菜根版名誉挽回してみませんか 女性編

 菜根道場戦国房を開設したのが平成一三(2001)年一一月、その第弐作目にアップしたのが、『菜根版名誉挽回してみませんか』であった。  あれから一四年近くが経ち、歴史上悪役とされた人物も美点が見直されるようになり、偉人の欠点も見落とされなくなり、マイナーな人物もWikipediaをチョット見ればすぐにおおよその事績が分かる様になった。

 至極結構なことだと思う。

 良きに付け、悪しきに付け、「人物」というものが一元的な見方だけで見られず、真実の実態を捕えた上で、褒めるべきを褒め、非難すべきを非難するのはその人物だけではなく、時代背景を理解し、現代や未来への教訓の為にも大切なことだと思う。

 ただ、その中で気に喰わない傾向も生まれた。
 それは持論を通したい、或いは持論への注目を集めたいが為に、従来の学説や史観を「全部嘘」と括る輩である。
 確かに、源頼朝や足利尊氏とされた肖像画、後世の読み物を鵜呑みにした長篠の戦いでの「織田の三段鉄砲」、「いい国(1192)作ろう」と覚えた鎌倉幕府の統治機構自体はそれ以前に成立していたこと等、ここ一〇年程で覆った歴史教科書の記述も少なくない。
 ただそれにしても、「全部」は云い過ぎだし、「誤り」ならまだ分かるが「」と云う悪意ある単語で決めてかかるその姿勢からして信用したくなくなる。

 勿論、学者でも、作家でもなく、個人趣味の範囲でしか歴史を研究していない薩摩守が本職相手にエラソーに云う能力も資格もない(権利ぐらいはあるかも知れないが)。
 それゆえ、

 「初心に帰る」

 こととした。
 戦国房立ち上げと同時に制作したのは『認めたくない英雄達』『菜根版名誉挽回してみませんか』だったが、改めて読み返してみると、

 とまあ、顔から火が出る想いである。
 勿論、何の考えもなく文章を綴った訳ではない………というか、要らんことまで考え過ぎたと思っている。
 いずれにせよ、開房当初の過去に作った『菜根版名誉挽回してみませんか』『女性』という存在に注目することで新たに作ってみようと思ったのが本作である。

 正直、不惑を過ぎていまだ妻帯せぬ薩摩守は女心に鋭敏とは云えない。
 まして、洋を問わず、古代ほど「男尊女卑」が強い歴史において、女性の記録は男性のそれと比べて極端に少ない(過去作『戦国長女』を作ったときに想い知らされた………)。
 それらを思えば、本作は過去作に比べて不充分な内容になるかも知れないが、それゆえ歴史において、「悪女」・「悪妻」にされた女達の隠された面を探りつつ、「娘」として、「妻」として、「母」としてどうだったかも可能な限り検証したい。
第壱頁 持統天皇……天智・天武の狭間で
第弐頁 藤原薬子……重祚教唆の罪や如何に
第参頁 北条政子……夫婦喧嘩に他人を巻き込むな!!
第肆頁 日野富子……守銭奴にならざるを得なかった妻にして母
第伍頁 三条夫人……義信事件がなかったら
第陸頁 築山殿……不義密通はどこまで真実か
第漆頁 淀殿……長き「悪妻愚母」のレッテル
第捌頁 崇源院……カカァ天下の代名詞
第玖頁 春日局……露骨な愛憎行動
第拾頁 桂昌院……愛深きゆえに憎しみも
第拾壱頁 月光院……天英院との確執の果てに
第拾弐頁 「悪女」が求められるときとは?


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令和三(2021)年六月三日 最終更新