仮面ライダーX全話解説

第26話 地獄の独裁者ヒトデヒットラー!!

脚本:鈴木生朗
監督:内田一作
ヒトデヒットラー登場

 冒頭ダイジェスト………例によって、GODの命令でRS装置を発明した南原博士が設計図を9つに裂いて、内8枚を仲間の科学者に送ったこと、9枚の内、1枚がGOD、2枚がXライダーの手に渡り、残る6枚を巡ってXとGODの戦いが展開されることが語られた。

 冒頭、舞台は東京国際空港から始まった。
 空港近辺では敬介と藤兵衛がアメリカからの4枚目の設計図が到着するのを待っていた。4枚目の設計図を持つ江川孝夫博士(中井啓輔)が南原博士と如何なる関係なのかはこの場では言及されなかったが、世界に誇る物理学者とのことで、その出迎えに際して敬介は「作戦」と称して、計器類を満載したジープに待機する藤兵衛に何かを託すとその場を立ち去った。

 程なく、空港からは江川博士とその妻・知子(真木沙織)が出て来て、花を持ったチコとマコが帰国を祝いながら出迎えたのだが、ユナイテッド工科大学教授にして、上述した様に世界的な物理学者である江川博士夫妻の帰国は一般的にも大ニュースらしく、チコとマコは駆け付けたマスコミ達によって弾き出されてしまった。
 結局夫妻はマスコミの用意した車でホテルに向かい、ろくに挨拶も出来ずむくれるチコとマコだったが、そんな二人の前に男女のヒッピーが現れた。二人はチコとマコの名前を出して英語で握手を求めて来たのだが、何を隠そう、この二人こそが江川博士夫妻だった。

 つまり、マスコミ(勿論、早い話がGOD)の用意された車両に乗る夫妻は替え玉だった。勿論替え玉とはいえ、GODに連れて行かれてはどんな運命が待っているか知れたものでは無かった。偽江川博士にチコ・マコから渡された花束には発信機が仕込んであり、それを元に敬介が尾行していたのだった。
 案の定、偽夫婦の前にヒトデヒットラーが現れ、江川博士が南原博士の教え子で、米国在住の江川に設計図が託されたことを秘密警察が嗅ぎ付けたことを、視聴者に対してご親切にも(笑)説明してくれていた。
 だが、第24話、第25話から敵に学んだものか、偽江川博士の手には盗聴器が握られており、ヒトデヒットラーの言は藤兵衛に筒抜けで、藤兵衛から敬介に二人の予想通りプレス車輛がGODの回し者であることが告げられた。

 だが、程なく戦闘工作員が敬介の尾行を察知。ヒトデヒットラー一行はトンネルを利して車両を乗り換えることで敬介の尾行を撒いたが、車内に隠しマイクは残されておらず、敬介はこれを元に藤兵衛と連絡を取り合い、追跡を続行した。
 一方、GODアジトではヒトデヒットラーが江川博士夫妻を連れて来たことをキングダークに報告したが、キングダークは既に眼前の夫妻が偽物であることを見抜いており、ヒトデヒットラーにすぐに本物を追って設計図を入手するよう命じ、「さもないとお前を………。」と云って、巨大な左手を頭上にかざした。具体的な台詞が無いだけに、巨躯による脅しは充分だったのだろう。モチーフとなった独裁者アドルフ・ヒトラーの如く振舞っていたヒトデヒットラーも形無しだった。

 その頃、藤兵衛は本物の江川博士夫妻、チコ・マコと合流し、上手くGODやマスコミを撒いたことに満足していた。江川博士は身代わりを買ってくれた二人の身を案じていたが、藤兵衛一行は敬介がついているから大丈夫と云い切り……………実は全然大丈夫じゃなかった(苦笑)。
 上手く出し抜かれた怒りもあってか、ヒトデヒットラーは偽夫人を酷い拷問にかけていた。だが、偽夫妻は金でもって身代わりを引き受ける契約をしただけで、詳しいことは何も知らなかった。ただ、男の方が「真鶴の海岸にでも身を隠そうか。」と話していたことを小耳に挟んでいたのを聞き出すのには成功した。

