仮面ライダーX全話解説

第22話 恐怖の大巨人!キングダーク出現!!

脚本:伊上勝
監督:内田一作
ジンギスカンコンドル登場

 冒頭、とある海岸の断崖絶壁上で一組の兄妹が景色を愛でていた。兄・静夫(島田茂)は妹・早苗(清水めぐみ)の為に綺麗な花を取ろうとして崖から転落(落下地点と高低差が無かったので怪我はなかった)し、そこに奇妙な洞窟を見つけた。
 洞窟の奥から奇妙な音が響いてきたのだが、静夫は別の場所に通じていることで流れる空気の音が立てたものと断じ、この洞窟が富士山に繋がっているかもしれないと推測すると、早苗も興味をそそられ、二人は不気味さを忘れて洞窟内に入り込んだ。

 その奥で二人が見たのは、目を閉じて、頬杖を突いてうつ伏せに寝転がり、頭から日本の角を生やした巨像だった。兄妹は只の石像と断じたが、もしそうなら番組は成立しない(笑)。
 案の定、巨人像=キングダークの目が開き、静夫は念動力のようなもので吸い寄せられると左手に握られ、そのまま握り潰すように圧殺された………。そして目の前で兄を惨殺されたショックに加え、奥から現れた異形の怪人達―ジンギスカンコンドルガマゴエモンサソリジェロニモカブト虫ルパンの姿に早苗は気を失い、囚われの身となった。

 このシーンは謂わば、第22話で終わったGOD神話怪人軍団に替わったGOD悪人軍団のお目見えと、閲兵式を兼ねたものと云えよう。これ以後、『仮面ライダーX』において、(再生怪人を除けばだが)ギリシャ神話カラーがなくなる。
 そして歴史上(或いは伝説上)多くの人々の血を流した「悪人」(と見做された者)の血を受け継ぐ子孫に従来の悪の組織宜しく、動植物の能力を移植した改造人間が暗躍することとなるのであった。
 キングダークの語るところによると、ジンギスカンコンドルは数百万人もの人間の血を流したことで「悪の心」を持つ(とされた)ジンギスカン(チンギス・ハーン)の血筋に、コンドルの凶暴性をプラスした改造人間とのことで、その性格と能力で日本中を震え上がらせることを命じた。
 それに呼応するようにジンギスカンコンドルは早苗を手始めに、「吸血鬼作戦」を敢行すると宣言した。そしてキングダークはそれに付け加える様にXライダー抹殺を命じ、ジンギスカンコンドルも戦意を燃やすのだった。

 場面は替わってCOL。そこにやって来た敬介は、友人の見舞いに行くチコ・マコと鉢合わせた。直後の店内における藤兵衛との会話から、二人が見舞いに行く相手が「お兄さんが亡くなった。」との台詞から、早苗が偶然チコ・マコの知り合いであることが視聴者にも推認出来るのであった(笑)。勿論、お兄さんが亡くなったと云う穏やかならざる台詞に顔を曇らせる敬介は「風吹けば」の心境だったことだろう(苦笑)。
 山上病院を訪れたチコ・マコの見舞いは普通に終わった。早苗が兄を失ったショックから抜けられない様子を見せたり、包帯を巻いた左二の腕をマコに触らせまいとしたりした挙動もあったが、事前に起きたことを思えば別段おかしな反応でもなかった。
 程なく院長の山上一(引松三郎)が入って来て、早苗の精神状態からも見舞いを切り上げるよう促し、早苗も最善の態度とは裏腹にまた来てね、としていたから、格段の不信は見られなかった。
 だが、院長の正体はジンギスカンコンドルで、巻かれた包帯の下にはジンギスカンコンドルが噛み付いた牙の痕が残っていた。吸血された早苗はヴァンパイアに従うレッサー・ヴァンパイア宜しく、ジンギスカンコンドルを「ご主人様」と呼び、その忠実な下僕となっており、ジンギスカンコンドルに問われるままにチコとマコがCOLでバイトしていることを告げた。
 これを聞いて「神敬介関係者」として懸念する風を示していたのだから、悪の組織における登場したばかりの新勢力が既に立花藤兵衛の存在を軽視していないことが伺えて興味深かった。

 ジンギスカンコンドルは即座にチコとマコを襲撃した。
 帰り途中の公園で、兄を失った悲しみを考慮に入れても早苗の様子が変だったと訝しがる二人はジンギスカンコンドルの気配を感じてか、薄気味悪さを感じていたところにジンギスカンコンドルが襲い掛かって来た。幸い、即座に神敬介も駆け付け、ここに敬介は初めてGOD悪人軍団怪人と対峙した。
 見慣れない容姿に、GOD怪人ではないようだと踏んだ敬介だったが、ジンギスカンコンドルは何者かとという敬介に名前だけを名乗り、格闘となった。口腔から吐くジンギスカンファイヤーや、眷属であるミニコンドルを駆使した攻撃で変身前の敬介相手に優位に立ったジンギスカンコンドルはやがて上空に飛び上がると先に逃げたチコとマコを捕らえんとしたが、そこにセタップを果たしたXライダーが乱入した。

