仮面ライダーX全話解説

第23話 キングダーク!悪魔の発明!!

脚本:伊上勝
監督:田口勝彦
ガマゴエモン登場

 この第23話より、シリーズは新たな展開に入る。勿論、前話である第22話も、新幹部キングダーク及び新勢力である悪人軍団登場という一つの新展開ではあったのだが、戦闘工作員を率いていたことを除けば、ジンギスカンコンドルがGODの一員であることを口にするでもなく、第21話ラストで声だけ発していたキングダークもXライダーと顔を合わせていないから、神敬介の立場に立てば、新勢力との戦いも見えないことだらけだった。
 だが、この第22話を皮切りに、GODの悪巧み、キングダークの狙い、作戦行動にその標的、といったすべてに繋がるキーパーツとも云える存在である極分子復元装置―通称・RS装置がその存在感を示し出すのであった。


 冒頭は、とある洞窟内に設けられたGOD基地から始まった。そこではキングダークがとある研究の完成を急がせるよう戦闘工作員に促していた。その研究はGOD科学開発局局長にして、世界的にも高名な科学者でもある南原宗一郎(伊藤久哉)が担っていたものだった。
 そしてその研究は地球上のあらゆる物質をエネルギーに変える極分子復元装置=RS装置の開発で、それをキングダークの体に組み込めば、あらゆる物質をエネルギーとしてキングダークは無尽蔵のエネルギーを得てその巨体で思う存分暴れ回ることが出来ることとなるので、キングダークが完成を急がせるのも無理ない話だった(←しかしこの設定はやがて有耶無耶になる(苦笑))。
 キングダークはRS装置を得る日が、自分が世界を滅ぼせる日としていたが、GODの元々の狙いって、日本壊滅じゃなかったっけ?世界を滅ぼしたら、GOD設立に出資した東西両大国の首脳の意図はどうなるのさ?(苦笑)
 また、RS装置なしで思うように動けないのであれば、キングダークの巨体はただのこけおどしということになる(苦笑)。まあ、答えを先に書けば後々キングダークはRS装置無しで立ち上がって暴れるから、この設定は本当に初期だけで有耶無耶にされた。南原博士の話もいつの間にか「宗一郎」から「光一」になるし、チョット設定がいい加減だよな、この時期の話は………(嘆息)。

 さて、細かい設定や後々との整合性はどうあれ、RS装置は物凄い能力を持った装置に変わりはなく、GODがその完成を心待ちにするのは当然だった。そしてその装置、実は設計図は既に完成していた。
 ただ、開発者である南原博士は、多くの科学者の例に在る様に、GODに拉致され、家族(=一人娘)の身柄をたてに服従と研究を余儀なくされていた人物だった。当然GODに対する忠誠心は無く、GODの存在を苦々しく思い、GODが強力な力を得るのは望むところではなく、装置の完成を隠していた。
 助手の玉井(池上明治)は、休憩室で、室内の盗聴器はすべて取り外してある、として、南原に実はRS装置の設計図は完成しているのではないか?と問うた。玉井を信頼してその通りだと告白した南原だったが、「灯台下暗し」で、室内の盗聴器は確かになかったが、そう断言する玉井の白衣ボタンに盗聴器が仕掛けられていた(苦笑)。

 玉井が予想した様に、RS装置の設計図は完成したが、これがGODの手に渡れば「悪魔の兵器」、正しき人の手に渡れば「神の贈り物」として南原はこの事実を伏せ続ける気でいた。そんな南原に玉井はGODからの脱出を促したが、南原は一人娘の命をGODに握られている以上、逃げることは出来ないとしていた。

 ともあれ、RS装置設計図の完成はキングダークの知るところとなった。キングダークガマゴエモンに南原の隠す設計図を見つけるよう命令。その名前が示すように、伊賀忍者・石川五右衛門の頭脳を持つと称するガマゴエモンは自信満々の態度を示し、それに対してキングダークは、自慢は後にして、南原の一人娘を利用するよう諭していたから、こいつも余り大物感はないな(苦笑)。

 その頃、南原博士の一人娘・リエ(名川忍)は寂しそうに下校途上にあった。
 クラスメイト達は夏休みを控え、その休暇中に行く家族旅行を楽しみにしていたが、リエは父が旅行中と答えるだけで、その様子を監視役が物陰から満足そうに頷いていた。
 つまり、南原博士はGOD基地内にて軟禁状態にあるのを、世間一般には仕事か研究の為に長期旅行に行っていると云う風を親子して装うことを強要されており、父は娘を、娘は父を想ってGODの云いなりになって平静を装っていた訳だが、さすがに内心の寂しさや、父に会えない悔しさは隠し切れない様子だった。

 そんなリエがとある幸せそうな一家を見て寂しげにしているのを、偶然通り掛かった敬介が親に叱られてしょ気ていると思って慰めに掛かるのだが、リエは言外に父の不在を仄めかして敬介の言を否定するも、監視役のアイコンタクトに敬介を無視するように立ち去るしかなかった。

