仮面ライダーX全話解説

第24話 復しゅう鬼ジェロニモ!音もなく襲う!!

脚本:伊上勝
監督:田口勝彦
サソリジェロニモ登場

 冒頭、第23話の内容がダイジェストで語られた。つまり南原博士がGODに強要されてRS装置の設計図を完成させたこと、それを9枚に裂いて8人の仲間に送ったこと、残る1枚をXライダーに託してこの世を去ったことであるが、この第24話以降、冒頭はこのパターンが(一部を例外として)最終回近くまで続いた。

 前回、南原博士を殺害した憎きサソリジェロニモだが、冒頭でも夜道を歩く女性を得意気にトマホークで殺害すると旧南原邸に忍び込んだ。行動上、この女性を殺害する必然性は全くなく、恐らくは仇役ともなったサソリジェロニモの残忍性を際立たせる為と思われるが、正直、気分悪いだけだったな。
 ともあれ、サソリジェロニモが南原邸に侵入したのは南原が設計図を送った8人の仲間の手掛かりを求めてのことだったが、現れたのは設計図ならぬXライダー(笑)。
 Xライダーもまた8名の手掛かりを求めて南原邸を捜索したが、用心深い南原博士は名簿の類を焼却したと見え、Xライダーも手掛かりが得られなかったことを告げたが、サソリジェロニモは信用せず、みずからは白人に騙されて復讐の鬼と化した(アメリカ)インディアンの大酋長ジェロニモの血を引くものであることを告げ、Xライダーに挑み掛った。

 しかし、この名乗り、今現代から見れば様々ツッコミたくなる。
 まず、『キカイダー01』第19話の全話解説でも触れたが、昭和中期に「インディアン」と呼ばれていたアメリカ大陸の先住民は現在では「ネイティブ・アメリカン」か「アメリカ・インディアン」と呼ばれる。そもそも「インディアン」の意味するところは「インド人」で、アメリカ大陸を発見したコロンブスは生涯その地をインドと認識していた。それゆえアメリカ大陸の先住民達を「インディアン」とするのは不適切なのは令和の世では明らかになっている。
 まあ、時代的な風潮もあるので、昭和中期のTV番組にて大陸先住民を「インディアン」と呼んでいたからと云って批判するつもりはないが、今現代では不適切であることは触れておきたい。

 そしてそれ以上に気になるのはジェロニモが「悪人」とされていることである。
 白人には悪いが、ジェロニモ及びネイティブ・アメリカンは欧州からやって来た白人に住処も文化も追われ、人口激減に追いやられ、黒人・アジア系・ヒスパニック同様に人種の坩堝であるアメリカ合衆国で底辺に置かれた一方的な被害者である。
 勿論個人的な報復や過剰な抵抗の中には白人に不当な死をもたらした者が在ってもおかしくないが、基本ジェロニモは迫害や侵略に抵抗した英雄である。悪人軍団に加えられた「悪人」の中には他国から見て「侵略者」となったことで一種の「悪雄」とされた者(例:ジンギスカン、ナポレオン等)も見られるが、ジェロニモはこれに当てはまらないとシルバータイタンは考える。
 百歩譲って、「ネイティブ・アメリカンVS白人」という構図の中で当時の白人がジェロニモを敵視するのは理解出来るとしても、白人によるネイティブ・アメリカン迫害を完全な正義としない限り、ジェロニモを「悪人」にカウントするのは不当と云えよう。

 話を戻すが、旧南原邸にてXライダーとサソリジェロニモ及び戦闘工作員達の大立ち回りが演じられた。先にXライダーは南原邸に設計図を送付された8人の手掛かりが無かったことを告げているが、サソリジェロニモがこれを信用しなかったのは無理もない。既に見つけて、「無かった。」と偽ることは充分に考えられる。恐らくシルバータイタンがサソリジェロニモの立場でもXライダーの言を信用しなかったことだろう。
 ほどなく大立回りは屋外にシフトしたが、Xライダーはクルーザーを駆使して戦闘工作員を駆逐。サソリジェロニモはトマホークを得物に対峙したが、投擲攻撃が通用しなかったことで捨て台詞を残して撤収した。

