仮面ライダーX全話解説

第27話 特集 5人ライダー勢ぞろい!!

脚本:平山公夫/中瀬当一
監督:内田一作

 冒頭ダイジェスト………は今回なく、いきなり仮面ライダーX、仮面ライダー1号、仮面ライダー2号、仮面ライダーV3、ライダーマンの5人が愛車を並走させるワンシーンが移され、サブタイトルが紹介された。

 そして冒頭はCOL。
 扉には「本日休業」の札が掛かっていたが、この札、頻繁に掲げられているんだろうな(苦笑)。ただ、その日の休業は敬介には想定外のものだった様で、臨時休業を訝しがっていた敬介だったが、藤兵衛はとあるイベントに参加する為として、上機嫌で準備に勤しんでいた。
 イベント内容は夏休み中の子供達への講談で、「仮面ライダーは敵か?味方か?」と銘打たれていた。

 「敵か?味方か?」とは何とも穏やかならざるタイトルだったが、教え子達の活躍が語られることへの期待に胸を膨らませる藤兵衛はタイトルなど全くに気にせず、最前列斎中央にて、講釈師・田辺千鶴(梅津栄)の口髭を両隣のチコ・マコに「カッコいい」と語るほど上機嫌だった。
 その直後、チコとマコは物凄く鍔の広い黄色い帽子を被り始めた。多分、ヒロインにファッションを持たせたものと思わるが、後ろで見ている人達にとって、思い切り邪魔だったな(苦笑)

 そして紙芝居を交えた講釈が始まったのだったが、その内容は仮面ライダー達を貶めるものだった。
田辺は仮面ライダーが「正義の味方」であることを、「全くの大嘘」と述べ、1号ライダーを「皆さんを騙して人気者になろうとしたインチキ野郎」、「大変な弱虫」で、敵対した改造人間達を「さも悪者らしく見えますが、実は大変気立ての良い者達ばっかり」として、弱いくせに大金持ちである仮面ライダーが金の力で改造人間達にわざと負けて貰っていたと語った。
 当然、藤兵衛達の顔色は変わり、他の聴衆達もざわめき出した。

 しかし、田辺は委細構わず、講釈を続け、2号ライダーが上手そうにバイクを駆動しているのもインチキで(紙芝居ではショッカー怪人に押してもらっていた)、V3のカッコいい変身ポーズはデストロンが教えたものと語り、「見本をお見せしましょう!」と叫ぶや、如何にもカッコ悪そうにV3の変身ポーズを真似て、盛大にズッコケた。あ、そう云えば、2号ライダー=一文字隼人がバイクの運転が出来ない(=二輪無免許)のは本当だった(苦笑)

 あんまりな内容に「何よ、あの講釈師!」と色めき立つチコだったが、それ以上に怒り心頭となっていた藤兵衛は舞台に駆け上がるや、田辺の胸倉をつかみ上げ、「黙って聞いてりゃ調子に乗りやがって!よくもそんな大嘘が吐けるものだ!俺が代わって噺をするから引っ込んでいろ!!」と一喝すると田辺を投げ飛ばした。
 もんどりうって壇上に転がった田辺は聴衆の子供達にまで袋叩きにされる始末だったが、それを藤兵衛が押し留め、ここからが本当の噺だと云わんばかりに講釈師然として、「只今より、本当の仮面ライダーの噺を一席伺います。」として、講釈を始めた。まあ、それは良いのだが、人間自分の大切な人が侮辱されるのは自分が侮辱される以上に腹が立つもので、聴衆に呼び掛ける直前、藤兵衛は「何だ、こんなもの!」と云って、「田辺千鶴」の名を書いた札を張り倒す大人気なさを見せていたが(苦笑)、まあ、気持ちは分かるな。

 ともあれ、「そもそもショッカーと云う悪の組織がありまして……」の切り出しで、仮面ライダーの歴史が語られ始めた。
 若き青年科学者・本郷猛が拉致、改造されたことに始まる仮面ライダーとショッカーの戦い、様々なショッカー怪人との闘いの日々、トカゲロン率いる再生怪人軍団との死闘、本郷を支える仲間達の紹介が紹介された。
 そして噺は2号ライダーのそれに移った。ショッカーの別計画を追って応酬に移った1号ライダーの代わりに日本を守ることとなった仮面ライダー2号・一文字隼人の登場、FBI特命捜査官滝和也との邂逅、数々の死闘、2号を助ける立花レーシングクラブ面々の存在がダイジェストで語られ、次のシーンでは本郷が復帰していた。

