仮面ライダーX全話解説

第18話 恐い!ゴッドの化けネコ作戦だ!

脚本:鈴木生朗
監督:山田稔
キャッティウス登場

 冒頭、とある研究室で二人の科学者が対話していた。新種のヴィールスの培養を手掛けていた沢田(三上剛)は培養速度の速さに驚きつつ、その正体を上司(河合絃司)から知らされておらず、不安を隠せずにいた。
 そんな沢田に対して上司は、疑問を持たずにワクチンを増産すれば良いと命じ、それが出来るまでは人体実験も出来ないと嘯いていた。勿論「人体実験」等という物騒な単語が出て来ては、沢田は更なる不安に陥り、応募する人間が簡単に見つかるとは思えないと述べた(←心配するところ、そこ!?)。
 だが、上司はそんな沢田の不安を意に介さず、現時点で20人分のワクチンが出来ていると聞いて、まだ足りないことや、来たる人体実験の暁には沢田にも立ち会うよう告げたが、沢田は人間をモルモット代わりにする人体実験には明らかに難色を示していた。

 場面は替わってとある夜道。
 藤兵衛はパイプを燻らせながら、夜道の生暖かい風に不気味なものを感じていたが、野良猫に遭遇したと思ったら、その野良猫は不気味な影を見せた後、不自然な消え方をしたが、この場面ではそれだけだった。
 すぐに場面は替わって沢田邸。
 そこでは沢田の娘・カオリ(尾崎ますみ)が就寝中だったが、不気味な気配を感じて起きると部屋の中に黒猫がいた。ただ猫がいただけなら「何処から入って来た?」程度で終わるのだろうけれど、その影(GOD怪人のもの)に容易ならざるものを感じたカオリが母親の元へ行くと、ソファに横たわる母・ヨシエ(中真千子)の咽喉元に黒猫が先回りしていた。
 恐怖したカオリが次に向かったのは父の書斎で、母親が猫に殺されたと云って助けを求める娘を本気にしていたなかった沢田だったが、「怖い夢を見た。」としつつも、一緒に確かめに行こうとする辺り、子供の証言をつっけんどんに対処する大人の傾向(苦笑)よりはマシな人物だった。
 だが、部屋を出ようとすると、そのヨシエが黒猫を抱いて現れた。

 一応は、ヨシエの無事を安堵するシーンなんだろうけれど、沢田もカオリもヨシエの抱く黒猫に突っ込まなかったのが物凄く不自然だった(苦笑)。ともあれ、カオリの様子を訝しがるヨシエに、娘が怖い夢を見ただけと告げる沢田に、笑うヨシエだったが、次第にその笑い方は哄笑へと変じた。
 さすがに妻の様子がおかしいと感づいた沢田の眼前でヨシエの姿は口から牙を、手から長い爪を生やしたものとなり、その背後には上司が立っていた。事態の急展開についていけずすっかり狼狽え、上司に何故ここに?と問う沢田に上司は「人体実験は大成功。」と告げたのだった。
 要するに上司はとっくにキャッティウスに取って代わられており、人々をGODの忠実なる手下となる猫人間を変えてしまう化け猫作戦を進めており、その正体を現すと沢田にも襲い掛かり、爪による絞め上げで沢田もヨシエ同様の猫人間に変え、それを目の当たりにしたカオリは気絶した。

 そしてカオリをも猫人間にしようとしたキャッティウスだったが、そこに藤兵衛からの緊急通信で呼び出されていた敬介が乱入してきた。「今度は何を企んでいる?」と詰問する敬介。だがそれにキャッティウスが答えることは無く、忽ち格闘に入った。
 その間隙を縫って一人無事だったカオリを連れ出した藤兵衛は、戦闘工作員達の妨害に遭うも、Xライダーの加勢もあって、何とかカオリをチコとマコの下宿先に連れて行くことに成功した。
 だが、そのマンションは既にGODの手が回っていた。

 藤兵衛が二人の部屋を訪れたのは休日の早朝だった様で、チコとマコはパジャマ姿(嬉々)で現れて藤兵衛とカオリに応対し、カオリを匿うことに同意したが、カオリを歓迎するチコの腕には例の黒猫が抱かれていた。勿論カオリは恐怖し、追い打ちをかける様にチコとマコの容姿は猫人間のそれに変じ、それとともに現れたキャッティウスがマンション全住人が既に猫人間であることを告げた。
 何とかカオリだけでも助けんとして独り果敢にキャッティウスに突撃する藤兵衛に従って室外に逃れたカオリだったが、キャッティウスの前言通り、マンションの住人達は猫人間となっており、忽ち包囲されたカオリだったが、ライドルロープで屋上に引き上げられたことで何とか難を逃れた。
 だが屋上には戦闘工作員達が駆け付けて来て、すぐにキャッティウスもやって来た。ここで最初の殺陣が展開された。カオリを庇いながら戦うXライダーに、ひっかき傷一つで勝負を決められる毒爪を得物としながら優位に立てないキャッティウスの戦闘能力は大したものでは無かった(劇場版でも藤兵衛にアイスピックで刺されて狼狽えていた)が、さすがに化け猫の改造人間らしく、素早さはそれなりにあり、屋上から投げ落とされても地面に巧みに着地し、憎まれ口をたたいて逃走したのだった。