 場面は替わってCOL。
 サソリジェロニモは信用しなかったが、敬介が旧南原邸で手掛かりを発見出来なかったのは事実だった。敬介の報告によると南原博士の葬式に際して弔問客をチェックしたが、該当者は見当たらず、手掛かりは全くない状態だった。まあ、設計図を送付した手紙で南原博士が自分の下を訪れないように促していても不思議はないから、これはなかなか難しいことだろう。

 場面は替わってとある家庭。
 そこでは一人の少年・矢沢正一(高橋仁)が出かけようとするのに、姉の圭子(今井美佐子)が弁当を渡していた。そのとき、スケジュールを確認する正一の懐から転がり落ちたのはRS装置の設計図。圭子の言によると設計図は師弟の父親宛に送られたもので、姉はそんな大事なものを弟が持っていること叱りつけたが、正一は大切なもの故に自分が肌身離さず持つことにしていると反論した。視聴者は思ったことだろう………「今週の犠牲者はこいつか……。」と………って、誰でも読めるわな(苦笑)。
 そしてCOLでのワンシーンを置いた後、圭子の姿は南原の墓前にあった。墓碑銘には「南原光一の墓」とあり、前話で「宗一郎」と呼ばれていたのが早くも異なっていた。こりゃ、第15話・第16話での川上博士が第21話でハヤタ博士になっていたよりひどいな…………いくらもう登場予定のない故人が相手とはいえなぁ………。

 ともあれ、圭子は南原を「おじさま」と呼び、せっかく重要な設計図を父に託してくれたものの、その父は一週間前に交通事故で亡くなっていたことと、その父に代わって設計図を守る誓いを墓前に述べていた。
 だが、矢沢姉弟の父が南原の友人だったことは何の脈絡もなくGODと神敬介の知るところとなっていた。圭子の背後には寺の住職………と云うよりは神主っぽい服装をした男 (佐野哲也)が立っていたのだが、ニンマリ笑う笑顔は「怪しい」を絵に描いたもので(笑)、「水を持ってきた。」と愛想よく圭子に呼び掛けつつ、圭子と故人の関係を遠回しに訪ね、彼女を南原関係者と見定めつつあった。勿論その正体はサソリジェロニモである。

 直後、墓地を後にしようとした圭子の前に敬介が現れ、彼女に南原博士と彼女の父の関係を尋ねたり、南原博士から守られる様に託されたものがあると告げたりしたが、彼女は「急いでますので。」の一言で敬介を黙殺した。
 「信用しろって方が無理かな……。」とぼやく敬介だったが、信用されたければ名前ぐらいは名乗ろうな(苦笑)。
 ともあれ、そんな一部始終を住職―サソリジェロニモは見ており、設計図の有無の関係なく矢沢姉弟はXライダーとGODとの抗争に巻き込まれる形となった。

 圭子が帰宅するとそこには雲水姿のサソリジェロニモが待っていた。もろに不法侵入の上、ベッドに腰掛けて読経する様は普通に考えて即通報ものだが、最前の愛想の良さとは正反対に無表情で「頂きたいものがある。」と告げるサソリジェロニモに笑顔で「ああ、忘れてました。お礼を差し上げるのを。」と応じる圭子も何処か変わっている(苦笑)。
 だが、サソリジェロニモが求めるのは当然RS装置の設計図で、圭子はそんなものは知らないとしたが、サソリジェロニモが彼女の父・矢沢博士と南原博士が親友であったことを知っていると告げると、「手紙にあった…。」と話してしまったのだから、もう設計図の一枚が矢沢博士宛に送られていたのは明白となってしまい、サソリジェロニモはその正体を露わにした。

