仮面ライダーX全話解説

第21話 アポロガイスト最後の総攻撃!!

脚本:伊上勝
監督:内田一作

 冒頭、GOD機関の日本基地であるアポロン宮殿に銃声が響いていた。そこではアポロガイストが来たるXライダーとの決戦に備えて射撃訓練に余念がなかった。
 ナレーションによるとアポロガイストは毎日3時間の練習を積んでいるとのことで、拳銃を得物として様々なアクションで小さめの動く的を相手にど真ん中に命中させ続けていたが、その内の一発を外したことに酷く狼狽えていた。
 というのも、それまでアポロガイストは毎日300発放ってはそのすべてを標的中心に命中させていたのを、三日前から一発ずつ外し出し、指先に不調を覚えていた。更には警備隊長が持ってきたコーヒーカップを取り落とす様で、警備隊長も普段と比べて顔色が悪いことを指摘し、心配する様子を見せた。
 それに対して自分が「不死身の肉体を持つGODの誇るアポロガイスト」であると云い張り、体調不良を否定するアポロガイストだったが、体調不良は他ならぬ彼自身が疑いようないものとしていた。

 改造人間、それも一度死んで再改造で甦った体とあっては、その再改造手術を執刀した宮本と早田(←第15話・第16話では「川上博士」と呼ばれていたが、何故かこの第21話では「早田」と呼ばれていた)に求めるしかないと考えたアポロガイストは宮本宅を訪ねた。
 突然の来訪に狼狽えつつ、何故ここに現れたのかと誰何する宮本にアポロガイストが体のことを聞きたいと尋ねると、即座に宮本は「体の調子が悪くなったのか?」と何か知っているのを仄めかした。
 直後、三日前から指が痺れ、時々感覚がなくなると云うアポロガイストの訴えに、「そうか到頭始まったか…。」と呟いたことからも宮本が真相を知っているのは明らかだった。当然アポロガイストにとって聞き捨てならない台詞でその真意を詰問したところ、宮本が口にしたのは、「再生手術による君の生命はちょうど一か月間だけだ。」というびっくりの事実。
 更に宮本が云うには、「まず指が痺れ出し、次に足の自由が利かなくなり、そして脳波が止まって死ぬ。」とのことで、救いもへったくれもない内容だった。
 「一ヶ月」という単語も、「死ぬ」という単語も、聞き捨てに出来ない上に、平静を保てない台詞だった。さしものアポロガイストも周章狼狽せずにはいられず、その正確な最期の時を訪ねたところ、宮本から返って来たのは、「三日前に指が痺れたのだったら、早くて今日一杯。遅くとも明日。」というあんまりな台詞だった。
 『怪獣VOW』でも触れられ、シルバータイタンも過去作でネタにしたことあるが、改めて思うに、本人の立場に立てば余りに唐突且つ、執刀時点で判明していたそんな大事が間際まで伝えられていなかったことに怒りを覚える事実でもある。

 いずれにせよ、アポロガイストならずとも死の運命を指咥えて受け入れる訳にはいかない。アポロガイストは宮本が一度アポロガイストの手術を行っていることを上げて、もう一度自分の肉体組織を新しいものとすることを命じたが、宮本はそれを「不可能」として拒絶した。
 「不可能」とする理由は、アポロガイストが既に早田(←くどいが登場時の名前は「川上」)を殺していたことにあった。アポロガイストの再生は宮本と早田の共同で初めて為せる業だと云うのである。
 早田を殺してしまったことに切歯扼腕するアポロガイストは業を煮やして、宮本の担当部分だけでも手術しろと命じたが、やはり宮本は不可能とし、次善の策としてXライダーのパーフェクター移植を申し出た。

 Xライダーがセタップの際に口腔にはめ込む重要パーツであるパーフェクターを心臓部に移植すれば死なずに済むと証言する宮本。会ったこともない相手の所有物で、触ったこともない機器が何故そんな効力を発揮できると断言できるか激しく謎だが(苦笑)アポロガイストととしては否が応でもXライダー打倒を急がなければいけないこととなった。

