不幸な遭遇をぶっ飛ばせ!……繰り返すまじ日露交流暗黒史

 国と国の交流どころか、人と人との交流にさえトラブルはつきものである。どんなに仲の良い友人関係・家族関係・恋愛関係でもトラブルが何一つなく続くことは稀であろう。ましてやそれが国同士の問題となると実に厄介且つ長引く問題となる。

 何故か?
 箇条書きにすると、下記のような要因があるとロングヘアー・フルシチョフは考える。

◎相互不理解………どこの世界にも「余所者嫌い」が存在する。言葉も通じず、相手が如何なる文化を持つか詳らかでない相手には「興味」か「恐れ」を抱くことが多く、後者しか抱かない残念な輩も少なからず存在する。
 多くの人々は双方の念を混在して抱き、不用意な発言や結論付けによる責任を背負い込むことを良しとせず、消化不良な想いを抱えたまま、ぎこちない険悪な交流が続く要因となってしまう。

◎面子の問題………外交や国際交流を厄介にするのはこの要因によるところが大きい。個人と個人の関係においてすら、「謝ったら負け」みたいに考える自己中な人間が少なからず存在する。ましてこれが「国家の面子」となると、個人的に非を認めざるを得ないと思っているものでも国家の意向により逆ギレを行ったり、都合の悪いことに沈黙したりすることになる。
 片方に一方的な非がある動かぬ証拠を突き付けられて尚、「でっち上げだ!」と逆ギレして認めないケースすらある。同時に、下手に自国に不利な論を認めると、後々延々ととんでもないバッシングに曝されることも時の権力者や外交責任者に頑なに非を認めない態度を取らせる傾向を産んでもいる。

◎情報非公開………事件における証拠隠滅を防ぎ、逃げ続ける関係者に余計な情報を与えない為に、事件の詳細や背景が伏せられることは一般の事件においてもよく見られる。まして国家間のトラブルとなると、自国への非難を防いだり、不用意な発言が簡単に取り消せないことを懸念したり、政治的な判断により圧力をかけられたり、で事件解決や、相互の誤解を解くための重要な情報が公開されないことが多い。
 同時に正しく情報が公開された場合でも、公開された情報を己に都合が悪いと捕らえた者達がその情報を正しいものと認めなかったり、「まだ隠された情報があるのでは?」との邪推が抱かれたりする。
 殊に旧ソ連が様々な情報隠蔽を行い、ソ連崩壊時に赤裸々になったケースからも、国家間のトラブルにおける伏せられた情報はまだまだあると見られ、完全公開されたとしても「まだあるだろう?」との念が払拭されるのは極めて困難である。


 これらの要因は何も日露・日ソ間に限った話ではないが、江戸幕府による長い鎖国が生んだ情報不足や、数々の戦争を巡る紛争、ソビエト連邦の隠蔽体質、戦後日本の対米追従が生んだ反ソ的な態度は数々の事件を生み、それ等のいくつかは今なお日露交流に暗い影を落とし、平成三一(2019)年二月現在、日露両国はいまだに平和条約を締結出来ないでいる。

 だが、誤解無い様に述べておきたいが、本作は何も日露交流における事件史でもって日露のどちらの国を攻撃したい訳でもない。まして国家に非があっても、国民は別だと思っている
 本作の目的は、日露交流史にあって起きてしまった不幸な事件を通して、その背景に何があったのか?同様の事件が生まれない為何が必要なのか?を考察し、最終的には過去の人間がやらかしたことに縛られて未来の日露交流に影を落とすことの馬鹿馬鹿しさを示すことにある。

第壱頁 文化露寇………ゴロツキ蛮行の裏で意外な防疫
第弐頁 ゴローニン事件………囚人がもたらした異国情報
第参頁 ロシア軍艦対馬占領事件………見直すべき要衝の島
第肆頁 大津事件………あわや戦争勃発!外交と司法の狭間で
第伍頁 三国干渉………肝心の被害者は蚊帳の外
第陸頁 日露戦争………人道の終わりと思い上がりの始まり
第漆頁 シベリア出兵………社会主義を迷走させた外圧
第捌頁 尼港事件………住人ほぼ全滅の大虐殺!
第玖頁 張鼓峰事件………因縁の日ソ国境紛争
第拾頁 ノモンハン事件………満蒙を仮面にした代理紛争
第拾壱頁 関東軍特種演習………日ソ中立条約破棄の正当化要因?
第拾弐頁 ゾルゲ事件………戦前最大のスパイ事件
第拾参頁 対日参戦………有効期限無視の火事場泥棒侵略
第拾肆頁 真岡郵便電信局事件………誰が局員達を死なせたのか?
第拾伍頁 シベリア抑留………一国の大統領に頭を下げさせた大愚行
第拾陸頁 ベレンコ中尉亡命事件………防空件突破と機密保持とで大混乱
第拾漆頁 モスクワオリンピックボイコット………米ソ対立の嫌過ぎる余韻
第拾捌頁 大韓航空機撃墜事件………乗客乗員全滅の悲劇と情報隠蔽
最終頁 不幸な歴史を繰り返さない為に


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令和三(2021)年一一月九日 最終更新