仮面ライダーX全話解説

第6話 日本列島ズタズタ作戦!

脚本:鈴木生朗
監督:田口勝彦
牛男ミノタウロス登場

 冒頭、鬼神崎と云う海岸近くの断崖絶壁周辺で戦闘工作員達が爆薬を運んでいたのだが、その中の一人がガードレールに蹴躓いて爆薬を地面に取り落とすと云うドジをやらかした。
 それだけで終われば、「戦闘員はやっぱり戦闘員」と云う笑い話で終わるところなのだが、落とされた爆薬は爆発してしまい、運悪く通りかかったバスがそれに巻き込まれて断崖下に転落し、運転手乗客の全員が死亡する大惨事となってしまった………正義と悪の戦いが描かれる以上、時には悲惨な多くの犠牲が描かれることも必要だろうけれど、戦闘工作員の通常活動よりもドジなやらかしの方が多くの犠牲を出したかと思うと何処か遣り切れない

 次の場面では工事現場監督風の男(滝波錦司)が事故を新聞で読んでいたのだが、彼の周囲では戦闘工作員が爆薬を運んでおり、記事を読み、笑うその姿は同じ作戦に従事していた仲間の過失を嘲笑っているようだった。
 その現場監督の正体は牛男ミノタウロスで、カラーコーンを媒体に発せられたGOD総司令の指令が、その名前と、ミッション内容―武器・弾薬をばら撒くことで日本中に大内乱を起こす―と云うものが視聴者にも伝えられた。「内乱」と云うのまた日本と云う国家を標的にしているGODらしさが現れている。

 その頃、事故現場を(恐らくは調査で)訪れた敬介は、両親を呼ぶ一人の少女・木村サチコ(高安真弓)が断崖の上から足を滑らせて転落したのを目撃し、Xライダーに変身してこれを助けた。
 年端も行かぬ少女(推定で小学生低学年)がたった一人で目も眩むような断崖絶壁の上にいたことを訝しがる敬介だったが、サチコが云うには、一昨日のバス事故で両親は共に命を落とし、彼女は天涯孤独になっていたとのことで、たまたま居合わせただけの敬介に取り縋って泣く彼女に敬介も居た堪れない気持ちに囚われるのだった。

 場面は変わってCOL。敬介はサチコを連れて藤兵衛に紹介し、彼女を襲った不幸を聞いた藤兵衛は彼女の面倒を見ると断言した。藤兵衛はサチコに、自分にはサチコと同じぐらいの年代の知り合い(旧少年ライダー隊員達かな?)が沢山いるからすぐに仲間が出来て寂しくなくなることや、敬介も父親を亡くしたばかりでも明るく元気に日々を送っていることを述べてサチコを励ました。
 そうしてサチコを励ましつつ、面倒を見る敬介と藤兵衛は案の定バス事故をGODの仕業と見ていた。ただ、事故はある意味GODにとっても「事故」で、「仕業」ではないから、その為か事故現場から手掛かりがつかめないことに敬介も焦りを覚えていた。
 しかし、本当に事故だったり、別のテロ組織により仕業だったり、と云うことを考えないものかな、この人達(笑)。まあ平成7(1995)年に地下鉄サリン事件が起きた直後はチョット奇怪な事件は日本中が、「これもオウムの仕業か!?」との疑念を真っ先に抱いていたから、敬介達の思考パターンも分からないではない。実際GOD絡みなのはいつもだし(苦笑)。

 ともあれ、次の瞬間、敬介は店内を窺う人影に気付き、サチコを藤兵衛に託すとこれを追って店外に出た。冷笑を浮かべながら車に乗って逃げるその人物―涼子をバイクで負う敬介だったが、津久井町のトンネルを出たところで追跡を妨害する様に落石と戦闘工作員が襲ってきた。事故とGODとの絡みを敬介は掴みあぐねていたことを鑑みると、完全な藪蛇襲撃だな(苦笑)。