 手駒である赤サソリを彼女の体に這わせ、設計図を渡せと脅しをかけるサソリジェロニモに、怯えながらも南原博士の手紙にあった彼の遺志からも絶対に渡すことは出来ないとする圭子は機密保持には向いていなかったが(苦笑)、なかなかに肝が据わっていた。
 そんな中、赤サソリが彼女の首筋に到達し、あわやとなったが、そこにライドルスティックが差し込まれて、赤サソリは弾かれた。とぼけられても彼女をマークしていたのはGODもXライダーも同じだった訳だ。

 サソリジェロニモは圭子を連れて屋外に出て、Xライダーがこれを追った。後々の展開を見るに、トマホークを振るって好戦的に振舞う割にサソリジェロニモは戦闘能力に自信が無かったのか、圭子を人質にXライダーに抵抗中止を命じたが、圭子は特撮定番の「私に構わず」を口にし(笑)、脅しもXに通じなかった。
 サソリジェロニモの目的はRS装置二枚目の設計図を手にすることで、Xライダー打倒でも、圭子殺害でもなかった。となると設計図の在り処を掴まない内にサソリジェロニモが圭子を害する可能性は低く、Xライダーはそれを読んでいたのだろう。
 結果、圭子はあっさり人質状態から脱したのだが、設計図の為にも人命優先の為にも圭子をまず保護しなければならないのはXライダーも同じで、圭子が離れた場所に避難したのを確認すると自らもクルーザーでもって圭子と共に戦線を離脱したのだった。

 場面は替わってCOL。
 そこで敬介達はようやく圭子の信頼を得て、設計図は弟の正一が持っていることを教えられたのだったが、天井にはサソリジェロニモの放ったサソリ型盗聴マイクが張り付いていた。敬介がそれに気づいて破壊したのは、現在正一が丹沢にいることを圭子が口にした直後で、正一がサソリジェロニモに狙われるであろうことは明白だった。
 弟の身を案じて半狂乱になる圭子を宥めた敬介はXライダーに変身して、クルーザーをフルスロットルにして丹沢に向かった。

 その丹沢では一人の男性教諭に率いられた正一が数名の友達と共にハイキングをしていたが、河原で休憩していた正一は狼煙が上がったのに気付いた。
 教諭も、「インディアンの狼煙みたいだ。」としていたが、この狼煙、シルバータイタンの目にはただの煙にしか見えなかった(苦笑)。確かに狼煙には古今東西様々な物があり、特に狼煙を重要視した武田信玄の繋ぎ狼煙には、煙の数や色や放ち方によって結構複雑な内容を伝えることを可能としていたと聞いたことがある。しかし、ただの煙にしか見えないのを見て、それがネイティブ・アメリカンのものと分かる、この教諭、どれだけ物知りなんだろう(笑)。

 ともあれ、狼煙を放っていたのは勿論とサソリジェロニモその一味である。太鼓の音と共にサソリジェロニモとネイティブ・アメリカンスタイルの戦闘工作員が現れ、サソリジェロニモの側に居たネイティブ・アメリカン(中屋敷鉄也)が弓に矢をつがえると、サソリジェロニモは一行の誰が矢沢正一か?と問うてきた。
 教諭は児童達を背後に庇いながら、「矢沢君に何の用だ?」と問い返したが、それに対する返答は射撃だった。矢は教諭の左腕に刺さり、致命傷となるものでは無かったが、脅しとしては充分だった。正一は前に出て、自分が矢沢正一で、「先生になんてことするんだ!」と抗弁した。
 当然、サソリジェロニモはRS装置の設計図を出す様に要求。これに対し正一は惚けたのだが、手帳の入った胸ポケットを押さえながら云うなよな(苦笑)。「設計図はここに隠してます。」と云っているのと同じだって。

