仮面ライダーX全話解説

第19話 ゆうれい館で死人がよぶ!!

脚本:鈴木生朗
監督:折田至
オカルトス登場

 雷鳴轟く夜間に始まる第19話は、第17話・第18話に続いて怪奇色の強いものだった。
 雷雨の中、一組のカップルが山道を彷徨っていたのだが、一着のコートを二人でレインコート代わりにし、偶然見つけた洋館に助けを求めていたから、遭難に等しい状況にあったことが伺えた。
 洋館からは返事がなく、止む無く中に入った二人が見たのは、幾つも掲げられた不気味な洋画で、その不気味さに女性(八代順子)の方は嵐が続いているにもかかわらず辞去を申し出る程だった。
 そうこうする内に、白いローブを纏い、手に蝋燭を持ち、猫背の初老の男(上田忠好)が現れた。「不気味」を絵に描いた男はこの館の主人と名乗り、直後にGOD怪人オカルトスであると名乗ると正体を現し、怯えるカップルの男(山下則夫)を杖で殴り倒し、女の方は杖で絞め挙げた。
 何が目的でカップルを攻撃したかはよく分からなかったが、程なく、館内の洋画(オカルトスの絵そのもの)を媒体にGOD総司令から、各地で幽霊騒ぎを起こし、社会に混乱をもたらすGOD幽霊作戦の意義が伝えられ、その発動が命じられた。確かに「オカルト」の語源になったオカルトスに相応しい作戦であった。その騒ぎと混乱から何をしたいのかはさっぱり分からなかったが(苦笑)。

 一夜明けると、洋館はきれいに消え失せ、そこには白骨化したカップルの変わり果てた遺体が残されていた。となるとこのカップルは作戦利用に何ら関係していた訳ではなく、GOD関連施設に迷い込んだことで口封じ兼面白半分に惨殺されたことになる………悪の組織らしい残虐行為だが、単純に機密を守りたいだけなら洋館への施錠を真剣にお勧めしたい

 直後、敬介が現れ、膝を追って、白骨死体に祈りを捧げていたが、何処か第1話でネプチューンの犠牲になった船員の遺体に祈りを捧げていた神啓太郎がダブったのはシルバータイタンだけだろうか?
 その敬介は、山中で若いカップルが行方不明になったと聞いて調査に来ていたのだが、敬介は公的機関と何らかの繋がりでもあるのだろうか?第8話の例から、城北大学関係者とは(亡父の縁からも)繋がりがありそうだが、この『仮面ライダーX』もこの当時の多作品の例に漏れず警察の影が極端に薄いから何とも云えんが(苦笑)。

 山中には藤兵衛・チコ・マコも同行して共に捜索していたのだが、三人は濃霧の中で敬介とはぐれ、オカルトスの洋館に辿り着いていた。視聴者的にはGODの罠であることが分かるので入館して欲しくないところだが、藤兵衛達にしてみれば、山中で行方を絶ったカップルの何かを知っているかもしらない数少ない手掛かり(と見込める場)である。
 カップル同様、宅内に呼び掛けるも返事がないために中に入り込んだ三人だったが、そこで三人を待っていたのは行方を絶っていたカップルだった。マコが所持していた写真から、眼前に立つ男女が行方不明のカップルであることが分かったのだが、カップルの顔色は青白く、生気を感じさせず、抑揚のない声で自分達がその行方不明のカップルで、既に死んでいると告げると、その姿はかき消すようになくなり、驚く藤兵衛達の背後にはオカルトスが立っていた。

 襲い掛かるオカルトスから身を挺して立ち向かった藤兵衛はチコとマコに逃げるよう促したが、当然の様に洋館の扉は開かない(ホラーの定番ですな)。何とか藤兵衛が時間稼ぎしようとしている間にも、例のカップルが再度姿を現し、チコとマコに襲い掛かって来た。そんな三人の危機にはぐれた筈の敬介が間一髪現れるのはまだ許せるとして、階上から現れたのは解せなかった。一体何処から嗅ぎ付けて、何処から入って来たのやら(苦笑)。

 そんな敬介にも杖を振りかざして戦闘工作員と共に襲い掛かるオカルトスだったが、変身前とは云え敬介相手にそこそこ善戦し、同時に戦闘工作員達も只者では無かった。戦闘能力自体は然程強い訳でもないのだが、洋館内に掲げられていた絵に化ける力があるようで、絵からいきなり実体化して奇襲してきたり、逆にぶっ飛ばされたと思ったら絵に戻ったりして敬介を惑わせた。
 そうこうする内にオカルトスは「超能力オカルトス」なる光線を発し、敬介を麻痺状態に陥れたのだった。だが、GODの宿敵神敬介を倒せるこの絶好のチャンスにオカルトスは「貴様の相手をしている暇はない。」と云って姿を消した。
 どうやらオカルトスは任務を優先するタイプの様で、組織としては任務に忠実な者として賞賛すべきなのだろうけれど、動けない変身前の敬介を殺害する好機と考えれば、ここで去ったのは判断の難しいところである。

 結局、オカルトスが姿を消すとともに、洋館も、館内の調度品も消え、そこにはカップルの白骨死体だけが残されていた。敬介と藤兵衛は警察に通報すると話していたが、本当に本作における警察の影は薄いな(苦笑)
 一方、一部始終をアジトでワインを飲みながらモニタリングしていたアポロガイストは珍しく満足げだった。アポロガイストの語るところによると四人が目にしていたのはすべてオカルトスが超能力で作り出した三次元映像とのことで、敬介達はすべて実体と思っていたのだから、その完成度は完璧と云ってよかった。何せ、基本的に怪人達を褒めることを知らないアポロガイストが「面白い。もう少しオカルトスに暴れさせた上で」としていたのだから、能力自体は完全に認められていたと云って良いだろう(とどめは自分で刺すとしていたが)。

