仮面ライダーX全話解説

第20話 お化け?謎の蛇人間あらわる!!

脚本:島田真之
監督:折田至
サラマンドラ登場

 冒頭、とある墓地近辺をアオダイショウやシマヘビが何匹も這いずり回っていた。その近くに植物園の様な建物があり、一人の黒ローブを纏った老婆(真咲美岐)が一体の死体を引き摺っていた。
 建物内にはコウモリ、ワニ、大蛇、オオトカゲと云った爬虫類を主体とした生き物が何体も飼われており、老婆は笑いながら遺体をとある檻に放り込むと、「蛇に食われろ!」と云い放った。

 一応、爬虫類好きとしてはツッコミどころ満載である。
 蛇は同種でもかなり個体差による偏食がきつく、基本的に生餌食いである。自然界で滅多にお目に掛かれない人間の、しかも遺体を捕食するなど、皆無と云って良い。
 もし何らかの形で人肉への餌付けに成功していたとしても、犠牲者の体に群がった蛇のサイズ的に捕食するとも思えなかった。と云うのも、蛇は護身用の牙は持つものの、それでもって得物を咀嚼することは無い。捕食手段は丸飲みだけなのである。顎や胸骨を巧みに外すことで体よりかなり太い相手をも捕食することは可能だが、それでも丸飲みである以上、自ずと限界があり、画面に映った種の蛇が成人男性を捕食するのは不可能と云ってよかった。

 ともあれ、場面は替わってとある邸宅の一室。そこで一人の男性がくつろいでいたのだが、物音がすると一匹のアオダイショウが潜り込んでいた。一体、どこから入って来たのかと訝しがる男性の背後にGOD怪人サラマンドラが現れ、男性は忽ち噛み付かれてしまった。
 更に場面は屋外に替わり、夜道を立花藤兵衛がジープを走らせていたのだが、そこにサラマンドラに噛み疲れた男性がふらふらしながら現れた。藤兵衛が車道に飛び出したその男性を危ないじゃないかと詰るも、男性は答えない。
 その様子のおかしさから声をかけるも、男性は藤兵衛に抵抗。直後、サラマンドラが現れ、男性を連れて姿を消した。正直、これだけを見るといたずらにGODのかかわりを神敬介関係者に漏らしただけで、何がしたいのかさっぱり分からなかった。

 余談だが、このサラマンドラに噛まれた男性、道場主にも、道場主の妹にも『仮面ライダー』に滝和也として出演していた千葉治郎氏に見えて仕方なかった。
 まあ、声は全然違ったし、もし千葉氏が仮面ライダーシリーズに登場するのなら、名も無いチョイ役を演じるとは考え難いから別人だとは思うのだが………。

 閑話休題、一夜明けた墓地近辺では二人組の男性が周囲を警戒しながら歩いていた。一人の男・勝村は木刀を持ち、もう一人の本田なる青年(瀬戸山功)はカメラを持ち、さながらお化け探索or退治の様相だった。実際、二人組は幽霊出現の方を聞き、それを調べに来たのだが、勝村の方はアオダイショウに対して逃げ腰になる体たらくで、本田に先に帰れと云われる始末だった。
 本田は弟との約束からそのままでは帰れないとして、一人でも踏み止まって幽霊をカメラに収める覚悟でいた(結局、勝村も一人になれず追随したのだが)。

 場面は替わってCOL。どうやら藤兵衛は昨夜の件を含め、周囲で起きている事件の調査を敬介に命じていた様で、敬介の報告によると藤兵衛が遭遇した若者はスポーツ万能で、如何にもGODが仲間に加えたがる人材であったこと、幽霊騒ぎは三ヶ月前から霊園を中心に起きていたことが分かった。
 幽霊騒ぎで地域の人々を遠ざけるのは昔から漫画などでよく合ったパターンだが、却って主人公達の介入を招くことになるのはこの作品でも同様だった(苦笑)。まあ、風吹けば「GODの仕業?」となる世界だからな(苦笑)。

 だが敬介が霊園に向かっている頃、その場では本田達がサラマンドラの襲撃を受けていた。「生きて帰れると思うな!」と目撃者抹殺の意を露わにするサラマンドラだったが、その割には自ら騒ぎを起こし過ぎではないだろうか?(苦笑)。ともあれ、本田は気絶に追いやられ、勝村は命からがらその場を遁走。しかし、助けを求めて勝村が向かったのは冒頭の老婆の元だった(苦笑)。まあ、正体知らないのだから仕方ないが。

 老婆に同じ様に訪ねて来た者がいると云われ、中に案内された勝村が見たのは、サラマンドラに襲われた筈の本田。だが、安堵して近付いたその体は白骨だった。更に老婆が露わにしたサラマンドラの正体に恐怖し、邸内を逃げ惑う勝村だったが、サラマンドラはそれを無視する様に、アジサイの花を通信媒体としたGOD総司令の通信に耳を傾けた。
 それによると、サラマンドラに血を吸われ、逆に毒液を注入された人間は蛇人間と化してサラマンドラの忠実な手下になるとともに、サラマンドラ同様に他の人を襲っては蛇人間に変えてしまう力を持つとのことだった。ヴァンパイアやゾンビに見られるホラー映画の定番やね(もっとも、道場主はホラー映画を殆んど見たことが無いのだが)。

