを告げられた敬介は変装を解いたが、次の瞬間敬介の周囲に壁が下りてきて監禁状態となった(この時、一瞬クロノスが川上博士を庇うようにしていたのが興味深かった)。
 敬介は何故自分の正体を知りながら、アジトであるアポロン宮殿の内部を案内したのかを問うた。それに対してGOD総司令は、アポロン宮殿クラスの基地を世界中に所有していることを誇示し、それにも怯まず、蟻の一穴となってでも「叩き潰す!」と息巻く敬介の勇気を買って、GODの最高幹部として迎えたい旨を伝えた。
 要は、組織力を誇示することで、仮面ライダーXを屈服・懐柔せしめんとの意図だった訳で、第1話にて敬介の父・神啓太郎教授を仲間に加えんとしてことを思えば、頷ける話ではあった。神教授の才を受け継ぎ、アポロガイストをも打ち負かした戦闘能力を持つ敬介をGODに服従させることが出来れば、云うことなしだろう。だが、これに敬介が応じる筈なかったのは云うまでもない。

 敬介が服従しないと見たGOD総司令はその殺害を決意。壁が上がると二人の戦闘工作員が機関銃を乱射してきた。だが、既にセタップしていたXライダーに通常の銃弾が通じる訳もなく、戦闘工作員を蹴散らしたXライダーは改めて総司令室に入り込んだ。
 敬介を誘き寄せる目的で案内されたその場所は、恐らくは元々総司令室ではなかったのだろう。忽ちと落とし穴の口が開き、落ちた際は第一区の体育館だった。
 先のクロノスによる案内で、そこでは世界中のあらゆる格闘技・武術・スポーツのチャンピオンクラスの素質を持つ者だけを選りすぐって、鍛えている場で、中ではその精鋭達が待ち構えていた。
 確かにアクションを見れば、柔道やボクシングと云った格闘技独特の動きを見せ、中にはXライダーの顔面にパンチの連打を浴びせた様の者もいたが、さすがに素体が戦闘工作員では数に任せての時間稼ぎが関の山だった(苦笑)。ただ、途中で乱入してきたクロノスを交えつつ、数に物を云わせてそこそこの抵抗は為していたので、殺陣を見る分にはなかなか見応えがあった。

 一方その頃、別室では川上博士と本物の宮本博士が手術台に横たわるある人物の手術を命じられていた。果たしてその人物とは?
 謎を引きつつ、勇壮な「ライダー賛歌」をBGMにライドルスティックを得物とするXライダーと、炎を纏ったクロノス地獄鎌を得物とするクロノスが一進一退の殺陣を展開し、その隙を突かんとして一人の戦闘工作員が狙撃のタイミングを狙う中、話は次週に続くのだった。



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令和五(2023)年六月一四日 最終更新