仮面ライダーX全話解説
第3話 暗殺毒ぐも作戦!!
脚本:伊上勝
監督:内田一作
怪力ヘラクレス登場
冒頭、GOD戦闘工作員を追っていた敬介は涼子にライフルで狙撃された。射手が涼子と知ってこれを追う敬介だったが、涼子は銃を乱射して抵抗。更には別の戦闘工作員が銃撃してきたこともあって涼子に逃げられた敬介は、涼子の逃げ込んだプレハブ小屋で見つけた通信装置からGODの動きを掴んだことをほくそ笑んだのだが………………GOD総司令が発した台詞は「コールナンバー4、羽田空港13時」だけだった。一体、これでGODの作戦をどうつかんだと喜べたのやら(苦笑)。
しかも時計を見れば、13時まで後5分しかなかった。喜んでいる暇もないよな(苦笑)。
場面は変わってその羽田空港。
空港からはタキシード、蝶ネクタイで胸に赤いバラを差した一人の男(浜田晃)が出て来た。勿論シルバータイタンを名乗る身としては、浜田氏を見てにんまりしない訳が無い(笑)。
勿論、『仮面ライダーX』は『仮面ライダーストロンガー』よりも前の作品で、この時の浜田氏はタイタンを演じる前のもので、Wikipedhiaによると、浜田氏にはこの第3話に客演した時の記憶がないそうである。まあ、半端じゃない番組数に客演しているもんなあ、浜田氏…………。
ともあれ、悪者の貫禄を発散しながら歩く男の後を茶色のスーツを着た男(北条清嗣)が尾行していた。スーツの男はタキシード男がGOD機関の一員であるとの目星をつけて尾行してきたもので、今度こそその証拠を掴まんと静かに息まいていた。
だが、悲しいかな尾行は既に気付かれており、撒かれたと思ったところにその尾行していた相手が現れ、彼がインターポールの捜査官で、アダブ王国から尾行していたことを知っていたことを告げ、「ご苦労なことだ。」と締めて揶揄した。
正体に気付かれていた気付かされたインターポール捜査官・ダボスがGODの連絡員が何の為に日本に来たかを誰何すると、タキシード男は意外にもすんなりその目的を語った。
目的は石油輸出協定を結ぶ為に来日しているアダブ王国のキバラ特使を抹殺すると云うものだった。
『仮面ライダーX』が放映された頃、石油ショックで日本社会が大混乱になりかけた世相を反映してか、石油の丸で出ない国日本(←厳密には新潟沖で僅かに採れるが、年間採掘量で一日分を賄える程も取れないから、国内生産量では話にならなかった)が中東の王国と友好を深め、それを妨害せんとして悪の組織が中東王国の重鎮を狙うと云うフィクションはジャンルを問わず呆れるほど多かった。
ただ、東西の大国同士が密かに手を結んで日本を壊滅させるためのGOD機関を結成したという設定上、GODが掛かる作戦に出るのは、他の作品に比べてかなりリアリティがある方だとは思う。
勿論来日中の国家重鎮が殺されたとあれば、その結果だけで重大な国際問題となる。石油を完全に中東を初めとする海外に依存している日本はありとあらゆる産業やインフラが麻痺することになる。
とんでもない計画をべらべらしゃべったのも、元よりタキシード男がダボスを生きて返さない意志でいたからで、殺意を露わにする男にダボスが拳銃を構えると、男はその正体・GOD神話怪人ヘラクレスの姿を見せた。
尾行してきた相手が連絡員ぐらいとみていたのか、相手が改造人間と知って狼狽えつつも、拳銃を何発も打って抵抗したダボスだったが、ヘラクレスは左手に持つ丸盾を構えもせず、銃撃に平然としており、遂に刺々だらけの棍棒でダボスの頭を一撃すると致命傷を負わせた。
そして虫の息のダボスにサブタイトルに在る様に数匹の毒グモを放つと、毒グモはダボスの体を、衣服を残して消し去ってしまった…………。
かくして尾行者を消して悦に入るヘラクレスだったが、そこに少女(白鳥雅子)の悲鳴が聞こえて来た。当然、これを消しにかかるヘラクレスだったが、そこに敬介が駆け付けて、襲撃を阻止した。うん、これはいつもの「偶然」には入らないな(笑)。
初対面にもかかわらず相手が神敬介であることを知り、棍棒を振るって容赦ない打撃を展開するヘラクレス。だが、意外にあっさり撤収。もしかして緻密派?