 勿論何人で掛かって来ても、変身前の素手でも敬介が戦闘工作員に後れを取ることは無いのだが、程なく敬介はXライダーにセタップし、ライドルホイップを抜いて大立ち回りを演じ始めた。まだ数話しか経過していないが、まだ怪人が現れない内からセタップすることが多く、意外と敬介は短気で、即座に戦闘工作員達を蹴散らしたがっているように見える気がする。
 ともあれ、程なく戦闘工作員達を蹴散らしたXライダーは追撃を再開。直前まで涼子は(相変わらず意味不明な冷笑を浮かべて)現場に留まっていて、戦闘工作員達の迎撃を冷笑以上に意味のないものにしていた(苦笑)。

 やがてXは最前ミノタウロスが潜んでいたプレハブ近くにて涼子の車に追いついたのだが、車内に涼子の姿はなく、一大のブルドーザーが襲ってきた。Xライダーがそれを避けんとすると例の現場監督(=ミノタウロスの人間体)が立ちはだかり、何者か?との誰何にその名を名乗って正体を現した。
 そうこうする内に側面からはブルドーザーが迫り、それを躱さんとすると前面小山の上からはミノタウロスがモチーフとなったモンスター同様の怪力を発揮して大岩を投げ付けてきたことでXライダーの右足がその下敷きになり、Xはその場を動けなくなってしまった。
 何とかライドルスティックを運転手(勿論戦闘工作員)に投げ付けることで進路を狂わして難を逃れたXライダーは追い打ちをかける様に襲い掛かって来たミノタウロスとの格闘に入ったのだが、格闘となるとXライダーの方がやや優勢で、ミノタウロスは怪力を活かす風もなく、戦闘工作員達が加勢した間に間合いを取り、復讐を誓うやその場から姿を消してしまった…………もしかして弱い?「逃げしなに 覚えていろは 負けた奴」という川柳が思い浮かんだな(苦笑)。

 その頃、サチコは単身両親の墓に参り、「親切なお兄さんとおじさん」である敬介と藤兵衛の世話になっていることを墓標前で告げ、安らかに眠ることを念じていた(話と全然関係ないが、両親の墓標に書かれていた命日は道場主が生まれた一年と一日後)。
 サチコの台詞から、彼女が藤兵衛の元から学校に通っており、世話になってから数日は経過しているようだったが、サチコの出番はこの第6話限りなので、第7話以降は別の保護者の元に移ったことになる。
 断崖絶壁の上と云う危険な場所に一人で立っていたことや、偶然知り合ったばかりの敬介について行ってその保護下に入ったことを鑑みると彼女は両親の他には一切の身寄りがいなかったと推察されるが、事故がGOD絡みであることを怪しまれる状況で単身墓参りに行かせた藤兵衛、チョット油断し過ぎではないだろうか?

 案の定、彼女の行動はGODに見張られており、帰還した敬介からGODが絡んでいたことを知った頃には藤兵衛がサチコの帰りが遅いことを懸念するほどの時間が流れていた。
 慌てて二人が墓場を訪れると墓標前には彼女の持って行った花が手向けられており、来たことは間違いなかったがその姿は見えなかった。直後、敬介が女の子の悲鳴を聞きつけ、その方向に行くとそこには藤兵衛がサチコに挙げたリボンが落ちていた。
 リボンが落ちる程の抵抗をされたとしたら、随分杜撰な拉致だと思ったが、そこに薄ら笑いを浮かべた涼子が現れ、これが罠であったことが分かった。

 懸念は的中し、サチコはミノタウロス (人間体)と戦闘工作員達に拘束されており、彼女の頭に銃口を突き付けられては敬介も藤兵衛も抵抗すること能わず、二人は手錠を嵌められて抵抗不能状態にされた。しかしその状態に高笑いする涼子、タイミングおかし過ぎ(苦笑)。ただ、まあ子供まで人質に取る卑劣振りを敬介に詰られた時は無表情に戻っていたから、表情の変化には何らかの意味はあるのだろう。
 そしてそんな状態の二人の顔面に拳骨を食らわすと、ミノタウロスは予告通りに復讐すると告げて、敬介・藤兵衛・サチコをトラックに載せ、例のプレハブ小屋に連行した。