 直後、警報が神敬介の追跡を知らせて来た。
 山中を探索する敬介は高所にGODのロゴ入り看板を見つけた。それにしても秘密結社である筈の悪の組織がトラックの荷台を初め、様々な物に組織のロゴを入れていることに納得がいかないのはシルバータイタンだけではあるまい(苦笑)。
 まあ、すぐにヒトデヒットラーが自ら迎撃に出ていたので、余り隠す意図はなかったのかもしれない。それにしても、「ハイル・ヒトラー!」のポージングで、「ヒトデヒットラー!」と啖呵を切り、自らを「地獄の独裁者」としている辺り、自分で「悪者です!」と名乗っている様が笑える(笑)。
 シルバータイタンも、史実のアドルフ・ヒトラーが為したユダヤ人(イスラエル人)虐殺や、欧州各地への侵略行為、捕虜への虐待を知るにつけ、ヒトラーが極悪人、或いは極悪人とされても仕方のない人物と見ているが、一方で純粋過ぎた人間とも見ている。恐らく、ヒトラーは自分で自分のことを「最高権力者」と自認し、すべての権力権威を集中させる必要があると思い込んでいたにせよ、自分で自分を「極悪人」や「独裁者」とは見ていなかったと思われる。
 そう考えると、当初日本壊滅の為に東西両大国の首脳が手を結んで組織されたGODが「悪」を自認するのは些か納得し難い。ショッカー、ゲルショッカー、デストロンも自らが世界征服を為した暁には自らを新たな正義と自認していたと思われる故に。まあ、子供番組でそこまで求めるのは酷かな?「悪」と名乗ってくれた方が視聴者も仮面ライダー達が敵をぶっ飛ばすのに遠慮なく快哉を叫べる訳だし。

 ともあれ、ナチス風の軍服を纏った独特の戦闘工作員(←デストロン首領親衛隊を彷彿とさせる)である親衛隊を率いている故か、彼等は機関銃を所持しており、これには敬介も早々にXライダーにセタップし、ライドルロープを駆使して銃器の封じ込めに掛かった。
 銃器を封じられてはさしもの親衛隊も従来の戦闘工作員と変わらず(苦笑)、忽ち蹴散らされ、ヒトデヒットラーは銃にもなっている指揮棒を振るってしばし格闘戦を展開したが、やがてXライダーに関わり合っている暇はないとして、江川夫妻の替え玉を務めたヒッピーの居場所を尋ねるXライダーに対して、「自分で探すんだな!」という捨て台詞を残して撤収した。

 恐らく勝負よりも任務を優先したと思われるが、それならそれでXライダーがアジト付近に近付くまで放置していたことにも、中途半端な迎撃を行ったことにも、ヒトデヒットラーに対して一貫性の無さが感じられる。
 はっきり云って、アジト近くまでXライダーを近づけたのは作戦失敗の第一歩で、Xライダーは程なくハーケンクロイツの彫られた岩を見つけ、そこに手掛かりがあるのは一目瞭然だった。
 Xライダーの腕力でビクともしなかったところを見るとそこそこ頑丈に作られてはいたようだったが、ライドルホイップでエレクトリックパワーを送り込むとハーケンクロイツは橙色の点滅し、あっさり真横にスライドしてアジトへの入り口を開いた。要は電子錠だった訳ね。

 ただ、まあヒトデヒットラーも全くの馬鹿だった訳ではない。恐らくはXライダーが身代りを了承したとはいえ、ヒッピー達を見殺しに出来ない故に危険を承知でアジト内に潜入することを見越していたのだろう。
 案の定、アジト内は罠が仕掛けられており、最初の機銃掃射は蓋をしただけで防がれたが、アジト内にはヒッピーの二人が吊るされていた。もっとも、これはXライダーを深入りさせる為のマネキン人形だったのだが、自分達に協力してくれた人達が吊るされている(と見える)姿にXライダーは駆け寄らずにいられなかった。
 勿論、マネキンであることはすぐに分かったのだが、男性型マネキンの懐には偽物を掴ませたことを恨み、それに報復する意をしたためたヒトデヒットラーの置手紙と時限爆弾があり、この辺りモチーフとなったヒトラー同様の執念深さが伺えた。
 そして驚くXライダーを尻目に時限爆弾は爆発したのだった。えっ?Xライダーの生死?語る必要はないでしょう(笑)。

 その頃、本物の江川夫妻は藤兵衛、チコ、マコとともに真鶴海岸の岩場で海水浴に興じていた。GODに狙われいる身でのんびりしていていいものかと若干訝しがる江川夫人だったが、のんびりを装うのも敵の目を欺く手段らしい。
 同時にこのシーンでは、前話に続いてチコとマコの水着姿が堪能出来るが、まあ、女子大生にグラマラスを求めるのは酷か(苦笑)。
 ただ、ヒトデヒットラー一行の探索の手は迫っており、潜水艦の中から潜望鏡にて藤兵衛達の姿は捕らえられていた。

 さすがに江川夫妻も全くの無警戒だった訳ではなく、ホテルの一室に潜んでいた際にも、ルームサービスに対して背後に隠した灰皿をいざというときの得物に相対する等していたが、GODの魔手は着実に迫っていた。
 その夫妻が水入らずで一室に潜む頃、チコとマコはホテル近辺に待機し、藤兵衛は藤兵衛でGODの動きを追っていたが、そこに負傷した敬介が現れた。顔面に傷を負い、左腕を三角巾で吊るす姿に藤兵衛もチコもマコも心配して駆けよらずには居られなかったが、多くのケースで時限爆弾が仮面ライダー達にかすり傷一つ追わせられない中、今回の時限爆弾は善戦(?)した方だった(笑)。
 ただ、そんな中でも敬介は偽夫婦を救出していたので、敬介には若干の余裕はあったと思われる。一応、偽夫婦は拷問による重体で病院に運ばれたものの、一命は取り留めたとのことで、偽夫婦に関するその後の言及はなかったのだが、いくら襲われることへの想定や覚悟があったとはいえ、これで死なれたら敬介も江川夫妻もバツが悪かったことだろう。