 ダブルライダーに次々と怪人達を打ち破られたショッカーはゾル大佐、死神博士、地獄大使と云った大幹部達を召喚。しかし、それ等の幹部達も狼男、イカデビル、ガラガランダとしてライダー達との死闘に倒れた。
 数々の敗北の果てにショッカー首領は新組織ゲルショッカーを組織。これにはWライダーも苦戦を余儀なくされたが、最大の敵と目される6人のショッカーライダーとの死闘もライダー車輪にて勝利を収めた。
 そして遂に大幹部ブラック将軍、次いでゲルショッカー首領も倒れ、ゲルショッカー壊滅でもってAパートが終わった。

 Bパートに入っても藤兵衛の講釈は続いた。
 噺は仮面ライダーV3の誕生に再開したが、それは風見志郎の家族が皆殺しにされた悲劇に始まり、新たに登場した敵・デストロンを倒すべく、Wライダーの改造を受けて3号ライダー・V3の登場が語られたのであった。
 更に噺は続き、Wライダーとカメバズーカの心中(?)、ドクトルG ・カニレーザー、キバ男爵・吸血マンモスとの死闘と勝利が語られたところで、V3には敵ばかりではなく、味方もいたことが語られ、講釈師藤兵衛がそれは誰かと聴衆に問えば、聴衆は異口同音にライダーマンの名を叫んだ。
 かくして噺はライダーマンの誕生に移った訳だが…………語られなかったツバサ大僧正、可哀想(苦笑)…………。

 ともあれ、噺は続き、デストロンの科学者・結城丈二がヨロイ元帥に裏切られたことで自らを改造してライダーマンとなったことが語られた。ただ、ライダーマンが真の意味でV3の味方になるまでの経緯が語れるのは子供達には重いと見られたか、V3との共闘の果てにプルトンロケットから東京を守って最期を遂げ、仮面ライダー4号の名が贈られたことが語れたのみだった。

 かくして歴代仮面ライダーの噺が終わり、いよいよ現役である仮面ライダーXの出番となったのだが、同作における経緯や活躍ではなく、5人ライダー勢揃いとして語られた。
 その際に藤兵衛は「仮面ライダー1号、2号、V3、死んだと思ったライダーマンもどっこい生きていた!そこへ駆け付けるライダーX!」としていたのだが、「どっこい生きていた!」の一言であっさり死んでなかったことにされたライダーマン…………………さすがに安直過ぎないかなあ……。

 一応、真面目に捕捉するが、この『仮面ライダーX』第27話の放映は昭和49(1974)年8月17日で、その三週間前の同年7月25日に劇場版『五人ライダー対キングダーク』が封切られ、一応、ライダーマンの生存は周知のものとなっていた。
 ただ、その作品においてもライダーマンがタヒチから駆け付けたことが語られたのみで、プロトンロケットの爆発からどのようにして助かったのかは語られずじまいで現在に立っている(漫画『仮面ライダーSPIRITS』が本作と同一世界の話として公認されるなら、プルトンロケット爆発に際して重傷を負ってタヒチに流れ着き、記憶喪失となっていたことになるのだが)。
 個人的には物心ついた時からライダーマンは普通に存在しており、「仮面ライダー4号」の名を送られたライダーマンの復活は必然とも思っているが、カメバズーカの原爆爆発から生還したWライダー含め、生還したなら生還したでその経緯をはっきりさせて欲しいと希望するのはシルバータイタンだけではあるまい。道場主の愛読書・男塾シリーズを含め、「何か知らんけど、生きていた。」はどうも納得し難い………。

 閑話休題。歴代ライダーに新ライダーである仮面ライダーXが合流し、遂に噺の中に5人ライダーが勢ぞろいした。初めてフルコーラスで歌われる「ライダー賛歌」をBGMにライダーマシンを駆っていた5人はGODの再生神話怪人軍団と対峙(ちなみにシルバータイタンは『仮面ライダーX』関連曲の中ではこの「ライダー賛歌」が一番)。
 それにしても、ここでも再生怪人の雑魚振りは目に余った(苦笑)。現役(?)時にあれだけXライダーを苦戦させたケルベロスが1号に、アトラスが2号にあっさり投げ飛ばされていたのは仕方ないにしても、クロノスまでがライダーマンにあっさり蹴散らされているようでは、この時代、再生怪人に陽の目が当たることは全くもって期待出来なかったことだろう。
 ただ、1号とXライダーがともにライダーキック・Xキックを放つシーンはカッコ好かった(劇場版でファイブ・プラトンを為す為に無理やり作られた Xライダースーパーファイブキックよりも)。

 一通り歴代ライダーの活躍とライダー全員集合が語られ、更に噺が続くかと思われたが、そこに席を追い出された田辺千鶴が文句を云いながら乱入してきた。田辺は藤兵衛を「親父!」と呼び、仮面ライダーが活躍する話ばかりで面白くない、仮面ライダーが負ける話とかをしろ!と強要してきたが(苦笑)、当然藤兵衛がこれに応じる筈なく、引っ込んでいろと云われたが、反論を受けた田辺はついに藤兵衛に殴り掛かった。

