仮面ライダーX全話解説
第31話 立て!キングダーク!
脚本:村山庄三
監督:折田至
トカゲバイキング登場
冒頭ダイジェスト………世界中のあらゆる物質を消す恐怖のRS装置をGODの命令で発明した南原博士は設計図を9つに裂いて8枚を仲間の科学者に送った。内一枚はGODが、五枚はXライダーの手に渡り、残り三枚をめぐって両者がしのぎを削るのだった。
サブタイトルが流され、舞台は那須りんどう湖ファミリー牧場なる行楽地から始まった。冒頭、長閑なシーンが数か所流れて、湖で魚の餌やりに協力していた少女・ユキ(木島慶子)が湖面に浮かぶ人形に気付き、餌やりのおじさんに取ってもらったところで、牧場員の女性に呼ばれて母親の元に向かった。まあ、「この子がストーリーに関わります。」という前振りやね。しかし、湖中にあった人形、半ば毛の抜け落ち、服もボロボロ…………よく拾う気になったな(苦笑)。
そしてその夜、ユキとその父(柳沢紀男)・母(安藤純子)が管理事務所にて就寝していたところにGOD悪人軍団の一人・トカゲバイキングが襲撃してきた。トカゲバイキング……………「バイキング」という民族名(古代ノルド語で「入り江の民」の意)を「悪人」として定義するって問題ないか?特にノルマン人辺りから強烈なクレームが来そうな気がするのだが…………。
それはさておき、トカゲバイキングの目的だが、それは雪が湖にて得た人形の奪取にあった。異形の存在による突然の襲来に怯えるユキの両親を尻目に、ユキを「可愛らしいお嬢ちゃん」、自らを「おじちゃん」と称し、子供をあやす様な応対で人形を寄越すよう迫って来た。市川治氏が声を当てた怪人では珍しい傾向だ。普通こういう対応をする怪人の声は沢りつ夫氏か八代駿氏が多いもんなあ(笑)。
ともあれ、ユキが「はい、どうぞ。」と渡す筈もなく、人形を「私の赤ちゃん」として渡すことを拒否。衣服が直されていたことを見ると、湖中でボロボロだった人形を拾ったのも、母性的なものによるのだろうか?
そんな雪の反応を呵々として笑うトカゲバイキングは、「おじちゃんはね、お嬢ちゃんみたいに可愛い女の子が大好きなのさ。さあ、こっちにおいで。だっこしてあげよう。」と……………台詞だけ聴けばロリコンだな(苦笑)。ますます市川氏の演じるキャラ傾向に合わないのだが、ギャップを狙ったものだろうか?まあ、市川氏もカッコいい系ばかりの声を当てる訳ではないし、怪人はすべからく倒される存在ではあるのだが。
そんな怪しいおじちゃん対応のトカゲバイキングだったが、そんな風に振舞っていてもそこは目的の為に残虐行為も厭わないGOD怪人、ユキを守らんとして突っかかった両親は緑色の粉末状ガスを吹き掛けられると両腕と顔面の一部が緑色の鱗状のものに覆われて行動不能に陥った。ただ、その間に恐怖しながらもユキは管理事務所を脱出。すぐに追うも見失ったトカゲバイキングは、「逃げ足の速い…。」とぼやいていたが、広くもない管理事務室の一角から怪人と二人の戦闘工作員がいながら、子供一人にあっさり逃げられて見失う体たらくで逃げ足の速いも遅いもないと思う(苦笑)。
ともかく、トカゲバイキング達の魔手を逃れたユキは人形を抱いて草むらに気を失っていたのを、翌朝偶然那須を訪れていたチコ・マコに発見され、敬介・藤兵衛と共に宿泊している那須ビューホテルに保護された。
トカゲの怪人に襲われたとあっては、「GODの仕業」を連想するのは自然なことだったが、問題は何故にGODが壊れかけの人形を狙うかだった。ユキはかなり人形に固執しているのを何とか説得して調べた敬介だったが、取り落とした際に人形の中から切羽詰まった女性の声で、南原博士から託された設計図を守って欲しいとの言と悲鳴が再生された。
これによりGODの狙いがこれまで通りのRS装置設計図を追うもので、人形にその秘密が隠されていることが判明したが、そんな事情など知ったこっちゃないとばかりにユキは人形を持って逃げ出してしまった。
