仮面ライダーX全話解説

第29話 死闘!!Xライダー対Xライダー!!

脚本:鈴木生朗
監督:田口勝彦
カメレオンファントマ登場

 冒頭ダイジェスト………今回はサブタイトルの方が先に出て、ダイジェストに入った。
 例によって南原博士がRS装置を発明させれたことから始まったが、それまで「極分子復元装置」とされていたのが、「世界中の物質のエネルギーを消す恐怖」の装置と若干変更された。
 確かに物質を分子レベルまで分解すると云う恐るべき能力は、あらゆるエネルギーを消し、あらゆるものを破壊し得る能力を持ち得るので、間違いではないが、RS装置生みの親である南原博士が、善用することで「神の贈り物」となることを期待した遺志を思えば、この頃になってRS装置が究極の破壊兵器としか目されていないことに一抹の寂しさを覚えるものである。
 確かに現実世界に則するなら、原水爆すら制御できていない人類には過ぎたる装置で、効果より恐ろしさの方が大きい存在ではあるのだが。ともあれ、9つに裂かれた設計図の内、1枚がGODの手に、4枚をXライダーが入試し、残る4枚を誰が持ち、それをX・GODのいずれが手に入れるのか?と述べたところでそのままGODアジトにてストーリーは始まった。

 キングダークはアジト内にて姿を見せずにいるカメレオンファントマの名を呼び、「興味深い情報が入った。」として、怪盗ファントマの化身であるカメレオンファントマに期待する風を見せ、カメレオンファントマもまた自らの神出鬼没性で命令を果たすと宣言した。
 しかし、カブト虫ルパンもそうだったが、「歴史上の悪人の子孫に動物の能力を植え付けえる。」という悪人軍団の設定上、いくら名前にインパクトがあるとはいえ、フィクション上の存在を用いるのはいかがなものかな?と個人的にシルバータイタンは考える。

 場面は替わってとある高層ビル内。その15階にあるA.B通信社なる会社から出て来て、エレベーターに乗り込んだ一人の男・同社の東京支局長・安藤(大東梁佶)がエレベーター内に閉じ込められた。
 救助を求める外部への電話も通じず、11階と15階の間を右往左往ならぬ上往下往させられ、這う這うの体でエレベーターの外に出た安藤局長の前に現れたのは自分と全く同じ姿をした人物で、丸で大東梁佶氏が一人二役をやっているみたいだった(笑)。
 勿論、自分と全く同じ容姿をした者が眼前に現れれば誰だって、驚愕し、誰何せずにはいられない。そんな安藤局長に対し、もう一人の安藤局長は「お前だ。」と返すと、「同じ人間が二人いちゃあ何かと面倒だ。」というや、カメレオンファントマの正体を現し、安藤局長を絞め殺し、彼になりしましたのだった。
 まあ、変装の名人・ファントマと保護色による隠遁術の使い手。カメレオンの能力を掛け合わせた改造人間ならかかる活躍に出るのは定石であろう。

 場面は替わってCOL。
 そこにやって来たのは、再改造を反映したものかどうかは分からないが、セミロングからパーマ頭にイメチェンした神敬介…………………速水氏やファンの方々には申し訳ないが、シルバータイタンは余り好きではない………。
 そんな敬介の来店を妙な大歓迎でチコとマコが出迎えたのだが、どうも二人の言によると敬介はしばらく店に姿を見せていなかったらしい。そんな敬介を「久々のお客さん。」として、藤兵衛はチコとマコにコーヒーを淹れるように指示すると、敬介と小声で会話を交わした。
 それによると、敬介は世界的バレリーナ・菊地明子を探していて、その彼女がドイツから帰国したとの報が入ったとのことだった。敬介は既に彼女の研究所が世田谷の前島三丁目にあることを突き止めていた。ちなみに藤兵衛が彼女の帰国を知ったのは新聞報道で、それを把握していたなかったのに研究所の住所を把握している敬介の情報収集能力は激しく謎である(笑)。

 そして場面はキクチバレエに替わるのだが、そこには安藤局長にすり替わったカメレオンファントマが来ていた。偽安藤はレッスン中だった明子(島田幸子)に面会を求め、これに対して明子は即座にレッスンを中止して応じた。直前の会話からも二人は旧知だったことが明らかで、カメレオンファントマはその対人関係を利用する為に安藤になりましたのだろう。