 リエが帰宅すると宅内にはその監視役が入り込んでおり、監視役は改めてリエが常に監視下にあり、命が惜しければ余計なことを喋らず普通の生活を送ることを命じ、父を返して欲しいとのリエの懇願にも耳を貸さず、「怪しまれないよう生活しろ。」と云ったが、その背後には「もう怪しまれているぜ。」と笑いながら云う敬介がいた(笑)。
 勿論、監視役と敬介の格闘となり、他にも2名ほどが加勢してきた。監視役の正体は戦闘工作員だったが、重要人物の監視を命じられるほどには有能なのか、勝てないまでも敬介相手に結構善戦しており、リエは格闘が長引いているのを好機として宅外に脱出せんとしたが、そこにはガマゴエモンが立ちはだかった。
 助けを求めるリエの声を聴いた敬介が駆け付けた時には、リエはガマゴエモンの小脇に抱えられて連れ去られようとしていた。その姿を見た敬介は、「やはりキングダークの悪人軍団か。」と云っていたが、「悪人軍団」という言葉をどこで知ったのだろう?
 二週間前にGODの新たな敵幹部としてキングダークの声を聴いているから、新勢力の率いる者としてキングダークの名前は知っていてもおかしくないし、前話で戦ったジンギスカンコンドルが戦闘工作員を率いていたことから、ガマゴエモンキングダークの配下と予想してもおかしくないが、前話のジンギスカンコンドルは自分がGODの一員であることすら名乗っていなかったから、「悪人軍団」という名を名乗った者はこの時点ではいない筈…………まあそこまで勘繰るのは無粋か(苦笑)。

 ともあれガマゴエモンは「勝てると思っているのか?」と息巻き、小手先から火炎放射を放った。それに対して「勝って見せる。」と宣してXライダーにセタップした。
 だが、Xライダーがセタップを終えた頃にはガマゴエモンは車に乗って逃走に掛かろうとしていた(苦笑)。それをライドルロープでもって阻止せんとするXライダー。しばしの格闘後、不利を悟ったものかガマゴエモンは石川五右衛門を彷彿とさせる特徴ある頭部からガマの油を噴出し、全身に塗りたくることでXライダーの打撃を無効化した。
 身の安全を確信したガマゴエモンは体術でXライダーに挑み、ゴエモン投げなる投げ技を駆使した。武器戦闘と徒手空拳の両方で戦え、ガマ油を駆使した小技も使えるのは良いことだが、如何せんこのガマゴエモン、そのすべてが決定打に掛けた。
 結局、このゴエモン投げも別段Xライダーの体をどこかに叩きつけるでもなく、Xライダーは易々と着地。しかも着地したところはリエが連れ込まれた車両の近くで(苦笑)、Xライダーは当然の様にリエを車内から出すとクルーザーを召喚して戦線離脱した。

 地団駄踏むガマゴエモンを尻目にリエはCOLに連れられ、保護されたが、リエに笑顔はなかった。勿論、囚われの身の父を案じてのことである。ここで敬介、藤兵衛、チコ、マコの会話から、南原博士が世間においてそれなりに知名度があり、世界一周旅行に行っているという情報が普通に受け入れられていた。だが、キングダークに捕らえられ、何がしかの研究に協力を強要されているとあってはリエならずともその身を案じずにはいられなかった。
 するとそこへ手紙を括りつけた短剣がCOLに投げ込まれた。送り主はガマゴエモンで、リエの身柄を渡さないと南原の命が無いと脅迫するもので、一同が驚いているときには既に敬介は店外に飛び出していた。

 Bパートに入ると、ガマゴエモンは南原と玉井を絞め上げていた。
 研究の邪魔をするな、として惚け倒さんとする玉井だったが、盗聴によるRS装置設計図完成を先刻承知のガマゴエモンが聞き入れる筈もなく、火炎放射で玉井の右手を燃え上がらせて設計図を出すよう南原を脅した。
 これに対して南原は玉井が止めるのも聞かず、「どんな研究よりも人の命が大切」として懐に手をやったが、中から出て来たのは実験用に作られたミニモデルのRS装置で、南原はそれをガマゴエモンに突き付けることで逆に脅しを掛けた。
 ハンドガンに水晶球が着いたようなその装置をRS装置のミニモデルと理解し得ないガマゴエモンはそれを玩具呼ばわりしたが、ミニモデルは一瞬にして壁一面のコンピューターを消滅と云える程に極分解してしまい、これにはガマゴエモンも狼狽えずにはいられなかった。
 返す刀で戦闘工作員を脅して扉を空けさせた南原は玉井を連れて脱出しようとしたが、ガマゴエモンは一瞬の隙を突いて天井にへばりつくと火炎放射で襲い掛かり、南原はその攻撃から彼を庇う玉井に押し出されるようにしてGOD基地の外へと逃れた。

 屋外に逃れた南原だったが、GODが自分を追いかけてくることは自明の理で、自分一人で設計図は守れないと判断した南原は、これを何としてもGODの手に渡さない為に設計図を9枚に裂くと内8枚を各々8人の知り合いに郵送した。
 郵便ポストに投げ入れたことで一先ずの安堵を得た南原はリエに会わんとして自宅に帰ったが、そこはもぬけの殻だった(一方で、行き違いにより、脅迫状を頼りに追って来た敬介にとっても、南原博士が監禁されていた研究所はもぬけの殻だった)。
 懐かしの我が家に帰って来るも愛娘に会えず、リエがどこかに連れ去られたのかもしれないとその身を案じる南原。するとその肩を叩く者がいた。