 Bパートに入り、取り敢えずはカオリの無事を確保した敬介だったが、公園で歓談する家族を見て、両親の変貌に受けたショックから立ち直れないでいるカオリは食欲もない状態だった。
 そんなカオリに敬介は、猫人間にされた両親を「病気になっただけ。」として安心させ、「必ず治して見せる。」と約束して幾ばくかの元気を取り戻させていた。結論を知る身としては妥当な励まし方と見えるが、この時点では敬介はまだマンションの住人(チコ・マコを含む)の行方・安否や、何故にカオリの両親外の一番に狙われたかが分かっておらず、生死不明状態で安直に「助ける」と断言しない方が良い様に思ってしまう。子供の時なら、「ヒーローが必ず助けてくれる。」と信じ、現実と比較することは無かったのだが。

 その頃、GODのアジトではアポロガイストキャッティウスに、「化け猫作戦は少しも順調にいってはいない。」と詰っていた。
 と云うのも、進捗に難があったからで、この時点で猫人間化されていたのは何十人単位で、アポロガイストはそれでは話にならないとしていた。進捗が捗々しくないのはキャッティウスも自覚しており、その原因はヴィールスの培養が思うようにいっていないからだった。
そしてその培養が進まないのは、沢田が断固として協力を拒んでいることにあり、猫人間にすればGODに服従するのだが、アポロガイストの「猫人間になってもか?」対する詰問へのキャッティウスの答えは、「猫人間になると頭の程度も猫並みになってしまうので、上手く行きません。」というトホホなものだった(苦笑)。
 この回答に、業を煮やしたアポロガイストは元の人間に戻して痛めつけること(での服従強要)を命じた。うーむ……再生してから少しアポロガイストは短気になったように思われる。後に語られる余命への伏線だろうか?
 ちなみにこの間の会話を聞いていると、キャッティウスは一貫してアポロガイストに対して敬語で接している。多くの神話怪人達がタメ口だったことを思えば、口調がおどけ気味で、聡明とも云い難いキャラクターながら、組織内の相手の地位を重んじる礼儀は持ち合わせた稀有な存在なのかもしれない。

 それから程なく、敬介はとある廃工場にやって来た。何を手掛かりにそこにやって来たのか作中では明らかにされなかったが、後々のGODの動きを見るに、恐らくは敬介を誘き寄せる為に故意に何らかの手掛かりとしてその位置を知らせたのだろう。
 地下牢獄には猫人間にされた人々が牢獄に閉じ込められ、犠牲者達に対してアポロガイストがワクチンの入った瓶を示して、人間に戻りたければ、GODに対して忠実に動くよう強要していた。どうようやら交渉が出来る程度には猫よりは頭が良いようだ(苦笑)。
 それを物陰から見ていた敬介はアポロガイストが立ち去ったのと入れ替わりに牢獄に駆け寄り、中に藤兵衛がいることに愕然としたのだが、その時にはキャッティウスと戦闘工作員達に包囲されていた。
 かくして二度目の殺陣が展開されたのだが、やはりキャッティウスは強くない。取り立てて弱くも見えないが、セタップ前の敬介でもそこそこ善戦出来ており、キャットシュートなる爆弾を駆使しても優位に立ててなかったから、決め手に欠けていた。
 結局、跳躍力や地の利を活かした殺陣を展開したものの、Xキックを食らって昇天したのだった。

 キャッティウスの最期を見届けたXライダーは猫人間にされた人々を救うべく、地下牢獄に向かった。牢獄手前の金庫にアポロガイストがワクチンをしまったのを見ていたのだが、ライドルホイップで破壊した金庫の中身は空だった……。
 直後、含み笑いと共に現れたアポロガイストがワクチンを手に、欲しければ自分と戦えと促した。謂わば、「表に出ろ!」に応じた様に屋外に出て白兵戦を展開したXライダーとアポロガイストだったが、勝負はつかなかった。
 早い話、Xは勝負よりも猫人間にされた人々を助けることを優先し、格闘によってアポロガイストがワクチンから離れたのを格闘の間際に奪取し、それを犠牲者達に投与することで、沢田夫妻は正気を取り戻し、カオリと歓喜の再会を果たし、藤兵衛・チコ・マコも元に戻ったのだった。
 XライダーVSアポロガイストの好勝負を楽しみたい身とすれば些か物足りない上に、Xライダーに姑息なものを感じないでもなく、悔しがるアポロガイストに一抹の同情を覚えないでもないが、敵を倒すことよりも万民を救うことを優先すべきヒーローとしては正しい態度ではあろう。

 ちなみに沢田一家はひたすら再会を喜んでいたが、藤兵衛・チコ・マコはどうも猫人間にされた時の記憶がないようで、猫になったような気分だけが残っていた。そう云いながら両手を猫手に構えるチコとマコのポージングは丸で間抜作だったな(笑)。

 余談だが、この第18話に前後した第17話から第19話は怪奇色が強く、真夏によく行われる怪談物っぽかったが、この3話が放映されたのは6月で、真夏には少し早かった。そしてこの第18話が放映された昭和49(1974)年6月15日は、真言宗の開祖・弘法大師(空海)様の生誕から1200年となる日だった(※弘法大師様の生誕日には諸説あり、またここでは旧暦新暦の相違は考慮していません(苦笑))。



次話へ進む
前頁へ戻る
『仮面ライダーX全話解説」冒頭へ戻る
特撮房『全話解説』の間へ戻る
特撮房へ戻る

令和五(2023)年六月一四日 最終更新