 アポロガイストは宮本に「礼を云うぞ。」としつつも、次の瞬間「用のなくなった奴は死ね!」と云って、宮本を射殺した………。約30年前、初めてこの話をレンタルビデオで観ていた道場主の横でこの話を見るとは無しに見ていた妹は、あんまりな余命宣告を笑い、もう一人の妹は自分の肉体に関して重要な手掛かりを知る宮本を殺したことに異を唱えていた。
 確かにアポロガイストの肉体に対する今後を考えれば宮本は生かしておくべきだったと云える。ただ、重要機密を黙っていた宮本に対するアポロガイストの怒りは分からないでもない。まして宮本が手術の執刀を拒否する以上、GODの役に立たないのなら研究費浪費と云の名の金食い虫でしかない。優れた頭脳故、生かして使うべきが定石なのはわかるが、組織的には許し難い側面も否定出来ないのである。

 ともあれ、アポロガイストは宮本の死体を通信媒体としてオートレース練習中の神敬介の前に派し(正確には操り人形状態の宮本がタイムキーパーをしていた藤兵衛を襲い、敬介が割って入る形で再会した)、「最後の挑戦」を叩きつけた。
 アポロガイストは既にチコとマコを人質に取っており、返して欲しくばアポロン第二宮殿の格闘場まで12時間以内に出向くように告げると宮本の遺体を爆破・四散させた。

 急げばまだチコとマコを救えるかもしれないと思ってCOLに急行した敬介だったが、COLに二人の姿はなく、店の中は荒らされ、三人の客が倒れていた。「遅かったか…。」と思いつつ客を介抱する敬介の耳に聞こえて来たのは、改めてアポロン第二宮殿まで来るよう強要するアポロガイスト型通信人形からのアポロガイストの声だった。
 これに対して敬介は行きたくとも場所が分からないと答えると、アポロガイストは地図を渡すとして、実際に地図を残したのだが、同時に「無事に辿り着けるかな?」との台詞も残した。
 その台詞を訝しがる敬介だったが、真意はすぐに分かった。敬介の足元に横たわっていた客達が突如起き上がり、敬介に襲い掛かるとアキレスプロメテスユリシーズの姿を現した。何でもアポロガイストから「命の炎」とやらを譲られて甦ったとのことで、復讐心も露わに三体掛かりで変身前の敬介を嬲り出すのだった。

 だが、昭和中期の生成怪人が戦闘員並みの弱さなのは周知の通り(苦笑)。変身前の敬介相手には三体掛かりでそこそこ善戦していたが、屋外に出ることで間合いを取られ、セタップされると忽ち形勢は逆転した。
 ライドルホイップを駆使するXライダー相手に三体でも明らかに不利に転じ、まずユリシーズが刺突されたライドルホイップからのライダー電気ショックを受けて感電死。ついでXライダーがライドルホイップライドルスティックに変じ、ジャンプ一番上空からライダー脳天割りを食らわすとプロメテスが真っ二つにされた。

 すっかり戦意喪失したアキレスは遁走に掛かるも、生前(?)あれだけ自慢の種だった俊足さも発揮出来ず、ライドルロープに絡め捕られた。直後駆け付けた藤兵衛を前にXライダーはチコとマコが人質にされたことを告げ、それに加えて店をめちゃくちゃにされたことに憤る藤兵衛だったが、Xライダーはアキレスに利用価値があるから怒りを鎮めて欲しいと告げた。
 こんな奴に何の利用価値が?と訝しがる藤兵衛に、アポロガイストの裏をかくのに利用するとXライダーが宣したのに対し、「見損なうな!このアキレスが敵の云うことを聞くと思うか!?」と激昂するアキレスだったが、「せっかく甦った命だ、大事にしたいと思わないか?」と吹き込まれると激昂が止まった(笑)。
 まあ、一度死んだ身の命惜しさという気持ちは分からないでもない。ただ、そこに付け加えて、「お前ほどの男が、いつまでもアポロガイストの命令通り働いているのは惜しいと思うが。」と唆された途端に、「当然だ!よーし!お前達に加勢する!」となったのだから、生前通りの「瞬間湯沸かし器」だった(苦笑)。アポロガイストも蘇らせる対象はもっと厳選すべきだったな(苦笑)。