 まあ、普通に見て、田辺がGODの回し者で、仮面ライダー達を貶めんとしていたのは一目瞭然だったのだが、正確には田辺が回し者なのではなく、GODの回し者が田辺に化けていたもので、そこ頃控室では気絶させられて倒れていた本物の田辺千鶴を敬介が見つけていた。
 田辺を介抱した敬介は彼を伴って、藤兵衛と取っ組み合っている偽田辺の元に現れた。偽物であることを喝破された偽田辺は「バレたからには仕方がない。」として高笑いしながらその正体―ネプチューンの姿を現した。そして正体を現した時には既にその背後にはメドゥサキマイラもいつの間にか控えており、彼等はキングダークの力で甦ったとして臨戦態勢を見せた。

 だが、いつの間にか味方が控えていたのは敬介も同じで、藤兵衛の講釈途中に客席に現れていたサングラスの男が割って入って来た。「待て待て。」と云いながら高所に現れ、藤兵衛に「おやっさん。」と呼び掛けた男がサングラスを外して見せた顔は風見志郎(宮内洋)!!
 「V3アクション」をBGMに壇上に降り立った風見は、「久し振りに日本に帰って来て、親父さんの講談を楽しんでいたのに、こいつ等一体、何者ですか?」と問い、それに対して、「デストロンみたいな奴等」と語る藤兵衛……………いやいやいや、藤兵衛の講釈を聞いていたのなら、その問答はわざとらし過ぎるだろうが(苦笑)。

 ともあれ、藤兵衛は敬介に突如現れた人物が風見志郎であると簡単に紹介…………3週間前の劇場版と丸で整合性が合わなくなるなあ(苦笑)。まあ、それはさておき、眼前の異形の者達が悪の組織の改造人間と知らされた風見は「久々にひと暴れするか。」と好戦的姿勢を隠そうともしなかった。
 そして2人の仮面ライダーとGOD怪人達の戦いが始まろうとするのを受けて、藤兵衛はチコ・マコと共に聴衆の避難誘導に掛かったのだが、まだ聴衆が残っている段階から敬介は風見に自己紹介。もう、聴衆にはこの二人が仮面ライダーであることモロバレ(苦笑)
 さすがにまだ聴衆がいる前での変身が躊躇われたか、それとも客演俳優である宮内氏への配慮か、敬介と風見は素顔のまま大立回りを続行。風見は戦闘工作員にまで名乗りと好戦姿勢を示し(笑)。それに恐れを為したものか、キマイラは他の2体に撤収を指示した。

 しかし、かかる展開を受けて撤収を指咥えて見ている2人ではなかった。敬介と風見は即座にバイクで3体を追撃。迎撃に出た3体を前に敬介と風見は各々仮面ライダーX・仮面ライダーV3に変身。
 はっきり云って、変身前から押されていた3体が変身後のライダー2人に敵う筈もなく、最初からXライダーと対峙したネプチューンも、V3に叩きのめされた直後のメドゥサキマイラも、Xライダーに蹴りまくられるや3体揃って逃走に掛かったが、その行く手にはV3が待ち構えていた。
 Xライダーはメドゥサに、V3はキマイラに跳び蹴り(←ともに技名呼称無し)を食らわせ、吹っ飛ばされた両者は互いにぶつかり合って、抱き合うように崖下に転落。一人残ったネプチューンはV3に羽交い絞めにされたところをXライダーに散々殴られ(←再生とはいえ、父親の仇やからね)、V3に上空高く投げ飛ばされたところにXキックを食らい、先に倒されていたメドゥサキマイラの元に蹴り飛ばされると3体まとめて爆死した。

 かくしてせこい事極まりない仮面ライダー誹謗中傷作戦(?)は呆気なく瓦解したのだが、再生怪人達の戦い振りを盗撮していたキングダークはXライダーのみならず、V3の決め技をもカメラに収めることが出来たと満足気だった………………今まで最低限の偵察すら行っていなかったことを思わせる発言で、GODの兵法書に「彼を知り、己を知れば百戦して危うからず。」の文言は欠落しているに違いない(苦笑)。
 ともあれ、初めて素顔で顔を合わし、握手を交わす両者に、Xライダーの手の内を掴んだGODがこのままでは済まさないことを宣言するキングダークの台詞でもって第27話は終結。恐らく劇場版を受けてそれに合わせた総集編的な話としてこの第27話は挿入されたと思われ、それゆえか、今回はRS装置のRの字も出て来なかった。


第27話終了時点の設計図所在
仮面ライダーX陣営:3枚
悪人軍団陣営:1枚
所在不明:5枚



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令和五(2023)年六月一四日 最終更新