ともあれ、病院に収容された少女―小夜子にその母親と共に付き添い、彼女が何故ヘラクレスに襲われたのかを尋ねる敬介だったが、小夜子はヘラクレスが外国の要人を殺そうとしていることは覚えていたが、その名前までは思い出せなかった。
するとそこへ戦闘工作員がライフルで口封じの為に小夜子を狙撃。勿論狙撃は直前に察知した敬介が小夜子を抱えたことで防がれ、逆にその衝撃で小夜子はキバラ特使の名前を思い出した。
完全に藪蛇になってしまった戦闘工作員訓だったが(苦笑)、まあこれは仕方ないよな。しかしGOD戦闘工作員は他の悪の組織の戦闘員に比してよく飛び道具を用いる。アクションには不向きかもしれないが、実際に暴力を用いる悪の組織が銃火器を使用しない筈がなく、リアリティがあってシルバータイタンは好きである。
ともあれ、車で逃走する狙撃手を追う敬介だったが、それを効果の上から巨岩を投げ落としてヘラクレスが妨害してきた。ギリシャ神話での怪力無双の英雄ヘラクレスを重ねた動きなのは明らかだが、敬介がXライダーにセタップして、側近の戦闘工作員二人をライドルホイップで斬り伏せるまでの間、ひたすら巨岩を持ち上げ続けていただけだったのが間抜けだった(苦笑)。
Xライダーはライドルホイップをライドルスティックに変えて継戦し、打ち合いの途中これを奪ったヘラクレスだったが、ライドルスティックはその怪力をもってしても僅かに曲がるだけで、折ることは能わなかった。
その後、打たれ強さや、体格の割に回し蹴りを連打するなどの身のこなしで応戦するも若干不利なヘラクレスは橋の上から宙吊りにされた小夜子母子を指し示して暗にXライダーへの抵抗中止を強要した。
ヘラクレスを捨ておいて橋上に跳んだXライダーだったが、その救出を指咥えて観ている程GODも馬鹿ではなく、ヘラクレスが妨害している間に戦闘工作員がいつでもロープを切れる態勢を取るとさしものXライダーも抵抗する訳にはいかなかった。散々ぱら殴りつけた果てに橋上から川の中に叩き落されたXライダーを見て悦に入るヘラクレスだったが………………詰めが甘いのは云うまでもあるまい(笑)。
少し後のシーンだったが、勿論Xライダーは然程のダメージを受けずに水中から這い上がっていた。
その後、橋から降りようとしたヘラクレスはギリシャ神話に出て来そうな戦士風の置物からキバラ特使が新日本ホテルにいるので誘拐するようとのGOD総司令からの指令を受けたのだが、タイタン………じゃなかった、人間態時にダボスに「新日本ホテルに泊まっているキバラ特使」と云っていたので、所在は把握していた筈だったのだが………ま、いいか(苦笑)。
場面は変わって新日本ホテル。
GOD総司令とヘラクレスの会話を聞いていたのか、それとも引き続き人質とされている小夜子母子が連行されるのを尾行してきたのか、敬介はそこにやって来た。
ただ手掛かりを求めてどうしたものかと思案しているところにホテル茶店のウェイトレスに変装していた霧子が敬介に油断しない様促してきたのだが、具体的な証言は無く、自分やGODの事を知る彼女が何者かを問うても、「今はまだ何も云えません。」と云って去るだけだった。
そうこうする内にカウンターにタイタン………じゃなかった、ヘラクレス人間態が現れ(←いい加減しつこいかな(苦笑))、受付(中屋敷鉄也)にキバラ特使が浜離宮にいることを聞き出し、敬介もそれを窺っていた。しかし、海外からの要人の居所を見るからに怪しい風貌の男にあっさりしゃべる者なのかな(苦笑)。
当然場面は浜離宮に移る。