 ともあれ、敬介はアキレスを伴ってGODアポロン第二宮殿に向かった。だが、アポロガイストの魔手はまだその場を離れていなかった。COLに残った藤兵衛が店の惨状に、「店の賠償請求でも送り付けてやりたいところだ……。」とぼやくと、それに呼応するように札束が投げ込まれた。
 「それだけあれば店の修理に足りるかな?」と云いながら姿を現したのはアポロガイスト。驚く藤兵衛の前で懐に手をやったアポロガイストが執り出したのは「神敬介の香典」で、その意図するところは「たとえ敵にでも良い印象を残しておきたいからな。」というものだった(笑)。
 勿論これは一つのパフォーマンス。藤兵衛も本気で相手にする筈なく、狼狽えつつも「二人を返せ」と云って突っかかったが、これはさすがに相手が悪かった。当身一発で気絶に追いやられ、藤兵衛もまた人質として捕らえられたのだった………。

 そして場面はGODアポロン第二宮殿。
 門前に縛り上げた敬介を伴い、パーフェクターを手に、開門を迫るアキレスは小声で敬介と上手くやる様打ち合わせていた。やがて迎えのエレベーターが上げられ、第一室長室に入った二人だったが、面会するやアキレスは速攻でアポロマグナムに撃たれた(苦笑)。
 恐らく、生前アキレスを買っていなかったこともあって、アポロガイストアキレスがXライダーを生け捕ったとの報を信用していなかったのだろう。それ故、アキレスが自分を裏切ったと見たのは間違っていなかったが、誤算だったのはパーフェクターをアキレスが所持していたことだった。例え生け捕りが芝居にせよ、さっさとパーフェクターを奪っていれば、自分の延命手段を確保し、敬介もXライダーにセタップ出来なくなる訳だから、すべてが上手く行ったのだが、しまったと思ったときには敬介は戒めを解き、パーフェクターを拾い上げていた。

 結局、アキレスは2発目のアポロマグナムを食らって爆死。アポロガイストは敬介に自分に掛かる騙しは通用しないと告げた。それをさすがと返していたことからも、敬介自身三文芝居に大した効果を期待していなかった様で、アキレス、いと哀れなり(苦笑)。

 ともあれ、第一室長室を飛び出した敬介は、助けを求めるチコ・マコの声を頼りに第二宮殿内を奔走したが、戦闘工作員達を蹴散らしつつ敬介が飛び込んだ部屋で待っていたのはテープレコーダーだった。そして上手く嵌められたことを歯噛みする敬介の前に「娘の変わり」と称して現れたのは、ヘラクレスクロノスケルベロスだった。
 だが、かつて現役時(?)にはXライダーを苦戦させたこの3体も、再生怪人の悲哀からは逃れられなかった。全身を5万ボルトの電流で覆い、Xキックをも寄せ付けず、弱点を突いた川中放擲でようやく倒した強敵ケルベロスも、2発のパンチと、ハイジャンプを伴わないXキックを受けただけで泡を吹いて絶命。
 大車輪を伴ったXキックの前に再敗北したヘラクレスはまだましな方で、大鎌による斬撃でしばし敬介をセタップ不能に追い込んだ難敵クロノスも、今回は得意の大鎌も振るわず、上空からのライドルスティックによる刺突攻撃であるライドルアタックをどてっ腹に食らって戦意喪失。結局ライダーハンマーシュート(←早い話、一本背負い)の前に戦死した。

