仮面ライダーX全話解説

第30話 血がほしい―しびと沼のヒル怪人!!

脚本:鈴木生朗
監督:田口勝彦
ヒルドラキュラ登場

 冒頭ダイジェスト………は無く、激流の滝の前で一人の老婆(桜井とし子)が祭壇のようなものと炎を前にGODが必ず世界を征服する旨を祈祷していた。早い話、「人心を惑わす」を絵に描いた姿である(笑)。更には人類の死を呪詛する内容を口にし、傍らの河中には人骨が転がり、そこには牙を生やした巨大な蛭がまとわりついていたが、サイズと容姿はツチノコに近いと云えた。そしてその巨大蛭は老婆の可愛い存在らしく、若い女の血をたっぷり吸わせてやるとしていた。

 場面は替わってとある病院。
 そこにはチコが足を怪我して入院していた(怪我の理由は不明)。そこに若い女性の血を求める老婆が巨大蛭を連れて現れたのだが、最初はすぐにチコに姿を見せたものの、看護師の前には姿を見せなかった。
 恐らく、神敬介関係者の前に不用意に姿を見せることを避けたのだろう。実際、夜になると老婆はGOD悪人軍団怪人ヒルドラキュラの姿をだぶらせつつ、病院の看護師達を次々襲いつつも、チコは襲わず、看護師の悲鳴を聞いて駆け付けた敬介(←チコの見舞いに来ていたと思われる)に対しても背後から様子を窺い、いつかは攻撃する風な意を仄めかすだけだった。

 だが、意外にもヒルドラキュラは早々に手を打ってきた。見舞いに来た敬介が「退屈しないように」としてラジオを渡して帰ろうとすると、そのラジオから敬介の名を呼んで、無事に帰れると思うなという言葉が流れて来た。勿論、こんな言葉を聞いてそのまま帰る訳にはいかない敬介は、チコにその場を動かないよう告げると周囲の偵察に出たのだが、そこには巨大蛭に血を吸われて、ヒルドラキュラの操り人形となっていた看護師三人が待ち構えていた。

 彼女達は吸血鬼に襲われた犠牲者のお約束で、血の気が完全に失せた真っ白な顔に牙を生やして敬介の血を求めたが、GODの影をまだ見ていない敬介には「気でも狂ったのか?」としか映らなかったが背後に老婆が現れたことで、彼女達が老婆から何がしかの影響を受けたことが分かった。
 牙を生やし、血を求めて来るとは云え、彼女達の身体能力が格段に上がった様子は無く、敬介はあっさり振りほどくと老婆を追い、やがて怪しげな寺院に辿り着いた。そこではやはり老婆が呪詛に等しい祈祷を捧げていたのだが、老婆に気を取られる敬介の不意を突いて巨大蛭が飛びついてきた。
 変身前とは云え、敬介の力で振りほどけない程巨大蛭は強力に食らいつき、苦悶する敬介の前に老婆はヒルドラキュラの正体を現し、伝説のドラキュラの血を引く存在であることを告げた(←ドラキュラはフィクション上の人物だが、ドラキュラのモデルとなったヴラド・ツェペシュなる人物は実在したから、カブト虫ルパンカメレオンファントマよりは良しと出来るな(笑))。

 ただ、このヒルドラキュラ、ヴァンパイ最大武器となる口腔部が、蛭状の口吻となっており(←一応犬歯は見える)……………はっきり云って、老婆の姿の方が怖い(苦笑)。ともあれ、ヒルドラキュラは第二、第三の巨大蛭を敬介に放ち、溶解液を吐かせて敬介を溶かさんとしたのだが、敬介は何の脈絡もなく振り解くと(苦笑)、大変身を敢行した。
 どうもこのヒルドラキュラ、特殊能力で戦うタイプの様で、格闘ではXライダーに一方的に殴られ、蹴られるだけで、肉弾攻撃は全く行わなかった。口吻部から伸ばした舌とも蛭ともつかぬ突起物が多少はXライダーを苦しめたが、Xライダーがこれをロープ代わりに手繰り寄せるように飛び蹴りを放つとヒルドラキュラはあっさり撤収したのだから、こうなると強い弱いと云うより、格闘を行う意志が感じられなかった。

