日本史大脱出

 過去作にて『流浪の没落者達』を制作した。
 戦敗・投獄・追放の憂き目に遭い、それでも諦めることなく再起を図って流浪し続けた者達を取り上げた訳だが、本作は少し趣が異なるケースを取り上げた。

 それは「逃走」よりも、「窮地からの脱出」に主眼を置いたものである。
 人間の運命は、「一寸先は闇」で、武勇・権力・資産に優れていても一時の油断・不運・読み違いで命を落とした例は枚挙に暇がない。一方で、一時の危地を脱したことで即座に力を盛り返したケースも多い。
 天下を取った者も、高名を挙げた者も、大権を握った者も、順風満帆に成し遂げた者は無きに等しく、一瞬の不運を逃れ得なければ功成り名遂げる前に命を落としていたであろう物も多いだろうし、一瞬の不運に命を落としていなければ後々功成り名遂げていた者も多いことだろう。

 当事者にとっては命懸けで、様々な恐怖や緊迫感と必死で戦った思い出したくもない時間かも知れないが、後世それらを学ぶ者にとっては非常に興味深く、歴史学を面白いものにしている。
 「逃げる」と云うことはカッコいいものではないが、「死んだら終わり」、「生きてさえいれば機会はある」と云うのも間違いではあるまい。

 そこで本作では日本史を左右した様々な事件における重要な脱出劇に注目してみた。

第壱頁 後白河上皇 平治の乱………女装で屋外脱出
第弐頁 源頼朝 石橋山の合戦………洞窟前の意外な味方
第参頁 織田有楽 本能寺の変………諦めないことで包囲脱出
第肆頁 徳川家康 伊賀越え………兵士と野武士と落ち武者狩りの包囲網
第伍頁 高野長英 蛮社の獄………史上最も強引な脱獄?
第陸頁 岡田啓介 二・二六事件………女中と弔問客の機転
第漆頁 何から逃げて、何から逃げざるべきか?


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令和三(2021)年一月一一日 最終更新