ユキは半泣き状態で人形を抱えて両親の身を案じて牧場を掛けていたのだが、当然トカゲバイキングに襲われることが懸念された。実際、トカゲバイキングは馬に乗った戦闘工作員を駆使してユキを襲わんとし、敬介もこれを追って来た。馬を駆って敬介に襲い掛かる二人の戦闘工作員はそこそこ敬介を苦戦させていたが、やはり馬上を初めとする上段からの攻撃は有利と云うことだろうか?(参考文献『暁!!男塾―青年よ大死を抱け―』)
とはいえ、決定打を出すには至らず、敬介もXライダーに大変身すると馬を駆って戦闘工作員達を蹴散らした。
余談だが、大野剣友会では馬術も訓練されているのであろうか?激しいアクションが伴わずとも、乗馬には落馬がつきもので、大河ドラマなどで俳優諸氏に乗馬させて駆けさせるのにはそれなりのリスクが伴うらしい(女優・岩下志麻さんはほんの少し馬に乗って歩かせる程度の乗馬しかしていないのに二度落馬されたことがあるらしい)。
そこを考えると、片手で手綱を掴み、馬上での格闘を見せるスタントマン諸氏の馬術能力はかなり高いものが在ると見受けるが、残念ながら、地上戦程のアクションが為せないので、馬上殺陣は演じる方々の技量の高さが感じにくいのが惜しまれる。
馬上殺陣にて戦闘工作員を蹴散らしたXライダーに、抵抗すればユキを殺すと凄むトカゲバイキングだったが、ユキはあっさりその腕の中から脱出。何か、敬介もトカゲバイキングもユキに逃げられまくりで、両者がしょぼいのか、ユキが逃げ上手なのか………?
ただ、はっきりしているのはトカゲバイキングがしょぼい奴だったと云うことで(苦笑)、Xライダーがユキに逃げるよう促すと(さすがに今度は人形に執着しなかった)、人形を片手に持った状態のXライダーにトカゲバイキングは手も足も出ずにボコられた。
そんな頼りなく且つ、ロリコン趣味の改造人間(苦笑)を上司に持ったせいか、戦闘工作員の方は(馬術の腕に見られたように)多少優秀だったようで、Xとトカゲバイキングが争っている間にチコとマコを鉄塔の上に拘束して人質に取っていた。
当然、トカゲバイキングは二人の娘をたてに人形を渡し、神敬介の姿に戻る様強要してきた。それをXライダーが「卑怯な!」と罵るのをトカゲバイキングは意に介さないどころか、「卑怯なのが俺の取り柄」とほざく始末だった………こいつ、人としてもしょぼいな(嘆息)。
とは云うものの、人質を取られていたままでは抵抗出来ないのが正義のヒーローである。今にも鉄塔から突き落とされそうな状態のチコとマコを前に手も足も出ず、人形は奪われ、Xライダーも拘束された。
人形と敬介の絵柄を得て帰還したトカゲバイキングをキングダークは褒め称えたのだが、その時の台詞が「お前にしては上出来」だったので、コイツ本気で小物である。
キングダークが「神敬介は即座に殺せ。」と命じたのに対し、受諾しつつも、「痛めつけてから殺す。」という、悪の組織必敗パターンを口にしていたから、後々の展開は推して知るべしである(苦笑)。
ともあれ、キングダークはRS装置設計図を求めて、トカゲバイキングに人形を差し出すよう命じたのだが、人形の中は空っぽ…………カメレオンファントマのときと同じパターンだが、奪った物の中に設計図が無かったり、設計図が偽物だったりするパターンは呆れるほど多く、さすがにここまで来ると視聴者的もイラっと来るものがあった。
そして視聴者以上にイラつくトカゲバイキングとキングダーク (苦笑)だったが、トカゲバイキングはユキが事前に設計図を抜き取ったと察知して怒り心頭となり、傍らの戦闘工作員の首を斧で刎ねる八つ当りをして………………かかる小物も珍しいな(失笑)。
ともあれ、人形に妙なまでの執着をしていたとはいえ、様々な追撃を躱したり、事前に設計図を抜き取ったりしている辺り、ユキはそれなりに有能で、判断能力に優れている様で、設計図を持って藤兵衛の元に駆け付けていた。チコとマコの行方を捜していた藤兵衛はユキから彼女達が敬介共々GODに捕まったことを知らされ、設計図を渡された。
こうなると歴戦の参謀立花藤兵衛ならずとも状況把握は容易で、藤兵衛は即座にユキを伴って敬介達を助けに向かった。一方で、トカゲバイキング達も設計図の手掛かりを求めてユキを追っていたから、双方の遭遇は時間問題だった。
