仮面ライダーX全話解説

第17話 恐い!人間が木にされる!!

脚本:村山庄三
監督:山田稔
アルセイデス登場

 冒頭、とある山中で、父母(南川直・新草恵子)・姉(桑田みどり)・弟・タケシ(大慶太)の一家4人が絵に描いたような平和なハイキングを楽しんでいた。一家が昼食にすべく川原に座したところ、彼等の耳に泣き声とも呻き声ともつかぬ不気味な声が聞こえて来た。
 訝しんだ一家が声のする方向に行くと、何本かの細い気に人面の様なものが浮かんでおり、よく見るとそれ等の顔は口を動かして喋っており、助けを求めていた。

 さすがに一家は気味悪さを感じるしかなく、母親が一刻も早い下山を提案したが、既に一家はGOD怪人アルセイデスと戦闘工作員達に囲まれており、一家を「モルモット」=実験台にすると云うアルセイデスの台詞と共に吐き出された緑色ガスを浴びて、まずは家族を守るように突出していた父親が、次いで母と姉が木にされてしまった。
 怯え逃げるタケシを追う戦闘工作員だったが、アルセイデスはいずれ日本中のすべての人々が木になるから、として追う必要はないと油断しまくりの台詞を吐いた。「こりゃ完全にアポロガイストの餌食だな…。」と思っていたら、案の定、「馬鹿者!」とアルセイデスを叱責する怒鳴り声が飛んできた。ただ、声の主はアポロガイストではなく、達磨を通じてのGOD総司令のそれだった。
 GOD総司令は、犠牲者達の体は木に変えられても、心が人間のままであることを理由に「実験は失敗」とし、それが成功するまで計画は延期だとした。突然の延期命令に、抗弁しようとしたアルセイデスだったが、GOD総司令はそれを遮るように「新たな指令」として、機密を知った少年を今日中に抹殺するよう命じた。
 これを受けてアルセイデスは戦闘工作員達に、「何を愚図愚図している!」と自分が止めたの忘れたかのようにと怒鳴って(苦笑)、追跡を命じた。いい加減な怪人を上司に持つと要らざる苦労を強いられるのはショッカーも、ゲルショッカーも、デストロンも、GODも、そして現実も変わらんな(苦笑)。

 だが、その頃、一人現場から逃げ続けたタケシは偶然山中をバイクで走っていた敬介と遭遇し、保護された。COLで手当てを受けたタケシの証言に藤兵衛は信じられないと云う風だったが、敬介はGODの仕業に違いないとして事件現場=ヒョウタン山に向かい、怪訝にしつつも藤兵衛もタケシを連れてこれに追随した(ついでにチコとマコもこっそり(ヒッチハイクで)ついて行った)。
 ちなみに道場主の住む大阪府には東大阪市に瓢箪山が実在するが…………まあこの第17話のそれとは無関係だろうな(苦笑)。

 だが、タケシの案内で現地に着くも、そこには元々の犠牲者と見られる木々も、タケシの家族が変化させられたと見られる木々も見当たらず、木にされた筈のタケシの両親と姉まで現れた。
 「木にされた筈じゃあ……。」と怪訝にするタケシだったが、さすがに一家が無事な姿で現れて、タケシのことを「また夢でも見ていたのでは?」と云われては敬介も藤兵衛もそれ以上質問することも出来ず、一家が立ち去るのを見送るしかなかった。
 「見ろ、案の定だ。」と珍しく、子供の云うことを初めから疑ったままの藤兵衛だったが、敬介は一つのリュックサックが取り残されたままなのを訝しみ、藤兵衛に先に帰ってくれと云って一家を追った。

 その頃、家族についていくタケシは家族の様子がいつもと違うと訝しんでいたが、無言で立ち尽くしていた家族は緑煙を上げると再度木になり、背後にはアルセイデスが迫っていた。口封じを兼ねて、タケシも木にせんとしたアルセイデスだったが、そこにチコとマコが割って入り、二人が身代り的に木にされることで危地を脱した。
 やがて吊り橋にて追いつかれ、取り押さえられてしまったタケシだったが、そこに敬介が追い付いてきた。

 アルセイデスはタケシを取り押さえたまま、戦闘工作員に敬介への攻撃を命令。勿論これに後れを取るような敬介ではないが、今回の戦闘工作員による攻撃はかなり執拗で、途中で敬介も業を煮やし、戦闘工作員相手にXライダーにセタップし、ライドルホイップライドルスティックを駆使する程だった。ある意味、「数を活かした」という意味において、かなり戦闘工作員達を善用していた(笑)。
 ただ、さすがに時間稼ぎにしかならず、やがてXライダーはアルセイデスと対峙。僅かな格闘でもアルセイデスは然程膂力に優れている訳ではないことが見て取れたのだが、程なく、アルセイデスは吊り橋の上で二人の戦闘工作員に拘束させているタケシの姿を示して、Xライダーに抵抗中止を強要した。

 かくしてBパートに入ったところで敬介は敢え無く囚われの身となって、吊り橋からぶら下げられていた。アルセイデスは敬介にじっくりと死の恐怖を味わわせると云う悪趣味な処刑を行わんとして、吊り橋に括りつけたロープに火を放ち、いずれロープが焼き切れることで敬介が崖下に転落するよう算段した。
 ここで見張りもつけずその場を離れたのだが、お約束の必敗パターンとなるのは云うまでもない(苦笑)