 サソリジェロニモは正一が設計図を所持していることを圭子から聞いたとして、惚けが通用しない旨を述べ、驚きつつも設計図譲渡を正一は拒絶した。これに対してサソリジェロニモは戦闘工作員達に一斉射撃をさせた。矢は正一達の足元に射ち込まれ、次は全員に命中させるとしたサソリジェロニモの脅迫に、教諭は児童達の身を守る為にも相手の要求に応じることを懇願し、正一もそれに応じようとした。
 だが、すんでのところでXライダーが駆け付け、Xライダーはサソリジェロニモと戦闘工作員達を迎撃しつつ、教諭に児童達を連れて近くの山小屋に避難するよう促した。

 四方八方からやってくる戦闘工作員達から正一達を庇いながら迎撃するのは骨だったが、それでも何とか正一達は山小屋に逃げ込むことに成功した。ところが、点呼を取ると沢井という少年の姿が見えなかった。
 沢井は怪しげな連中に狙われる正一と一緒にいることで巻き添えを食って自分も命を落としかねないことを恐れて一人で一行から離脱して山中を逃げ惑っていた。気持ちは分かるし、命惜しさから恐怖にかられたのも無理なかったが、これはサソリジェロニモにとって格好の人質要員でしかなかった。
 当然の様に沢井と、そして彼の身を案じて探しに来た教諭の二名がサソリジェロニモの掌中に落ちた。

 はぐれた沢井と、彼を探して戻って来ない教諭を案じて正一達も探しに行こうとしたが、そこにXライダーが駆け付けた。正一から教諭と沢井が一行から離れたことを知ったXライダーだったが、直後、屋外から二人を人質に取ったことを知らせるサソリジェロニモの声が響いてきた。

 設計図の所在がはっきりしない状態では功を奏さなかった人質作戦だったが、正一が設計図を持っていることを知る今、サソリジェロニモの姿勢は強硬で、崖の上から教諭の体にトマホークを宛がい、設計図を渡さなければ教諭も沢井も殺すとした。おまけに教諭と沢井は必死に助けを求め………これを非難するのは酷だな(苦笑)。
 これにはXライダーも為す術なく、恩師と旧友が殺されるのを見ていられず正一自身山小屋を飛び出し、設計図を差し出すと申し出た。

 かかる状況にあっては、要求物と人質のどちらが先に放たれるのかが肝となり、押し問答になりがちなのだが、意外にもサソリジェロニモは先に教諭と沢井を解放。Xライダーは二人に山小屋に避難するよう促すと、そのまま設計図を渡した。
 ここに交渉は終わったが、勿論話は終わらない。サソリジェロニモはXライダーの持つ一枚も貰い受けるとしてトマホークを得物に襲い掛かって来た。
 正面切っての一騎打ちとあっては応じないXライダーではない。「取れるものなら取って見ろ」的にライドルスティックを振るって応戦したが、サソリジェロニモは戦闘工作員達に山小屋目掛けて火矢を放たせ、山小屋を火攻めにした。つまり、正一一行を庇いながら戦わざるを得ない状況を作り、勝負を有利に展開せんとしたと思われたが、正直、これは卑怯振りがXライダーの怒りを買っただけだった。

 クルーザーを呼び寄せたXライダーは戦闘工作員達を蹴散らして包囲の一角を崩すとあっさりと正一や教諭達を戸外へ逃れさせ、最終一騎打ちとなった。前述した様にサソリジェロニモは然程強くない様で、ライドルロープによってトマホークを奪われてしまうと後は全く精彩を欠き、Xキックによって戦死したのだった。だが、サソリジェロニモに渡された設計図はカブト虫ルパンの使い魔であるカブト虫によって奪い去られしまったのだった………。

第24話終了時点の設計図所在
仮面ライダーX陣営:1枚
悪人軍団陣営:1枚
所在不明:7枚


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令和五(2023)年六月一四日 最終更新