仮面ライダーX全話解説

第4話 ゴッド恐怖の影!!

脚本:伊上勝
監督:内田一作
蛇女メドゥサ登場

 冒頭、場面は地下アジトの様な場所で、そこにGOD総司令に召喚された蛇女メドゥサがいた。牛の様な置物から発せられるGOD総司令から出番が来たことを知らされたメドゥサは生贄の血を求め、柱に裸で縛り付けられた男(中屋敷鉄也)の血を吸うと、「石になれ!」と叫び、額の単眼が明滅するとすでに死んでいた男は岩の塊と化した。
 メドゥサはギリシャ神話に登場するモンスターの中でも一、二を争うほど有名で、石化能力を持つモンスターの中にあっても、バジリスクやコカトリスより遥かに有名である。ただ、石化も、伝説にあるような石像化ではなく、ただの岩塊に変えるもので、少しネタ晴らしをするとその後この能力は発揮されなかった。
 生贄に対しても通常の数十倍のパワーアップを為す吸血行為の方が重要で、岩塊に変えるのは只の自己満足にしか見えなかった。40年以上後に『仮面ライダーウィザード』に登場した敵役レギュラー・メデューサも格別石化能力を駆使する訳でもなかった。もう少し原点が持つ恐ろしさを踏襲してくれても良かったのではないだろうか?

 場面は変わってとある遊園地。
 そこに全身黒尽くめで、足首に蛇を巻いた怪しい女が現れた。女=メドゥサが観覧車に乗るとそこには張子の虎があって、GOD総司令からの命令が今度は具体的に伝えられた。それは木暮博士が発明したαガスの製造方法を奪取することだった。
 αガスには日本中の人間を狂い死にさせるほどの強力な毒性があるとのことで、その手段として博士の一人娘・冴子を誘拐するよう命じた。

 その狙われた木暮冴子を演じていたのは特撮子役の常連・斉藤浩子さん。ただ、仮面ライダーシリーズではこれが最後の出番だったのだが、やはり存在感は際立っている。
 その冴子をGODは場内アナウンスで裏門に呼び出し、黒尽くめでボルサリーノ帽、トレンチコート、サングラス、マスクの二人組がクルマに乗せて拉致。単純なシーンだが、初出のBGM・「ゴッドのマーチ」がなかなかに不気味さをクローズアップしていた。残念ながらこの曲が作中にてフルコーラスされることは無かったのが惜しまれる。

 ともあれ車に連れ込まれた冴子だったが、そこへ偶然神敬介が現れ、ワゴン車にしがみつき、振り落とさんとする運転にも負けず、車中に乗り込んだ。これを見て拉致犯はあっさり撤収。
 安堵しつつ、まだ衝撃冷めやらぬ冴子に何故GODに狙われたのかを問うと、冴子は最前怪しい男達に云われた、父への人質に狙われた旨を述べた。冴子の父の名は木暮誠一郎………………おいっ!『仮面ライダー』でアンチ・ショッカー同盟のリーダーを演じていた「木暮精一郎」と同姓同名やんけ!!(←漢字は違うけど)
 いくら単発キャラでも、あのような存在感あるキャラで使った名前を(恐らく忘れていたと思うが)再度使うのは戴けんよなあ…………。
 ともあれ、木暮博士は有名な医学博士で、それを知った敬介はまだ10代前半の冴子にも敬語になっていた。やはり「博士の息子」故に権威に弱いのか?(苦笑)

 ともかく、敬介はGODのワゴン車を運転して冴子の自宅である木暮研究所に送っていったのだが、蛇に擬態したり、空中から様子をうかがったりしていたメドゥサに云わせると想定の範囲内だったようで、敬介達が研究所に到着するもそこに木暮博士の姿はなく、研究室は襲撃にあったかのような荒らされ振りだった。
 するとそこに呻き声が聞こえ、二人が駆け付けると木暮博士の助手である三浦清美(高毬子)が倒れていた。
 清美の証言によると妙な格好をした男達が博士を襲撃し、自分は殴られて気絶しており、それ以外のことは分からないとのことだった。

 状況から博士が拉致されたことは明白で、父の身を案じて泣き崩れる冴子に、それを励ます敬介だったが、その背後で清美は不自然なまでに無表情だった。そして大方の視聴者が予想したと思うが、清美の正体はメドゥサで、敬介と冴子が別室に移ると一人研究室に戻り、そこでGOD総司令から敬介抹殺命令を受けた。
 その清美が研究室のロッカーをずらすと、そこは監禁室となっており、そこに正に行方を絶っていた木暮博士(守田比呂也)が縛られていた。この段階でまだ清美の正体を知らなかった博士は彼女に解放を懇願したが、清美は介抱して欲しくばαガスの蘇生を白状するよう強要し、意地を張れば冴子の身に害が及ぶことを仄めかして、博士を嘲笑うかのようにメドゥサの正体を現したのだった。
 結局、メドゥサは木暮博士に考える時間を与え、自分はその間にもう一仕事するとして姿を消し、博士の監禁は続いた。