 何の様で訪問したかを問う明子に、偽安藤は明子に神敬介という人物が会いたがっていると告げた。直前の藤兵衛との会話からその言葉が真実なのはわかるのだが、生憎、明子は敬介を知らなかった。
 偽安藤は既に敬介が明子に接触していると睨んでいた様だったので、本当に知らないのか?と詰問口調になり、会話がちぐはぐになったのだが、次の瞬間鏡に映る安藤局長の姿がカメレオンファントマであることに明子が気付いた。
 悲鳴を上げる明子に、「女、見たな!?」と詰め寄る偽安藤…………………伝統のヴァンパイア以来、モンスターの姿が鏡に映らなかったり、真実の姿が映されてしまったりするのはこの時代の定番だったとはいえ、もしカメレオンファントマ自身の完璧な変装術が鏡の前で無力なのを把握していなかったとしたら、隠密作戦遂行者としてはかなり致命的である
 もし、鏡に正体が移ることを先刻承知していたとしたら、レッスンの都合上、大きな鏡が常置されているバレエスタジオにのこのこ現れた愚者振りはやはり致命的である(苦笑)

 そしてカメレオンファントマの中途半端振りは更に続いた。
 正体を現し、何故に神敬介が彼女を探しているのかを詰問していたのだが、どうもカメレオンファントマは「敬介が明子を探している。」ということしか把握していない様で、それ以外の彼女に関する情報を全く把握していなかったとしたら、キングダークの云っていた「興味深い情報」もたかが知れていることにある。もしこれがRS装置設計図の行方を巡る探索の一環だとしたら、恐るべき泥縄と云わざるを得ない(苦笑)

 とにかく、当の明子は本当に敬介のことを知らないから、「知らない!」としか答えようがなく、助けを求めるのが精一杯だった。
 尚も明子を絞め上げるカメレオンファントマだったが、そこへ敬介と藤兵衛が駆け付け、大立回りとなった。敬介を「目障りな奴。」として戦意満々に悪人軍団の一人であることを名乗るカメレオンファントマ……………第三者に成りすましてまで隠密活動をする怪盗の化身があっさり名乗ってどうする(苦笑)

 ともあれ、大立回りは続いた。
 ただ、特殊能力を持つ怪人に有り勝ちなことだが、このカメレオンファントマも組み付いての格闘では明らかにXライダーに劣っていた。長い舌を伸ばしての首絞め攻撃が少々Xライダーを苦しめたことを除けば、カメレオンファントマの攻撃はほぼほぼXライダーに通じておらず、Xはライドルを抜きもせず戦っていた(もっとも、マーキュリー回路埋め込み手術を受けて以降、Xライダーは全くと云って良い程ライドルを抜かなくなるのだが)。
 僅かに代わり身を駆使した能力でもってXライダーの攻撃を躱すことには優れていて、Xライダーが殴り飛ばしたカメレオンファントマの姿は次々と戦闘工作員に替わっており………………所謂、戦闘員の悲劇だな(苦笑)。
 結局、カメレオンファントマはリベンジする旨を告げて遁走した。その後、カメレオンファントマはアジトにてキングダークからXを甘く見ていたことを咎められていたが、カメレオンファントマ自身はまだまだこれからとしており、パワーアップしたXライダーに油断しない様促すキングダークの言もどこまで響いているか怪しかった(苦笑)。

 場面は替わって東都総合病院。
 そこではカメレオンファントマに襲われてショックを受けていた明子が鎮静剤を射たれて休んでいた。カメレオンファントマに逃げられたことを彼女に付き添っていた藤兵衛に告げた敬介は程なく気付いた明子に自分の名を名乗った。
 眼前の男が話に出ていた神敬介と知り、何故に自分を探すのか?と問う明子に敬介は西ドイツでラビックという人物にあった筈だと告げた。それに対して、明子は確かに西ドイツのミュンヘンにて彼女の楽屋を訪ねて来たラビックと会っていたと答えた。
 その時、彼女はラビックからペンダントの付いたネックレスをプレゼントされていたことが分かり、敬介はそれを見せてもらおうとしたところ、彼女が首から外したネックレスは突如脇にいた藤兵衛に奪われた。

 展開からバレバレだが、眼前の藤兵衛は本物を殴り倒して気絶させてすり替わっていたカメレオンファントマだった。「顔の無い怪盗」と云われたファントマの化身怪人の面目躍如でまんまとペンダントを奪って逃走することに成功したカメレオンファントマだったが、GODアジトに持ち帰ったところ、褒められたと思いきや次の瞬間には叱責された。
 とうのも、ペンダント自体は案の定、RS装置設計図の一枚が隠されてラビックから明子に渡されたものだったが、設計図自体は明子からすべての事情を聞き出し、こういう事態を想定した藤兵衛によって事前に抜き取られていた。さすがにショッカー、ゲルショッカー、デストロン、GODと様々な悪の組織としのぎを削って来た立花藤兵衛ならではの用意周到さだった。
 単純ではあったが効果的で、これには敬介も感心し、作戦の成功をCOLにて藤兵衛・チコ・マコとともにワインで乾杯するのだった。

