仮面ライダーX全話解説

第5話 一つ目怪人の人さらい作戦!

脚本:鈴木生朗
監督:田口勝彦
キクロプス登場

 これまで、「仮面ライダー」というキーワード以外には前作世界との繋がりを感じさせなかった本作がいよいよこの第5話をもって、同一世界であることが明らかにされた。そう、第一期シリーズにおけるライダー達の師父・立花藤兵衛(小林昭二)の登場である。
 冒頭、一分も経たない内に藤兵衛は登場し、バイクで自分を抜いて走り去った敬介を見て、「なかなかいい腕だな。」とお約束の呟きを為していた。

 そしてその通路と交差する別の通路ではみどり幼稚園なる幼稚園の通園バスが園児を満載して通園せんとしていたのだが、バスを運転していたのは中田“ゼロ大帝”博久(笑)。この瞬間、サブタイトルからも園児達にGODの魔手が迫るのが誰の目にも見えてしまう(笑)。
 それにしても、第3話で浜田晃氏をゲスト出演させ、第5話で中田氏をゲスト出演させているのだから、制作陣も気合が入っている………。中田氏は『仮面ライダー』第24話・第25話の小池助手、『仮面ライダーV3』第15話のバーナーコウモリ人間態に続いてライダー作品三度目にして三作連続出演となる。
 案の定、バスはいつもと違う道を走り、偶然すれ違った藤兵衛が訝しがっていたように、山中のトンネルに入り、そこで悲鳴を上げた園児達はトンネルを抜ける頃にはすっかりその姿を消していた。車内にいたのは不気味に笑う運転手だけだった。

 バスを降りた運転手は道端の祠の前に立つと、御丁寧にも脱帽してGOD総司令の指令を受けた。そしてGOD総司令の台詞から、運転手が一つ目怪人キクロプスの人間態であることが明かされ、子供達をこの調子で攫い続け、子供を持つ親たちを恐怖に陥れることを命じた。
 指令を受けたキクロプスはその姿を怪人態に変じ、「一つ目レーザー」なる怪光線を単眼から発して、バスを消滅させ、「俺は一つ目怪人キクロプスだ!」と名乗っていたが、誰もいない山道でこの行為、この名乗りに意味はあったのだろうか?(苦笑)

 場面は変わってCOLという喫茶店前。
 そこをバイクで通りかかった敬介は店内から流れてくるラジオ放送が園児蒸発事件を報じているのを聞きつけ、店の前にバイクを止めた。ラジオを聞いていたのは『仮面ライダー』初期以来喫茶店のマスターに復帰した藤兵衛で、店内に入った敬介は「もしもし」と云って、軽く肩を叩いたのだが、それは藤兵衛にかなりの痛みを与えた。どうやらカイゾーグになって以来一般市民と殆んど触れ合いの無かった敬介は力の加減をまだ分かっていなかった様で、改造直後のお約束をこんなところで発揮したのだった。

 ともあれ、痛みに呻きながら敬介が何者かを訝しがる藤兵衛だったが、これに対して敬介はラジオ放送ではなく、藤兵衛の呟きが気になって入ってきたと返した。だが、藤兵衛の呟きが店外まで聞こえたと云う敬介の台詞は藤兵衛を怪しませただけだった(ラジオ放送を聞いてと云ったとしても、藤兵衛はイヤホンで聞いていたので、やはり怪しまれただろう)。
 苦笑いしながら、「俺の耳は人一倍よく聞こえる。」と述べた敬介(←嘘ではない)だったが、藤兵衛はますます怪しみ、「お前、まさか、デストロンの改造人間じゃないだろうな!?」と返した。まあ、この時点で藤兵衛はまだGODの存在を知らないから、台詞としてはおかしくないのだが、どうしても本作が前作からの続編であることを述べているように聞こえてしまう(笑)。  勿論敬介はデストロンを知らないから、「何ですかそれ?」となるのだが、結局敬介を怪しむ藤兵衛は「急用を思い出したから店じまいだ!」として敬介を追い出してしまった。

 デストロンは壊滅したとなると、一体何者が園児達を攫ったのか?身近に仮面ライダーがいないとはいえ、じっとしていられる立花藤兵衛ではなかった。単身バイクを走らせ、行方を絶ったバスとすれ違った地点にやって来たのだが、そこにまた園児達を載せたバスが藤兵衛を追い抜いて行った。
 そしてこのバスも先のバス同様、トンネルに入るや園児達の悲鳴が上がった。