 ともあれ、仮設作戦所と思われる山小屋にタケシを連れて来たアルセイデスはすっかり悦に入っており、「神敬介は俺が倒した。今度は俺がアポロガイストに替わって大幹部となる番だ。」と大言したが、その言葉が終わらない内に背後にはそのアポロガイストが立っており(笑)、「今何て云った?」と難詰の言葉が挟まれた。
 そんなアポロガイストが現れたのを好都合と云わんばかりに神敬介を倒したと誇示するアルセイデスだったが、勿論アポロガイストは信用しない。「そんなことぐらいで死ぬXライダーではない!」としていたが、恐らく高所に宙吊りにしたぐらいで倒せるとは踏んでいなかっただろうし、何より、「Xライダーを倒せるのはこの俺だけだ!」としていたから、一怪人が倒するとは端から踏んでいなかったのだろう。

 さすがにここまで頑迷に認めない態度を取られてはアルセイデスも我慢ならず、証拠を見せてやるとしてアポロガイストや戦闘工作員共々山小屋を後にしたのだが、アポロン宮殿にはあれだけ厳重な警備態勢を敷いていたGODも現地においては「見張りを立てる。」という概念がないのだろうか?(苦笑)
 案の定、一同が山小屋を離れたのと入れ替わりに藤兵衛が入って来てタケシを解放した。あれだけ疑っていても、一人帰ったりしないのが藤兵衛さんの良いところやね(笑)。ともあれ、タケシの案内で敬介の元に駆け付けた二人はアポロガイストアルセイデス達に先んじることが出来たのだが、眼前では敬介を吊り下げているロープが猛火を上げていた(←しかし頑丈なロープだったな)。
 当然、上着を叩きつけて消火に努める藤兵衛だったが、程なく戦闘工作員達が妨害してきた。しかもアポロガイストアルセイデスも駆け付けて来てはどうにもならず、この状況にさしものアポロガイストアルセイデスに対して、「面白いものを見せてくれた。」、「お前にしては上出来」と、最大限の褒め言葉を(それこそアポロガイストにしては(笑)だが)述べていた。
 そして到頭ロープは焼き切れ、拘束されたままの敬介は河中に没し、GOD一味は藤兵衛とタケシを取り押さえてその場を後にした………………………しかしなあ……地面に叩きつけられた死体を確認したのならともかく、水中に没した相手を死んだと判断するのはなあ…………どう考えても(アポロガイストを含め)GODの組織としての判断基準が大甘と断ぜざるを得ない。しかも相手は水中に強いカイゾーグだと云うのに………。

 案の定、一同が立ち去ると川中からはXライダーが飛び出して来た。即座にクルーザーに搭乗したXライダーは後を追い、先の山小屋で処刑されようとしていた藤兵衛とタケシを救出。乱入してきたXライダーにろくすっぽ抵抗出来ずに人質を奪われて逃走るアルセイデスの体たらくも大概だったが、その後追って来たXライダーの姿が見えなくなったのを、追跡を振り切れたと悦に入っていたのだから呆れるしかなかった。
 当然追跡は続いており、車の屋根に張り付いていたXライダーは運転役の戦闘工作員を倒し、それによってアルセイデスの乗っていた車両は崖下に落とされ、大破・炎上する始末で、アルセイデスは駆け付けたアポロガイストに殴られたのだった(ちなみに正式に処刑されたアキレスを別にすると、実際にアポロガイストに殴られたのはこのアルセイデスが最初で最後)。

 やがてXライダーも追いつき、「今度こそ決着を付けてやる!」と息巻くアポロガイストとの一騎打ちにもつれ込んだのだが、両者の傍近くで構えだけ取ってウロチョロするアルセイデスが何とも哀れだった(苦笑)。
 程なく、アポロガイストはアポロ・チェンジしてしばしXライダーと格闘したが、そこでアルセイデスが自分にやらせてくれと申し出た。一度は「お前の敵では無ない。」としたアポロガイストだったが、それでもせがまれるや「それほどまでに云うなら」とあっさり挑戦権を譲った。まあ、恐らくはアキレスを見限った時と同じような心境だったのだろうな。
 案の定、緒戦同様、アルセイデスは格闘ではXライダーに明らかに劣っていた。ただ、ここで新たに取り出した鞭攻撃だけはそこそこの効果を発揮し、一時的にはライドルスティックを弾き飛ばしたり、Xライダーを半拘束状態にして格闘を有利ならしめたりしたが、第11話でも使われたライダーショックによって鞭を切られると善戦もここまでとなった。
 鞭を切られたのを憤りながらもグラディウスを抜いて戦意を露わにするアルセイデスだったが、ライドルを持たない状態のXライダーにボコボコにされた挙句、ライドル脳天割りを頭頂部に食らって致命傷を負った。
 崖下に転落したアルセイデスはしばし頭を押さえてもがき苦しんだ挙句に爆死。そして特撮界のお約束で、アルセイデスによって木にされた人々も元に戻ったのだった(笑)。

 ようやくにしてタケシも元に戻った家族と再会を果たし、何故に元に戻れたのか訝しがる一家と藤兵衛の下に、Xライダーが怪人を倒したからと云いながらチコとマコが現れた。ただこれによって彼女達が勝手な行動の果てに危険な目に遭っていたことが藤兵衛にばれ、叱られていた訳だが、それも御愛嬌。
 ともあれ、走り去るXライダーに一同が感謝を述べつつ、第17話は終結したのだった。



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令和五(2023)年六月一四日 最終更新