 格闘自体はややXライダー優位に展開し、ジンギスカンコンドルは捨て台詞を残して飛び去った。ただ、その間もジンギスカンコンドルは執拗にチコとマコを襲おうとしていたこともあって、チコとマコはCOLに引き上げて尚、恐怖に囚われていた。
 敬介と藤兵衛は相談し、敬介が怯えるチコとマコにへばりつき続ける訳にもいかないことから、都心のホテルに避難させることにした。だが、この避難は上手く行かなかった。
 32階の高さにある一室に籠った二人に、敬介は自分か藤兵衛以外の来客は入れないように念を押したが、ジンギスカンコンドルはマインドコントロール下に置いた早苗を二人の部屋に派し、身を案じていた早苗が来たことにチコとマコは気を許してしまい、早苗を部屋の中に入れてしまったことで、二人とも早苗の明けた窓から入って来たジンギスカンコンドルに血を吸われてしまったのだった。

 一方でジンギスカンコンドルは吸血鬼化計画を着々と進めており、多くの犠牲者が出ていることが報道にも表れていた(ラジオ放送はヴァンパイア化した人間を「病気」としていた)。報道は夜間の独り歩きを控えるよう促し、既にヴァンパイアにされた者が更なる犠牲者を出していることに歯噛みする敬介だったが、暗躍する加害者の中にはマコも含まれていた。
 そうとは知らぬ藤兵衛はホテルに避難しているチコとマコの御機嫌伺にコーヒーを差し入れたが、藤兵衛もまた既に吸血鬼化している二人によって血を吸われた。藤兵衛を襲う直前のチコ・マコもそうだったが、藤兵衛も敬介を襲う直前までヴァンパイ化した際の異形の姿(顔色と長大な牙)を隠せたのだが、吸血された際の噛み跡は隠せず、敬介は襲われる直前でこれに気付いた。だが奇襲にはチコとマコも加わり、遂には敬介も囚われたのだった。

 山上病院に敬介が連行されたことに、これで神敬介も自分の血の奴隷とほくそ笑むジンギスカンコンドルだったが、布団をめくりあげるとそこにいたのは敬介ならぬXライダー。早い話、吸血の際に注入されたヴィールスはカイゾーグであるXライダーには効かなかったと云うお約束で、逆にジンギスカンコンドルは自分の懐にXライダーを呼び込むこととなってしまった。
 しばし狭い病室内での格闘となり、どちら有利とも云えなかったようだが、ジンギスカンコンドルは藤兵衛達に攻撃を命じ、自分は屋外に逃れた。だがXライダーは藤兵衛達に当身を入れるとすぐにジンギスカンコンドルを追った。そして上空に逃れたジンギスカンコンドルにクルーザーを駆使して追いつき、しばしの空中戦後、地上戦にもつれ込んだ。

 かくして最終決戦に突入した。地上には戦闘工作員も待ち受けていた大殺陣が演じられたが、程なく戦闘工作員達は全員海に叩き込まれ、一騎打ちとなった。明白な描写があった訳ではなかったが、どうもジンギスカンコンドルは格闘が不得手なようだった。コンドルの改造人間でありながら、空中戦でも優位に立てなかったのもその表れかもしれないが、格闘では勝てないと見たものか、今度は長槍を駆使して戦ったが、Xライダーもライドルスティックを抜き、撃剣の果てに口腔部に何度か刺突を食らうと切り札であるジンギスカンファイヤーを吐くことも不可能となり、戦意喪失。その隙を突く様にXキックが放たれるとこれが決定打となった。

 かくしてジンギスカンコンドルは戦死。例によってヴィールスによって吸血鬼化した人々も当然の様に元に戻ったのだった(笑)。少々口になるが、この文章を書いているのは令和5(2023)年5月5日である。令和2(2020)年に始まった新型コロナウィルスによるパンデミックがそれなりに下火になったとはいえ、まだまだその影響は脱していない。一体、これまでに何度、「パンデミックが悪の組織の怪人によるもので、その怪人打倒で全員一発完治しないものか………。」と何度思ったことやら………。


次話へ進む
前頁へ戻る
『仮面ライダーX全話解説」冒頭へ戻る
特撮房『全話解説』の間へ戻る
特撮房へ戻る

令和五(2023)年六月一四日 最終更新