 慌ててRS装置ミニモデルを突き付けるとそこにいたのは自分を庇ってガマゴエモンの火炎に曝された玉井だった。玉井の無事を喜ぶ南原に玉井はGODがリエの居場所に関して口を滑らせたとして、共にリエを助けに行こうと呼び掛けると、南原より自分の方が射手として適任としてミニモデルを引き受けると申し出た。
 だが笑顔で応じた次の瞬間、南原は玉井の手に火傷が無いことに気付いた。案の定、玉井はガマゴエモンが化けたもので、まんまとミニモデルを奪取したガマゴエモンはこれを元にRS装置が作れれば設計図も必要ないとして、任務成功をほくそ笑み、直後に乱入してきたXライダーに対しても、ミニモデルを突き付けて勝利を確信した。
 しかし、南原博士もさる者、何時ミニモデルを奪われるかもしれないと懸念し、既に発火装置は壊されていた。悔しがり、ミニモデルを放り出すガマゴエモン………発火装置以外はちゃんと掌中にあるのにな(苦笑)
 ともあれ、Xライダーは南原博士を宅外に連れ出し、そこで南原博士から彼が極分子復元装置開発の為にGODに囚われていたことを知り、これをGODに手に渡さない為に脱走してきたことを知ると、追いかけて来たガマゴエモンを迎撃しながら、立花コーヒーショップに向かうよう促し、南原もそれに応じた。しかし、ネットもない時代に個人経営の店舗が店名だけでどこにあるか容易に分かるものだろうか?(苦笑)

 ともあれ、Xライダーとガマゴエモン及びそれに率いられた戦闘工作員達との大立回りが演じられた。例によって戦闘工作員達ではXライダーの敵ではない。だが、GOD悪人軍団の怪人率いる戦闘工作員達は指揮する悪人怪人の能力をある程度準拠している様で、木遁の術を駆使してXライダーを翻弄。ガマゴエモン自身も木遁の術で姿を消して、その姿を求めて右往左往するXライダーを嘲笑ったが、何の脈絡もなくその居場所はすぐに看過された(苦笑)
 術を見破られたガマゴエモンは得物を駆使しながら明らかに体術でXライダーに劣り、回し蹴りの連打を受けると最前同様ガマ油を頭部から出して全身の守りに駆使した。

 確かにこの能力は有効で、最前の戦い同様Xライダーのパンチを滑らせ、無効化した。そう、この油による防御自体は使えるの能力だった。
 しかし、直後図に乗ったガマゴエモンは何を血迷ったのか、全身油まみれの体で火炎放射攻撃を敢行。これに対してXライダーはライドルスティックを抜き、ライドル風車火炎返しで火炎をガマゴエモンに返すとその身は忽ち火達磨と化した(爆笑)
 結局、そこにXキックが放たれ、ガマゴエモンも戦死したのだった。

 直後、COLでは南原博士とリエが感動の再会を果たしていた。感涙して抱き合う父子を見て、我がことのように喜ぶ藤兵衛・チコ・マコだったが、その再会は一瞬で永訣に追いやられた。
 飛来音がしたかと思うと南原博士の背中にはトマホークが刺さっており、南原は致命傷を負った……………。直後に敬介が駆け付け、店外にサソリジェロニモの姿を認め、これが南原を殺害したことは明白だった。即座にサソリジェロニモを追わんとした敬介だったが、藤兵衛から今際の際の南原博士が何か云おうとしていると云われては、店内に戻らざるを得ず、その隙にサソリジェロニモは逃走してしまった。

 虫の息の南原は敬介を正義の戦士と見込み、設計図を9枚に裂いて8枚を仲間に送ったことを告げ、それを守って欲しいと懇願した。その8人が誰かを訪ねる敬介だったが、南原にはそれを告げる力は残されておらず、ロケットをリエに渡すと息を引き取った………。
 9枚中8枚が仲間に送られた訳だが、残る1枚は何処に?と疑問を抱く敬介にリエがロケットを差し出すと設計図の1枚がそこに収められていた。
 一頻り父の死を号泣した後、リエは父の心が分かるとして敬介にこれを託すと、敬介も南原博士にした約束をリエにも告げ、設計図は必ず守るとした。

 その頃、GOD基地ではキングダークサソリジェロニモにまず敬介の手に渡った1枚目の設計図を奪うよう命じ、それに対してサソリジェロニモは周囲に赤いサソリを侍らせ、ネイティブ・アメリカンがよくやる戦い前の踊りの様なアクションを交えながらこれに応じていたが…………日本人の目から見てけったいな踊りを踊りながら八代駿氏の声で宣言されてもなあ…………(苦笑)。

 ともあれ、この第23話を機に、RS装置という一つの究極兵器を巡ってライダー史上初となる長編シリーズが始まったのだった。



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令和五(2023)年六月一四日 最終更新