 この悲鳴は藤兵衛の耳にも入っており、藤兵衛がトンネル前に駆け付けるや、中からは助けを求める女性が飛び出してきたのだが、これが水城涼子。視聴者は状況から彼女がろくでもないことを企んでいるであろうことが想像つくのだが、勿論この時点の藤兵衛は涼子を知らない。
 涼子からトンネル内で事故が起きたので、救助の手を貸して欲しいと云われては、最前に大勢の悲鳴を聞いていたこともあり、藤兵衛は一も二もなくトンネル内に立ち入らんとしたが、そこに敬介が駆け付けて止めに入った。

 思わぬ再会に驚く藤兵衛の前でいまだ涼子の真意を図りかねて詰問する敬介だったが、涼子から突き付けられたのは拳銃の銃口だった。これを見て咄嗟に藤兵衛を庇う敬介に三発の弾丸を発するや涼子はトンネル内に逃走。それを追う敬介の前に入れ替わるように立ちはだかったのはキクロプスだった。
 約一ヶ月振りに見る悪の改造人間に驚く藤兵衛と敬介にキクロプスはその名を名乗り、ナレーションもキクロプス(英語読みの「サイクロプス」という呼称の方が有名だろうか)がギリシャ神話に登場する人間を食う不死身の怪物であることを述べた。うん、最初に園児を攫った直後の独り言的自己紹介は全く必要なかったな(笑)。

 ともあれ、キクロプスは戦闘工作員達に攻撃を命じ、大立回りが演じられたのだが、まだ藤兵衛を歴代悪の組織と戦ってきた硬骨漢と知らない敬介は戦闘工作員を蹴散らしつつも、藤兵衛を逃がす方向で動いていた。
 だが、庇いながら、戦いながら、逃げると云うのはなかなか難しく、戦闘工作員は二人を包囲し、キクロプスも崖上から襲い掛かって来た。その際、一つ目レーザーが誤爆して戦闘工作員の一人を殺害してしまった。番組や組織や呼び方が変わっても、名も無き雑兵を襲う運命やお約束は変わらないのね(苦笑)。

 事ここに至って敬介はXライダーにセタップし、ライドルスティックを抜いて応戦態勢に入った。かつて接してきた教え子達とは全く異なる容姿であっても、「仮面ライダー」との名乗りに驚愕と懐かしさに囚われた藤兵衛は恍惚状態になり、あっさりと戦闘工作員に鉾槍で殴られ、崖下に転落する始末だった。
 これを見たXライダーはキクロプス迎撃よりも藤兵衛救出を優先。崖下で意識朦朧状態だった藤兵衛が意識を取り戻したのはCOLでのことで、そこには彼を助けた霧子がいた。  勿論、藤兵衛は霧子を初めてみたので、彼女が最前自分を嵌めようとした女と見紛うと訳だが、これは即座に敬介が釈明した。だが、霧子もまた涼子同様敬介の詰問に対して自らの事は答えず、自分が敵ではないことと、先のトンネル地下に少年少女が監禁されていることだけを告げた。
 脇で話を聞いていた藤兵衛がGODとは何なのかを訪ねている間に霧子は姿を消してしまい、敬介はそれを追わんとしたが、霧子以上に敬介が何者なのかを知りたがる藤兵衛がこれを止めた。
 藤兵衛にとって、最も気に掛かったのは、敬介が「仮面ライダー」を名乗っていたことで、「君は仮面ライダーなのか?」と尋ねた藤兵衛は返事を待たずに自分が元少年ライダー隊の会長で、仮面ライダー1号、2号、V3、そしてライダーマンだった4号も知っていると述べた。
 だが、敬介が変身した姿はその四人の誰とも異なり、そんな敬介が何者かを改めて問うた。

 これに対して敬介は自分がたった一人の肉親だった父と共にGOD機関に殺され、瀕死の父の手で改造手術を受けて蘇生した者で、またの名を「仮面ライダーX」であることを話した。
 片や長く「仮面ライダー」をサポートして悪の組織と戦ってきた者で、片や「仮面ライダー」を名乗りながら孤独に戦ってきた者だった訳だが、同様の戦いを重ねてきた両者にはそれ以上の言葉は不要であるかを示すように、藤兵衛は笑顔で右手を差し出し、敬介も笑顔でその手を握り返し、ここに立花藤兵衛と仮面ライダーによる五例目の師弟関係が成立したのだった(「四例目」とする人も多いと思うが)。

 Bパートに入ると、靴磨きに扮してCOLの前に張り込むキクロプスの足元に転がってきたサッカーボールからGOD総司令の指示が発せられた。GOD総司令は神敬介と立花藤兵衛が介入すると厄介だとして、α作戦を急ぐよう指示してきた。
 今回の作戦に対して通りすがりの一般ピープルの域を出ない藤兵衛の存在を知り、キクロプスに対して二人の迎撃や殺害ではなく、介入される前に作戦を仕上げることを命じていたのを見ると、成立過程は凝っていても、GODもやはり歴代悪の組織の息が掛かっている片鱗が伺えるのだった。