 ともあれ、危なかったのは本物の夫妻も同様だった。夫妻がルームサービスで運ばれた船盛の刺身を食しようとしたところ、中からはヒトデヒットラー (と、御丁寧にも親衛隊員達も(笑))が現れ、忽ち夫妻は取り押さえられ、設計図を隠していた夫人の腕輪が奪われた(←海岸での隠し場所に関する会話は聞かれていた訳やね)。
 直後に敬介と藤兵衛が駆け付け、部屋前で鉢合わせたが、設計図奪取が目的のヒトデヒットラー達は多少の抵抗をしたところで撤収。半分怪我人状態の敬介にこれを防ぐことは出来なかった。
 眼前でみすみす設計図を奪われ、逃げられたことに我慢ならない敬介に藤兵衛はその体では無理と押しとどめたが、敬介の決意は揺るがず、藤兵衛は自らの同行を条件にこれを許した。

 そんなやり取りがあったにも関わらず、敬介と藤兵衛はすぐにヒトデヒットラー一行に追いついたのだから、ヒトデヒットラー達の逃げ足は恐ろしく遅かった(笑)
 しかし、藤兵衛が危惧した様に、腕の怪我が治り切らない敬介には不利な勝負であることは否めなかった。親衛隊員達も久々に格闘に参加した藤兵衛相手に2、3人掛かりで互角レベルだったので、負傷している敬介でも充分蹴散らせたが、時折ヒトデヒットラーも攻撃を加えて来たので、敬介も早々にXライダーにセタップせざるを得なかった。
 そしていざXライダーにセタップが完了すると左腕の負傷は完全に無視されていた(苦笑)。親衛隊員達は忽ち蹴散らされヒトデヒットラーは指揮棒からのロケット弾ヒトデロケットや、ライドルホイップで突き刺したXライダーを感電させる電気ヒトデを武器にXライダーの手を焼かせたが、いずれも決定打にはほど遠かった。
 電気ヒトデを切り裂かれたヒトデヒットラーはXライダーに組み付くと渦巻地獄なる体術を駆使して海棲生物のホームレンジである海中にXライダーは引き摺り込んだ。ただ、それでも特段優位に立てた訳でもなかった。まあ、Xライダーも元は深海開発用に設計されたカイゾーグで、海中は得意だから仕方ないか(苦笑)。

 程なく、戦いの場は海岸に戻った。最終決戦にそれなりの決意があったのか、ヒトデヒットラーはそこそこ善戦。遠巻きに見ていた藤兵衛が勝敗を心配するほどだったが、突如XライダーがXキックを放つと勝負はあっさり決した。
 敗北と死を悟ったヒトデヒットラーは自分諸共設計図も滅することを宣言。これには二つの意図が考えられた。一つは、「敵の手に渡るぐらいなら。」と云うもので、もう一つは「設計図を奪いに来るであろうXライダーを道連れにする。」の云うものだろう。そして後者の意の方が強かったと思われる。
 と云うのも、GODはRS装置にかなり執着しており、設計図が一部でも燃えてしまえばRS装置完成は永久に能わなくなる。一方で設計図を囮にXライダーを倒せれば、最悪設計図が灰となってRS装置が作れずとも、GOD最大の障害が排除出来ることとなる。
 狙い過たずXライダーは爆死寸前のヒトデヒットラーに駆け寄り、両者は取っ組み合い体制となり、程なくヒトデヒットラーの体は爆発四散した。

 Xライダーの身を案じて駆け寄った藤兵衛の足元に奪われた江川夫人のブレスレットが転がって来て、3枚目の設計図は確保出来た。しかし、敬介は?と思われたがすぐに藤兵衛の背後から無事な姿の敬介が現れた。しかもセタップ前の怪我は完全に消え失せており、ヒトデヒットラーが我が身を犠牲にしながら、時限爆弾程の殺傷能力も持ち合わせ居なかった(苦笑)
 やはり、設計図を傷つけまいとの想いが、攻撃能力に歯止めを掛けてしまったのだろうか?ともあれ、これにて3枚目の設計図を確保して、第26話は終結した。


第26話終了時点の設計図所在
仮面ライダーX陣営:3枚
悪人軍団陣営:1枚
所在不明:5枚



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令和五(2023)年六月一四日 最終更新