対公害闘士列伝

対公害闘士列伝

 人類の歴史を戦争の歴と同一視する者は多い。勿論それは一面においては正しい。決して戦史だけが歴史という訳ではないが、戦争に関連して生まれた物は科学・医学・文学・文化・工学等、枚挙に暇がない(←だからと云って戦争必要論を認めたり、結果論的に医学の発展に貢献したナチスや731部隊の人体実験を庇ったりする気は更々ない)。
 拙サイトが『戦国房』なのも、戦史を重視すればこそ、である。だが、拙サイトでは人間対人間のドンパチだけを戦史としてはいない。過去作において、人が戦った対象として羆、天然痘、飢饉等も対象とした。そんな拙サイトが今回対象としたのは表題にある通り、「公害」である。

 人類が文明や産業を発達させる中で大なり小なり環境を破壊したことで様々な惨禍が起きた訳だが、そういう意味では「公害」という単語の指す範囲は極めて広い。
 一般に「公害」と云えば、工場運営における水質汚濁、大気汚染、騒音振動、地盤沈下とそれに伴う病気、事故の発生が注目されるが、工業のみならず、鉱業や農業がもたらす環境変化も狭義における環境破壊=公害もあり、漁業による乱獲や林業による大量伐採だって時として環境を大きく変える。

 ただ、人間には良心というものが存在する。
 自らの利益の為に周囲に害が及ぶことを気付かぬ振りをしたり、無視したりするものは少ないが、それを喜ぶ者は僅少だろう。そして可能であれば好き勝手をやってもそれが周囲の害とならず喜ばれれば最高だろう。うちの道場主は街中にて妙齢で豊満な肉体を持つ女性を見る度にそのことをグゲゲゲゲゲゲゲ…………(←道場主の極・ロメロスペシャルを食らっている)。
 ゲホッ、ゲホッ……勿論被害を被っている側だって黙ってはいない。日本国憲法第二五条にある、

 「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」

 を持ち出すまでもなく、生存権や健康を保てる環境があってこその日々の勤労・勉学・家事・冠婚葬祭・娯楽が可能となり、それらを守る為に必死になって戦う。

 本作はそんな人と公害との戦いを論述しようというものだが、まともに取り上げたら一つの公害事件だけで大きなサイトになってしまう。
 そこで、紀伝体に近い拙サイトの例に則り、薩摩守が注目した公害事件に対し、被害者側に立って戦ったメインパーソンを一人選び、その人物を中心に拙サイトなりの注目をしてみたいと思う次第である。
 尚、公害事件の中には被告となった企業が責任を認めていなかったり、賠償の軽重を巡って完全な和解が為されていなかったり、原告が国や地方自治体と揉め続けていたり、一部の患者が当該公害病の患者として認定されていなかったり等の問題が継続しているケースも多く、非常にデリケートな内容も多いため、どの事件を取り上げたか否かにについてはその基準を明白に出来ないことを白状し、予め御詫びしておきます。

 同時に、慎重に筆を進めるつもりではいますが、万が一、薩摩守の論述に事実誤認や関係者を傷付ける表現があった際には薩摩守まで連絡をお願いします。
 可及的速やかに論述を改めるとともに、場合によっては本作の削除も視野に入れます。


第壱頁 田中正造……対足尾銅山鉱毒事件・操業差し止め
第弐頁 細川一……対水俣病・病因分析
第参頁 萩野昇……対イタイイタイ・病原因分析
第肆頁 平田佐矩……対四日市ぜんそく・責任問題追及
最終頁 悲劇を再発させないために


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令和三(2021)年六月一〇日 最終更新