4人のSPに守られたキバラ特使(山岡徹也)に近付いたヘラクレス人間態はキバラ特使の身柄を預かると宣言。何の為に?と問う特使にヘラクレス人間態が答えたのは、その身柄を預かることで日本に一滴の石油も入らないようにするとのことだった。「一滴も」って、日本が石油を輸入している国は数多いんだが………(苦笑)。
そんなことになれば大変な事態になると狼狽える特使だったが、「もう断れない。」と下卑た笑いを浮かべるヘラクレス人間態の反対側で、SPの姿はGOD戦闘工作員に変じていた。道理で怪しい人物が特使に近付くのを黙視していた訳だ(苦笑)。
かくして特使は抵抗らしい抵抗もせず連行されたキバラ特使だったが、その様子を灌木の陰から見ていた人物がいて、それは何とキバラ特使御本人。カウンターでの会話を聞いてからSPに化けた戦闘工作員に気付かれないまま敬介がすり替わっていたのだとしたら恐るべき早業である(笑)。
だがGODもさる者、別動隊が特使を捕らえ、それを、鏡を用いた合図で船の上で偽キバラ特使と対峙するヘラクレスに知らせて来た。それが何の合図かと問う偽キバラ特使の声は既に敬介のそれだった(笑)。
ヘラクレスが合図の意味を説き、眼前にいる者の正体が神敬介であることを指摘すると、バレちゃあ仕方ない的に敬介はその素顔を出し、両者は三度対峙した。直後、正体を見せたヘラクレスに、敬介は「貴様、ヘラクレス…。」と云っており、初めて正体を知った風だったが、目の当たりにしたのが初めてだったと仮定しても、それぐらい察せなかったものかな?まあ、当時はシナリオ細部がそこまで整合性つくよう徹底されていなかったのだろう。
そして格闘となったのだが、狭い船中で間合いを取れなかったのが災いしたものか敬介はセタップ出来ないまま人間態でヘラクレスと対峙するも忽ち船縁に追い込まれ、棍棒の連打を受けた挙句、川中に蹴り落とされた。それを見て悦に入るヘラクレス…………学習能力無さ過ぎるだろう、おい!!(苦笑)
案の定、敬介はすぐに河岸に這い上がっていた。
良き絶え絶えながらもここでくたばる訳にはいかないと自身を叱咤する敬介は事前に本物のキバラ特使に渡していた発信機の電波を追った。
そしてその頃、キバラ特使は自動車のスクラップ場に連行されていた。ヘラクレスはそこが「貴方の墓場になる。」とほくそ笑んでいた。ストーリーに関係ないが、ヘラクレスは特使を終始「貴方」と云う二人称で、紳士的に話していた(←云っている内容は乱暴極まりなかったのだが)。見方によっては取引相手とする海外要人への敬意と思われるが、云っている態度とやっていることの粗暴さのギャップが笑える。
ヘラクレスの声を当てていたのは沢りつ夫氏だが、沢氏の声を当てる怪人って、基本的に粗野な者が多いが、たまに出て来る慇懃無礼タイプが良い味を出している(笑)。
ともあれ、自分への殺意を仄めかすヘラクレスに対し、日本社会への悪影響を懸念するキバラ特使はかなりの親日家のようで、日本を滅ぼすマネは出来ないとするが、勿論そんな訴えに耳を貸すヘラクレスではなく、戦闘工作員に死刑執行の準備をさせつつ、特使には死にたくなければGODに協力するよう強要した。
まあ、日本社会への石油流入停止を図るだけなら必ずしもキバラ特使を殺さなければいけない訳ではない。その身柄を確保し、「来日中に行方不明」という事実を成すだけで日本にとっては充分国際問題で、場合によってはその身柄を確保し続ける方が日本政府に対しても、アダブ王国に対しても交渉の切り札に使える。
どうもヘラクレスも脅して従わせるのが目的のようで、廃車を鉄塊に変えてしまうスクラップ機に人体を掛けると云う残酷な死刑執行方法を示し、しかもその対象が小夜子母子だったのだから、特使を殺すのはどうしても服従しない場合なのだろう。