 ともあれ、地下基地に戻ったキクロプスは拉致・監禁してきた少年少女を冷凍ガスで氷漬けにした。拉致目的はGODが日本を壊滅させた後に解凍して奴隷としてこき使うことにあり、「世界征服」よりも「日本壊滅」に主眼を置くGODらしい目的ではあった。
 ただ、何時成立するか分からないGODの日本壊滅・征服まで冷凍保存する為のエネルギー消費を考えると、これって効率良いやり方なのか疑問は残る(笑)

 ともあれ、冷凍した子供達を移動させようとしていたところを見ると、キクロプスGOD総司令の指示通り、敬介・藤兵衛の妨害が入る前に現時点における戦果だけでも確保しようとしていたのかもしれない。ただ、二人の手は既に間近にまで及んでいた。
 アジト内の防犯カメラがトンネルに近付くトラックの姿を捉えていたのだが、咥え煙草で鼻歌を歌いながらトラックを転がす運転手はバンダナ、眼帯を纏い、顔面を髭で覆っていても藤兵衛であることが視聴者には丸分かりだった(笑)。
 恐らく、キクロプス側でもそう睨んでいたのだろう。トラックはトンネルに入るや輪留めに挟まれて身動き出来なくされ、そのまま地下に沈めて拿捕された。勿論戦闘工作員達は既に運転手を拘束したのだが、荷台に潜む敬介は霧子の指示通りの行動を目指して暗躍し始めた。

 自らを取り押さえる戦闘工作員達に訳が分からない様子で狼狽える運転手だったが、その正体はキクロプスには先刻承知で、変装を説くと傍らにいた赤装束の覆面を剥ぎ、その下から現れた素顔=涼子の顔に見覚えが無いかを誰何した。
 涼子の顔に驚く藤兵衛を見て、GOD基地への潜入を「良い度胸」と半ばからかい気味に云い放って嘲笑ったキクロプスは藤兵衛も冷凍室に連行して冷凍するよう命じたが、その間に敬介による破壊活動・救出作業は充分に為されており、その旨を伝える緊急警報がアジト内にアナウンスされた。
 戦闘工作員の一人を絞め上げながら再度涼子と対峙した敬介は無表情にキクロプスと並び立つ彼女がGODの一員であることを認めざるを得ないとみて、ついに「それでも君は人間か?!」との罵声まで浴びせた。
 だが、涼子は顔色一つ変えず、眉一つ動かさず、敬介を無視する様に無表情で藤兵衛の監禁された部屋に冷凍ガスを流すスイッチを押したのだった。

 これを見た敬介は即座にXライダーにセタップし、冷凍室の窓を破って藤兵衛を救出すると子供達の救助を託した。そしてライドルスティックを抜いて戦闘工作員達と殺陣を演じながらアジト外に出るとライドル第三の機能・ライドルロープの形態を駆使して鉄骨に巻き付けるとターザンの如きアクションで戦闘工作員達を蹴散らしていった。

 程なく戦闘員は全員叩きのめされ(苦笑)、Xライダーはライドルスティックを鉄骨の上に立つキクロプスに投げ付けるとキクロプスはあっさり転落(苦笑)。ただ、単眼巨人の改造人間だけあって、高所から落ちても平気な顔で立ち上がり、骨型の棍棒を振るってライドルスティックとの打ち合いを展開した。
 格闘は互角に展開し、間合いを置く分には一つ目レーザーを持つキクロプスの方が有利に映る局面もあった(Xライダーの背後にあった鉄塔を跡形もなく消滅させた)が、ライドルスティックを単眼に投げ付けられると一気に不利に転じ、Xキックを食らうと悶絶してのたうち回りながら全身を明滅させて消滅したのだった。

 勝利したXライダーの元に藤兵衛と共に救出された少年少女たちが駆け付け、藤兵衛は全員無事救われたことを告げた。
 藤兵衛の尽力感謝するXライダーだったが、藤兵衛が云うには子供達を助けたのは霧子とのことで、その霧子はアジト出口で二人の様子を遠巻きに見ていた。だがその表情は何処か悲しげで、Xライダーがその名を呼ぶ前に既にその場を立ち去って行ったのだった。
 数々の行動から彼女が敵ではなく、協力者であることに疑いはないのだが、それでも肝心なことを一切明かさない言動に釈然としないものを感じつつ、それでも礼を述べる子供達に救出を祝い、一生懸命勉強することを促すのだった。



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令和五(2023)年六月一四日 最終更新