藤兵衛のジープはエンジンに大量のトカゲを放り込まれて故障停車。緑煙を伴って現れたトカゲバイキングに「丁度いい。敬介の元に案内してもらおう。」と応対する藤兵衛の胆力はさすがである。
それに対して「連れって行ってやろう。」としたトカゲバイキングは当然の様にユキを取り押さえて設計図を差し出す様求め、シラを切る藤兵衛を戦闘工作員達に襲わせた。
その頃、チコとマコは縄で縛られ、足元だけを土に埋めた状態で拘束されていた。一方の敬介は益子焼の製造直売所に連行され………ご当地名物のアピールだな(笑)。
とにかく、敬介陣営の全員が危機的状況にあった。第6話でもそうだったが、神敬介の状態で鎖にて戒められると引き千切ることも叶わなかった。トカゲバイキングは先に捕らえていた藤兵衛に一目会わせると敬介を窯に放り込んで焼き殺さんとした。
直後に藤兵衛とユ子もチコ・マコの元に連行され、四人は目隠しされたところに、バリスタ(投石器)にて放り込まれる火炎弾で焼き殺すと云う酷刑に直面した。
絶体絶命の大ピンチだったが、例によってGODの構成員に、「捕らえて処刑に掛けた神敬介の死亡を確認する」という思考は今回も無かった(苦笑)。
敬介は窯内の火で両腕を拘束する鎖を溶かすことで引き千切るのに成功。焼き物用の火炎で金属製の鎖が説かせるか?鎖の前に体が耐えられるか?ツッコミたいところは多々あるが、ともあれ、敬介はXライダーに大変身し、クルーザーにて今まさに処刑されんとしていた藤兵衛達の元に駆け付けた。
生きていたことに驚くトカゲバイキングに、「よくも人を嬲り物にしてくれたな。この御礼は必ずするぞ。」とヒーローにしては珍しい復讐心を露わにする仮面ライダーX。さすがにトカゲバイキングの狡く、えげつないやり方は腹に据えかねていたと見える。何せ、四人を処刑する為のバリスタを戦闘工作員に放っていた程だったのだから。
こうなると元々戦闘に自信を持っていなかったのか、戦闘工作員にXライダー抹殺を命じていたトカゲバイキングは戦闘工作員の全滅に前後してその場を遁走。藤兵衛の目隠しと拘束を解いたXは彼に残る三人の解放を託すとクルーザーにてトカゲバイキングを追った。
その後、トカゲバイキングは逃げの一手だった。乗っていたジープをクルーザーに追いかけられ、もっと急げと運転していた戦闘工作員を小突き、実際にジープ内に乗り込まれると車を捨ててひたすらに逃げに逃げ、追いつかれた際には止む無く応戦したが、完全に敵ではなかった。
斧も楯も弾き飛ばされ、自分の斧を投げ付けられたことで右腕を斬り落とされ、完全に戦意喪失したところでXライダーの目が赤く光り、背後に爆煙が上がると空中地獄車(真空地獄車の派生技。要は空中回転を多用して破壊力を増したXキック)は放ち、トカゲバイキングは敢え無く戦死したのだった。
トカゲバイキング戦死により、ユキの両親は当然の様に元の体に戻り(笑)、ユキと再会した。一方で、アジト内のキングダークは怪人達の不甲斐なさを憤り、自分が動くしかないのかと呟きながら、その巨体を振るわせ、立ち上がりそうな雰囲気だ背を見せ……………サブタイトルと少し乖離してない?
かくして第31話は終結した。しかし、この話、トカゲバイキングのしょぼさ以上に不服だったのは、6枚目のRS装置設計図に関してである。人形の中から取り出したことで6枚目もXライダー陣営に帰したと推測するのは容易だが、南原博士がどういう関係者に託したのか?
託された者がどういう判断で人形の中に隠して第三者に託したのか?
設計図を画した人形が如何にして那須りんどう湖に沈められたのか?
GODは何を手掛かりに那須までそれを追って来れたのか?
RS装置の恐ろしさや、重要性、作品後半ストーリーそのものの骨格を担っていることを考えれば、もう少しその辺りは重んじて欲しい。トカゲバイキングの小物振りは小物振りで市川氏の声とのギャップが面白かったと云えば、面白かったので(笑)。
第31話終了時点の設計図所在
仮面ライダーX陣営:6枚
悪人軍団陣営:1枚
所在不明:2枚
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令和五(2023)年六月一四日 最終更新