いずれにせよ、残酷な方法で人が殺されようとしているのを黙って見過ごせないキバラ特使は良い人だった。「あの親子に何の罪があるのだ?」と食って掛かったのだが、それに対するヘラクレスの答えが、「罪?罪は貴方にある。」だったから恐れ入る。
要は、意図している・していないに関わらず、日本の利益に与する行動をとること自体がGODへの反逆と云いたいのだろう。
そしてとうとうスクラップ機が発動させられ、廃車の中で泣き叫ぶ母子を見て居た堪れなくなったキバラ特使はヘラクレスに要求を呑むからやめてくれと懇願したが、ここまで来るとスイッチの入った残忍さに歯止めがかからないものか、ヘラクレスは高笑いするだけだった。
だが、そこへ要求を呑んではいけないとする敬介の声が響き渡った。敬介の声は廃車の山に反響しているようで、その所在がつかめず、苛立ったヘラクレスは「卑怯者!」と叫ぶのだが、どの口が云っているのやら(苦笑)。
程なく、高所に姿を現し、その迎撃を人質も忘れて(笑)命じるヘラクレスは余りオツムが強くないようで、戦闘工作員共々あっさり、クルーザーを走らせる陽動に引っ掛かった。
それを見て即座に見知らぬ母子を助けにスクラップ機に駆け寄るキバラ特使良い人過ぎ。そして即座にXライダーも駆け付けて二人を救出すると特使に三人で逃げるよう促した。ヘラクレス達、とんでもない撒かれっぷりだな(苦笑)。
ともあれ、人質と云う懸念材料が消えた今、Xライダーに遠慮は無かった。ライドルスティックを駆使して戦闘工作員と大立ち回りを演じ、遅れてやって来たヘラクレスは棍棒以外にも廃車やタイヤを投げ付けて怪力を活かした応戦を展開した。
だが、タイヤを輪投げの如く投げ入れて相手の動きを封じると云うユニークなのか、稚拙なのかよく分からない戦法はあっさりXライダーに弾かれ、しばしの大立ち回りを演じた後、Xキックが炸裂した。
必殺技を受けて廃車に倒れ込んだヘラクレスは爆死せず、突如その姿を消した。訝しがりつつ周囲を見渡したXライダーだったが、すぐに二発目のXキックを廃車に向かって放った。
するとそこに致命傷を負って息絶え絶えのヘラクレスが姿を現し、何故に自分の位置が分かったのかを問うた。Xライダーは最初のXキックを受けた際にヘラクレスが体を廃車にバウンドさせ逆方向に跳ぶことで目の錯覚をもたらしたが、それは自分に通じないことを解説した。
二発のXキックを受けてはタフネスを誇るヘラクレスも自らの最期を認識せざるを得ず、「貴様を甘く見た俺の負けだ。だが必ずGODは貴様を倒すぞ。ヘラクレスの剣を受けて見よ!」と叫ぶとグラディウス(剣闘士用小剣)を抜いて刺突に掛かったが、瀕死の状態が祟ったものかあっさり躱されて仰向けに倒れると、「俺の死に様を見よ!!」と叫び、口腔より大量の泡を吐いて、全身が泡に包まれると爆死した。
かくして第3話は終結。キバラ特使や母子が改めて礼を云うシーンや、日本への石油輸入が守られたこと言及が欲しかったが、さすがに20数分の時間枠では無理だったかな?
ともあれ、GOD第3の刺客にして、本話の敵役であるヘラクレスは、浜田晃氏が人間態を演じたことへの贔屓もあるが、怪力を振るいつつ所々で頭も使っており(浅知恵だったが(苦笑))、自らの技が敗れたことの原因を求めたり、潔さと執念深さを併存させたり、と様々な面を見せていたことが好きなキャラクターで、過去作『菜根版怪人戯文』で「密命の巨人」という二つ名を与えて、シルバータイタンなりの紹介を行っているので、こちらも見て頂ければ幸いである。
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令和五(2023)年六月一四日 最終更新