 かくしてアポロン第二宮殿格闘場にて仮面ライダーXとアポロガイストは対峙した。その際にアポロガイストが放った台詞は「とうとう最後の勝負の時が来たな。役立たずの能無しどもは死んだ。思う存分戦うか!」というもの。自分で人選して蘇らせておきながら、随分な台詞である。
 ともあれ、そんなGOD内部の話よりもXライダーにとって大切なのは人質の奪還である。チコとマコの居場所を問い、アポロガイストが指し示した先には柱に縛られたチコとマコがいた。自らの助けは求めず、Xライダーの勝利を呼び掛ける二人の女子大生。その殊勝な心意気に応えんとするXライダーだったが、アポロガイストは第三の人質がいることを告げた。

 勿論三人目は立花藤兵衛である。
 メドゥサによってギロチンに架けられた藤兵衛はいつもの様に、自分に構わずチコとマコを助けるよう促した。その台詞に挑発されたように、「望み通り殺してやる!」とギロチンを発動せんとしたメドゥサだったが、Xライダーはクルーザーに藤兵衛救出を命じた。
 クルーザーは背後からメドゥサを追突し、押されたメドゥサは藤兵衛をギロチンから押し出し、自らがギロチンに架けられ、刃は当然の様にメドゥサの首を刎ね…………最前のアポロガイストの台詞はもっともだったな(苦笑)

 そしてXライダーは自由を取り戻した藤兵衛にチコ・マコの救出を託すと、ついてにアポロガイストとの最終決戦に臨んだ。
 まず序盤はXライダーが足技を、アポロガイストがアポロマグナムのエストック部分をメインに互いに付き合い、互角の打ち合いを展開後、次いでXライダーはライドルホイップを取り出し、再度の撃剣が展開された。
 撃剣の合間を縫って、ガイストダブルカッターやアポロマグナムを駆使するアポロガイストだったが、当然、Xライダーに命中することは無かった。それも単に躱されて命中しないだけでなく、砲撃が標的を外していることをXライダーに悟られており、いよいよアポロガイストには最期が迫っていた。

 百発百中がなっていないことを指摘されたアポロガイスト「聞け、Xライダー。俺は間もなく死ぬ。その運命からは逃れられない。」と吐露した。敵からの意外な弱気な台詞に若干の戸惑いを隠せないXライダーだったが、「だが一人では死なん。Xライダー、貴様も道連れに地獄の旅立ちだ!」と宣すとジャンプ一番断崖の上に立ち、「死ねぇっ!Xライダー!GODよ、さらば!」と叫ぶと全身を丸め、炎の塊と化すと火の玉となって崖上からの急降下攻撃を敢行した!

 だが、最後の特攻も直前で躱され、Xライダーはその背後にXキックを炸裂させ、元の姿に戻ったアポロガイストは呻き声と断末魔を残し、今度こそ爆死し、それに伴ってアポロン第二宮殿も木端微塵に吹き飛んだのだった。

 Xライダーは第14話同様にその死を惜しみ、「GODの偉大な好敵手・アポロガイストの最期だ。」と述懐したが、その余韻に浸る間もなく、GODの次なる敵・キングダーク (声:和田文夫)の声が響き、宣戦布告と不敵な笑い声を残したのだった。

 かくして第二期とも云えるアポロガイスト編が終結した。
 一人の幹部が倒れて次の幹部が、或いは一つの組織が滅びて新たな組織が現れるのは(最終回を除けば)特撮番組の常だが、この段階ではキングダークが如何なるものか分からなかった。
 またこの第21話ではGOD総司令が声を出すことは無く、その後もその出番はなく、GOD機関という組織が他の悪の組織と比しても謎の多い組織たらしめているのであった。


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令和五(2023)年六月一四日 最終更新