隠棲の楽しみ方

 史上、大きな権力を握りながらその権勢を全う出来ずに失脚した人物は枚挙に暇がない。
 そして激しい勢力争いや、油断も隙もならない政争、巨大な権力との駆け引きの果てに地位と権力を失った人は、その失脚に生きる気力をも失ったかのように数年を経ずして没した事も珍しくない。
 だが、物事には例外がある。
 菅原道真や北条氏直や田沼意次、海外でも袁世凱やナポレオンの様な、失脚後ほどなくして世を去る者が多い一方で、松平忠輝やフィリピンのアギナルドのように九〇を超える長寿を保った者もいる(←勿論失脚してからの人生の方が遥かに長い)。
 勿論その環境は様々だが、道場主の指南書『菜根譚』では富貴を必要以上に追い求めず、「足る」という事と自らの分を知った所で退き際を知る事と、その後の悠々自適の生活を説いている。
 富貴を追い求めるのも勿論結構だが、それだけでは決して掴めない、それらに依存しない心のゆとりと平安と楽しみを歴史上の失脚者=戦いの歴史から「隠棲」した者に学びたい。


 ちなみにこの項目では失脚した者を「敗者」として扱わずに「隠棲した者」として扱っているので、取り上げた人物達には、

  ・失脚≒隠棲後それなりに長生き(少なくとも一〇年以上)。
  ・平穏な生活(貧富は無関係)の内に生涯を終えている。
  ・ただ生きていただけではなく、何か(職・趣味)をやっていた。

 等を主な条件としている。



 第壱頁 今川氏真……優雅な戦国窓際族
 第弐頁 毛利輝元……大権放棄後に見る才覚と安定
 第参頁 宇喜多秀家……流刑も何のそのの長寿と土着
 第肆頁 松平忠輝……陰ゆえの五代間長寿
 第伍頁 松平忠直……地元の著名人・「一伯さん」
 第陸頁 徳川光圀……元祖・御隠居
 第漆頁 徳川慶喜……多趣味と多産に道場主羨望!!


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平成二七(2015)年七月九日 最終更新