 プレハブ小屋からは既に内乱に使う武器弾薬は運び出されており、ミノタウロスは天井から吊るした鎖に三人を拘束すると時限爆弾で爆殺することを宣言した。
 「(内乱を)見せてやりたいが、その頃にはお前たちの命はないな。」とか、「冥福を祈るよ。」といった底意地悪い台詞を連発し、自分はどうなってもいいから藤兵衛とサチコだけは助けて欲しいと云う敬介の要請も、「この子だけでも」と云う藤兵衛の懇願もにべもなく却下する現場監督だったが、台詞の割には余り嫌味を感じない。嫌味な台詞に嫌味感が漂わないとは、なかなか滝波氏は羨ましい声質の持ち主である。

 ともあれ、時限爆弾は3分後の爆発にセットされ、三人の命は風前の灯火だった。何とかサチコだけでも助けたいと焦る藤兵衛だったが、さしもの敬介もXライダーにセタップしない状態では鎖の戒めを脱することが出来ず、両腕が自由にならないとセタップすることも叶わなかった(後に第16話でも腕が利かないことでセタップ出来なかったことがあった)。
 万事休すで、助けを求めるサチコの声に「正義の神に祈ろう。」と云うしかできない藤兵衛だったが、そこに霧子が現れた。霧子は無言のまま拳銃でもって鎖を撃ち千切って敬介を戒めから解き放ち、場合も場合だったので敬介も霧子の真意や正体を問わず笑顔で謝意を述べると、そのまま立ち去る霧子を追うこともなく、Xライダーにセタップした(そりゃそうだよな(苦笑))。

 セタップが叶うと鎖を千切ることなどXライダーには造作も無いことで、藤兵衛とサチコを戒めから解き放ったXライダーは二人を抱えて小屋の外に飛び出し、三人は間一髪危機を脱した。
 直後、土手の上に入る霧子に気付いたXライダーは何時になく素直に礼を述べ、逃走するトラックを追うようにとの霧子の勧めに従って、クルーザーを駆るのだった。

 一度目に涼子を追った時は「白い弾丸クルーザー」がBGMに挿入されていたが、二度目の追跡では「Xライダーアクション」が初めて、そして1番から3番までフルコーラスで挿入された。なかなか贅沢だ(笑)。
 やがてクルーザーはミノタウロスのトラックに追いつき、最後の決戦が展開された。変身する際に両拳を頭上で交差させるアクションを取っていたように、ボクサーの如く拳撃を次々と繰り出したり、拳に纏った小盾でライドルスティックを防いだり、額から弾丸を発したり、と装備を活用して初戦時よりは善戦したミノタウロスだったが、耐久力は普通だった様で、Xキックが放たれるとこれには耐えきれず、地面に蹴り倒されるとその姿は人型の白泡となり、一瞬の爆発を見せるや跡形もなく消滅していたのだった。

 かくして日本に内乱を起こさせんとするGODの悪巧みは阻止された。
 ただ、ストーリー的には王道で作戦目的もGODらしいものだったが、消化不良感は否めなかった。上述した様にサチコのその後は全く触れられることなくこの第6話限りの登場だったし、GODも内乱を起こす以上は武器を託す相手(テロ集団・思想結社・愚連隊等の組織外集団)がいたと思われるが、それ等については全く触れられなかった。リアルタイムで視聴していた人々にとってはこの時点での涼子・霧子の真意も極めて曖昧である。
 30分番組でそこまで盛り込むのがきついのは分からないでもないが、サチコがその後然るべき保護下に入ったことぐらいは述べて欲しかったと思われてならなかった。


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令和五(2023)年六月一四日 最終更新