 そしてそのやり取りを実行に移すかのように、サラマンドラは実際には殺さずに捕らえておいた本田の血を吸い、毒液を注入し、本田を蛇人間に変えてしまった。
 一方の勝村は命からがらサラマンドラの巣窟を抜け出したものの(←警備の甘いアジトだ)、度重なる恐怖で半狂乱且つ身動きもままならず、担架で運び出されていた。
 そこへ兄の身を案じて駆け付けた本田の弟・タカシ(梅地徳彦)が現れ、兄の消息を訪ねたのだが、勝村は言葉が言葉にならず、ひたすら怯えるだけだった。居た堪れなくなって霊園内に入ろうとしたタカシだったが、これは地元の人が止めた(←えらい!)。
 中年男性二人は霊園内に科学では証明出来ない何かがあるからとして、タカシが霊園内に入り込むのは危険としてその両腕をがっちり掴んでいたが、そこにサラマンドラがこの場を立ち去らねば死人が増えるとの脅しの声を響かせ、その場にいた人々ほぼ全員が恐怖して逃げ去った。

 これにより拘束を解かれる形になったタカシ(←ま、仕方ないか……)は霊園内に入り込もうとしたが、これを今度は敬介が止めた。敬介を訝しがる気持ちと、兄を案じる気持ちで居た堪れない様子のタカシに敬介は自らを「Xライダーの友達」と称して、Xライダーが兄を助けるからと云って、タカシに引き返すよう促した。
 だが、説得に応じて帰ろうとしたタカシに地中から現れた戦闘工作員達が立ちはだかった。どうもサラマンドラ及びその配下、能力はともかく、機密保持体制に難があるようだ(苦笑)。
 当然、戦闘工作員達は敬介が蹴散らしたのだが、直後にサラマンドラ自身も現れ、格闘戦に加えて、指先から発する泡で敵を石化する攻撃まで繰り出して来た。サラマンドラというより、バジリスクだな、コイツ……。ともあれ、泡は敬介に躱され、その石化能力が発揮される対象が戦闘工作員だったのは云うまでもない(笑)
。  厄介な能力を発揮されたとあってか、程なく敬介はXライダーにセタップ。それに対してサラマンドラは体を球状に丸めて体当たりする戦術で勝負を有利に進めたが、突如地面に落ちていた鏡に恐怖し、狼狽えだした………やっぱり、バジリスクだよ、コイツ(笑)。
 そんな有利不利が点々とする勝負だったが、そこにアポロガイストのアポロマグナムが横槍として入り込み、Xライダーは崖下に転落することで勝負は水入りとなった。

 Xライダー諸共自分まで巻き込んだことに抗議の声を上げるサラマンドラだったが、それに対するアポロガイストの返答は、「Xライダーを倒せればそれいい。」という、丸で怪人の犠牲を意に介さないもの。これに絶句するサラマンドラだったが、アポロガイストはそれを無視する様に死体の探索を命じた。恐らく崖下に転落した程度では死んでないと見ていたのだろう。
 実際、足を負傷しただけで生きていたのだが、離れた場所から一連の勝負を見ていたタカシはすっかりXライダーが戦死したと思い込み、自力で兄を助けるしかないと決意するのだった。

 だが、まだ小学生と思しき一人の少年が探索するには余りに危険な場所で、尚且つタカシにはその危機に立ち向かうには警戒心が低過ぎた。眼前に現れた館が如何なる場所なのか疑うこともなく兄の消息を老婆に訪ね、招き入れられた館内で数々の爬虫類、さそり、そして犠牲者の白骨に逃げ惑う始末だった(ちなみに人間が蛇に食われるとすれば、上述した様に丸呑みで、白骨死体が残ることはあり得ません)。
 ようやく難を逃れて老婆に助けを求めるも老婆はサラマンドラの正体を現し、逃げに逃げた果てにタカシが再会したのは牢獄内で蛇人間と化していた兄だった

 洗脳犠牲者のお約束で本田はサラマンドラに命じられるがまま弟・タカシを襲い蛇人間にせんとしたが、そこにXライダーが乱入。次々仲間を増やすことが出来る意味では恐るべき存在である蛇人間も戦闘能力そのものは大したことなく、忽ちタカシを奪還された。
 当然サラマンドラは蛇人間達にXライダーとタカシの追撃を命じた訳だが、厄介なのは彼等を本気で打ち倒す訳にはいかないことにある。鉤爪と牙を武器に襲い掛かる蛇人間を振り払うことは、Xライダーにとっては容易だが、振り払っても振り払っても彼等は執拗にかかって来るし、ましてタカシを庇いながらではどうにも分が悪かった。
 だが、先の戦いでXライダーには一つの勝算が備わっていた。小さな鏡にすら狼狽え、戦闘不能に陥るサラマンドラの弱点は蛇人間達にも共通しており、Xライダーはタカシを小池に飛び込ませるとそこを動かないよう命じた。
 狙い過たず、蛇人間達は鏡面と化した水面を前に行動不能に陥った。

 タカシの、当面の危機を脱したXライダーはサラマンドラとの最終決戦に向かった。ここで個人的な評価を下すと、シルバータイタンは最後の神話怪人となったサラマンドラはそこそこの強敵だったと思っている。石化泡や、爬虫類を武器とした攻撃は大したことなかったが、全身を球状にしての体当たり攻撃は明らかにXライダーを苦戦させており、白兵戦においても特に不利を感じさせず互角に戦っていた。
 結局、勝負は地面に転がっていた鏡の破片をサラマンドラに見せる態勢に持って行ったことでその動揺を誘い、その隙を突くXキックで決したのだった。予め、敬介のバイクミラーを割っていたように、霊園に転がる鏡状の物をすべて事前に除去していれば、勝負はどうなっていたか分からなかった。

 ともあれ、勝負はついた。鏡という存在が無ければ勝敗の見え難い勝負だったが、サラマンドラが倒れたことで犠牲者が元に戻るのは万人に予想可能な展開で、実際にそうなった(笑)。


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令和五(2023)年六月一四日 最終更新