 そのもうひと仕事とは、GOD総司令から命ぜられた神敬介抹殺で、爆弾を研究室に使用するよう同で敬介と冴子を引き離すと、催眠術で冴子に幽霊化した父の幻影を見せ、博士が敬介に殺されたと偽り、冴子に恨みを晴らすよう促した。
 術に掛かった冴子の立ち居振る舞いは意思をなくした人間のそれで、父の指示に従うとしてレイピア(洋式細剣)を手にしたのだった(←子供の手の届くところにそんなもの置いておくな、木暮博士)。

 勿論、いくら武器を手にしたとはいえ、10代前半の女の子の撃剣が敬介に通じる筈もなく、冴子の攻撃は躱され、催眠術もあっさり解かれた。だが、メドゥサ一味の陽動は続き、怪しい人影を追って屋外に出た敬介は戦闘工作員と大立ち回りを演じ、Xライダーに変身してメドゥサと対峙した際に清美の正体であることも判明したのだが、蛇による締め付け攻撃に手間取っている間に別動隊の戦闘工作員に冴子を攫われたのだった。
 すぐにクルーザーで後を追ったXライダーを4台のバイクに乗った戦闘工作員が迎撃したのだが、これが戦闘工作員にしては珍しく功を奏し(笑)、メドゥサが木暮父娘を監禁し、罠(リモコン爆弾で二人を助けに来たXライダーを爆殺するもの)を仕掛ける為の時間稼ぎにはなった。

 程なく、Xライダーは罠の待ち受ける場にやって来た。
 涼子がそれを報告に来ると、メドゥサは父娘を監禁していた場所を「役に立つ」としながらもXライダーの道連れに壊すなら良しとしていたが、そこで涼子は年端も行かぬ冴子の犠牲に対して、それをGODのやり方として受け入れつつも、かすかな逡巡を見せると云う意外な一面を垣間見せていた。
 程なく、偽の冴子の声に誘導されたXライダーが取り縋る戦闘工作員達を振り払いつつ近付いてきたのだが、最後の仕掛けを施さんとしたメドゥサが見たのは、冴子の縄を切って解放しようとしている涼子の姿だった。
 勿論勝手なことをするなとばかりにこれを咎めたメドゥサだったが、涼子の云い分はXライダー抹殺の命令には従うが、子供の犠牲までは命じられていないとして、メドゥサの制止命令にも従わなかった。
GODの一員として、命令された任務は遂行するが、手段や命令外のことに関しては自分の思い通りにやると云う信念の表れのようだったが、メドゥサはこれを許さず、「GODの名の下に処刑する」と宣して涼子に蛇を投げ付けると、これに首を絞められた涼子は倒れ込むようにして隣室に姿を消した。

 助かりかけた冴子を嘲笑う様に彼女の猿轡と外し、泣き叫べと嘲笑したメドゥサだったが、この底意地悪さが仇となり、冴子は時限爆弾の存在をXライダーに叫んで知らせ、救出を急いだXライダーは冴子の助言に従って壁の薄い部分を破壊して虎口を脱したのだった。
 爆破された洋館を見たメドゥサがほくそ笑む間もなくXライダーはその雄姿を現し、ライドルスティックを振るって戦闘工作員を蹴散らすとメドゥサとの白兵戦に持ち込んだ。だが、程なくメドゥサは逃げの一手で、戦闘工作員の運転するサイドカーで逃げるもクルーザーアタックで車外に放出され、空を飛んで逃げんとするもXライダーは何の説明もなく飛んでこれを追撃(笑)
 相変わらず蛇を投げ付けて妨害するも通じず、大地に落とされたメドゥサにXライダーは(大車輪を伴わない)Xキックを炸裂して勝負を決めた。
 「奥の手だ……。」として額の目でXライダーを石化せんとしたメドゥサだったが、それも躱され、「避けたな……エネルギーが無い!!」と妙なまでに自身の状況を懇切丁寧に伝えて地面に倒れ伏すとそのまま爆死したのだった。

 かくして勝利を得たXライダーだったが、そのままクルーザーでその場を走り去る形でストーリーは終わり、木暮父娘のその後や、αガスに対する事後処理、涼子の安否などに全く触れないまま、背景的には消化不良で第4話は終結したのだった。


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令和五(2023)年六月一四日 最終更新