仮面ライダーX全話解説

第25話 謎の怪盗カブト虫ルパン!!

脚本:鈴木生朗
監督:内田一作
カブト虫ルパン登場

 冒頭ダイジェスト………南原博士によって発明されたRS装置の設計図が、南原博士の手によって9つに裂かれ、仲間の科学者に分散・送付された。内一枚がGODの手に渡り、別の一枚をXライダーが入手。残り7枚を巡ってXライダーとGODの熾烈な戦いが展開されることが予告された。
 ナレーション上、南原博士自身のことは触れられていなかったが、シーンの上で、彼が設計図を敬介達に託して息を引き取ったことは描かれていた。

 そして冒頭は堂本理論物理学研究所なる場所から始まった。
 そのすぐ近くで二人の少年―タカシ(工藤智彰)とノリオ(五藤義秀)が野球をしていたのだが、ノリオの放った球をタカシが打ったところ、打球は研究所ノマドガラスをぶち破ってしまった。
 これが藤●不二□ワールドなら磯野波平然とした雷親父が「こらー!」と云いながら飛び出してくるのだが、ボールをもって窓から顔を出した堂本博士(佐々木孝丸)は丸で怒っておらず、謝罪するタカシとノリオを「良いものをあげよう。」と云って所内に招き入れた。

 堂本は茶菓に仕込んだ睡眠薬でもって二人を眠らせると、南米かアフリカの原住民が使っていたの様な人面の盾の裏から一通の手紙を取り出した。勿論南原博士が仲間に送った8通の手紙の1つである。
 南原博士から設計図の1枚を送られた堂本博士だったが、彼は末期がんで余命幾ばくもなく、また彼には妻子がいないため、自分の死後に設計図を守る手段が無かった。そこで彼は設計図を守る為に「非常手段(非情手段?)を取る」としたのだが、それは設計図を二人の少年の背中にα光線で焼き付け、原本は焼却してしまうものだった。
 勿論、絶対の機密を守る為、ノリオとタカシを眠らせて、本人も知らぬ間に焼き付けるのだから、堂本に罪悪感が無かった訳ではないが、「人類の平和には替えられん。」として、実行に移った。結果、少年達の背中の図は特殊フィルターに掛けないと見えない状態でその背に残ることとなり、このことを知られなければ機密は永久に守られる筈だった。

 この間、GODの神敬介も残る7枚のRS装置設計図の行方を求めて情報収集に勤しみ、堂本博士に迫りつつあった。
 カブト虫ルパンは自らの使い魔であり、前話で2枚目の設計図を奪うのに貢献したカブト虫を駆使し、一方の敬介は20年前の写真から南原が大先輩として尊敬している堂本博士の存在を知り、彼なら南原から設計図を託されていてもおかしくない、としてあたりをつけていた。ただ、それに関する藤兵衛との会話を使い魔カブト虫に聞かれていたのだから、前話と同様の失敗をしており、敬介も進歩が無かった。
 会話の内容から、カブト虫ルパンも堂本が設計図は持っている可能性は充分とし、その報告を受けたキングダークも、怪盗アルセーヌ・ルパンの血を引くカブト虫ルパンの能力に期待するのだった。

 その頃、堂本による設計図の転写は既に終わっており、原本も灰となっていた。堂本は子供達を起こし、帰宅させ、これで機密は守られたとした。だが、子供達を見送った堂本が自室に戻るとそこには使い魔カブト虫が待ち構えていた。
 訝しがる堂本の前に姿を見せたカブト虫ルパンは惚ける堂本の反応から設計図を託されていると見て、堂本を殴り倒すと透視能力でもって盾裏に隠された南原博士からの手紙を見つけた。だが、勿論中身は空である。業を煮やしたカブト虫ルパンは堂本を叩き起こして拷問に掛けんとしたが、そこに敬介が乱入してきた。カブト虫ルパンに簡単に盗聴されていた敬介も問題ありだが、敬介を盗聴しながら、その後の行動を見張っていないカブト虫ルパンも問題ありだな(苦笑)。
 ともあれ、大立回りが演じられた訳だが、レイピア(細剣)を振るって尚もセタップ前の敬介に対して優位に立てないどころか、若干押され気味だったから、戦闘能力に関してはカブト虫ルパンも余り期待出来なかった。どうも悪人軍団はインパクト程には強敵感が感じられない。まあ、悪人軍団編に入ってまだ4話だが、そろそろクロノスケルベロス並みの強敵が出てきて欲しいところではある。

 程なく、敬介はXライダーにセタップ。ライドルホイップでもって、カブト虫ルパンのレイピアとの撃剣戦となったが、上述した様にカブト虫ルパンの戦闘能力は然程でもなく、ショートテレポートを駆使して多少はXライダーを翻弄したが、結局は「アデュー!」の一声を残して逃げてしまったのだった。
 取り敢えず、GODを追い払ったXライダーは堂本博士の元に戻ったが、堂本博士の寿命は今まさに尽きようとしていた。Xライダーを味方と見た堂本博士は設計図を守ってくれるよう懇願するも、それが限界で行方を話す前にこと切れてしまった。
 すぐ近くにこっそり潜んでいたカブト虫ルパンは互いに堂本から設計図の行方を聞き出すことが出来なくなったのを確認するように告げると、どちらが先に行方を掴むか頭の勝負と云い残すと、今度こそ撤収した。それにしても、前話以来、この後もすぐ近くの潜伏に気付かなさすぎるXライダーだが、まあ、これはアルセーヌ・ルパンの化身であるカブト虫ルパンが諜報活動に優れていると見るべきかな?