 そんなヒルドラキュラ故に、キングダークから進捗を問われても、丸で不安な様子は見せいなかった。実際、ヒルドラキュラによる吸血鬼増殖は順調で、吸血鬼と化した看護士達は次々と他の看護師や入院患者達を襲った。襲われたものの中にはチコも含まれており、恐怖したチコはCOLに電話して助けを求めたのだが、店内にいた敬介は、これがヒルドラキュラの狙いであることを知り、「しまった…。」とこぼしていたのだが、あの状況下にあった病院にチコを残したままにした判断はどう考えてもおかしいだろう?

 そして事態に追い打ちをかけるようにマコの悲鳴が上がった。
 マコが指さした店のTVには巨大蛭が移っていて、次いで老婆が姿を見せると、老婆=ヒルドラキュラは血を吸われて吸血鬼と化した者が更に吸血鬼を増やす無限増殖状況を指し、この事態を解消するにはRS装置の設計図を死人沼まで持ってくることが条件だと告げた。
 敬介は藤兵衛とマコにチコを助けに行くよう託し、「まさか…。」と訝しがる藤兵衛に、罪なき人々が次々とヴァンパイア化される状況を放っておけない、としてヒルドラキュラの要求に応じる姿勢を仄めかした。

 死人沼に着いた敬介はヒルドラキュラにそれまで入手した設計図をすべて渡した。だが、ヒルドラキュラはそのまま逃走に掛かり、約束通りヴァンパイア化した人々を戻せと詰め寄る敬介を、「そんなこと私が知るか!」として、死人沼に叩き落したのだった。
 死人沼は底なし沼とのことで、設計図を手に入れて得意満面のヒルドラキュラはヴァンパイア増殖を更に進めた。

 だが、このヴァンパイア達、冷蔵庫の陰に隠れたチコを見つけられずにいたのだから、索敵能力は恐ろしく低かった。とはいえ、元々人間だから駆け付けた藤兵衛達もこれを討ち果たす訳にはいかなかったのだが、苦し紛れに投げ付けた塩がヴァンパイア化した人達を元に戻す効果を上げた。
 GOD陣営にアンラッキーは続き、設計図を手に入れたヒルドラキュラに対して、他の悪人軍団怪人に爪の垢を呑ませてやりたいと御満悦のキングダークだったが、その目の前で、ヒルドラキュラが得意気に掲げた設計図は白紙と化した。
 次の瞬間、設計図が一定時間経過すると消える特殊インキで描かれていたものであることを悟ったキングダークはいつもの「馬鹿者!」の怒号を上げた。偽物にするかえられたクモナポレオン、隠していたペンダントから中身を抜き取られていたカメレオンファントマ、そして時間経過とともに消える代物をつかまされたヒルドラキュラ………悪人軍団による設計図奪取には本当に呆れる程この展開が多いのであった。

 ともあれ、手掛かりを求めて再度死人沼にやって来たヒルドラキュラは敬介が底なし沼に沈んだと見ていたが、深海開発用カイゾーグである敬介は大変身するまでもなく死人沼から何事もなかったかのように飛び出した。しかも藤兵衛によって事前に塩が有効手段であることが伝達済みで、ヒルドラキュラが投げつけた巨大蛭も逆に干からびる有様だった。  こうなると、格闘を得手としないヒルドラキュラに勝ち目はなかった。散々ボコられた挙句、真空地獄車の前に為す術なく敗れたのだった。

 ヒルドラキュラの敗北を受けて歯噛みするキングダークが改めて設計図奪取を決意して第30日話は終結。今回は両陣営ともRS設計図の所有枚数に変化は無し。


第30話終了時点の設計図所在
仮面ライダーX陣営:5枚
悪人軍団陣営:1枚
所在不明:3枚



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令和五(2023)年六月一四日 最終更新