 その後、オカルトスは町中のあちこちで幽霊騒ぎを起こした。公衆便所で、公園で、土手に駐車中の車で道行く人々に死体の幻影を見せ、その死体が笑いかけると云うもの(ちなみに死体役はすべて山中で犠牲になったカップル)だが、その中で何故か一人の警備員だけはオカルトスに杖で殴打しまくった挙句に、敬介が駆け付けるのも間に合わず、撲殺された。
 しばし二度目の格闘が行われたが、前述の超能力を躱されたオカルトスは「今度邪魔したら貴様を食い殺す!」という捨て台詞を残して消え失せた。やはり対決よりも任務を優先する、目先の手柄に惑わされないタイプの様である。
 ともあれ、敬介は警備員の死体を抱いて、助けられなかったことを力なく詫びるのだった。

 一夜明け、場面はCOL。藤兵衛の言によると町中のあちこちで幽霊騒ぎが起こったとのことで、都内中の人間が幽霊ノイローゼにされかねないことにやきもきしていた。そんな藤兵衛を前にして、如何にしてオカルトスの超能力を破るか頭を痛めていた敬介だったが何かに気付いたかのように、翌日が犠牲になった警備員の葬式であることを口にしていた。

 場面は替わって警備員の葬式会場。そこには喪服を着た藤兵衛・チコ・マコが参列していたが、思えば仮面ライダーシリーズにおいて葬式シーンが描かれるのは意外と少ない。犠牲者が天涯孤独だったり、遺体が完全消失に追いやられたり、尺の都合だったり、と色々あると思われるが、悪の組織のテロ行為で時に数多くの犠牲者が出ながら、その頻度に比してお通夜や告別式のシーンが描かれるのは仮面ライダーシリーズに限らず稀である。やはり子供番組において二度と生き返ることのない人の死を嘆き悲しむシーンは好ましくないと思われるからだろうか?

 ともあれ、祭壇の前に着座した三人だったが、他に参列していたのは警備員の妻と娘だけだった。藤兵衛達の言によると他の身内や友人知人は幽霊騒ぎに恐れを為したとのことで、些か冷たい気もするが、各地で幽霊が目撃され、その幽霊らしきものに殺された人の葬儀とあっては、恐れを為す気持ちも若干分からないでもない。
 そんな中、お坊さんの読経(般若心経)が続いていたのだが、このお坊さん、オカルトスの人間体(苦笑)。まあ、藤兵衛達は人間体を見ていないから、分からなくても無理はない。やがて参列者一同が不気味な気配を感じる中、棺桶を覆っていた白布が外れたと思うと中から日本古来の幽霊スタイルで死んだ筈の警備員が現れ、その妻子は気絶。坊主もオカルトスの正体を現し、藤兵衛達を「食い殺す!」と宣言し、二人して襲い掛かって来た。

 屋外に逃れた藤兵衛・チコ・マコを追って来たオカルトスと幽霊警備員だったが、そこに敬介が割って入って来た。どうやらオカルトスを誘き出す為にわざと一人参列していなかったと見えた。
 三度目の対峙に、オカルトスが今度は食い殺すと宣言した筈だと喚けば、敬介は罪なき人々を殺害したことへの怒りを露わに三度目の殺陣に突入した。
 今回のGODの幽霊作戦は、作戦としてはパニックを起こす以外にその後どうしたかったのかが丸で分からず、オカルトスが一般ピープルに対して、脅しに留めるケースと殺害するケースの相違も分からなかったが、戦い方そのものは結構順当だった。
 オカルトスは召喚した戦闘工作員達にXライダーへの攻撃を命じ、相変わらずXライダーに有効な攻撃を与えられない戦闘工作員達ではあったが、数や武器を利して、結構執拗な攻撃を感じさせていた。
 そんな戦闘工作員達をようやく全滅させたところでXライダーとオカルトスの一騎打ちとなったが、Xライダーはライドルスティックオカルトスは杖を得物とした撃剣はなかなかの好勝負を展開していた。実際、撃剣だけなら両者は互角と云ってよかったが、数々の戦闘経験が物を云ったのか、時折Xライダーは蹴り技を交え、その分徐々に勝負はXライダー有利にシフトした。そしてこのままでは不利と見たものか、形勢逆転を狙って超能力オカルトスを再度発動させたオカルトスだったが、これをXライダーはライドルバリヤーライドルスティックが打撃時に発する電磁波を応用したバリヤー)でもって弾き返し、これによってオカルトスは自身が麻痺状態に陥り、Xキックを食らうと口腔より大量の泡を吐き出し、それに埋もれる様にして絶命した。

 勝負が決して程なく、バイクでアポロガイストが駆け付け、到着が遅かったことを悔い、Xライダーへの戦意を益々高めていたが、正直、彼らしくない過失だった。
 恐らくモニタリングしていたときの台詞から、それなりに有能なオカルトスにやるだけやらせた上で止めは自分が差さんとして、駆け付けるそのタイミングを誤ったのだろう。
 オカルトスの能力も、アポロガイストの戦略も、それなりに見るべきはあっただけに作戦全体がぼやけていたのが第19話の難だったと云えようか。


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令和五(2023)年六月一四日 最終更新