 ともあれ、Xライダーは子供がいない筈の堂本博士宅に残された「ノリオ」と書かれたグローブに手掛かりを求めた。近くで野球をしていたノリオを見つけた敬介はノリオからタカシと共に堂本宅に行ったことは確認出来たが、彼等が堂本から何かを託された訳でもなく、敬介はもう一人のタカシが近くのプールにいると聞いてそっちに手掛かりを求め、その場を去った。
 だがその時にはノリオの肩に使い魔カブト虫が止まっており、カブト虫ルパンはその場にいた全員を気絶させるとノリオをアジトに拉致して拷問にかけた。だが、拷問に掛けられてもノリオは(少なくとも自身は)本当に何も知らない。カブト虫ルパンは「何か変わったことは無かったか?」と質問内容を変えたことで、彼が途中で寝入ったことを聞きだし、その間に何かあったかも知れないとの推測を得た。

 一方の敬介はプールにてタカシを見つけたが、堂本宅にて途中で眠気に襲われた以外の変わったことは聞けなかった。さすがにこれだけでは手掛かりが得られないかに思われたが、直後、臨時休業で同じプールに来ていたチコとマコがタカシの背中に設計図が浮かび上がったのを発見した。
 これを見た敬介は、堂本博士が設計図を特殊光線でタカシとノリオの背中に焼き付け、それが真夏の強い紫外線を浴びたことで浮かび上がったと察知、これをGODに見られてはまずいと思った敬介はタカシにプールに入ることで浮かび上がった図を消すよう促したが、プールの中には既にカブト虫ルパンが潜んでいた。
 何時まで経ってもタカシが浮上してこないことを訝しがる敬介・チコ・マコだったが、彼等の前に水中から現れたのは、「小僧は貰ってゆく 悪く思うな カブト虫ルパン」と書かれた置手紙だった。

 どうやらカブト虫ルパンは排水溝からプール内に潜入したようで、そこからタカシを連れて撤収するカブト虫ルパンに気付いた敬介は即座にこれを追跡。カブト虫ルパンはシルクハットを投げ付けることで追跡を振り切らんとしたが、敬介はXライダーにセタップしてクルーザーで追跡を続行した。
 先回りに成功したXライダーだったが、カブト虫ルパンは使い魔カブト虫からカブト虫煙幕なる赤い煙幕を発して追跡を撒いたのだった。確かに戦闘能力は大したことなくても、モチーフとなった存在の特徴はしっかり踏襲していたのが伺えた。

 だが、結局は撒けていなかった。
 カブト虫ルパンは上半身裸にして並ばせたノリオとタカシの背中に巨大虫眼鏡で紫外線を浴びせ、暑さに苦しむ二人の背中に浮かび上がった設計図を写真に撮らせたが、それを撮影係の戦闘工作員から受け取らんとしたところに飛び込んで来たライドルロープによって奪われてしまった。
 Xライダーは同行していた立花藤兵衛にノリオとタカシを連れて逃げるよう託し、自らは写真を奪われて怒り心頭のカブト虫ルパンとその一味に立ち向かっていった。

 最終決戦にてカブト虫ルパンは前哨戦よりは善戦していた。しかしやはり特別有利に立つこともなく、バイクの直進を止める力を持つギロチンハットも背後にいた戦闘工作員の首を刎ねただけだった(苦笑)。
 結局、Xキック (←大車輪無し)を食らって致命傷を負った挙句、自身のギロチンハットを投げ付けられ、首ちょんぱされた果てに爆死したのだった。ちなみにカブト虫ルパンのギロチンハットもレイピアもXライダーに傷一つつけることは無く、傷付けたのは自身と戦闘工作員だけだった(苦笑)。
 前話ラストの設計図奪取を思えば、些か不甲斐ない最期で、キングダークもそれを罵ったが、それでも「カブト虫ルパンの恥を雪ぐのは誰だ?」と呼び掛けていたから、大幹部として少しは部下への想いはあるのかも知れなかった。そしてそれに応えて名乗りを上げたのはヒトデヒットラー…………………初めてその名前を聞いた時、「ひでぇ駄洒落………。」と思ったのはシルバータイタンだけではないと信じたい(苦笑)

 ともあれ、3枚目の設計図は敬介の所有するところとなった。藤兵衛の述懐によると二人の少年の背に焼き付けられた設計図はΣ光線なる光線を当てることで消せるとのことで、実際に堂本博士の研究所にて二人の背中の設計図は消され、もうGODに狙われる心配もなくなった。ちなみにこのときの様子もヒトデヒットラーが放った使い魔ヒトデが偵察していた…………………やはり、敬介鈍過ぎるな…………それとも今度は秘密警察を率いていたモチーフの設定が生きたと考えようか………?

 かくして、第25話は新たに敬介が3枚目の設計図を入手したことで終わった。余談だが、この『仮面ライダーX』第25話にてノリオを演じた五島義秀氏は、約一年前に放映された『キカイダー01』でも01と行動を共にする謎の少年アキラ役で、その背中にジャイアントでビルの設計図を焼きつけられていた……………こういうのを、「因果は巡る」と云うのだろうか……………云わないだろうな(苦笑)。


第25話終了時点の設計図所在
仮面ライダーX陣営:2枚
悪人軍団陣営:1枚
所在不明:6枚



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令和五(2023)年六月一四日 最終更新