 一方、煮え湯を飲まされたカメレオンファントマは設計図奪取の機を明子に求め、公演を前に控室にいた明子を拉致。公演に敬介達が招待されていたのを知っていたようで、来場した敬介に彼女を返して欲しければ本物の設計図をもって地獄谷に来るよう告げた。
 向かう途中、敬介はバイクに乗った状態で大変身したのだが、手放し運転変身をする風見史郎の影響だろうか(笑)?ともあれ、Xライダーは呼ばれた場に到着すると、設計図と交換に明子を取り戻し、「貴方はもしや…?」と云って、「Xライダー=敬介」への疑問を振り払うように、「皆が貴女の舞台を待っている。」としてクルーザーで明子をその場から離脱させた。
 直後に、カメレオンファントマに「改めて設計図を取り戻す!」と云い放っていたように、後には殺し合いが待っていたのだから、一般ピープルである明子を速やかに離脱させたのは適切な処置だったが、クルーザージャンプで送り出すのは現実に即するなら、相当な恐怖だっただろうな(←しかも明子はノーヘル!

 設計図を取り戻さんとするXライダーに対して、カメレオンファントマは目的のものさえ手に入ればもう用は無いとばかりに戦闘工作員に迎撃させている間に保護色にて姿を消した(←狡猾で意気地なしに見えるが、自身の戦闘能力や目的優先順位を考えれば間違っていない)。
 だが、Xライダーはそう何度も同じ手は食わないとばかりにレッドアイを点灯させると崖壁に潜むカメレオンファントマの姿を喝破した(余談だが、後々、このレッドアイを点灯させるのは敵に止めを刺す際のお約束となる)。

 その後、カメレオンファントマは保護色や長舌を駆使して対抗せんとしたが、直前にXライダーが云っていたように、二度目は通じず、先にある程度Xライダーを苦しめた絞め上げ攻撃も、逆に自分が下を振り回されて投げ飛ばされる始末だった。
 そんなカメレオンファントマが最後の手段的に駆使した能力は、仮面ライダーXそのものの姿に変じることだった。

 ヒーローの偽物を特集した過去作・「偽ヒーローの作り方」にてこの第29話とカメレオンファントマも採り上げているのだが、カメレオンファントマの変身能力は鏡に正体が映ると云う欠点を除けば、見た目的には完璧だった。
 よくよく目を凝らしてみると、カメレオンファントマの化けた偽物の方が本物よりほんの少しだけ太っていたが、ぱっと見には区別がつかないレベルだった。マフラーと手袋とブーツの色も本物と同一だった(笑)。ただ、過去作でも触れたが、シルバータイタンはこの時のカメレオンファントマのXライダーへの変身は無意味だったと思っている(苦笑)。
 何せ、Xライダーに変身した姿を目の当たりにしているのが、当のXライダーしかいないのである(苦笑)。互いに「俺がXライダーだ!」と云い張っていたが、それを断じる必要のあるギャラリーは一人もいなかった(苦笑)

 加えて、完コピ出来ていたのは容姿だけで、戦闘能力では遥かに及んでいなかった!
 何度も何度も投げ飛ばされたり、張り倒されたりする度に本来の姿を見せ、ストレートパンチにダウンするとXライダーは崖上に降り立つと背後に爆煙が上がり、「Xライダーアクション」をBGMに真空地獄車が発動した。ちなみに今回、真空地獄車カメレオンファントマの体を掴んでともに回転するアクションは絵で表現され、この技法はこの後も幾度どなく用いられた。前話でクモナポレオンと一緒に回転していたアクションが不評だったのだろうか?
 ともあれ、新必殺技の前にカメレオンファントマは為す術なく戦死。そして無事行われた菊地明子の公演を敬介達が鑑賞する中、第29話は終結したのだった。
 それにしても、容姿的にも、バレリーナ役をこなすアクション的にも優れた女優である島田幸子さんをこの作でしか見たことが無いのが惜しまれる。


第29話終了時点の設計図所在
仮面ライダーX陣営:5枚
悪人軍団陣営:1枚
所在不明:3枚



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令和五(2023)年六月一四日 最終更新